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捏造の王国

捏造の王国 その28 来春に桜は見るの、見れないの?“桜を愛でる会”中止の恨み節

作者: 天城冴

ジングルベルの音も聞こえそうな時期に、春の”桜を愛でる会”の疑惑で野党の猛攻撃をうける、アベノ総理およびガース長官他官邸の面々。来年からの中止を発表したものの、会の中止に戸惑う人々もいた…。

早いもので今年も、もうあとひと月。ジングルベルが聞こえるというのに、桜の話題で叩かれまくる官邸、今日もガース長官は頭を痛めていた。

「ああ、クリスマス限定紅茶の発売の時期だというのに、なんで桜のことで頭を悩ませねばならんのだ」

と寒い頭皮を抱えるガース長官。

「消費増税直後の絶妙のタイミングでしたから、仕方ありません。そもそも桜を愛でる会は各国要人やニホン国に功績のある人物を総理が招き花見をするのが本来の目的。関係ないような人間呼びすぎ、予算がかかりすぎと何年も前からレッドフラッグなどで言われてましたし」

とさらに冷たいことをいうシモシモダ副長官。

「わ、わかってはいるのだ。実質総理の人気集めの会になりつつあったということは。まあその各界の有名人に会えるというのはだな、その、有権者にトッテモ、その」

ガース長官の公職選挙法だの法律をまるっきり無視したかの有権者買収肯定発言に、チクリと刺すシモシモダ副長官。

「会の主旨に大幅に反しております。アベノ総理やジコウ党の支援者をもてなす会ではないし、金の出どころは税金。少数と言えど、問題になりかねなかったわけですし」

「い、今までだって、細々とやってはいたんだ!ミンミン党だって!」

「ミンミン党は1回のみ開催です。しかも前年度より減少。あとはジコウ党だけで、しかもアベノ総理になってから鰻上りに増え、今年はミンミン党より90%増加、実に二倍近い参加人数です」

「わー、はっきり言うな!ネトキョクウだの御用芸人だのを話題そらしにSNSで発言させているのが無駄になるではないか!」

「しかし、すでにことごとく反論、論破され、サヨク、リベラルどころか一般国民、諸外国にまで呆れられてます。“あいつ等やっぱ頭オカシイ、キジルシ、嘘つき”“共犯者、太鼓持ち”などと罵倒され続けておりますが」

「だから名簿をだな、シュレッダーにかけたわけだし。私が責任をもって、その」

「しかし、“連休明けのシュレッダー待ちで、野党議員の質問主意書が届いた途端に裁断”だの、“反社会勢力が入ってしまった”だの答えるというのは、墓穴を掘るようなものです。そんな性能の悪いシュレッダーを官公庁が使うのかとの指摘もあります。それに長官が

反社会的勢力と目される人物とお写真を撮られたことはすでにネットで拡散。総理の招待客のなかには最近話題となった高齢者をだました詐欺会社社長もおり、総理との写真をのせて勧誘したともありますので。官邸にとって、かなり厳しい状況です」

と、シモシモダ副長官が淡々という。ガース長官は益々頭を抱えた。

 なにしろ、ガース長官自身、毎日のように記者、特に宿敵マンゲツ記者に鋭い質問を受けているのだ。そのたびにナントカ誤魔化そうとするのだが、だんだん支離滅裂、滅茶苦茶になっていった。発言が数分で嘘だとばれるという大恥もかき、すでにガース長官の疲労は限界に達していた。写真写りが悪役そのものになったのはそのためである。

税金で国の功労者をもてなす会が、アベノ総理やジコウ党一同の支援者の私的もてなしと化し、いわば有権者の買収という民主主義国家では犯罪行為を何年も続けていたのだ。しかも以前はジコウ党の間でひっそりと、そう話題にならないように少数呼んでいたものが、アベノ総理が地元後援会の面々を無制限で募集するは、芸能人を大幅に呼ぶは、ヨイショ記事のご褒美に御用学者や似非ジャーナリスト、コピペ作家まで招待するはで、規模が拡大。招待者が一気に膨れ上がり予算も増額。とうとう共産ニッポンも黙っていられなくなり、数年前から地道な捜査がはじまった。そして、ついに消費税増税で国民の不満が高まったそのときに、共産ニッポンの議員の絶妙な質問。爪に火をともすように節約して納めた税金がアベノ総理個人のオモテナシに使われたと知って怒り心頭、デモも毎週のように行われる。

