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神に選ばれた者達のお話【完結済】  作者: KAN
ジェン・ジンの章
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第五話「ライの闘い」

亜人族 人型の種族であるが、能力は多種多様。雪女を始めとした人型の形容をしていれば亜人族として見られる。ジェン・ヨウも亜人族に入るが、『覚り一族』と固定したジェン・ジンがいるので亜人族にカウントはされていない。


フロン 雪女一族代表の女性。ジェン・ジンの仕事で忍びとして活躍していた。


雪女一族 掟として、相手に二択を迫り、否定すれば心中し肯定すれば契りを結ぶといった理不尽な掟が存在している。雪女に本気を見せた輩は忽ち否定するので、雪女一族には悪い噂があり、高嶺の花として見られている。

 「さぁ、ブロックを勝ち進んでいき、準決勝にたどり着いた終鬼選手に続いて!準々決勝!」

 再び舞台は熱を帯びていく。先程まで闘っていた舞台は裏方の活躍により、隅々まで清掃が施され、壊れた物は新しく取り換えられる。裏方の仕事は鬼族と獣人族の力仕事が得意な者、創作物を好む者達が執り行っている。指揮をするのは終鬼とライが選んだ優秀な者で、それはジェン・ジンの仕事を共に行った仲ということもあり、対立する二人の代表の垣根を失くし、武闘会が無事に行われるという確固たる目的を達成するために動いている。当の二人は互いを毛嫌いしていることもあり、あまり関心はしていないようであるが。

 「獣人族代表ライ選手と!亜人族代表!雪女のフロン選手の闘いです!」

 大きな声援と共に二人の選手が舞台へ入場する。一人は金色のたてがみを風になびかせ、百獣の顔立ちが獣人族の頂点に立つに相応しさを思わせるライが白い胴衣を羽織って舞台の中央へと歩んでいく。既にライは臨戦態勢へと入っていた。足はつま先立ちで、目先の得物を逃がさんばかりに鋭い目を細くする。

 続いて入場したのは、亜人族代表の雪女、フロンであった。亜人族は多種多様の妖怪が多くいるが、その頂点に立ったのが雪女一族であった。数々の陰謀や艶やかな事情などが考えられる雪女であるが、策略の他に実力もある。色気をなびかせる雪女でもジェン・ジンの仕事で大陸の至る所を偵察する諜報部隊として暗躍していたという実績もある。フロンは普段着である着物を着ておらず、青白い薄生地のスカーフと黒の忍びスーツという色っぽい服装で現れた。彼女にとってこれが仕事服であるが、周囲からの視線が集まるのは仕方がない。

 「フロン殿がお相手か。不足ない。」

 「私もですよ、ライさん。お互い頑張りましょう♪」

 二人はジンの仕事で知り会い、互いの戦い方も熟知している。どの戦法が相手に通じるかを探り探りで行うしかない中、両者口元に笑みを浮かべる。

 「ほほぅ…。これは楽しめるかもしれんな。」

 解説であるチウニウも興味があるようで、下顎を擦る。

 「それでは、準々決勝!始まりです!」

 銅鑼が激しく鳴る。砂が風に巻かれて踊りだす。両者互いに身動きせず、目を見る。視線がどの方向へ動くかによって、先手が決まるのを分かっているからだ。先手はフロンが切り出した。ライの目を動きながらも空気中の砂と水を凍らせ、苦無に形成する。凍てつく音が聴こえた瞬間、ライは胸元から赤塗の多節棍を携え、向かってくる苦無を粉々にしていく。立て続けにフロンも氷の小太刀を形成して縦に切り掛かると同時に左右から苦無が放たれる。ライは苦無の距離を目測し、前方のフロンの得物を多節棍で牽制した後に、折り曲げられる多節棍で粉砕していく。後方に退けられるフロンは矢継ぎ早に様々な方向から切り掛かっていく。フロン自身が当たらない角度で苦無が飛び交う。

 「どうしたのですか?ライさん。防御だけでは恰好の的ですよ。」

 「フロン殿の攻撃に些か興味があったというだけで、これからよ。」

 興味、というよりは攻撃パターン、速度、距離など変化し続けるフロンの動きを目で追って観察していただけなのだが、フロンの動きは到底の人が目で追いかけられる程のものではない。観客席からはライの周りを雹よりも大きな氷の苦無が飛び交うのとフロンの身体が残像のようにライの周りを動き続けているようにしか見えない者が多くいる。獣人の観客席からはイタチの獣人も混じっており、深く関心している者もいる。

 フロンがライの後方を取る。小太刀の他にもう片方の手には苦無を用いり、ライの背中へと苦無を投げ、再生成された苦無を再び持ち切り掛かる。ライは飛んできた苦無を砕き、フロンに立ち直った。多節棍は数々の氷を砕いてきたか、氷の欠片が突き刺さっている。欠片が刺さることによって多節棍の耐久力が下がる中ライは小太刀と苦無を受け止める。

 「得物がそろそろ壊れそうですよ?得物がなくとも勝てるという自信があるからでしょうが。」

 「無論、この得物はフロン殿に決定打を与えるものだ。そう簡単には壊れない!」

 しかし、狂言も虚しく多節棍は悲鳴を上げ、赤塗の木材が砕け散ってしまった。後方に退いたフロンは笑みを浮かべるが壊れた部分を見て笑みが一瞬にして消えた。木材の中には鉄で出来た頑丈な芯棒が隠れていたのだ。

 「私の得物、多節棍は東の大陸の火山地帯『ヘパイストスの鍛冶場』で生成された鉄を使っている。熱を通しやすい鉄を使うことにより、このような芸もできるわけだ…はっ!」

 ライの目が見開く。体内を駆け巡る気の流れを掌へと集中させ、多節棍へと流していく。気が伝わった鉄の部分から赤くなっていき、次第に他の棍にも伝わり、木材の部分が発火し始める。

