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神に選ばれた者達のお話【完結済】  作者: KAN
ジェン・ジンの章
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第八話「後日談」

座敷童一族 かつて西の大陸にいた一族であるが、特有の能力を欲しがる豪族たちによって絶滅してしまった。幸福をもたらすと言われている座敷童は魔法陣なしでの瞬間移動をすることができる。豪族が欲しがる理由がここにある。


チャン 座敷童一族の唯一の生き残り。魔法陣なしでの瞬間移動は勿論の事、光属性の魔法を使うことができる。容姿はあずき色で枝垂桜の刺繍が施されている着物を羽織っており、髪はストレートに流している。

 微睡みに塗れて見たのは幼い自分と父親が仲良く長の仕事をやっている光景であった。父親の背中が妙に大きく見えるのは自分の背丈が小さく見えるだけなのだ。

 「ヨウ、長の仕事ってのは大変だろ?」

 「平気だよ、父さん。」

 何気ない会話の中でも父親は次の長になる息子の事を育てているつもりなのかもしれない。それをこの時の幼い自分は何一つ感じておらず、むしろ長の仕事が面倒だなぁと気だるげに感じていた方が高いかもしれない。

 「そう、だるそうな生返事をするなって。な?帰りに美味しい店に寄るからさ。」

 「物で吊らないでよ。」

 「でも食べたいだろ?」

 「…食べたい。朝から植物の根っこしか食べてないから。」

 父親が肴にしているマンドラゴラの燻製。料理が上手くない父親は簡単な燻製のようなものを大陸中からもらっているだけのようで、息子の自分も燻製生活を余儀なくされている。料理は出来なきゃなぁ、と心で舌打ちする。

 「いいじゃねぇか、マンドラゴラ!あの苦味が独特だし、滋養強壮にいいんだからよ!」

 「一日食ってたら害だよ。」

 「ガハァッ!」

 他愛もない話でも少し楽しい。暫しの息抜き程度にもなるし、何よりも父親と会話するのはこの時間だけである。仕事に取り掛かると人が変わった様に真剣になるのだから。果たして、この実直でお気楽な長の次を担えるのだろうかと心配するばかりだ。そういえば、父親が消える前にやっていた仕事といえば…。この山脈の頂上の調査であったような…。


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「…っ、…ぅ。」

 重い瞼を僅かに開いたヨウ。ヨウが見た光景は見慣れた木製の天井が広がっていた。木目をそのまま抉り取ったような木の天井は僅かに樹木の匂いを嗅ぐわせ、生活臭が若干する。

「あっ…。」

 ふと、横に目をやると見慣れない少女が木の椅子に座っている。ストレートな髪は綺麗な流線型を描いて、背中から垂れ下がっている。服装はあずき色の着物で、柄は綺麗な枝垂桜が描かれていた。

「…ここは、僕の家?」

「はい、正確にはジェン・ジンの家です。」

 少女の声音から父親の名前が挙がったことにふと眉をひそめるヨウ。少女は焦った様子もなく、言葉を続ける。

「あなたは私を庇うようにして、風読みのチウニウの一撃を浴びて倒れてしまいました。私を助けるために?それとも私の後方にいた大勢の集落の民と集落ですか?ゼンシャダッタラウレシイデス…。」

 最後の言葉は小さくてヨウの耳には届いていなかったようで、ヨウはゆっくりと答える。

「あの時、咄嗟に先読みの力を発揮した。被害を最小限にするには、あの攻撃を重い一撃で跳ね返すしかなかったんだよ。」

 少女は落胆する。当然の回答をしたと思ったヨウだが、少女の様子に疑問符を浮かべる。

「む、目覚めたのだな、ヨウ。」

「ヨ~~~~ウ!!」

 寝室に突風が巻き起こる。チウニウが登場したのかと彷彿させる勢いのある者がヨウに飛び掛かる。それはガタイがよく、ヨウの身体を強い力で抱きしめて大いに漢泣きをする鬼が現われ、その背後から獣人のライが姿を現す。