三径だの黄泉瓜だのの御用新聞を使い、芸能人スキャンダルをのせたが、いかんせん使い古した手の上、すぐバレる。擁護する自称学者や芸人はみな出席者としって、信用されなくなり、罵倒される。なにをやっても蒸し返され、ついにINUHKも取り上げられる、メディアトップと会食しようとも、騒ぎは収まりそうにない。いや、このままではトップ自身購読数の減少や不買運動により株主から追及され、外国メディアに身売りという心配も出てきたのだ。三径はすでに地方紙以下、他も軽減税率にもかかわらず購読者はダダ下がり。

増税不景気とともにアベノ総理もあぶなくなったのだ。アベノ総理は、内閣はどうなるのか、もはや桜解散かという声までていた。

そして、官邸だけでなく時季外れの桜の狂乱に頭を悩ます面々もいた。


某ジコウ党議員の事務所。議員と秘書が愚痴の言い合い、もとい話し合いをしていた。

「わー、桜を愛でる会が中止とは!もうだめだー」

「先生!落ち着いてください、選挙は来年ですし、まだお時間が」

「だ、だが、支援者にゲイノウジンとも会えます、総理とツーショットとか、その」

「酒の席での冗談でなんとか。それより地域振興に関する政策を、ですね」

「振興しようとも、この間の増税で店をたたむ、事業はやめるといった経営者、事業者が後をたたんのだ。後継者もいないし。廃業を考えていたのが、増税が背中をおしたようなもんだ」

「その5%還元策を、い、いまからでも。低所得者向けの商品券も」

「老夫婦がやってる駄菓子屋でクレジットなんて使えん!使ったとしても還元は来年でおわり、その後はクレジットカード決済手数料がずーっととられる。それなら辞めるわ!って言ってた爺さんいたんだぞ」

「その、低所得者向けの商品券はどうなんです、お得感は半端ないですが」

「それも使えるのは期間限定、来年の3月までだ!だいたい商品券買う金も無いってんだぞ!2万円で2万5千円分だぞ、5千円も得とわかっていて、買えないっていうんだ、婆さんが」

「まあ子供の給食費、携帯電話代どころか光熱費も払えず、税金滞納っていう本当の低所得者には何の恩恵もないのはわかりますが。と、とにかく桜に代わる何かイベントを~」

「ムツカシイけど本当に庶民のためになる政策をやる候補者より、芸能人やら有名人と引き合わせてくれる候補のほうがいいって奴等だからな、我が選挙民は。なるべく派手なのを」

「注意しないと有権者買収疑惑で桜と同じことになりますので、派手なのはちょっと~。ああ、やっぱり桜を愛でる会中止は痛いです~」

と深夜までやり取りは続いていた。


そして、とある雑居ビルの一室。薄暗い部屋でパソコンの液晶画面を通して物騒なやり取りが続いていた。

「桜を愛でる会は、来年は中止だそうだ」

部屋の主である男性が画面に向かって話しかけると画面の向こう側の相手は途端に不機嫌になった。

『なんだと、では、あの計画は変更だな。検査フリーで要人に近づけるチャンスなど滅多にないのだが』

「やはり今年のうちに実行しておくべきだったか。アベノ総理になってから、人数は増え、芸能人などの出入りもあった。キャバクラのホステスとかいうのもいたという話だし。伝手をさがし、招待状を手に入れておくべきだった」

『まさか、一国の、しかもG7の一員であるニホン国のアベノ総理主催の、各国の要人もあつまり、功労者をたたえる会の招待状が裏取引されているとは思わなかった。しかも、ジコウ党議員の枠がそれぞれあるという。一人ぐらいは我々の組織が落とせるだろうし』

「ニホンのヤクザや詐欺会社の社長まで出ていたそうだからな。しかも総理招待だとの噂だ。ニホンはなんと堕落した国になったのか。やはりアメリカがニホンを堕落させているのだろう。属国の犬そのもののアベノ総理と、アメリカの関係者をヤル絶好の機会だったのだが。入ってしまえば銃など必要もない。素手だろうと、フォーク一本だろうと、息の根など簡単にとめられる」

