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愛を知らない私とゲイな君  作者: 積木 そら
3/10

蓮とイヴ

「イヴっ…イヴ大丈夫っ?!」

「イヴ?おい、なんだよ客じゃないのか?」


俺に殴られぶっ倒れた男に帰宅した海鈴みれいは慌てて駆け寄った

「蓮…なんでこんな酷いことっ…」

ただでさえ猫みたいにつり目の瞳は怒りで余計つり上がる

「ドア開けたらいきなりコイツがいたんだよ、おまえ最近ヘンな客に付きまとわれてるって言ってたからてっきり…」

「イヴは客なんかじゃないよ!蓮、イヴをソファに運んで。手当しなきゃ」

「おい、客じゃなかったらコイツなんなんだよ、ってか一発殴ったくらいで大袈裟な…

言いかけて口を噤んだ。海鈴が冷ややかにこちらを睨みつけている

「わぁーかったよ、運ぶよ、俺が悪かったよ」



身長は俺と大差ない180cmあるかないかって感じだが

「軽っ…ってか細…何コイツ栄養失調…?」

男とは思えない軽さ、女みたいに華奢だ。

「イヴっ…イヴ大丈夫?!血が出てるっ、どうしよう救急車…」

「んな大袈裟な、頭壁に打ち付けた時に擦りむいただけだろ」

「最低っ…そんな事したの?!」

「落ち着け、落ち着けって…」

子供みたいにポカポカと俺を叩いてくる海鈴を何とか宥める。 

「おらっ、起きろ…」

ペチペチと男の頬を叩くと海鈴が思いっきり俺の頭を叩いた。

「いっ…何すんだよおまえは…」

「うぅ…」

ソファに横たわる男は小さく呻いてゆっくりと瞳を開けた

「イヴっ、平気?!大丈夫?!」

「………椎葉…ちゃん………」

「イヴっ…良かった…」

海鈴に抱きつかれそいつは慌てて上体を起こした

そして俺と目が合った瞬間、海鈴を俺から守るように体勢を変えた

「椎葉ちゃん、下がって…」

「イヴ…ごめんね…この人は…その…私の…」

何とも申し訳無さそうに海鈴が切り出すと男は俺と海鈴を交互に見る

「え……まさか……彼氏とか……?」



「まぁそんなとこだな」

「それはないから」




2人ほぼ同時だった。

「蓮、ふざけないで。イヴ、この人は私の兄みたいな人で子供の時同じ施設で育ったの」

「施設………?」

なんとも間抜け面の男に俺は吐き捨てるように言った

「親に捨てられたガキ共が集まる施設だ」

少し驚いた表情を見せ海鈴と俺を交互に見た


「とりあえず…イヴ、ケガはどう?まだ痛む?」

「え、大丈夫…平気…それより、親に捨てられたって…」


海鈴は苦笑した

「話すと長くなるから…それに楽しい話でもないし…」

「あ…ごめん…」

「蓮、イヴに何か言うことあるでしょ?」

急に俺に詰め寄って眉をしかめてジッとこちらを見た可愛い妹(のような存在)にはお手上げだ

「…悪かったな、おまえのこと美鈴のヘンな客かストーカーかと思ってつい…殴って…」

「え、あ…いえ…大丈夫です…ちょっと、驚いたけど…」

そいつはそう言って困ったように小さく笑った

「っていうか、客じゃなかったらおまえは一体何だ?」

「拾ったの。24日の夜に。だから名前はイヴ」

まるで猫でも拾ったかのような言いぐさだ。

「海鈴、おまえ得体の知れない男を部屋に入れてもしもおまえに何かあったら…つってもおまえ女みてーに細っこいな…色も青白いし…」

イヴと呼ばれた男の腕をヒョイと掴んで持ち上げてみる

「こんなひょろっちいの相手だったら海鈴がやられる心配ないか…」

「大丈夫よ、イヴはゲイだから」

「っ…」

慌てて掴んだ手を離した

目の前の男はやや顔を赤くしてる

「いやいやいや何だそれ待て、可愛い妹がゲイと一緒に住んでるって…おいおいおい、そしてなぜ顔を赤らめる」

「イヴ、ひょっとして蓮みたいなのがタイプなの?」

「え…いや、全然っ…」

「おい殺すぞ」

まぁタイプだと言われても厄介だが。

「香水が…その、好きだった人のと一緒で…」

