読書論
僕の母は無類の小説好きだった。祖母に言わせると、子供の頃からお小遣いは全て本に使っていたそう。毎週末、近くの本屋に行けば、毎回何冊か購入していたそうだ。その影響で、僕も子供の頃からしばしば図書館へ行ったものだった。といっても、最初は無理やり連れて行かれたのだが。しかし、本は思ったほど悪くはなかった。のんびり本を読んでいると、窮屈で忙しい現実から離れて、どこかホッとする。図書館の静かな空間で読むのもよし、自分の部屋でじっくり読むのもよし、気づけば毎日本を読んでいた。
最近、趣味が読書です、という人が増えた気がする。それ自体はとても喜ばしいことなのだが、深く話を聞くと、僕が思っている「読書」とどこか違うのだ。
趣味が読書だと言うKさんは、休日は一日中マンガを読むのだそう。ん?マンガ⁇確かにマンガも本だけど…
「マンガって本なの?」
「本でしょ、本屋で売ってるんだから」
いやいや、CDとかも本屋で売ってるでしょ…まあ兎に角こういう場面に出くわしたのだ。
さらにある日、Jさんと喋っている時に、あちらから話しかけてきた。
「俺、趣味が読書なんですよ」
「お、僕もだよ。何が好きなの?」
「小説です!電子書籍で読んでるんですよ」
電子書籍?何か違う。
僕は昔の人間なので、アナログが好きだ。学生の頃、クラスメイトはほとんど全員電子辞書を使っていたのに、僕は紙辞書を使っていた。値段の問題ではなく、ただページをめくる時の音が好きだった。無論、読書は紙の本で読むことを言うのだと勝手に定義していた。
話を聞くと、電子書籍を使っている人は増える一方だという。便利だから、だそうだ。勿論、電子書籍が悪いわけではない。しかし、紙の本とは次元が違うというか、世界が違うというか。何かが違う気がする。マンガにしてもそうだ。僕は読書というのは活字を読む事だと思っていたから、例の場面でとても違和感を感じた。活字とマンガにおいても、世界が違う気がするのだが…
世の中は常に動いている。その事を痛感させられたある昭和人の話だ。
閲覧ありがとうございます。
僕の思いに共感していただけた方は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
是非コメントください。