[第八話 弓エースの憧れは元陸上エース!? 二結び、失敗の兄と成功の妹。]
…や……いや…
やめて!…やめろってば!…
痛い!…やめて先輩!!…
痛い…!?
イタイイタイイタイイタイイタイ
イタイイタイイタイイタイイタイ
イタイイタイイタイイタイイタイ
イタイイタイイタイイタイイタイ
イタイイタイイタイイタイイタイ
イタイイタイイタイイタイイタイ
飛岸「わああああ!!!
…あ、あれ…?」
飛岸は悪夢から
汗ビッショリで目を覚ました。
まだ身震いがする…
無意識に大声を出したせいか
喉がズキズキ痛む。
不意に自分の膝をさする…
普通に動かせるし、
怪我もなく正常だ。
染好「飛岸!!大丈夫!?」
里座「ぜぇぜぇ…飛岸!」
飛岸「染好?里座も…」
意識がハッキリしてくると、
そこが教室である事に気がついた。
みんな心配そうに飛岸を見ている…
野次馬までできた。
飛岸「あぁ…私いきなり大声で
叫んじゃってたのかw
ごめんみんなビックリさせちゃったねw」
染好「と、とりあえず汗拭こう。
ほらハンカチ。」
飛岸「ありがとw」
里座「一体何があったのですか?」
飛岸「ちょっと…悪夢を見ちゃってさ。」
里座「悪夢?」
「悪夢」、それを聞いた
飛岸のクラスメイトは騒ついた。
的田 射が
どうたらこうたら…
染好「なんかみんな的田射が
どうたらこうたら言ってるけど…」
飛岸「!!」
的田射、それを聞いただけで
飛岸の背筋は凍りついた。
飛岸「…2人には1度ちゃんと
話しておかなきゃね。
今日のお昼休み、
またいつもの場所に来れる?」
いつもの場所…
そこは3人にとっては
おなじみの場所になっていた。
染好「いいよ!
今日はみんなで食べれる物
持って来たから行きたいと
思ってたんだ!」
里座「わかりました、
お昼休みにまたあそこに
行けば良いんですね。」
飛岸「ありがとね。」
汗を拭いてふぅっと息をつく飛岸。
…それを心配そうに見る生徒が1人いた。
?「………?」
ーーーーーーーーーーーーー
?「………。」
その生徒は3人の後を付けた。
元々影の薄く静かだった彼女は
尾行が無意識のうちに上手く出来た。
距離を離してトコトコ歩いていると、
3人の行動がコソコソとなった。
?「………!?」
不意に、3人の姿は
廊下の影に消えた。
?「!」
思わず走って廊下の影に来ると、
そこに3人の姿はなかった。
?「………。」
諦めてその場を後にしようとすると…
キィ…
?「?」
立ち入り禁止の扉が鳴った。
…普段は誰も触れない場所なのに、
その扉は空いている。
3人はこの時、偶然鍵を
閉め忘れていたのだ。
音を立てないように
恐る恐る扉を開け、そして閉める。
短い階段をそっと上がると、
また扉があった。
扉の隙間から外を除くと、
そこでは先ほどの3人が
仲良くお昼を食べていた。
?「飛岸さん…」
今日の3人のお昼ご飯は
染好は唐揚げ棒とパン。
また唐揚げかw
飛岸はチキンステーキ丼。
お前もかww
里座が手作りのサンドイッチ、
具の手の混んでいること。
染好「あれ?里座は
お弁当じゃないんだ。」
里座「句お姉様の残り物を
頂いたんです。
朝起きたらこれを食べるようにと
ちょっと強引に渡されて…」
染好「あらら…
(残り物がそんなキレイに
包まれているとは
思えないけど…w)」
里座「飛岸は今日も丼物ですか。」
飛岸「千切りキャベツも入ってるよ!
タレと合うんだわこれがw」
そんな感じで楽しく話し込む様子を、
とある生徒は扉の影から
あんぱんを食べ、
牛乳を飲みながら眺めている。
隣り合った2つのポニーテールが
隙間風に揺れている。
?「……楽しそう。」
3人…いや4人は食事を終えると、
話は本題に入っていった。
ふと、飛岸の表情が曇り、
目から光が消えた。
…飛岸の…トラウマだ。
ちょっと震えていたが、
大好きな親友のため
精一杯思い出しながら語る。
飛岸「…一年前、私がまだ
陸上部で活動してた時の話さ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一年前、染好達の学校の
グラウンドにて…
よ〜い……パァン!
