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火竜な鍛治師で冒険者  作者: 竜の爪
7/14

5 包丁と力不足


_____________________


 昨日のナイフをじっくりと見ているステラ。

 「カズキ…人前で鍛冶スキルや彫金スキルは使わないでくださいね」

 ナイフは気に入ってくれたらしいが釘を刺された。


 昨日はナイフを作った後に自分の部屋に戻ってグッスリ眠れたので快調だった。鍛冶スキルを使うと良い具合に疲労して眠れるかもしれない。


 「作ったの売ってもダメ?」

 「…ダンジョンで出た…とでも言えば誤魔化せると思いますが本数は売れないと思いますよ。昨日カズキがやった事で『このナイフ』は金貨5枚の価値になりましたから…それに」

 続いた言葉で戦慄した。

 魔法剣が打てると知られたら城に連行されて専属の鍛冶屋にされますよ…と。


 「ステラ、俺はただ鍛冶の出来る冒険者だ。魔法剣なんか打てるわけないじゃないか!ハハハハ…」

 冷や汗が流れた。冒険者どころじゃねぇ!ほぼ監禁生活じゃねぇか!

 「よろしい、やっと分かってくれたみたいね。自分が、どれくらい凄い事が出来るか」

 疲れていた顔から、満足気な表情になったステラだった。


 「あっ!やっちまった…」

 二人で朝食を食べていると厨房からオッサン…マスターの声が聞こえてきた。

 「どうしたんですか?」

 ヒョコっと覗いてみると苦い顔したシェフが包丁とにらめっこしている。

 「…おっ?おぅ…ガゼルフィッシュをさばいてたら角で包丁が折れちまってな…」

 ちょっとビックリしたが魚から角が生えている、この角が鉄のごとく固いのだけど良い出汁が出るらしく外そうとした所で包丁が折れたらしい。


 「料理に支障が出ちまうから鍛冶屋に行って新しいの買わねぇとな…」

 鍛冶スキル上げられるじゃん!とテンション上がるけどハッと気付いた、チラッとステラを見るとジト目で見られた…

 ちょっとため息をされたが

 「マスター、カズキが鍛冶スキルを持っているから包丁を作ってもらったらどうでしょう?あと…出来た物に関しては他言無用でお願いします…」

 「?取り敢えず作って貰えるなら良いけどよ…」

 許可が出た事だし気合いを入れよう。


 宿の裏で鍛冶の準備をする

 ステラが後ろで座ってる。

 「ゴメン、今日は朝から依頼を受けるって話してたのに」

 「宿で御世話になっている身ですから、それにカズキから目を離すと何をするか分からないので怖いですし」

 苦笑されながら言われた。

 確かにスキル上げる為には自重しないからな~と鍛冶スキルの確認をする。


 《鍛治作成リスト》

 ・小型ナイフ Lv1

 ・戦闘用ナイフ Lv2

 ・刀剣作成

  ブロードソードLv3

  刀 Lv3

 ・鍛冶スキルレベルが足りません

 作成可能防具

 ・服飾スキルが無いため作成できません


 使用可能金属

 ・鉄

 ・鋼


 う~ん

 「マスター、希望あります?」

 調理場から一直線で窓もあり、立ってる姿が見えるので聞く。

 「あぁ~よく切れて折れねぇの作ってくれれば良いぞ~なんてな?ガッハッハ!」


 豪快に笑い飛ばすオッサン…じゃなくてマスター。無難に鋼使って包丁と刻印で良いか。

 「分かった、今から作るね~」

 アイテムボックスから鋼と粉末粘土をとっておく。


 「火竜の息…からのクラフトファイア」

 めっちゃ弱く意識したのに鋼の周りが薄く剥がれ落ちたので焦って切り替えたが危なかった。

 鋼だから炭粉をサッっと撒いて改めて熱して、しっかり叩く。縦横の折り返しを繰り返して一般的な包丁ほうちょうの形に整えていく。俺が調べたのは刃金と地金を叩いて作る方だが魔法の作用か知らないが、この世界では1つの鋼だけで作れるらしい。

