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祭りの準備1

午前の予定がなくなった僕は朝から訪ねてきたリディアに付き合うことにした。


「付き合うのは良いけど、何するの?」

「この姿でやることと言ったら一つしかないでしょ。

 勇者へ(ささ)げる舞の練習に付き合って欲しいの。」


リディアはひらひらと僕に衣装を見せつけた。


「祭りまであと一週間もあるのに凄い気合入ってるね。」

「あったりまえでしょ。魔王討伐500年を祝してのお祭りよ。

 私たちが今平和に暮らせているのは勇者バルト様と当時戦った人たちのお陰なのよ。

 その人たちに捧げる舞なんだからしっかり練習しなくっちゃね!」

「そうだね、しっかり練習しなくっちゃね。」


勇者バルトが魔王ザキューレを討ち取ってから500年。魔王とともに現れた大量の魔物の鳴りを潜め、(まれ)に人里にはぐれた魔物が出現するくらいとなり、平和が続いていた。


二人で歩いていると道端で中年の女性が見えてきた。

親のいない僕とリディアを本当の子供のように接してくれているマリアさんだ。


「おはようございます。マリアさん。」

「おはよう。リオ。」

「おはようマリアさん。 見て見て! この衣装で舞を踊るのよ。」

「あらま。どこぞのお姫様かと思ったよ! 」


マリアさんはリディアの衣装を見るなり目を丸くして(おどろ)いた表情を見せた。


「私たちこれから舞の練習をするの。本番は楽しみにしていてね。」

「そうかい。それは楽しみだ。ただ、今日はムガン先生が用事で里を開けるから

 広場まで行くんじゃないよ。」

「相変わらずマリアさんは心配性ね。魔物なんて出たこともないのに。」

「今日は我慢しなさい。ムガン先生もすぐ2,3日で戻ってくるから。」

「はいはい。分かりました。広場には行きませ~ん。」


里の外れにある広場は里からそこそこ歩く必要があるが、里の住人全員が集まれるスペースがある。

祭りの本番も広場で行うことになる。


「じゃ、マリアさん。僕たち行くね。」

「はいはい。行ってらっしゃい。」


僕たちはマリアさんに一礼をしてその場を後にした。


「で、どこでやるの?」

「ん~…。衣装も着ているし、やっぱり本番と同じようにしたいわね。」

人差し指を下唇(したくちびる)に当て、リディアが言った。


「まぁ、午前中だけだし。大丈夫だよ。広場まで行こうよ。」

「そうね。万が一はぐれ魔物が来てもリオが守ってくれるだろうし。」


リディアはニヤニヤと意地悪そうな表情を浮かべた。


「ムガン先生に一太刀も浴びせられたことないけど、精一杯お守りいたします。」

僕はその場で(ひざ)をつき、リディアの右手を取って騎士が姫に(ちか)いを立てる様を真似(まね)た。


「うむ。頼みましたわ。勇者様。」

僕の演技に合わせ、リディアもノッてきた。

その様子が可笑(おか)しくて(たが)いにその場で腹を抱えて笑った。


それにしても、今日は本当に良い天気だ。

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