陸上部は炎天下の中、
今日も活動していた。
新人の飛岸は驚異的な早さを見せる
。
顧問「はっや!?江戸すんげぇな!」
飛岸「ありがとうございます!」
新人が走り込みの後の
100m走でダウンする中、
飛岸だけは平気な顔をしていた。
顧問「よ〜し!一旦休憩するぞ!
水分ちゃんととっておけ!」
みんなヘロヘロになって
グラウンドに唯一ある
水道に軽く走っていった。
飛岸「ふぅ!スッキリしたぁ!」
水を散々飲んだ後
頭からビジャアっと水を浴び、
自前のポニーテールを絞って
タオルで拭いた。
「江戸すごいね!
めっちゃ速かったよ!」
「っていうかなんで
全く息切れしないの!?」
飛岸「昔っから運動するのが
好きだったからね!
息切れしないのは…慣れかなw」
「すご〜い!」
上下関係の厳しい運動部で、
飛岸は新人達の希望の星だった。
学校が残した記録も
軽々と塗り替え、
学校最速か?とまで
言われたほどだ。
?「江戸さぁん!お兄ちゃん!
陸上部のみなさぁん!!」
ふと、声のする方を見ると、
そこには1人の生徒がいた。
飛岸は彼女のことを知っていた。
的田弓孤 当時15♀
陸上部によく差し入れを
持ってくる明るい少女。
隣り合った2つのポニーテールは
的田家に代々続く伝統的な髪型。
好きなことを上手く出来る
飛岸に憧れている。
陸上部ではなく弓道部だが、
腕はそこまで上手くない。
だから暇が出来やすく、
よく陸上部に来ていた。
今日も差し入れを持ってきたようだ。
弓孤「手作りの水ようかんです!
今の時期は暑いですから
冷たい物を作ってきました!」
飛岸「え!?水ようかんを手作り!?」
「うわっ!うまそ〜!」
「んじゃ遠慮なくいただきま〜す!」
みんな1つずつ手に取ると、
大きめの水ようかんにかぶりついた。
飛岸「うっま!?
すごいこれ売れるよw
弓孤ちゃんありがと!」
弓孤「えへへぇ〜♪」
?「おいおい何事だ?」
水ようかんを楽しんでいると、
先輩組が新人組に合流した。
先頭にいるのは弓孤の兄、的田射。
弓孤「お兄ちゃん!
お兄ちゃんも食べてよ!」
射「お、サンキュー弓孤。」
「いつもありがとね弓孤ちゃん!」
水ようかんも嬉しいが、
早く走りたかった飛岸は
残った水ようかんを1口で食べた。
飛岸「ありがと弓孤ちゃん!
ちょっと走って来るわ!」
弓孤「あ、はいっ!
頑張ってください!」
ーーーーーーーーーーーーー
まだまだ明るい夕方の6時、
やっと1日の部活は終わった。
陸上部一同「お疲れ様でした!」
そうして別館の部室に戻って行った。
飛岸も帰ろうとしたが、
ふと、顧問に呼び止められた。
顧問「江戸!話がある、来なさい!」
飛岸「あ、はい!
どうしたんですか先生?」
顧問「☆☆大会のことについてだ。」
飛岸「☆☆大会?確か先輩が出場する
この町で一番大きな大会…ですよね?」
顧問「その事だが…
残りの一枠、江戸に入って
もらいたいと思っている。」
飛岸「え、えぇ!?
ちょっと待ってください!
先輩方はどうなるんですか!?」
顧問「あいつらよりはるかに
江戸の方が早い、
優勝するならお前の力が必要だ。」
飛岸「…いやです。」
顧問「え?」
飛岸「私はまだ新人です。
先輩方の少ないチャンスを
潰したくありません!
