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愛を知らない私とゲイな君  作者: 積木 そら
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12月29日

イブの日に僕は天使に拾われた


いや、天使みたいに綺麗な女の子だ


拾われて直ぐ僕は高熱を出し、彼女の部屋で丸々4日寝込む事になり今日で5日目の朝を迎える


熱を出して直ぐに彼女は僕を病院へ連れていこうとしたが断った。僕は財布も無いし保健証も無い。

しかし半ば強引に連れて行かれインフルエンザだと診断された。

どおりで…関節が痛むわけだ…

全額自己負担の随分な額の医療費を顔色一つ変えず彼女は払ってくれた

コートに入っていたクシャクシャの金で。






12月29日








「おはようイヴ…今日は体調どう?」

僕が眠る寝室に眠そうな椎葉ちゃんが入ってきてサッと窓のカーテンを開けた

柔らかな日差しが差し込む。

「ん…おはよ……うん、もう…平気っぽい…」

上体だけのっそり起き上がった僕の額に彼女はなんの躊躇もせず自分の額を合わせた

(近いな…)

「ホントだ、もう熱くないね」


椎葉ちゃんは僕をイヴと呼ぶ

イヴの日に拾ったから

勿論本名じゃない


椎葉ちゃんも本名じゃない

源氏名らしい

出会って直ぐに風俗の仕事をしてると聞かされた


出会って間もない僕にとんでもない秘密を打ち明けてくれたから僕もつい自分の性癖を言ってしまった


椎葉ちゃんは特に驚きもせず

「じゃあイヴに犯られる心配はないね…安心だね」

と呟いた



出会って直ぐ僕は寝たきりだったし椎葉ちゃんは毎日仕事だったからあまりゆっくり話をする機会がなかった

今日も昼過ぎに椎葉ちゃんは仕事に行ってしまった

リビングの机の上には椎葉ちゃんが好きに使ってと置いてった数枚のお札

「クシャクシャだなー…」

スマホと財布…“あそこ”に取りに行きたいけど…


「今更戻っても殺されそうだなー…」


それにしてもこの部屋…

若い女の子の部屋とは思えない程、飾り気がない

生活に必要最低限のものしかない

都心の一等地のタワーマンション高層階、やっぱ風俗の仕事って儲かるんだなー…


冷蔵庫の中には酒と水だけ

キッチンには山積みのレトルトやインスタント食品

椎葉ちゃんは料理は一切しないと言っていた


「調理器具は…一応一通りのものはあるな」


使った痕跡の無い袋や箱に入った新品の鍋やフライパンその他諸々がシンク下の収納スペースに仕舞われていた


引っ越したばかりなのだろうか…

まるで誰かが彼女のためにこの部屋を提供したような…

ひょっとしと風俗の寮とか…


「流石に寮で高級タワーマンションはないか…」


独り言が虚しい


体調も良くなったし椎葉ちゃんにお礼もかねて部屋の掃除して夕飯でも作るか










部屋の隅から隅まで徹底的に掃除してクシャクシャのお金と預かった合い鍵を握り締めて部屋を出た


「いってらっしゃいませ」


マンションのエントランスには受付がありコンシェルジュが笑顔で僕に挨拶した

「…あ、あはは…いってきます」


流石高級タワーマンション、ホテルみたいだ。


あ…スーパーの場所知らないや…


一旦引き返してコンシェルジュのお姉さんに近所にスーパーがないか教えてもらった

タクシーを手配するか訪ねられ慌てて断った

「歩いてくんで。大丈夫!」

まるで笑顔が顔に張り付いたようなお姉さんだ。


そういえば椎葉ちゃんは全然笑わない…


「美味しい料理作ったら笑顔になるかな…」


料理には自信がある

今まで何度かノンケの男と付き合ったが胃袋を掴むってことは恋愛において超重要なのだ。

まぁ…あまり付き合いは長続きしなかったけど…


「椎葉ちゃんの好き嫌い分かんないしなー…どうしようかな…

寒いし鍋とか良いなー…」










渾身の出来だ。

目の前に広がる料理達。どれも自信作だ。

あとは主人が帰宅するのを待つのみ。

「椎葉ちゃん早く帰ってこないかなー…」


ここにいる間は毎日料理を作ろう

酒しか入ってなかった冷蔵庫も先程の買い物でかなりパンパンになった。

「今日は鍋にしたから明日の朝は雑炊にしよう」

年末だからかどのチャンネルもバラエティの特番だ


ガチャン…


と玄関から音がした

「椎葉ちゃん帰ってきた」

ソファから飛び降りて急いで玄関へ向かった


「おっかえりー!あったかい塩ちゃんこ鍋作って待っ…て…あれ…」


玄関にいたのは椎葉ちゃんじゃなかった。


パッと見ホストみたいな格好の男が不機嫌そうな顔でこっちを見ている


「誰だテメーは?」


恐っ…

「え…あれ…椎葉ちゃんは…」

「椎葉?あぁ、頭のイカれた客か…最近アイツ付きまとわれてるって言ってたしな…テメーどうやって入った?」

ジリジリと近付いて来るその男に僕は後退りした 

「ちょっと…待って下さい…僕は



そう言い掛けた次の瞬間、鳩尾に激痛が走った

「がはっ…」

殴られたのだ

立っていられず両膝を床に着いた


(いってぇ………マジ…か……)


間髪入れず髪を掴まれ頭を壁に打ち付けられた

「っ……」

「変態野郎、答えろよ…どうやって入った?」




何で…こんなことに…



「イヴっ…!!」



男の背後で聞き慣れた声が聞こえた

「椎葉…ちゃん…」



安堵したせいか僕の意識はそこで落ちた。












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