第三話「長の座武闘会」
夢幻山脈に時折木霊のような不気味な声が聴こえると山脈を抜ける人々は噂をする。山脈に潜むゴーストが泣いている、遠くで子どもが山に挨拶をしているなどなど。後者はなかなか出てこないが、主にゴーストの仕業だと巷ではびこっている。が、決してゴーストだけが泣いている訳ではない、泣いているではなく騒いでいるのだ。夢幻山脈には自殺志願者も絶えないが、その者達の魂を鼓舞する催しが山脈に開催されているとすれば頷けるのではないか?
夢幻山脈にある集落はお祭り騒ぎである。長を決める闘いが開かれる、この広告が集落中に広がるのはあっという間で、集落のど真ん中に闘いの舞台が瞬くまに建設されていく。建設を担当するは、武骨な身体つきをしている鬼族。設計を担当するはしなやかな身体を持ち、聡明な獣人族。宣伝は天狗一族の烏天狗が空から広めている。観客には様々な妖怪の一族が集結しつつあり、遠目からその様は百鬼夜行を思わせてもおかしくないものであった。
「だいぶ観客が集まってきてるね。」
「へへっ、そりゃあここの長がどんな奴になるかってのを見たがる奴がいっぱいいるからな。」
「そうだ。最後まで勝ち残った者こそが長の座を授かるのだからな。皆の信頼を勝ち取るということでもあるのだ。」
舞台裏、選手の控室では、ヨウ、ライ、終鬼が既に身体を休めている。
「俺ら以外に誰か参加するやつはいるのか?」
「代表達は意気揚々としていたけど、自分が出るのは億劫なのはいるよ。結局は権力が欲しいのと一族の復興が目的なんだろうね。」
「浅はかだな。と、なるとその代表は選りすぐりの強者を出してくるかもしれないな。これは腕が鳴る…。」
「とか言って最初からくたばってもらっちゃあ困るぜ、ライ。俺は、お前の顔に一発食らわしてやらないと気が済まねぇ。」
既にメンチをきり始める終鬼。鼻を鳴らしてライは言い返す。
「こちらとてやすやすと顔を殴らせはしないぞ。ヨウ、お前はどうなんだ?」
話をヨウへと向ける。ヨウは飄々としているが、二人の視線に気が付くと雰囲気がガラッと変わった。
「勿論、僕は殴られもしないし、怪我もしない。地面と挨拶するのはライ達がからね。」
「うっは~背中がゾクゾクしてきやがる。ジンの息子なだけある。ここまで啖呵きられちゃあ俺の力が抑えきれないぜ!」
「ふふ、その意気はよしだな。そう言えば我等はまだどのような形式で戦うのか全く聞かされていないのだが…。チウニウから聞いているか?」
「呼ばれたようじゃな。」
控室につむじ風が舞ったと思えば、控室の天井にまで届きそうなほどの巨体な天狗のチウニウが姿を現した。三人はそこまで驚いてはいないようで、チウニウは心でしょぼくれた。
「(´・ω・`)」
「顔に出てるよチウニウ。それで?」
「う、うむ。形式は勝ち残りじゃ。各エリアに分かれて一番上に立った者同士が一騎打ちといったところか。」
「要は勝てばいいってことだろ?なら、さっさと始めようぜ。」
「まぁ待て。お主らに警告すべきことがある…。」
チウニウは神妙な顔をして話だす。三人は一切の笑みを浮かべず、チウニウの言葉に耳を傾けた。
「天狗の警備員が申していたことなのじゃが、どうやら集落に侵入者が紛れているとの話じゃ。」
「侵入者?妖怪じゃないのか。」
「天狗の警備員は追跡を試みたようじゃが、その姿は光が瞬いた瞬間消えたというのじゃ…。」
「瞬間移動の類だね。と、なると西側の大陸にいる魔法使いかもしれない。」
「なんで魔法使いが今になってここにくんだ?祭り騒ぎで事を起こそうっていう寸法かもしんねぇな。」
「推測の域でしか考えられぬが、お主達も警戒は怠らないでおくれ。あと、参加する選手はお主らをふくめて十人足らずといったところか。どの選手も手強いかもしれんから用心するんじゃな。では、わしはこれでお暇しようか。」
チウニウは登場する時と同様につむじ風に乗って控室を後にした。
「ふむ、魔法使いか。我等にも魔法の類は使える者がいるかもしれんが、瞬間移動の魔法となると、該当する者はいないな。」
「俺らのとこもだ。」
「当たり前だ。」
「それはどういうことだ?」
「頭も筋肉な奴らが魔法を使える者などいるものか。」
「あぁ!?てめぇらより西出身の奴が多くいるんだよ。魔法に頼るより力でけりつけた方が漢らしいってもんよ!」
「はぁ…暑苦しい。」
「もういっぺん言ってみろや!!」
「はいはい、喧嘩はそこまで。そろそろ始まるよ。」
終鬼が怒鳴り散らしてから控室には続々と選手達が集まり始め、舞台では大きな銅鑼が鳴り響いた。
「さぁさぁ!皆さまお立会い!これより開催されるはこの集落の長を決める長の座武闘会!形式はトーナメント制!それぞれのエリアにて勝ち残った者が一騎打ちをし、長の座を勝ち取る!シンプルイズベスト!司会は天狗一族の牙がお送り致します。さぁ、張り切っていきましょう!」
「…。」
舞台を囲む観客席の柱の上、見慣れないフードを被った人物が舞台を見下ろしていた。
「…。どうしよう下りれない。」
第三話を読んで頂きありがとうございます。作者のKANです。このお話から読んで下さった方は初めまして。
今回のお話はヨウが切り出した力で長の座を勝ち取る形式の舞台設定ですね。そして、忍び寄るおっちょこちょい。
次回のお話では闘いが殆どを占める形となります。参加する選手は能力は様々なんですが、基本的に日本の妖怪を選出しております。基本的ということは海外のモンスターなども考えておりますが、それは後ほどということで。
では、またお会いしましょう。
…。?ジェン・ヨウの妹はまだか?と…。まぁ、テーマがテーマでありますが、まだ登場しません。もう暫くお待ちください。
では…。