私はその大会には参加しませんから。」
顧問「おい!?コラ!待ちなさい!」
飛岸はきっぱりと大会の誘いを断ると、
ユニフォームを着替えるために
部室へ戻って行った。
…それを見てニヤリと笑う1つの影、
その影は飛岸の後を付けていった。
部室に入ると、
先生と話をしていたためか
みんな先に帰ってしまっていた。
飛岸「あ〜やっぱりかぁw私も早く帰ろ。
梅雨が帰りを待ってるもんね!」
そういって突っ張った体を
ほぐそうと背伸びをした…
その時だった。
(この先、閲覧注意。
ちょっと…っていうか
かなりきっつい表現が入りますw
見たくないひとは「〜★〜」
の中を飛ばして読んでください。)
〜★〜★〜★〜★〜★〜
何者かにタオルで両手を縛られた。
突然の出来事になすすべもなく、
飛岸は隠されていた部室フックに
吊り下げられる。
飛岸「なっ…!?ちょ、誰!?
これほどいて!離せ!!」
「大声出しても無駄だよ。
知らないと思うけど、
ここの部室防音加工してあるから。」
飛岸「だっ…誰?」
真っ黒な覆面をかぶった人物…
声もヘリウムで変声していて
誰なのかわからなかった。
「全く…君は新人なのに
調子に乗りすぎなんだよ。
おかげで美しく伝統的だった
上下関係は崩れかけた…
ひどい話だね。」
飛岸「なんの話…?
私は部活で調子に乗った事
なんかないわ!」
「黙れ!お前は
でしゃばりすぎなんだよ!
☆☆大会の出場権まで
奪おうとしやがって!」
飛岸「盗み聞きしていたの…!?
卑劣な奴!!
第一 ☆☆大会なんて新人は
出られないと思っていたし、
誘いはあったけど断った!
何を考えているわけ!!?」
天井から吊り下げられているにも
関わらず、飛岸は強気のままだった。
「黙れ黙れ黙れぇー!!
…
やっぱりお前にはお仕置きが
必要みたいだな…!」
その時、飛岸は別の意味での
恐怖を感じた。
飛岸「ちょっと…!?何する気!?」
覆面野郎は釘抜きのような物を
飛岸のユニフォームにかけると…
ビッ…ビリリリ!
飛岸「わっ…!!?
いやああああぁ!!」
…ここから先は濁して書こう。
飛岸はその覆面に頬から唇、
下の方まで全て汚された。
飛岸がどんなに泣き叫ぼうが
覆面は飛岸を長々と苦しめ続けた。
単語で表すと…
「恐怖」「快感」
「激痛」「屈辱」になる。
飛岸「うぅ…ひっく…」
どれだけ泣いただろう、
時計がある部室なのに
もう時間感覚さえ狂いそうだ。
「…ふふふ……」
ふと、こんな音が聞こえてくる。
カン…カン…
飛岸「な…何?」
「ん?これ?えっとね…
君の選手生命を殺す物?♪」
飛岸「えっ?(ゴオオンッ!!
や、やあああ!!?」
ふと、飛岸は足にとんでもない
激痛を感じた。
先ほどとは比べものにならない。
「あは…アハハ…!
アハハハハハハハハハ!!!
(ゴオオンッ!!」
飛岸「いぎゃああああ!!!」
なんと、覆面は
それなりの太さがある木材で
飛岸の足を殴りはじめたのだ!
完全に狂い切った事は
覆面ごしでもわかるくらいだ。
「みーんなみんなうっぜぇんだよ!!
何もかも奪っていやなもん
押し付けやがってえええ!!
(ゴオオンッ!
アハハハハハハハハ!!!
(ゴオオンッ!」
飛岸「ああああ!?いやあ!!
いやああああああああ!!!!」
飛岸は涙を流して暴れたが、
玉結びの両手は解放されることなく
足を殴られ続けた…
…しばらく立ったその時、
バキイイイッ!!
飛岸「ぎゃあああああ!!!!」
覆面が力一杯フルスイングした
木材と飛岸の足の骨が…
同時に折れた。
あまりの衝撃に天井のフックは折れ、
飛岸をようやく解放した。
「………。
あ〜スッキリした!
これで俺の大会出場は
確実だし上下関係も守られる!
しばらくしたら新人どもを
こき使ってやる!
アハハハハハハハハ!!」
覆面は飛岸に折れた木材を投げつけると、
そのままその場を後にした。
残された飛岸は…
まるで糸の切れた
操り人形のように崩れ落ち、
その両足はうれきった苺のようだった。
〜★〜★〜★〜★〜★〜
飛岸は覆面をかぶった奴に襲われ、
足に大怪我を負わされた。
目が覚めると…そこは病室。
目の前には飛岸の家族と看護婦…
地元で名医と言われている
里座先生がいた。
看護婦「あっ…!里座先生!
