再会
寝正月楽しんでらっしゃいますか?
ジゲンから刀をもらって一年が過ぎた。
あれから屋敷内で変わったことと言えばジンが露骨に嫌われるようになったこととそれに応じて次男であるゾールが構ってくるようになったことくらいだ。
まず屋敷内のことについてはあれ以降、ゲイツが露骨にジンを嫌い始めたのがきっかけだ。
今までは会ってもシカトだったが、あれ以降、ジンに会うたびに嫌味を言ってくるようになり使用人達もジンに対して何を言っても良いのだと認識して日頃の鬱憤をジンで晴らすようになった。
だがそれについてはジンは特には気にしていないそれよりも次男のゾールの方が問題だった。
ある日久しぶりに顔を合わせたと思ったらジンに勝負を挑んできたのが半年前、久しぶりに普通に剣の模擬戦ができると思ったジンは、勝負に乗ったのだが結果はジンがゾールをボコボコにしてしまった。
その後にゲイツに呼び出され罵詈雑言の叱責を受けた。
それ以降はジンがゾールに負けてあげるように接待試合となった。
その後ゾールは面白いように調子に乗り勝負の度に、忌み子や侯爵家の面汚しというような幼稚な悪口を言うようになり、また色々な命令をしてくるようになった。
いっときゾールがジンの刀を欲しがったが、流石にジンも強くそれを拒否し一触即発の空気になったが、ゲイツがジンの刀など欲しがるなと言って、ゾールに別の刀を買い与えてからは何も言わなくなった、それだけはホッとしていた。
だがずっとジンは疑問だった、なぜこんなにも嫌われているのかが分からなかった。
気になったジンは図書室でその事について調べたところ以前まで黒目は災いを呼ぶと言われていたという史実を目にする。
だが、ディノケイドが王になってからは黒目への差別を無くす運動が行われた、なので表向きには黒目は特に問題はないとされているが、この黒目への差別は意外と根強いらしく、裏では今も差別はあるらしい。
まさにそれがジン自身に降りかかっている事だった。
はっきり言ってジンにはこの家は住みずらい、悪感情が全てジンへと集められる。
ジンがそれに耐えられたのは、ジゲンから貰った刀での修行に明け暮れていたからというのもが大きい。
この一年朝から晩まで刀を振っていた。
延々とやってきたのはジゲンが見せてくれた、居合術だ。
まだまだ、初歩の初歩だが一度しか見ていない居合をなんとか思い出しながらずっと刀を振り続けてきた。
今日もいつもと同じように、ひたすらに居合いに継ぐ居合いだ。
そして今日もまたジンは刀を振り続ける。
あの日覚醒してからは子供的な考えや行動の一切をすることがなくなったジンはもはや刀振り続ける機械と化していた。
そんな今日この頃、刀を振り続けていたら結構な時間が経ってしまったらしい、さっきまで空はまだ早朝で暗かったが、いつのまにかすっかり日が登っている、ジンは少し休憩しようと思い、もう一年以上もジンの特等席である庭の木の下に腰掛ける。
「やっぱ、おじさんみてーなんは無理だな。まぁでも、俺は今六歳だし当たり前だけど、もうちょいどうにか近づけたいな」
ジンが思考の海に身を投げて、どうすればあの居合いに近づけるかを考えていると、珍しくジンを呼ぶ声がした。
「ジン様」
「なんだ」
「ご主人様がお呼びです」
使用人の言葉にジンは驚いた、まさかゲイツから呼び出されるとは。
もしかしたら、また罵詈雑言の叱責か?
いやだなぁ、と思いながら素直に使用人の後についていく。
ジンが使用人に連れられて、ゲイツの書斎室に入ると正面の机にゲイツが座りその前に立っている人物が自然と目に入る。
そこには予想外の人物がいた。
「おじさん?」
「おう!小僧元気にしてたか?」
「なんだ、おまえさん鯉みたいにして」
状況が飲み込めないジンは口をパクパクさせる。ジゲンはジンの反応に不思議そうな顔をして口を開きかけるが、ここで書斎の主人であるゲイツが口を挟む。
「オオトリ男爵、まだ話の途中であるぞ」
「ああ、すまないな侯爵殿よ、例のものなら3日以内に届く故しばし待たれよ」
「承った、どこへなりとも持って行け」
チラリとジンを見て冷たく言い放つゲイツだが、まだ困惑の中のジンはその視線に気づかなかった。
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