国王
寝正月でした
ジン達の視線に気付きこちらに近づいてくれる二人。
「ジゲン、その少年は?」
壮年の男性がジゲンに話しかける。
ジゲンは少しかしこまって言う。
「はっ!陛下、この者は侯爵殿の御子息にあらせられまする」
陛下というジゲンの言葉を聞き慌てて礼儀にのっとり挨拶をする。
(この方が、ディノケイド・バン・ベータル国王陛下か、立っているだけで気品がすごいな)
「お初にお目にかかります陛下、バスター侯爵家が三男、ジン・バスターです」
「ほう、まだ子がいたのかバスター侯爵よ」
「は、陛下には紹介せずともいい愚息にございます」
愚息ってただの三男で愚息は言い過ぎじゃないか?と思いつつジンは地面を凝視していた。
「ふむ、愚息とは言うがこの年でこの礼儀は大したものだ」
「我が侯爵家の教育の賜物でございます」
ゲイツはゴミを見るような目でジンを見ていた、なんでこんな目で見られているのかわからないがすぐに視線を外してディノケイド王を見るジン。
ディノケイドはダンディでこんなおじ様が前世にいたらたぶんハリウッドスターだなと思うジン、するとジンの顔をみてディノケイドは呟く
「黒目、か」
「申し訳ありません、お見苦しいものを」
何を言ってるのかさっぱりわからないジンは少し不思議そうな顔をしたが、すぐに真顔に戻る。
「侯爵いつも言っているがそのようなまやかしめいた噂など愚の骨頂ぞ?」
「申し訳ありません、ですがそのようなことではなくこの愚息は頭も弱く剣のセンスもないものでして陛下にお目通しできるようなものではありません」
ゲイツの言葉に、ここまで自分は嫌われている事実に少し衝撃を受けるジンだったが、顔に一切出さなかった。
まぁ、いままで知ろうとすらしていなかったわけではあると納得している自分がいたからである。
「そうか、まあよい」
陛下はそう言うと、じっと俺を見て、サッと視線を蚊帳の外だったジゲンに向ける。
「では、そろそろ帰るとするか、ジゲン」
「はっ!陛下!」
ディノケイド王は振り返りそれにゲイツとジゲンが続く。
すれ違い際にジンはジゲンにボソッと頑張れよ、という言葉をかけられ、三人の背中を見送った。
なんか、いろいろ起こったなぁとどこか他人事みたいにみたいに思ったジンはジゲンにもらった脇差を抱えてその場に立ち尽くすのだった。
♢♦︎♢
侯爵家の視察の帰りに、ジゲンはディノケイドに話しかけた。
「陛下、折り入ってお願いがございます」
「なんだ改まって、話し方気色悪いぞジゲン」
「確かに、二人だったな」
ジゲンが話し方を崩す、二人は騎士学校に所属していた時からの親友である。
「それでなんだ?」
「ああ、先程の少年なのだが」
「バスター侯爵の三男か」
「ああ、わしにあの子を養子に出してくれるようディノからバスター侯爵に頼めないか?」
「なに?お前にがあの子を?」
「奴はわしが育てる」
「バスター侯爵は愚息というておったが?」
「まさか、あの歳では賢い部類だろうよ、なにより......」
「どうした?」
急に黙ったジゲンをディノケイドは訝しんだ。
「あの小僧、手を抜いたとはいえわしの一撃かわしよったわ」
「なに?だが手を抜いていたんだろう?たまたまではないのか?」
「手は抜いたと言っても新人のバカどもを扱く時くらいには力を出した」
「お前、子供相手に何をやっているんだ」
ディノケイドはこの阿保に頭痛を覚えて、右手で顔を覆う。
「しかも新人じゃ、躱せないくらいのな」
そこまで言われて、ディノケイドはやっと気付く。
「それをあの少年は避けたのか?」
「ああ」
「たまたまではなく?」
「わしもそう思って聞いてみたら、しっかりと思考して避けていやがった」
「まさか......」
「あの小僧にわしの脇差をくれてやった」
「っ!?そこまでか」
「あれはわしを超えるぞ、ディノ」
かっかっかと陽気に笑うジゲンに反して、ディノケイドは大いに驚いていた。
ディノケイドには信じられなかった、ジゲンは男爵位であり、あまり高い位の貴族ではないが、この国では剣に置いて右に出るものがいないほどの剣士であり自分の懐刀だ。
その実力は自他ともに認めるところである。
それがここまで言うのかと。
「だが、わしは成り上がり男爵、あっちは侯爵だ三男といえど養子には出さんだろう」
「そうだな」
これは本気で言っている、長年の付き合いからジゲンという男をよく知るディノケイドは確信していた、自分の親友で懐刀であるジゲンがここまで言うところを初めて目にしたかもしれない。
「わかった、手配しよう」
「すまんな、持つべき者は位の高い友だな」
かっかっかと笑う友に、ディノケイドはいくら二人だけとはいえ、誰かに聞かれたら不敬罪で死刑だぞと、心の中でため息を吐いた。




