第4話 終わり
朝、昌樹は学校にいた。
誰よりも早く、学校に着いていた。
──犯人は、このクラス全員である。
昌樹の結論は、そこに至った。
こうすれば合点がいく。
誰も見ていない、なぜならば、全員が犯人であるからだ。
口裏を合わせれば、どうとでもなる。
問題は、これからの過ごし方である。
この事実が昌樹の中で浮かんだ以上、平然と過ごすことはできない。
そんなことを考えながら1人でいたが、やがて教室が開いた。
そこにいたのは、明だった。
明は、昌樹の顔を見るなり驚いたような顔をしていたが、
「よう、昌樹。……今日は早いんだな。」
いつものようにニッコリと笑って言った。
だが、昌樹の方は笑顔になれなかった。
「なあ、明。」
いつもとは違う雰囲気を感じ取ったのか、明の顔から笑いが消えた。
「なんだ。」
「事件の犯人さ……、お前らだろ?」
明が目を丸くした。
昌樹は、明がどう言い訳してくるだろうと考えていたが、
「ああ、そうだよ。」
明は何の言い訳もせず、そう答えた。
こわばっていた昌樹の顔は、泣き顔となった。
悔しかったのである。
疑いつつも、明のことは信じていたかった。クラスが敵でも、明だけは味方なんじゃないかと淡い期待を持っていた。そんな自分が恥ずかしくなったのだ。
そのとき、
「明、今回も名演だったな。」
教室のドアが開いた。そこには、昌樹と明を除くクラスメイトが全員立っていた。もちろん、鈴木もいた。
その中の1人が、ずかずかと教室に入ってきた。そして、昌樹の前で立ち止まった。
「どう?素晴らしい役者っぷりだろ、明は。」
「やめろ!」
明が怒鳴った。
「どうした明、友達ごっこの熱演はもうそこまででいいぞ。」
茶化すように昌樹の目の前にいた男が言った。
「もういいだろ……、昌樹はそこまでにしといてやれよ……。」
明の語尾が弱くなっていった。
「ふうん、まあ、いいけど。それじゃあ、これからも宜しくね、ま・さ・き・君。」
昌樹はたまらず教室を飛び出した。外にいたクラスメイトなんて無理矢理おしのけ、走って去っていった。
恐らく、朝のチャイムが鳴っているだろうという時間。
昌樹は、とぼとぼと家に向かって歩いていた。
もう嫌だ。あんなところ行きたくはない。
明だけでも、信じていたかった……。
最後の様子を見るからに、いじめには非協力的であったのだろう。
だが、それすらも演技かもしれない。今となってはどうでもいいが。
──最初に明がおにぎりをくれたとき、あのとき明の腹は音を立てていたが、そんなことを昌樹は知る由もなかった。
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