表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
弁当事件  作者: 万々万々
4/4

第4話 終わり

朝、昌樹は学校にいた。

誰よりも早く、学校に着いていた。


──犯人は、このクラス全員である。


昌樹の結論は、そこに至った。

こうすれば合点がいく。

誰も見ていない、なぜならば、全員が犯人であるからだ。

口裏を合わせれば、どうとでもなる。

問題は、これからの過ごし方である。

この事実が昌樹の中で浮かんだ以上、平然と過ごすことはできない。


そんなことを考えながら1人でいたが、やがて教室が開いた。

そこにいたのは、明だった。

明は、昌樹の顔を見るなり驚いたような顔をしていたが、

「よう、昌樹。……今日は早いんだな。」

いつものようにニッコリと笑って言った。

だが、昌樹の方は笑顔になれなかった。

「なあ、明。」

いつもとは違う雰囲気を感じ取ったのか、明の顔から笑いが消えた。

「なんだ。」

「事件の犯人さ……、お前らだろ?」

明が目を丸くした。

昌樹は、明がどう言い訳してくるだろうと考えていたが、

「ああ、そうだよ。」

明は何の言い訳もせず、そう答えた。

こわばっていた昌樹の顔は、泣き顔となった。

悔しかったのである。

疑いつつも、明のことは信じていたかった。クラスが敵でも、明だけは味方なんじゃないかと淡い期待を持っていた。そんな自分が恥ずかしくなったのだ。

そのとき、

「明、今回も名演だったな。」

教室のドアが開いた。そこには、昌樹と明を除くクラスメイトが全員立っていた。もちろん、鈴木もいた。

その中の1人が、ずかずかと教室に入ってきた。そして、昌樹の前で立ち止まった。

「どう?素晴らしい役者っぷりだろ、明は。」

「やめろ!」

明が怒鳴った。

「どうした明、友達ごっこの熱演はもうそこまででいいぞ。」

茶化すように昌樹の目の前にいた男が言った。

「もういいだろ……、昌樹はそこまでにしといてやれよ……。」

明の語尾が弱くなっていった。

「ふうん、まあ、いいけど。それじゃあ、これからも宜しくね、ま・さ・き・君。」

昌樹はたまらず教室を飛び出した。外にいたクラスメイトなんて無理矢理おしのけ、走って去っていった。


恐らく、朝のチャイムが鳴っているだろうという時間。

昌樹は、とぼとぼと家に向かって歩いていた。

もう嫌だ。あんなところ行きたくはない。

明だけでも、信じていたかった……。

最後の様子を見るからに、いじめには非協力的であったのだろう。

だが、それすらも演技かもしれない。今となってはどうでもいいが。


──最初に明がおにぎりをくれたとき、あのとき明の腹は音を立てていたが、そんなことを昌樹は知る由もなかった。

ご閲覧ありがとうございました。

ご意見ご感想などありましたら、お気軽にどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