届かない
次で終わるか?
ジンはロイストスが落ち着いたと見て話題を変えることにした。
「それで、殿下のご友人は?」
「ああ、侯爵家は4つあるからな、オルガ侯爵家とフォルム侯爵だな他のバスターとテグラムは弟の側に付いている」
「なるほど」
(どうやら俺の古巣は弟君の側についたらしい)
テグラム侯爵家の歴史は古くこの国の剣聖の家系にある。八年前の戦争で当主が戦死しているが尚も強い権力を有して取り持っていると言う話だった。
バスター侯爵家は貴族派の代表で政治にも口を出せる権力を有している。
オルガ侯爵家は智略に優れ、文官や策士として多くの者を輩出している名家である。
フォルム侯爵家は容姿と人望に優れた侯爵家であり王統派の代表だ。
これがベータル王国の大貴族、四侯爵である。
「と言うかそもそも殿下と弟君ではどう思想が違うんだ?」
「奴はな、貴族至上主義なんだよ。それも極度のな」
「では殿下は」
「私は父上と似ているが、平民であっても能力があるなら等しく対価を与えるべきだと考えている。だがそれが難しいのも理解している」
「そうですね」
確かにこの国は八年前に帝国に痛手を負わされてから平民も士官として多く召し抱える方針になった。だがそれをよく思わないのはもちろん貴族である。
賛成が多数を占めたがそれでもやはり貴族至上主義や自分の役職を取られると考える者などが出てくる。つまり不満があると言うことだ。
「オオトリ男爵もその件で大きく取り上げられた存在だからな、お前に執着すればあらぬ噂が立ちかねん。確かに難しい話ではあるな」
結局最初の話に戻ってしまったがやはり難しいと言う結論をロイストスも理解している。
ロイストスは八歳児にして聡明だ。これは周知の事実で神童と呼ばれる能力のある王族の後継である。
話がひと段落ついた時に部屋のドアが唐突に開かれる。
「邪魔するぞ」
「父上!」
そこに入ってきたのはディノケイドとジゲンだった。
ロイストスは驚いて席を立つ、ジンが慌てて跪くとディノケイドはサッと手を出してその行動を止める。
「まぁ、まてまてここには、そちの父の友として立っているそこまでの礼儀は望んでおらん」
そう言われてジンは顔を上げる。
顔を上げたジンがジゲンを見るがジゲンも中々に困惑している様だ。どうやらここへ連れてこられたのはサプライズらしい。
「それで父上なぜこちらに?」
割と冷静なサファイアが父の突然の訪問のわけを伺う。
「いや何、ロイとジゲンの倅がどうなってるか見にきただけよ」
その答えを聞いてロイストスが言うだけならタダだと父にお願いをしてみる。
「父上!私はジンが気に入った!これからも友人として側におきたのだが身分差があり難しい。父上は何かいい案はないか?」
(何をいってんだ!無理だろう!無理だよね?無理だと言って陛下!)
「ふむ、その件で少しはなさねばならんことがある」
どうやらジンの想いはどこにも届かないらしい。
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