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暇つぶし

 ライトノベルや漫画、映画で登場するいじめられっ子というものをを想像してみてほしい。根暗で、太っていて、チビで取柄のないような人物像を想像するだろう。そう、それが全て当てはまっているのが僕だ。

 

 月城世界。世界という名前は広い見聞を持って欲しいという願いを込めて大好きだった父が僕につけてくれた。僕はこの名前をとても気に入っている。でも、父は僕が幼い頃交通事故で亡くなった。お気に入りの名前を呼んでくれる父はもうこの世にいないのだ。その代わりに今僕の名前を呼んでるのは…


 「せーかーい!目障りなんだよぉ!!!」

 

 腹に突き刺さるようなボディーブロー。

 

 高校生にしてはがっちりとした体格に金色の短く切り揃えられた髪、軟骨まで空いたピアス。クラスの不良の金剛悠人に殴られている。


 「ゔっ ゔぉえええええええええええええええええええ」

 

 鈍い痛みに耐えきれず、ゲロを教室の床にぶちまけた

 

 「うっわ…こいつ吐きやがったぞ。汚ねぇな」


 お前が殴るからだろ。あーあ、今日は何もなく一日終わると思ってたのになぁ。

 

 そもそもなんで殴られたかというと、帰りのHRが終わり帰ろうとした時、僕のだらしないお腹が金剛の机にぶつかってしまったからだ。金剛の機嫌が悪かったのか、それともただの暇つぶしなのか僕の知るところではないが、とにかく毎回理不尽な理由で殴られる。

 

  「ご、ごめん…片付けとくよ」


  「はっ 情けねぇ奴」


 金剛は侮蔑の目でうずくまってる僕を見下し教室から出て行った。

 

 クラスの他のみんなは僕の醜い容姿と消極的な性格からか金剛のを恐れてからか見て見ぬ振りを決め込む。僕が傍観の立場だったら同じことをしてるだろうし、それも生きる上で必要なことだししょうがないと思っている。


 床片付けないとな。バケツに水を汲みに行こうと立ち上がると


  「月城くん!!大丈夫?! 幾ら何でも毎回毎回ひどすぎだよね…私雑巾持ってくるね」


  「木下さん…ありがとう。でも、大丈夫、一人でやるから…汚いし,,.そもそも僕が申し訳ないんだ」


  「で、でも…」


  「本当に大丈夫だから。それに今は一人で居たいから」


  「う、うん。分かったわ。でも助けが必要な時はいつでも言ってね。じゃあ また明日ね」


 木下さんは少し悲しそうな顔をすると、小走りで教室を出て行った。木下花。腰までの長さのサラサラな黒髪で雪のような白い肌、つぶらな瞳にすっとした鼻筋に小さい口、世間でいう高嶺の花や学校一のマドンナだ。


 彼女は僕のような人にも平等に接してくれる優しい性格の持ち主だ。運動神経も抜群でバレー部の期待の新人で、勉強も入学試験で一番の成績を取り、新入生代表を務めた。僕とは程遠い住む世界が違う御方である。


 はぁ さっさと終わらせるか。僕はじんわりとお腹に残った痛みを感じながら、誰もいない教室で床を拭く。悔しい感情なんてない。この気持ちももう慣れたから。

 

 

 


 

 

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