 手間暇かけるとその分品質も良くなるみたいだけど、そんな技術は俺にはまだない!って事で火の魔法で作ると構造が変わってより強靭になるので、ほんのちょっとだけ別格と言える火竜の魔法を使った。


 時間にして1時間位で出来上がった。

 刃の部分に水にいた粘土を塗り火竜の息を発動させる。

 何度目かの反省を生かし、今度は包丁じゃなく少し離れた場所に火を出す。

 この火竜の魔法は威力が高すぎるので加減してる方が神経すり減らすと言う根っからの攻撃魔法だ。

 まぁ俺の使い方が間違っているのだろうけど…

 白…青…赤…オレンジ…と温度が下がった所で右へ左へくぐらせる。

 しゃぶしゃぶしてるみたいだな~…とか考えた瞬間、火が青白くなったので慌てて包丁を引っ込めた。

 「!…危ねぇ…クラフトアクアっと」


 空中に浮いた水に赤熱した刃から沈めていく。

 粘土が水を吸収し剥がれていくと冷えて徐々に刀身とうしんが鈍い銀色を放った。

 砥石で整えると鏡面の銀面へと変わる、持ち手に氷と水の刻印をして白檀の端材で挟んだ。白檀を削って木ネジとして使ったので目立たなくて良いだろう。

 そして嬉しい音が聞こえてきた。


 鍛治の極意レベルが1上がった。

 火竜の魔法の熟練度が上がりました。

 火竜の鍛治魔法を取得しました。

 鍛治師見習いがLv4/10に上がります。


 …うん、やっぱり火竜の魔法レベルが上がらねぇ!戦闘しないとダメっぽい!

 そもそも攻撃魔法だしな~…とか思ったが包丁はパッと見でも良い出来に感じる。


 「出来た~…特に火加減で疲れた…」

 火加減は覚えれたけど精神的にくる…

 気を取り直して!鑑定っと…


 ・ 肉斬り包丁 『息吹いぶき

 分類:ナイフ

 攻撃力:40


 丹念に作り上げられ竜の炎で鍛えられた包丁。水と氷の魔法を扱えるように刻印された。

 冷えた刃で肉を切った際に傷み難く、水によって手入れが楽になる。野菜も切れる。

 火にくべると火を吸って刃零れが再生する逸品いっぴん

 


