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過去からの手紙

作者: 山石 光軍

 俺がその手紙を見つけたのはとんでもない偶然だった。

 文化祭の準備のためによくわからない教室に机を取りに行き、疲れからたまたま椅子に座って休憩し、気の迷いで引き出しの中に手を突っ込んだら、奇跡的に引き出しの上にセロハンテープで張り付けられていた紙を見つけた。 なんという偶然だろう、奇跡的だ。

 好奇心からセロハンテープを取り、その紙を手にするのはこの状況なら当たり前の事だろう。

 その紙は便箋だった。 勿論、封筒の中には一通の手紙が入っていた。

 封筒からその紙を抜き出した時点で読まないなどという選択肢はやはり俺には無かった。

 手紙を開く前に、一つの文が書いてあった

 『一人の時に読め』

 この文字をみて思わず苦笑する。

「学校で一人の時って、やっぱりこれは運命かなんかなのかな」

 独り言すら呟きたくなる。

 この空間には、今俺一人だ。 奇跡の連続にさらに奇跡が連なった。

 カビが生えた紙に時代を感じる。

『初めまして、これは過去からの手紙だよ。

って、あれ? もしかして私今未来に影響してる? 凄く凄い事してる?』

 かわいらしい便箋には丸文字でそんなような事が書いてあった。 女子とまったく交流が無いわけでもないが、流石にこんなテンションの手紙を読む気は無い。

 が、この歴史を感じる手紙の物珍しさから、やはりこの手紙を読み続けたいという好奇心が勝った。

『何から書けばいいのかな? もしかして、未来って文字とか変わってたりしないよね?

変わってたら完全に書き損だなぁ、まあいいや。 別にこんなものただの暇つぶしなんだし』

 暇つぶしって言いやがった、未来の俺らに向けて手紙を書いたって事は読者を意識してるんだよな? 読者に対してこいつは暇つぶしってほざいたのか? 勘弁してくれ、読む気が殺がれていく。

『さぁて、では本題に入ろうか。

実は私、魔法使いなんです♪』

 思わず紙を握りつぶしてしまった。 なんだこの手紙は、なんであんな所に隠した。 上げて下げられた、本当に意味がわからない。

 もう充分頑張って読み進めたよな? これ以上読み進める必要無いよな? なんて考えながらもクシャクシャにした紙を広げて続きを読みだした。

 全部読んでくだらなかったら燃やしてやる。

『魔法使い、なんて言葉より魔法少女の方が可愛らしいかな?』

 知らねぇよ、決めてから書けよ。 なんで隠すのにはセロハンテープまで使ったくせに書きだしたらここまで考えなしなんだよ。

『さて、私の事を話そうか。

私は机が他の学校に持っていかれてたり廃棄処分先で見つかったりしてない場合は私は君の先輩で間違いないよ、さあ敬って。 敬語だよ、先輩には敬語、これ常識だよ?』

 一回一回気に障る文章を書きやがって。

『さて、では先輩からのお話だよ。

私、ついさっき告って振られました。 テヘペロ☆』

 …………多分テヘペロって言葉が流行る前に書かれた手紙だ、これ。 流行を先取っている、なんだこの無駄な才能。

 せっかく本題が進んだのに話題が頭に入ってこない、真面目に話すつもりあるのか?

『いやぁ、思わせぶりな態度取ってたから告白すればいけると思ったんだけどなぁ。

ま、そんな酷い目にあったんだ。 自分が不幸になったんだ、魔法少女が動く理由が出来たよね?』

 いや、知らない。

『という訳で、ここまで読んだ君にとっておきの魔法だ。

先輩から、そして魔法少女からのとっておきなんだ、喜んで受け取って欲しいな。


 君の恋が成就する魔法をかけた。


おっと、今すぐ駆けだして告白しようなんて思わないでね? しっかりとしたルールがあるんだ、最期まで読んでよ。 ここまで我慢してくれたんだから』

 気付くと、凄く集中して読んでいた。 まったく、自分も現金な奴だ。

『私が告白したのは、文化祭の二日目なの。 つまり、魅力的な私が振られるぐらい文化祭の二日目ってのは恋愛に対して厳しいみたい』

 お前に魅力が無かったから振られたんじゃないか? やっぱり、真面目には読めない。

『だから、文化祭の二日目に告白すれば叶う魔法をかけたよ』

 お前、だからって言葉の使い方わかってるか?

『方法を言うとね。 まず、好きな人がいるよね?

あ、好きな人がいない人にはこんな魔法はかからないから諦めてね?』

 諦めなくていいみたいだ。

『好きな人と、仲良くなって。

話して、笑って、仲良くね?

それを続けて、文化祭二日目まで、周りの目なんて気にせずにね』

 どこが魔法だ、どこが。

『私の魔法は、君をやる気にさせる魔法だよ。

私の仇、ぜひともお願いね~


             追伸 この手紙、一回しか効果無いから読み終わったらすっぱり燃やしてね~』

 なんだったんだ、この手紙。

 わけがわからない、楽しくも無い、ひたすら人の神経を逆なでする。

「ハハッ、ふざた魔法だよ、まったく」

 さて、机運びに時間をかけ過ぎた。

 さっさと準備を終わらして、アイツとお話でもしに行くか。

 ついでに、つまらない後日談。

 手紙は燃やさず土に埋めた、このご時世紙を燃やすのも面倒くさい。

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