「明日から別の香水にするわ」

「もぉ蓮、意地悪いこと言わないで。あはは、ゲイとノーマルとエイセクが集まったね」

海鈴が苦笑しながらそういうとイヴは不思議そうな顔をした

聞き慣れない言葉を耳にしたからだ

「おまえはよく笑いながら言えるな、お兄ちゃん悲しいよ」

「えー、だってホントのことじゃん」

「エイセクって…何…?」


「エイセクシャルの略、誰も愛せないってこと。そもそも愛自体が何なのか分からない…誰かに特別な好意を抱けない…」


海鈴の言葉にイヴは驚いた表情を浮かべた

「なんで…?」

なんとも間の抜けた言葉だがあまりの驚きにそんな言葉しか出なかったのだろう

「じゃあなんでテメーは男が好きなんだ?」

「え…と…それは…分からない…」

「だろ?俺だって何で女を愛せて男を愛せないかなんて説明出来ねーよ」

「エイセクシャルなんて言葉があること自体、俺初めて知った…ごめん、無知で…驚いてつい…」

「ま、大抵の人間にとって聞き慣れない言葉だろ。」


なんとも言えない空気が流れたが海鈴がハッと何かに気付いた

「わっ、、、これ、イヴが作ったの?」

ダイニングテーブルに並べられた料理に目をキラキラさせている。

「あ、うん、、、寒いから鍋が良いかなって、、、椎葉ちゃんの好きなものとか分からなかったからテキトーに作ったんだけど、、、食べれそう、、、かな、、、」

海鈴は首を縦にブンブンと振った

「食べたい!美味しそう!イヴすごい!食べよう食べよう!ほら二人とも座って座って」

久し振りに海鈴の子供のような笑顔を見た気がした。

目の前の料理に夢中な妹を放っておいて俺はイヴの横の席に座った。

「おい、おまえ」

「え、、、あ、はい」

「素性の分からない奴を海鈴の部屋には置いとけねぇ、、、おまえが一体どこのどいつで何モンなのか取り敢えず聞かせろ」

イヴは少し俯いたまま小さく口を開いた



「今は身元を証明出来るものは何も持ってないけど、、、僕の名前は杠 ゆずりはかける、、、一応、、、画家です」


「「画家っっ?!」」


俺と海鈴は同時に聞き返した。

「え、何画家って、、、ピカソ的な?」

「この時代に画家って、、、イラストレーターとかじゃなくて?」

二人の食い気味な質問にイヴは苦笑する

「正確には、、、画家の卵っていうか、、、修行の身で、この世界じゃ有名な人の元で

「え、世界?ゲイの世界?」

「いや芸術の世界だろ。さっきから何だよピカソとか、、、海鈴おまえはちょっと黙ってろ」

ウチの妹は残念美人でやや学が足りない。


「有名な画家の先生の元で弟子として働いてた、、、でも色々あって逃げ出して、、、行く場所なくてヤケクソになってた時に椎葉ちゃんに会って、、、」


「これからどうするつもりなんだよ」

「、、、、取り敢えず何か仕事を見つけようと思う、色々あって前いた場所には戻れないから、、、」

「イヴ、ずっとここにいなよ!仕事ならさ、、、蓮がなんとしてくれるよ!蓮は新宿2丁目で幾つかお店経営してるの」

「おい簡単に言うな、俺は雇われ経営者だ、、、まぁでも知り合いのバーで人手が足りないって言ってたな、おまえのその見た目、、、客受け良いだろうし声掛けてやるよ」

翔は俺のその言葉に少し驚いたような顔をした。

「なんだよ、、、」

「いや、、、意外に良い人だなと、、、」


「言ってろ。」


煙草を取り出し早速知り合いに電話を掛けた。

海鈴が鼻を摘まんでバルコニーで吸えとジェスチャーする。


窓を開けるとひんやりとした空気が身にしみた。

「あ、もしもし?久し振り、、、実はさぁ、、、」

室内に目を向けると海鈴と翔が楽しそうに鍋をつついていた。

海鈴が俺以外の前であんな風に笑うのを久し振りに見る。


まぁゲイなら海鈴にとって害は無さそうか、、、


とは言っても暫くは様子見だな。







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