 …ダガーナイフと後半の説明が一緒になのは気になるけど良い出来だな、多分こんな感じなんだろ。

 最後の説明は見ない事にしよう。


 「マスタ~ナイフ出来ましたよ」

 包丁ってキッチンナイフと言うだけあってナイフに分類されるらしい、出来た包丁を気軽に持っていくが、同時に出来映えを見てステラが横で項垂うなだれていた。

 多分鑑定したんだろう。ダガーナイフなんて目じゃねぇぜ!って出来だからな

 「おぅ!悪いな突貫で作らせちまって!握りもなかなか良いな!」

 「お役に立てて嬉しいです。美味しい晩飯を期待してるんで、よろしくお願いします!」

 おうよ!と言ってガゼルフィッシュを貯蔵庫から取り出して早速捌き出して、ゴトンっと何かが落ちる音がして動きが止まった。

 「アレ?切れ味悪かったですか?」

 俺が聞くと、包丁と角を持ってギギギギッっと音が聞こえそうな振り返り方をするマスターの第一声

 「…おめぇ、コレに何した?」


 包丁をあげながら聞いてきたので、答えようとした時にステラが止めた。

 「マスター…それ魔法剣ですよ…」

 ステラがゲンナリした口調で説明した…がそれを聞いたマスターは顔を真っ青にした。

 「おまっ!…ばっかじゃねぇか!?こんな高価なもん貰えるか!」

 ステラみたいな事を言ったけどマスターにしかあげないし、いつも通りの答えを返した。

 「今作ったの見てたじゃないですか、高価じゃないですよ?」

 俺のセリフに二人してガックリ項垂れるのであった。




 そして強制的に朝飯をプレゼントされた。

 「せっかく『良い包丁』貰っちまったしな」

 包丁を強調して言ってる声が聞こえる。昼食をとる後ろの厨房からステラがマスターに使い方の説明をしていた。

 一部以外はダガーナイフと使い方は同じだし、料理に特化した調理器具だから問題ないでしょ…と思った。


 説明を聞き終わったらしいグッタリしたマスターが

 「まずコレ刃が欠けんのか?ガゼルフィッシュの角がスッパリ切り落ちたぞ?」

 「刃物ですから一応使ってれば消耗はすると思いますよ。火にくべると再生するらしいですけど」


 説明聞いて顎が外れそうなほど口が開いてるマスター、ステラも先ほど戻ってきて食事を取ってる

 「マスター…カズキがすみません。迷い人なので許してあげてください。」

 困惑していたが迷い人でマスターは納得していた。



 「ふ~ん、お前さん面白い物が作れるんだね」

 ガタッっとステラが警戒した

 「おっと悪い悪い、俺だよ。カンカン聞こえて興味が湧いてね。あと約束の『肉』ね」

 森で会ったレイグルだった。ドサッっと10kg位の塊肉をテーブルに置かれた。

 でけぇ…


 「見てたんですか?」

 警戒心剥き出しのステラの横でモグモグ食い続ける俺。

 「良い鍛治師だなと思ってね、俺も作って欲しいわ。コイツより良いのをコレで」

 ナイフと同時にコレでとテーブルにジャラっと金貨が置かれた。5枚ほど


 50万円か…作れる俺は価値が全く分からないので相変わらずモグモグ食ってる、あのイノシシってウマイのかな?とか色々考えている。

 「どうよ?大将?本気で俺に作ってくれない?」

 俺はレイグルの目に執念とも言えるモノを感じたので聞いてみる。

 「何で欲しいんですか?」


 普通は個人の事情に踏み込んでほしく無いだろうから答えないけど『この人は答える』そんな確信があった。


 「来月のギルドランク昇格試験でシルバーに上げてぇんだ、だから頼む!」

 レイグルは頭を下げてくる。

 こういう人は嫌いじゃない。俺みたいな実績もない初心者に頭を下げるヤツなんか世界中を探してもプライドが邪魔していないだろう。


 「失礼を承知でステータスを見せて貰っても良いですか?」

 レイグルは頷いた。見せてもらうために近くに行く。

 「では失礼して…「ステータス」ありがとうございます。っと…」


 《ステータス》

 Lv.20 レイグル・エクトレール

 性別:男

 年齢:18

 種族:虎獣人(ビースト)/白虎

 ジョブ:イェーガーLv5/10

 