目を覚ましましたよ!」
飛岸母「飛岸!飛岸!」
梅雨「おねぇちゃんおはよう!」
梅雨が私の顔にスリスリしてきた。
…その時気がついた、
顔には酸素マスクがついている。
医者「飛岸ちゃん、
落ち着いて聞いてくださいね。」
麻酔がまわっているのか、
まだ声が出そうにない…
飛岸は縦にうなづいた。
医者「飛岸ちゃん、君の足は…」
「 」
飛岸「………ぇ?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
飛岸「全治5ヶ月の大怪我だった…
一生歩けない可能性もあるって。」
里座「私のお父様の病院に
入院していたんですね。」
飛岸「そういや…
里座もあの病院に入院してだよね?
なんで会わなかったんだ?」
里座「私は病状が悪化して
その時期は集中治療室にいたんです。」
飛岸「あぁそうだったのか…
ってどうしたんだよ染好w」
見ると、染好は涙腺が崩壊していたw
ポロポロと涙を流して泣いている。
染好「ひどい…ひどすぎるよ…!」
飛岸「泣くなって経験したのは
私なんだからw
でも聞いてくれてありがと、
克服は出来てないけど…
背中の荷が少し軽くなったよ。」
その時…
ガタッ
屋上の出入口から物音がした。
染好「あれ?」
里座「あ!人がいます!」
飛岸「え、盗み聞き!?ちょっと誰よ!」
飛岸は持ち前のスピードで
屋上の出入口にすぐに来た。
扉を開けると、そこにいたのは…
飛岸「…弓孤ちゃん?」
染好とは比べものにならないくらい
泣き明かした弓孤がいた。
その顔は驚きで満ちているが、
すぐに罪悪感に満ちた。
弓孤「ご、ごめんなさい……!」
そう言い、立ち上がって
逃げようとしたが…
飛岸「待って!弓孤ちゃん!」
逃げようとする弓孤の腕を
飛岸は捕まえた。
弓孤「……離して!
飛岸さんに見せる顔、ない…!」
飛岸「一回ちゃんと話をして
おきたかったんだ。
…来てくれる?」
そう言って飛岸は微笑んでみせた。
弓孤は安心したのか、
その後は素直に飛岸に従った。
弓孤「…美味しい、ありがとう。」
染好は常備(笑)している大福を
弓孤に数個渡した。
和菓子が好きなのか、
ちょっと笑顔になった。
…本当にこの子は飛岸の話に出た
弓孤ちゃんか?と2人は思った。
とにかく口数が少なく、基本的に暗い。
隣り合った2つの
ポニーテールが印象的だ。
背中には特殊なバックに入った
何かを背負っている…
染好は素直に聞いてみた。
染好「そのバック何が入ってるの?」
それを聞いた弓孤は何も言わずに
バックの中身を見せる。
そこに入っていたのは
丁寧にメンテされた木製の弓と
金属のトゲが付いた矢だった。
弓孤は弓を取り出すと、
大事そうに弓を撫でた。
弓孤「私の宝物…。」
飛岸「弓孤ちゃんは弓道の腕
かなり上がったよねw」
そう言って手を弓孤の肩に置いた。
…弓孤はちょっと嬉しそうな顔をしたが、
すぐに無表情に戻ってしまった。
飛岸「…もしかして、
まだあのこと気にしてる?」
弓孤「………はい。」
飛岸「もういいんだよ弓孤ちゃん、
確かに、私をこんなのにしたのは
弓孤ちゃんのお兄ちゃんだけどさ…
弓孤ちゃんとは関係ないでしょ?