「ぐっ…しゅ…き…。くるしっ…。」

「うお~~!!死んだと思ったじゃねぇか~~!!」

「あの程度で死ぬはずがないだろう。力の使い過ぎと出血多量による気絶だな。」

「あ、あの…」アタフタ

冷静にヨウの状態を解説するライ。泣きじゃくる大柄な子ども。窒息寸前のヨウに慌てる少女。その場は一瞬にしてカオスへと成り替わって行ってしまった。


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「えっと…改めまして、私は座敷童のチャンと申します。一応、ヨウさんの義妹にあたります。」

「おい、いつの間にジンは子どもを作ってたんだ。」

「僕に言われても今父さんがどこにいるかもわからないんだから…。どっかで愛人でも作ってたのかな。」

「ヨウ、次にジンを見つけた時は母親の墓前で土下座だな。」

「い、いえ!座敷童一族の養子として、ジェン・ジンに選ばれたんですよ!け、決してやましいことでウマレタンジャ…。」

「あぁ、そこまでは言ってないから大丈夫だよチャン。それで、この長を決める大会に突然来たのは何か父さんにあったってことかな?…そういえば、長はどうなったのかな。僕が倒れた後でなし崩しで終わったぽいけど。」

「安心しろ、長はヨウ、お前に決まったからな。チャンを守っただけでなく、集落の民と集落を身を挺して守ったことが大きかったのだろう。私でもあのような身の挺し方は今の状態では出来ないな。」

「頑丈な俺でも弾き返すっていうのはなかなかなぁ。俺だったら攻撃を粉砕出来る自信はあったけどな!」

「これだから力で推す鬼は嫌なのだ…。」

「あぁ?」

「あ、あの…。」

 話をずらしてしまう同年齢の男衆。

「あ、ごめん。話が逸れちゃったね。父さんに言われてこの集落に来た、ってことでいいのかな?」

「先読みの能力である程度の内容は知っているかと思われますが、そうです。ジェン・ジンの命によって、この集落へと来た次第です。」

「内容としては僕の義妹として集落である程度の暮らしをする、って…父さんは何を考えているんだか…肝心の本人がいないだけで集落は大分混乱していたってのに。」

「先読みしないでください…。それで、ある程度したら帰ってくるとかなんとか…。」

 チャンも詳しくは聞かされていないようでしどろもどろに説明をしていく。チャンの話で有力な話は、行方不明になって死亡とまで言われていたジェン・ジンが生きており、何かをする為に集落を離れているとのことだ。座敷童一族の末裔であるチャンは保護の形でこの集落に来たというのは何かの兆候を察したジェン・ジンなりの配慮なのだろう。

「ということなので、不束者ですがよろしくお願いします。ヨウ兄ちゃん。」

「に、兄ちゃん…。」

「何で獣とヨウに女人がこうも寄ってくるんだよ…。」

「諦めろ鬼。お前には一生来ない。」

「ここでお前の顔をイケメンにしてやってもいいぞ、獣。鼻が潰れて頬がパンパンになったイケメンの顔になぁ!!」

「ほう、鬼族のイケメン顔がそのようなものか。であればそのごつい顔を削ってくれよう。」

「はいはい、二人とも喧嘩はここでやらないでね(兄ちゃんっていい響きだなぁ)」

「…愉快で楽しそうですね。ヨウ兄ちゃん。」

くしゃくしゃの笑顔はその場を和ませるのに十分なものであった。

 まずはお詫びを。仕事の都合上、この五日間執筆に取り組めなかったということをお詫び申し上げます。第九話は明日投稿していきたいと思いますので、ご了承いただきたく存じます。

 第八話を読んで下さりありがとうございました。作者のKANです。初めましての方は初めまして。

 さて、今回のお話は如何だったでしょうか?漸く、皆さんが気になっていた?人物を出すことができました。何故、第七話で瀕死状態であったヨウがここまで回復することができたか。チャンや終鬼、ライの看病があったからこその結果ですね。友情というものはいいですね。では、次回のお話を少し話そうかと思います。閑話休題という形でこのお話の語り手のパートになります。語り手というのは始めのお話に出てきた者です、彼か彼女はこのお話を誰にお話をしているのか?それは皆さんのご想像にお任せします(笑

では、次回のお話でお会いましょう。

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