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149話

 それから、適当にそこら辺の大臣や文官、フォンネール王の親衛隊をしていた騎士や城の門番をしていた騎士、フォンネール王の侍従をしていた世話係のメイドやキュリテス城下に住んでいた民衆からも話を聞いて、俺は大体、事の顛末を把握することができた。

 フォンネール王はどうも、世界征服を企んでいたらしい。




 フォンネールのメイド曰く。

 俺が魔王を倒した頃……つまり、俺を裁く世界会議が始まる少し前。

 その頃から、フォンネール王の様子がおかしくなったのだそうだ。

 フォンネールの地位を高めるのだ、と意気込み、何やら部屋に一人で篭ることが増えたとか。


 フォンネールの大臣曰く。

 世界会議で俺の足を引っ張ろうとしてたあれは、アイトリウスの国力を削ぐ試みであり……それが、『力を与えられる条件』だったらしい。

 あわよくば、俺を捕らえて、動きを封じる……更にあわよくば、捕まえて殺す、ぐらいのことをしたかったんだとか。おっかねえ。


 フォンネールの騎士曰く。

 星屑樹の価値が暴落してから(つまり、俺が暁の樹を作って広めてから)、益々王の様子はおかしくなった。

 フォンネール王家の血を引く者を城に集めては……その者たちは、二度と、城から出てくることは無かったという。

 おっかねえ。


 そして、フォンネールの民衆曰く。

 フォンネール王は昨夜、魔神となった。

 自らの血族を生贄として、魔神となり……世界をフォンネールのものにせんと、魔物を生み出し、世界を明けない闇に閉ざした。


 ……どこで何をトチ狂ってそうなったのかは分からないけれど、これでなんとなく、世界会議でのフォンネールの動きの理由が分かったような、分からんような。

 つまり、あの時点でもう、フォンネール王は錯乱していたのだ。

 世界を我が手に、なんて大それた望みを抱くほどには、ぶっ壊れていたのである。

 その為に、今まで大事にしてきた血族を皆殺ししちゃう位には、ぶっ壊れていたのである。

 あの顔でぶっ壊れてたのかー、そうかー、と思うと、何とも複雑な気分。ついでに、俺もその生贄の1人にされようとしていたと思うと、ぞっとするね。うん。

 人間、過ぎた力を手にするとぶっ壊れちまうもんなのかもしれないね。

 或いは、過ぎた望み、か。




 ……勿論、お話はこれで終了、なんてことにはならない。

 フォンネール王が魔神となった以上、フォンネール王を魔神にした誰かが居る。

 そう。闇の魔物はフォンネール王の仕業だったが、水の大蛇も、その後世界各国で現れた魔物も、フォンネール王の仕業じゃなかった。

 黒幕は確実に居るのである。

 が、残念なことに、その黒幕の正体はフォンネール王しか知らないのである。

 ……本当に、厄介なお爺ちゃんだ。一体何なんだ、このジジイは。

 血族皆殺しにした挙句、魔神なんかになって、誰かの手先になって、世界征服しようとしてたんでしょ?しかも、情報は漏らしてくれないときたもんだ!とんだ迷惑ジジイだなこいつ!