 「なっ!?」

 「炎の多節棍…。芸が過ぎたな。」

 氷の欠片が刺さることで鉄の部分まで届き、酸素がいきわたり熱による放火が容易くなるというライの寸法。それに気付けなかったフロンは冷や汗を流す。対し、攻撃が最大の防御と言わんばかりに体内の気の流れを一定に保つライが構えた。

 「くっ!」

 フロンもジンの仕事をしてきた経験の中、炎を使う敵にも遭ってことごとく倒してきた実績を持っている。が、好敵手でもあるライが炎を使ってくるとは思わず、フロンは策を考える。

 「一方的な攻撃は動きやすいだろう。だが、今度は逆だ、フロン殿。」

 ライの姿がフロンの視界から消える。周りを見渡す次の瞬間フロンの視界がぶれる。ライが後方からローキックを横腹に仕掛けてきたのだ。肺から全ての酸素が吐き出されフロンは咽せかえる。続けて多節棍による大打撃。フロンの身体は炎によるダメージもあるのか大きな痣が出来ていく。負けじとフロンも攻撃を仕掛けようと氷を生成するが、周りの温度が高いためか不完全な氷しか出来ず、持っている氷の小太刀も少しずつ溶け出している。

 「くぅ…!(このままじゃ…どうすれば!)」

 「フロン殿。何か策を考えようとしているがダメージを与えられては考えることもできないであろう。」

 女性が攻撃されているということで、観客席は罵声の数々を浴びせるが嗜虐的な趣味を好む者は声援を送っている。これも個性であるのでライは気にしていない。

 「…ふっ。」

 不敵にフロンは笑みを浮かべる。ライは気にせずに攻撃を仕掛けていく。が、多節棍がフロンに当たる次の瞬間。突如として吹き荒れる暴風に多節棍の炎が消し飛ぶ。

 「むっ…。冷気の風、フロン殿の力か。」

 多節棍に視線を向け、フロンを見る。痣は修復され、雪女一族本来の力を引き出しているフロンは青白い着物を羽織っており、周りは凍てつく暴風が吹き荒れる。

 「ライさん、これを貴方に見せたということは雪女一族の掟に従うしかありません!」

 フロンは若干頬が赤みがかっているが、ライは気にせずに文句を買う。

 「いいだろう、私がフロン殿を本気にさせたのだ。仕方あるまい。」

 「い、いいんですか!?」

 「無論だ。」

 元々白い肌のフロンの頬は火が吹くほど赤くなっている。私情を把握していないライは得物を構える。が、フロンは構えを解き、静々とライに歩み寄る。疑問に満ちるライは構えを解かないで、フロンの動きを見る。

 「…雪女一族の掟には二つあります。相手が否定的な答えをすれば共に心中すること、もう一つは肯定的な答えをすれば契りを結ばなければならない…と。」//

 「…え。」

 「…は?」

 ヨウと終鬼。

 「…む?」

 ライは構えを解いていない。が、観客席からは


「「「「「「え~!!」」」」」


 と、驚きの声が瞬く間に広がる。獣人族も驚きを隠せておらず、ライを狙っていた獣人の女性は気絶する者も多くいる。

 「…そ、そうだったのか。その掟を無下にすればフロン殿はどうなるのだ?」

 「追放です…。」

 「…。」

 構えを解き、腕組みをしながら一族の存亡について思慮する。獣人族は掟という規制に縛られていない一族でもあり、相手はどの一族でも構わない。が、掟を知らずに肯定してしまった責任は重い。というよりは雪女一族の繁栄を考えた先人の罠なのかもしれない。

 「…わかった、フロン殿を正式に嫁として迎えよう。些か不本意で結んでしまったのだが。」

 「そ、それはそうなんですけど。ここで言う必要ありますか!?」

 「こ、これは何という事でしょうか!!激しい闘いを繰り広げたライ選手とフロン選手!しかし、本気を見せたというフロン選手の姿は見せかけ。つまり、正装=強さを認めた者への二択を選ばせる行為だったのですね!チウニウ様。これはどう説明すればいいでしょう!」

 「雪女一族は男が生まれん。故に別の種族と契り、繁栄する他ないのじゃ。本気を見せた雪女一族は計り知れないがこの場で繰り広げれば観客にも被害が及ぶ。だからフロンは問うたのじゃ。相当の覚悟をしたのじゃろうが、無事に契りが結ばれたのじゃ。祝う他ないのぅほっほっほっほ。」

 契りを結んだ二人を祝すように、観客席からは無数の拍手喝采が聞こえる。選手控室からも選手達も拍手をする。ヨウは嬉しそうにするが、終鬼は不満そうな顔でそっぽを向いている。腕組みをした手の親指は立っているが。ライは終鬼の態度に含み笑いをし、フロンの前に跪く。

 「フロン殿…フロン。これからは私の妻だ。共に生きていくからにはどのような困難も乗り越えていく。支えてくれないか?」

 「ライさ…いえ、ライ。これからよろしくお願いしますね♪」

 こうしてライは晴れて妻を迎え、準決勝へと勝ちのぼっていった。

第五話を見てくださり、ありがとうございます、作者のKANです。初めましての方は初めまして。

 さて、第五話は急展開なお話でしたがいかがでしたか?このお話を書いている時にドラゴン○ールの武闘会のあのシーンが浮かびまして、ついついライとフロンを結ばせてしまいましたよ(汗

 次回のお話は主人公のヨウの闘いです。終鬼とライも心を躍らせるヨウの闘いとは如何に?

 次回のお話でまた会いましょう。では

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