目覚めた昼は
質の悪い風邪を引いてしまい2週間近く更新滞ってしまってました。
やっと治ったので今後も頑張っていきます。
漂ってきたパンとトマトスープの匂いで僕は目を覚ました。
「お腹…すいた…」
魔獣との戦いから目覚めて三日。さらにその後また眠ってしまったのだから三日以上何も口にしていないことになる。流石に腹も限界だ。
ベッド横のテーブルにパンとトマトスープが置いてあった。トマトスープからはまだ湯気が出ており暖かい。パンの横にメモがあり食べれたら食べてねとリディアの字で書かれていた。
少しでも早く飢えを満たしたかった僕は食べやすいようにパンをスープに浸してむしゃむしゃと食べ続けた。
トマトの酸味といくつかのスパイスが混ざり合い、とても美味しいかつ体の底から温まる。
「ごちそうさまでした。」
飢えと喉の渇きを癒した
「よっと」
ベッドから降りて少しストレッチをしてみる。
うん。普通に動く分には何ともないな。これといった後遺症もない。
体の無事を確認した後、手のひらの上に短刀をイメージしてみた。
ぽぅっと淡い光に包まれ、短刀が僕の手のひらの上に現れる。
「やっぱり夢じゃないよな…。」
短刀をくるくると手のひらの上で転がした。その後、短刀を納めるイメージをすると消えてなくなった。凄く便利だ。こんな力を貸してくれるなんてあの人は誰なんだろうか。
「もしもし、聞こえてますか?」
あの人に向かって話しかけてみるが返事はなかった。
話せる時間が限られているのかな。まぁ、気ににしても仕方がない。
窓から見える日の位置から今はお昼過ぎだろうか。リディアの様子も気になるし少し出かけるか。
さっと麻のシャツとズボンといった余所行きの服装に着替え僕は家から出ることにした。
外に出ると太陽の光でまともに目を開けられなかった。4日も寝ていればそんなものか。
その場で目を瞑ったり、瞬きをして光に慣れさせ、慣れたところでリディアの家に向かった。リディアの家は隣なので歩いてすぐに到着した。
コンコンと玄関をノックする。
「はーい!」
リディアの返事とともにドタドタと小走りする音が聞こえ、その音が鳴りやんだところで玄関が開いた。
「っや」
照れを隠すような感じで短くちょっと砕けた感じで挨拶をした。
「リオ! 起きて大丈夫なの?」
「うん。体はもう大丈夫みたい。痛みとかもないし。」
「そう。それは良かったわ。」
リディアはほっと胸を撫でおろした。どうやらかなり心配を掛けてしまったみたいだ。
「あ、スープとパンありがとう。リディアが用意してくれたんでしょ」
「うん。スープはちゃんと暖かいときに食べられたかしら。一応冷めるころには温めなおして持って行ったのよ」
「お陰様で喉の渇きと飢えが満たせよ。本当にありがとう。」
「いえいえ、どういたしまして。あ、いつまでも玄関にいるのもなんだから上がっちゃって。」
「それじゃ、お邪魔します。」
僕とリディアは家に上がり、テーブルチェアに腰かけた。
「魔獣が襲ってきたときに話したことは覚えてる?」
「うん。僕の両親ことと、ここが忍びの里ってことでしょ。」
両親は事故ではなく魔物の呪いによって死んだこと。ここが忍びの里で現在は僕を匿っているということ。
「そう。貴方が勇者として覚醒する成人の日まで匿うのが私とこの里の使命なんだけど…」
そう言ってリディアは美しい黒く長い髪をくしゃくしゃと掻き毟った。
「私の影空間から勝手に出るし! 魔獣もやっつけちゃうし! 結果的には良かったけどモヤモヤするぅ!」
確かにリディアからしてみれば守るべき対象に守られて釈然としないのだろう。行き場の無い感情が彼女の中で渦巻いている。
「心配掛けてごめんなさい。」
とりあえず謝るしかないと思った僕は素直にリディアに謝った。
「うーん。リオが謝る必要は全くないんだけどね。私の力では守れなかったことがね。不甲斐なくて…」
「リディアはしっかり守ってくれたよ。リディアが影空間に匿ってくれてなかったらきっと死んでた!」
「そっか。ちゃんと守れてたかな。」
「うん!」
自分の中で納得したのかリディアの表情は晴れやかになっていた。
「それにしてもリオに力を貸した人は誰なのかしらね。勇者の力を覚醒させることができるってことはその人も勇者の末裔なのかしら。」
「それが話しかけても返事がないんだよね。情報が足りないや。」
「先生なら私たちより何かわかるかもね。今後のことも含めて相談しにいきましょうか。」
「そうだね。」
話し終えた僕とリディアは先生を探しに行くことにした。