表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

一時の目覚め

目を開けるとリディアが僕の手を握りしめ、そこに顔を(うず)めていた。

握られた手には暖かい雫が止めどなく流れていた。


「…リ、リディア。」

「リオ!! 良かった。もう目覚めないのかと…」

ずっと泣いていたのだろう。リディアの(まぶた)()れ、目は真っ赤になっていた。


「ここは?」

「貴方の家よ。貴方が倒れた後にマリアさん達がが来てくれて貴方と私を運んでくれたの。

 それにしても目覚めて良かったわ。倒れてから三日も目を覚まさないから毎日心配で。」

少し体を起こそうとしたが、まだ力が入らない。三日も寝たきり状態であったのならば当たり前か。


「まだ目覚めたばかりだから無茶しちゃだめよ。」

リディアはペシンと僕の頭を軽く手のひらで叩いた。


「そういえば、あれから魔獣や魔物は現れた?」

「いいえ。ムガン先生やザック達が交代で見回りをしているけど現れていないわ。」

今まで魔獣や魔物なんて現れたことがなかったから次々とやって来ることを心配したがいまのところは大丈夫らしい。


「あ! 先生にリオが起きたら知らせてくれって言われていたの忘れてたわ。ちょっと先生を呼んでくるわね。」

パタパタと駆け足でリディアは家から出て行った。


…うーん。たぶん先生にしこたま怒られそうで気が滅入る…


リディアが出て行ってから5分程でリディアが戻ってきた。もちろん先生を連れて。


「言いたいことは山ほどあるが、まずは無事で良かった。しかし、あの魔獣はヘルハウンド。大きさからするに、グレーターヘルハウンドだろうな。俺でも一人では到底倒せない魔獣をよもや覚醒(かくせい)していないお前が倒すとはな。」

先生は(あご)(ひげ)(さわ)り、少し考えるような仕草をした。


「そのことなんですけど、この剣を持った瞬間に体の底から力が沸き上がってきたんですよ。」

先生に見せようと周りを見渡したが、剣はどこにも無かった。


「あれ? 僕が持ってた剣知らない?」

「それがね~まるで蒸発したかのように剣が消えちゃったのよ。」

弱った…あの剣があったからこそ勇者としての力が覚醒(かくせい)したのに無いのは困る。


…リオ…


頭にあの男の声が直接届いた。


「あの時は分かりやすく剣という形で力を貸したのだ。力自体は(すで)にお前の中にある。自分が必要とする形を思い浮かべろ。」

「必要とする形…」

グレーターヘルハウンドを倒した時のようなロングソードではベッドの上では大きすぎるため、短刀をイメージした。


ぽうっと僕の目の前に光に包まれた短刀が現れた。


「…驚いたな。いつのまにそんな力を手にいれたのだ。」

驚きのあまり先生の目が丸くなっていた。こんな表情をする先生は初めて見た。


「リディアの影の中に(かくま)われているときに頭の中に直接声が届いたんです。力を貸してやるって。今も聞こえます。」

「ふむ。風の(うわさ)に聞いたことがあるな。姿かたちは見えぬど、声だけは届く。小さき妖精(スプライト)とか呼ばれていたか。恐らくその一種だろうな。」

小さき妖精(スプライト)か。子供のころに聞いたおとぎ話に出てきたっけ。おとぎ話にでてくる小さき妖精(スプライト)軒並(のきな)み子供のような言動だったけど、こいつは不愛想(ぶあいそう)な大人って感じだ。


「あれ…」

突然眩暈(めまい)が視点が定まらなくって来た。


「いかんな。少し長く話過ぎたか。今日のところはこれで失礼する。今は体を休めなさい。」

「私も家に帰るわね。ここに呼び鈴を置いておくから何かあったらすぐ呼んでね。」

リディアは小さな鈴をベッド横の足の長いテーブルに置くとリディアと先生は家から出て行った。


二人が居なくなり気が緩んだのだろう。僕はまた睡魔に負け眠りに落ちていった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