『そうだな。しかし、アベノ総理とその取り巻きのことだ、似たようなことをまたやるだろう。彼らには危機管理能力がまるでない、ということがはっきりした。サイバーセキュリティだけだと思っていたが、物理的にも緩いな』

「アベノ総理はよく私邸に泊まる。警備は厳しいというが、何、アベノ総理の警備だ。何か行事中を狙って」

『よく一般人と会食にでかけるというしな。しかし、考えてみるとアベノごときアホを一人仕留めたところで我が組織の得になるとは思えんな。飼い犬をヤレば、飼い主に打撃を与えることができるが、この場合』

「アメリカのドランプ大統領はまったく気にしないだろう。表面上は哀悼をしめすだろうが、内心はバカ犬がいなくなってかえって、せいせいしそうだ」

『と、なるとアベノと要人の会合の機会を狙って。しかし、さすがにアメリカの要人は警護が厳しいだろう。ああ、やはり桜を愛でる会の中止は痛い』

と、インターネットを使った某テロ組織の工作員同士の危ない会話は続いた。


そして、某居酒屋。女将とカップル客が話をしていた。

「ああ、もう桜を愛でる会が中止なんて、いやになっちゃう」

「アキエコ夫人、その、おっしゃらないほうが、総理夫人枠があると公になってしまってその」

「だって、主人が呼んでいいっていったしい。後援の方も呼んでるんだし、私のオトモダチだって、主人の後援みたいなもんじゃないの~」

「そ、その、有権者に接待をしたことで、ですね。だいたい桜を愛でる会はニホン国に功労のあった人を~。我々の税金ですし~」

「主人を、私を、推したことが功労なのよ~」

と、男性客に絡む女将ことアキエコ総理夫人。連れの女性が呆れたように言う。

「ああ、やっぱり、この夫婦いや、与党の連中、民主主義理解してないわ。義務教育も終わってない低能夫妻ってホントだったのね。やっぱりニホンって、アベノ政権って、おかしいわ。まあ、私たちがここに入れたってこと自体オカシイんだけど」

「しっ、客が誰も来ないから、たまたま前を通った僕たちがはいれたんだぜ。客が来なくて寂しいってアキエコ夫人が呼び込んでくれて。それに“総理夫人、桜を愛でる会中止に愚痴る”なんて動画撮れたら最高じゃないか」

「そんなのアップしたら、SPとか怖い人が来るにきまってるじゃない、バカね、アンタって」

と、女性が言う間に、そのSPが入ってきた。

「お客様、もうしわけありませんが、今日はもう閉店です。お代はいただきませんので、代わりに撮影画像は没収させていただきます」

いうが早いか、スマホを取り上げ、さっさとデータを削除。SNSなどにアップ済みかどうかの確認もすませて返却した。SPはポカンとしている男性を女性とともに店の外にうながした。別の一人がアキエコ夫人の腕を掴み、

「さ、今日はもうお戻りください」

「まってええ、お友達に会いたいの~、桜を愛でる会で~」

と呂律のまわらない夫人を車に押し込め、店のカギを閉めて走り去った。


そして、官邸でも

「ああ、中止にすれば、やはり疚しいことがあったと言われるし、しなければ“名簿破棄してどうやって来年の名簿つくるのだ、長官が責任者なんだろ!”といわれるし。だいたい総理の地元支援者は何が悪いのか理解しないでレッドフラッグにも週刊誌にもベラベラしゃべり、ブログにも平気で総理のお招きと書く連中だ。開催すれば、なぜ今年は呼ばないんだと文句を言うに決まっている、そうしたら選挙は。わ、私の支援者にもなんていえば、ああ、困った。いや、それどころではない、反社会的勢力を各国要人もいる集まりで招待したことになっている件をどうにかしないと。しかも、私が名簿の責任者と言ってしまったし…」

と、食後のお茶どころか夕食も食べれずにガース長官が悩んでいた。


桜に罪はないといっても、一国のトップが税金で、しかもゲイノウジン、チョメイジンを呼んで支援者もてなしはいかんでしょーというのは、パラレルワールドであろうと民主主義国家である限りは不味いんですよね、多分。

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