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新小川原湖物語  作者: すけごろう
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第3話 1

第3話 粛慎みしはせ襲来


「あの足音?人の足音じゃないよね?重低音?スーパーウーハーのスピーカー?なに?戦車?それともモビ〇スーツ?」

 

 シババの村の中でお祭りをしている時、遠くの方から土煙が舞って、足音のようなものがどんどん近づいてきました。なにやら声も聞こえてきます。

二体のイノシシの上にはそれぞれ男がまたがっています。イノシシがものすごい勢いで走っているので、二人は振り落とされそうなため、必死でしがみついているように見えます。

お祭りをしている集落の中心にイノシシたちが突っ込んできました。

むらのみんなは慌てて避難していきます。


「パラリラ、パラリラ!ひゃーほーい!オラオラ、食いもの出せやー!お祭りなんてやってんじゃねーよ!」


「あれは、小川原湖の北の邑のアギラの族だ。あいつらはイノシシを飼いならして食用にするのと同時にああやって乗り物にして、たった二人じゃがそこらへんを暴走しまくるので困っておるんじゃ。なぜかアギラのことは族長あにきと呼ばれておる。邑のリーダーじゃないくせに」


 一頭のイノシシがシババたちの前に急停止して、上に乗っていた小男が「うぎゃっ!」と言いながら前方に振り落とされてゴロゴロ転げ回って行ってしまいました。

男はクマのものと思われる黒い毛皮を着て、頭にはクマの頭をヘルメットがわりにかぶっています。顔はクマというよりは狸のような丸っこい愛嬌のある顔に見えますけど。

男は何事もなかったかのように立ち上がって、シババの前に戻ってきました。


「あ痛たたた・・・。おお、シババか、なんでも都からきれいな女の子がやってきたって噂じゃねえか。どいつだ?見せてみろよ。場合によっちゃオレの嫁にしてやってもいいぜ、ウヘヘ」


「日本中どこに行ってもゲスい男というのはあまねく存在しているんだね。折角都のヘンタイエロオヤジから逃げてきたっていうのに・・・」

玉代姫ががっかりしたような顔でため息をつきました。


「う、うっさいわ!ヘンタイと違うわい!オレはノーマルだ!お、お前か?都で有名なアイドルってのは?」

「は?アイドル?誰のことさ?ていうかアイドルって意味はなによ?」

「お姉さま、アイドルっていうのは偶像という意味です。しいて言えば、祈祷きとうにつかう遮光器土偶しゃこうきどぐうのような」

「えー、わたしあんな目玉ぎょろりのへちゃむくれの宇宙人みたいな顔してないよ、失礼な!あんたもう帰んなさいよ!」


「あなたでしょ?玉代姫をアイドルって吹聴してまわったのは」

「ひいいー、早苗様、ごめんなさい!見栄はって言いふらしてました!」

 道忠さんが早苗姫様に怒られて土下座しています。毎日のことなので誰ももう気にしていませんけど。


「ええい、お前らいい加減にしろ!もういい。お前をオレの嫁さんにする。連れてくからな!文句があっても聞かないからな!さあ、来い!」

「なにすんのよ!やめてよ!あんた誰よ?助けてー!人さらいだよー!変なことされちゃうよー!」


 アギラは嫌がる玉代姫の腕をつかんで、無理やりイノシシの上に載せて、走り出してしまいました。

イノシシの走るスピードが速すぎるために、後ろからシババの邑の若者が走って追いかけてきますが、すぐに間をあけられてあっという間に見失ってしまいました。イノシシは時速40km以上、人間のマラソンランナーでも時速20kmくらいですから、とうてい追いつくわけがありません。


「うぎゃー、イノシシの毛が硬くてちくちく刺さって痛いわよ!あんたなに人を荷物みたいに載せてるのよ!この馬鹿!!」

「暴れるな!落ちるぞ!わわわ、引っ掻くな!叩くな!動くな!」

「変なとこ触わらないでよ、このヘンタイ!」

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