 《能力値》

 HP:550

 MP:160

 攻撃:257

 防御:240

 俊敏:409

 魔攻:156

 魔防:170

 知力:150

 幸運:90


 《固有スキル》

 白虎の化身Lv5/100、獣神の加護Lv.Max、獣化Lv3/10


 《スキル》

 スカウトLv6/10、ナイフ使いLv8/10、軽業Lv7/10、、探索Lv6/10、夜目Lv9/10、鑑定Lv6/10、ベルセルクLv3/10、



 いや…レベル高すぎでしょ。今の俺じゃ、さっきの包丁が精一杯だ。

 「あ~…多分今の俺には無理です。」

 「なっ!何でだ!金が足りねぇのか?!」

 思ったよりレイグルのレベルが高くて作っても多分役に立たない。

 多分ステラは気付いたらしく、代わりに補足してくれた。

 「レイグルさん…カズキは昨日冒険者になったばかりよ?多分さっきの包丁が今の限界って意味だと…」

 そしてステラは最後まで言ってから視線をこちらに向けてくる。

 ウンウン頷く俺。そして提案して見た。


 「初心冒険者の俺のレベル上げに利用されて見ませんか?まずはソコに入ってるの作るんで俺の腕を見ません?」

 手始めにレイグルの武器の鞘に入ってる『投げナイフ』を指差したのだった。


 視線が鋭くなるレイグル。

 「…何でここに武器があると思った?」

 「貴方のジョブで自分だったらソコに入れるからでしょうか、懐に入れたら自分に刺さりそうですし」

 何よりフォレストボアに投げたのスキルで見えたからな!俺自身がLv2だから大した実力はないけど刹那の剣技はLv1でも見る事だけにかけては凄いからな!。


 言ってて悲しくなってくる。


 さて本題に…

 「いかがでしょう?雑魚オレを育てて良い武器()を作ってみませんか?」

 レイグルは俺の言葉に唖然としながら笑い始めた。

 「お前さん、余程の策士か本当のバカだな?乗ってやるよ!ステラ、面白いヤツ拾ってきたな」

 


 ステラも若干俺の言い回しに苦笑していたが認めてくれていた。

 「私は鍛冶スキルが凄いのなんて知らずに保護したからね。カズキに会ったのはゴブリンから逃げて全力で走ってたからだし…」


 バカ正直に町を目指したらステラには会わなかっただろう。

 って訳で間違いなく、俺は策士じゃなくてバカの方だ。


 「って訳でレイグルさん、投げナイフ見せてください」

 「レイグルで良いぜ?俺もカズキって呼ぶからな…ホレ」

 鞘の留め具をはずすと4本ずつのナイフが現れた。


 ・ 使い込まれた鉄の投げナイフ (麻痺)

 分類:ナイフ

 攻撃力:30

 大事に使われてきた投げナイフ。使う度に手入れがされている現役の品。麻痺する薬品が塗ってある。

 ついでに大型ナイフ


 ・鋼鉄のハンティングナイフ

 分類:短剣

 攻撃力:70

 ダンジョン産のナイフ型の短剣。2本一対(いっつい)の珍しい一品ひとしなで鋼鉄にしてはかなり攻撃力が高い。

 手入れが行き届いている。


 いまだにナイフしか作っていないので短剣とか見ると作ってみたい衝動に刈られている。

 どうせなら強力な武器を作りたい!と思ってしまうのはロマン故だろう…バカなこと言ってるのは自覚している。

 多分鋼で経験を積まないとミスリルを扱うことも出来ない気もするし、レイグルはミスリル製の短剣がほしいらしく色々聞けた。


 聞いたことが間違えてなければ、ミスリルは魔法の順応性が高いらしくて投げナイフに雷の刻印してメイン武器より強い!って面白い状態に出来るっぽい。

 個人的な趣向が駄々漏れだが、今は鋼で投げナイフ作るからミスリルで作るのはハンティングナイフか短剣だと思う。

 ちょっと残念だ。


 「よし!レイグル!今からスローイングナイフ作る!」

 「スローイングナイフ?投げナイフで良いんだよな?」

 「うん、あと先に謝っておくと後半の方が出来良くなるからゴメン。」

 俺の言葉に苦笑いしていたが全部任せるよ!と言葉を貰った。


 残りの鉄を4つ使ってナイフ8本を作り上げた。1つの鉄で2本作れたのだ。

 もちろん炭粉を調節して叩いて自家製の鋼鉄を作った。


 ・ 鋼鉄のスローイングナイフ×8

 分類:ナイフ

 攻撃力:30~40


 携帯性に優れた威嚇用の投げナイフ。

 薬品を塗りやすく溝が彫ってある。

 無くしてしまう事前提で作られた。


 よし、作っておいてなんだけど…最後の一文はひどい説明だと思った。



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