 ……が、しょうがない、一応、聞くだけは聞いてみてやろう。

 フォンネール王を起こす。

「……ここは」

「あ、どーも。フォンネール王陛下改め、魔神になり果てた屑野郎。ご気分は?」

 起きてすぐのフォンネール王は困惑していたが、俺が顔を出すとすぐ、だんまりの構えをとってしまった。

「だんまり?あ、そ。あんたどうせ、死んでも口を開かないんだろうね」

 ちょっと光の剣の刃をちらつかせてみたが、反応は無い。

 まあ、ぶっ壊れてようが馬鹿だろうが、王は王だ。このぐらいの覚悟はしてただろうし。

「ま、いいや。喋る気が無いならそれ相応の処理をされてもらうだけだし。とりあえず、フォンネールはアイトリウスが接収してあげるから安心していいよ、お爺様」

 初めて、フォンネール王が怒りらしきものを表情にちらつかせた。

「フォンネールの民衆もこっちに避難してきたし、丁度いいよね」

 ……ふむ、反応がある。

 という事は、ちょっとここでカマかけてやっても、いいか。

「『魔王』が居なくなれば、とりあえずフォンネールも安全だし。あ、そっか。倒さずに封印しちまえばいいのかな?」

「それをどうしてっ」

 言ってから、フォンネール王ははっとしたように口をつぐんだが、もう遅い。

 ……成程ねー。

 色々と、分かったぞ。

 勇者と魔王の、歴史が。




 勇者アイトリウスは、魔王と立て続けに数度戦っている。

 そしてその度に魔王を殺していたが、最終的には魔王を『封印』することで決着をつけている。

 その封印が数十年に一度解けて、勇者アイトリウスの子孫たるアイトリウス王家の者が『勇者』としてその再封印にあたる、っつうのが今までの歴史だったわけだ。

 ……ここで俺、重大な勘違いをしていた。

 そう。勇者アイトリウスが倒しまくってた魔王。

 あれって、『同一人物じゃなかった』のだ。


 俺ってばてっきり、勇者アイトリウスが魔王を殺して、で、殺された魔王がなんらかの方法で蘇って、また襲い掛かってきた、ってなもんだと思ってたんだよね。

 が、それは間違い。

 ……今回の事を考えれば、勇者アイトリウスが魔王を殺す度、『新たな魔王』が生まれていた、と考えるのが妥当だろう。

 そう。アイトリウスの封印は、魔王の復活を封印するためのものではなく、新たな魔王の誕生を封印するためのものだったのだ。


 そして、俺が魔王を殺した今、また新たな魔王が誕生した。

 それが、フォンネール王だ。

 ……その割には弱かったって?うん、俺もそう思う。

 どー考えてもあれって、魔王、ってレベルに達してなかったんだよね。うん、どう考えても、あれ、只の魔神。

 理由はいくつか考えられる。


 まず、フォンネール王が魔王になるための『生贄』が足りなかった。

 だって、フォンネール王家の血を全て集めようとしたなら、明らかに足りてないもん。

 そう。俺である。

 俺が生贄にされなかった以上、フォンネール王の魔神化もとい魔王化は中途半端にしか完成しなかったと考えられる。

 だからこその、あの弱さ!そう考えると可哀相なかんじ。


 次に考えられる理由は、フォンネール王そのものが弱かった。

 いくら強化しようにも、素材が悪かったら何やっても無駄である。

 あのお爺ちゃんが強くなるのってどう考えても無理だし、そう考えると、魔神になれたってだけでもあっぱれなのかもしれない。


 更に考えられる理由として、時間が足りなかった、ってのもあるかも。

 じっくり魔力を蓄えて強くなる時間も無く、ほとんど生まれてすぐにやられちゃったからね。

 そう考えると、つくづく可哀相なお爺ちゃんである。


 そして最後に考えられる理由は、『魔王を生み出す何者かが全力を発揮してない』。

 寝ぼけてるか、本気を出す気にならなかったか、或いは。

 ……想像は尽きないけれど、1つ、言える事がある。


 このままだと俺、『新しい魔王誕生を防ぐ封印を破っちゃった』という、とっても不名誉なことになってしまう!




 俺は嫌だぞ、後世にまで不名誉を語り継がれるのは!

 俺は強く賢く美しい王として後世に名を残すの!功績は多けりゃ多いほどいいけど、不名誉なんて1つだってあってはならない!

 ……となると、俺は不名誉回避のために2つの手段を選ぶことができる。


 1つ目は、魔王封印。

 この哀れなお爺ちゃんを封印して、また歴史を繰り返す。

 ……ただ、どう考えても、俺が殺した魔王よりも格段に弱いから、後世の勇者は楽できるね。うん。

 そして、2つ目は、魔王(仮)討伐。

 当然、このよわよわお爺ちゃんを殺して満足することでは無い。

 全ての元凶。

 魔王を作っている奴……いいや、もう『大魔王』とでも呼んでやろう。

 そう。大魔王を討伐することである。




 そして、当然ながら俺が選ぶのは後者!

 スカッとして気分が良い方を選ぶのは当然だよね!

 ……しかし、魔王を作る奴が居るならば、そいつはどれほど強いんだろうか。

 ちょっと零した魔力であの水の大蛇ができちゃう位なんだから、相当強いはず。

 俺が倒したあの魔王なんか目じゃないぐらい強いはず。

 ……ということは、膨大な魔力を持っているって訳で……。


 ……そいつから魔力奪えたら、俺、最強になれるなあ……。


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