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神に選ばれた者達のお話【完結済】  作者: KAN
ジェン・ジンの章
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第一話 「長の引継ぎ」

 この世界は人を始め、多くの種族が生息している。ユーラシア大陸と同様の大きさをした大陸「アーク」。アークを真っ二つに切り分けるようにしてそびえ立つは夢幻山脈。この山脈は特殊な霧が常に発生しており、訪れた者は気付けば入って来た道に逆戻りしてしまうという噂もある。特殊な霧が発生している山脈でもあるが、逆に考えれば霧を利用して身を隠すことに卓越した者達も居るということである。その者達は一目を避けてひっそりと暮らすことを望んでいる者であった。人はそれを妖怪と呼ぶようになった。妖怪である彼等は山脈に小さな集落を築いていた。何百人の妖怪がひっそりと暮らす集落では長が必要であった。幾つもの妖怪の種族が名乗りを上げたが、結局は力でねじ伏せる弱肉強食のようになってしまっていた。ここで一つの種族が名乗りを上げた。それは妖怪達の中でも嫌われ者に部類されている「覚り」であった。力がない覚り妖怪でもあったが、長として立候補したジェン・ジンは違っていた。有力な妖怪たちをたちまち退け、見事に長として集落を治めるようになった。不思議と集落の者はジェン・ジンを認めるようになり、統制が成っている。何故彼がこうして統制を取れているのか?それは彼の、種族の能力が関係していた。『読む能力』。心を読む、読心術に長けている種族であり、他の種族の考えている事を事細かに理解することが出来ている点にあった。集落について不満があれば事前に用意する。種族間での争いがあれば妥結案を瞬時に提供する。ジェン・ジンは集落に必要な存在となりつつあった。そして、同種族との女性の間に小さな命を授かった。

 生まれたのは男の子。名をジェン・ヨウと名付けた。ヨウは幼いながらもジンの姿を目の当たりにし、集落の統制する術を身に着けていった。ヨウが齢12になるころにはジンに同行するようになり、ジンの仕事を共にするようになっていく。ところが、突如としてこの集落に悲惨な事が起きる。長であるジェン・ジンが忽然と姿を消したのだ。暗殺されたのであれば遺体が出てもおかしくはないが、遺体すら集落から発見されないのだから、集落にはいないと見てとれる。種族達は長がいなくなったことによって、再び誰が長になるのかを決めることになった。

 「我ら鬼族が統率すべきだ!生ぬるいジンのような統率ではなく、自分の身は自分で守れるよう集落全体で力を養うべきだ!」

 鬼族を治めるは、巨大な体格を漆黒の虎柄の着物に包んだ終鬼が物申す。その申し出にそれぞれの種族の代表達は終鬼が放つ勢いに気圧され、口を閉じるばかり。が、沈黙を破ったのは終鬼に対等に居座る人物であった。

 「ふんっ、野蛮なお前達が統率したら集落が直ぐに崩壊する。ここは獣人族である我らが治めていく。ジンの役に同行した者も多くいる。集落をどうすべきかというのは我らの方に利が適っていると言えるだろう。」

 白色の胴衣に身を包んだ百獣の獣人、ライが異を唱える。

 「あぁ!?獣人族のお前らがやれる訳ねぇだろ!それとも何か?我らと力比べするか?!」

 「だから野蛮だと言ったのだ。お前達がその気であるなら此方も爪を出さずにはいられない…。」

 終鬼緊迫した空気を切り裂くようにして突如会議場に突風が吹き荒れる。両種族手で目を覆い、その場を動けずにいた。会議場の障子を勢いよく開けたのは、赤く立派な鼻を空へと伸ばした天狗一族であった。

 「何をしているかと思えば、以前の争いの続きか?」

 障子を開けた天狗は退き、会議場に足を踏み入れたのは、巨大な図体に歌舞伎者のような豪奢な法被を着た、天狗一族長「チウニウ」であった。

 「チウニウか。埃を飛ばすんじゃねぇ!目が痒くなるだろうが!」

 「ほっほっほ、立派な身体で女々しい事を言うもんじゃなぁ、終鬼。んで、少しは冷静さを取り戻せたか?ライよ。」

 「これはこれは…。随分と遅れたご登場ですな、チウニウ殿。」

 終鬼は目に涙が溜まっており、豪気な鬼とは思えない程だが、毛が埃を取り除きライは冷静を保っていられたに過ぎないがチウニウに対して紳士の対応をする。

 「両者の意見は良く分かる。だが、皆よ。この場に於いて最も冷静でいて物事を判断出来ている者がいるのにお気付きか?儂はその者が長に相応しいと感じるがどうだろうか?」

 皆、左右に座る者同士で顔を合わせるが、もしや自分なのでは?と視線をチウニウに向けるが、チウニウが目を向ける先にその者がいるらしく、チウニウの視線の先に目を向ける。

 「そう、ジェン・ジンの息子。ジェン・ヨウじゃ。」

 向かい側の障子が開けっ放しになっており、庭に続く縁側に足をぶら下げている少年が居た。皆の視線に気付いた紺色の着物を羽織った少年。立ち上がり、会議場へと悠々と足を踏み入れ、空いている真ん中の席に腰を据える。

 「…。終わった?」


第一話 終了

 

皆さんこんにちわ。作者のKANです。第一話を読んで戴きありがとうございます。

今回のお話は主人公であるジェン・ヨウとその父親であるジェン・ジンの紹介とこの世界の大陸の一部の紹介をしたようなものです。

 まず、「アーク」と呼ばれる大陸。この大陸はユーラシア大陸を模した巨大な大陸です。そしてアークを割るかのようにそびえ立つのが特殊な霧を常に発している「夢幻山脈」ですが、夢幻という言葉にしたのは至って単純で、山脈には特殊な霊脈…陰陽道などで言われる鬼道や気の流れが山脈全体に流れており、地面の切れ目から蒸発して出た蒸気が霧になっております。この霧には幻惑効果がありまして、山脈に入っても気が付いたら入った場所に逆戻りしてしまっているようになっております。この霧を利用しているのが妖怪と呼ばれるヨウ達をまとめた分類がひっそりと暮らしいます。ひっそりと暮らしている訳は、夢幻山脈を東西に分かれた二つの地方に適した暮らしが見つからないので、夢幻山脈の地の利を活かして、山脈の一部に集落を築いた、という訳です。そして、集落を築いた妖怪の多種族はその集落の長を決める為に種族間による内争が始まっていたのですが、そこに「覚り」妖怪であるジェン・ジンが名乗りを上げて、見事に頂点に立ったということです。次回はジンがいなくなったことによって、次は誰が長を務めるかという会議から始まります。

 では、次回のお話でお会いしましょう。

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