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動き出す物語

「やらかしたやらかしたやらかしたやらかしたやらかしたやらかしたやらかしたやらかしたやらかしたやらかした」


 ジンは帰りの馬車の中で頭を抱えてブツブツと自分の先程の失態を嘆き続けていた。


「なんで、あんなこと言っちまったんだ!理性をどこに置いてきた俺!あり得ないだろう!相手は侯爵家の御息女だぞ!?伯爵家の長男って言ってもウチは成り上がりの伯爵家だぞ!?身分違いにも程がある」


 家格的にはなんとか釣り合わなくはないが現状、王都では選民派と貴族派とで真っ二つに割れている。選民派の英雄的存在であるジゲンの息子である自分と侯爵令嬢などの婚約など色々な貴族が認めるはずもなかった。


「くっそ!親父殿になんて言ったらいいんだ!」


 ただただ自分の行動を後悔するジンだが、言わないと言う選択肢については後悔していなかった。ただ時と場所を選ぶべきではあったと後悔していたのだ。


 ジンが馬車で後悔している時にもう一人後悔ではないが困惑している人間がいた。リナリー・フォルムであった。


(なんてはしたないことをしてしまったのしょう?)


 顔を真っ赤にしてキリルの後をついていくリナリーは先程のことを思い出して悶絶していた。

 どストライクだったのだ。

 顔立ちも立ち姿も醸し出す雰囲気も全てが自分とがっちりと合った気がしたのだ。


「リナリー、さっきのことは帰ったら話すとして私は重要な話が陛下とできてしまったのでドール第二王子と話していなさい」


「はい」


(お父様がこんなに焦ってらっしゃるなんて)


 少しの罪悪感を抱いたリナリー。だが自分が先程肯定の言葉が出たことへの後悔は微塵もしていなかった。


「あ!そうだわ!」


「リナリー?どうかしたのかい?」


「お父様!私、自分からリナリーとも、ごきげんようとも言っていませんの!」


「え?」


「ジン様にはしたない女であると思われたらどうしましょう!」


「リナリー......?」


「お父様!どうすればいいのかしら!!」


「リナリー、大丈夫だよ、ジゲンの息子はそんなことを一々気にするような男なわけがないさ」


「本当?」


「ああ、次会った時にしっかりと挨拶すればきっとね」


「ならよかったわ!」


 リナリーはここ最近で1番の笑顔を見せる。

 キリルはただただ混沌とした頭の整理をつけるのに必死だった。


 またこの時、城には心中穏やかではない人間がもう一人、城にいた。

 ドールストス第二王子である。


「国の秘宝が俺の婚約者か......ククク」


 ドールはこの時自分の婚約者になる人間との顔合わせだとは聞いていなかったがなんとなく察していた。

 リナリー・フォルムは幼少にもかかわらず他を圧倒する美貌からサファイアと対をなす国の秘宝とまで言われているのは貴族の間でも有名だった。そんな彼女が将来自分の妻になると言う優越感に子供ながらにドールは口の橋が釣り上がるのが止まらなかった。

 この時長きにわたるドールとジンの因縁が生まれたのだがそれを知るものは今この瞬間にはいなかった。

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