染好&里座「!?」
2人は驚くのと同時に悟った、
場合によれば…彼女の反応が
こうなるのは無理もないと。
弓孤「私が…兄ちゃんがおかしいのに
気がつかなかったから、悪い。」
そう言って弓孤は下唇を噛んだ。
弓孤「飛岸が許しても…
私が自分を…許せない。」
キーンコーンカーンコーン
弓孤がそう言い切ると、
学校のチャイムが鳴った。
弓孤「………。」
弓孤はチャイムが鳴ったのを聞いて
弓と矢をバックにしまうと、
そそくさと屋上を後にした。
飛岸「あ!待って弓孤ちゃ…
あぁ〜行っちゃったか…」
染好「またの機会に合会えばいいよ、
今日のところはここでお開きにしよ。」
里座「ですね、授業を
受けないわけには行きません。」
飛岸「う…了解。」
ーーーーーーーーーーーーー
カリカリカリ…
教室内に音が響く。
カリカリカリ…
何かを書く音。
染好(この先生の書くノートの量
多いんだよなぁ…)
染好はノートを書いていた。
早めに書き終わると、
授業中のしばしの休憩に浸る。
染好「ふぅ…」
脱力してくつろいでいると…
美々「せんせぇ〜お腹痛いんで
トイレ行ってきまぁす。」
返事も聞かず美々が教室を出て行った。
…曲がった方向は女子トイレと逆方向。
数時間後…
キーンコーンカーンコーン
コーンキーンカーンコーン
学校のチャイムがなり、
今日最後の授業を終えた生徒らは
おしゃべりをしながら帰る支度を始め、
あっという間に教室内は人の声で溢れた。
その後は帰りの会。
掃除のために机と椅子を後ろにやると、
廊下にはいつものように
人の流れが出来た。
染好も自らを流れに突っ込み、
向こう側に出た。
しばらく待っていると、
里座が人の波から出てきた。
染好「あれ?飛岸は?
いつもJ組は一番最初に
帰りの会が終わるはずだけど…」
里座「確かに…見当たらないですね。」
染好「飛岸の掃除当番は明日だし、
来ないんだったら
連絡が来るはずなんだけど…」
弓孤「飛岸…呼び出された。」
染好「うわぁ!?ビックリしたぁw」
里座「呼び出された?誰にですか?」
弓孤「J組…体育の時間…の終わり、
誰かが、ドアに、挟んだ…手紙。
「放課後、1人で弓道部の
演習場に来て下さい。」
って、飛岸宛に。」
染好「弓道部演習場?」
里座「何で飛岸がそこに?」
弓孤「え?
「もしかしてラブレターかも?ww
弓孤ちゃんが弓道をするのを
見るついでに行ってみるわw
あ、染好達に会ったら
見に来てみたら?って言っといてよ!」
って…他の人に言っているのを聞きました。」
染好「他の人…w
まぁ来てみたらって言ってるんだし、
お言葉に甘えて行ってみますか!」
里座「ですね、何をしているのかも
気になりますし。」
弓孤「じゃあ、行こう。鍵…ある。」
相変わらず口数が少ない弓孤。
そんな弓孤に2人はついていった。
ーーーーーーーーーーーーー
一方飛岸、自分のクラスのドアに
挟んであった手紙通りに
弓道部の演習場に来ていた。
広々とした空間、
射程距離の違う的がある。
飛岸「な〜んもないなw
一体誰があの手紙…を…」
…一方向を見た瞬間、身が凍りついた。
何で?
何故?
どうして?
どうやっ…て?
そこ…ニワ…
ーワタシヲコワシタヒトガイルー
飛岸「〜!!?」
酷い吐き気に襲われ、
足が激しく疼いて
立てなくなってしまった。
的をどこか懐かしそうに撫でる
明るい茶髪の人物。
…隣り合った2つのポニーテールの男性。
射「あれ?飛岸じゃん!
久しぶりぃ〜!」
明るく接してきたが、
飛岸は恐怖でいっぱいだった。
飛岸「来ない…でえぇ!!!」
恐怖のあまり大声を出すが、
弓道部の部室は扉が閉まれば防音…
すぐに嗚咽に襲われた。
射「そこまで言うことねえだろw
足治ったみたいだし怒んなよw
全く大変だったぜ…
お前のおかげで上下関係が
戻ったってのに退学させられて。
今じゃ夜の仕事、ホストだぜ?w」
飛岸「何の用…!?
退学になったからここには
来れないはずでしょ!?」
射「ここを通してくれた奴がいたのさ、
派手な女だったな…w」
飛岸「そんな…!
…出てって。
今すぐ出て行け!!
二度と私の前に現れるな!!」
恐怖に襲われながら
必死に反論をする飛岸。
その一部始終を聞いた射は…
表情が変わった。
射「あっれ〜?
そんな言い方していいのかな?
あの時かなり調教したのに
もうこんな反抗的になったか…」
そう言うと、
立てない飛岸の肩をガッと掴んだ。
飛岸「わっ!!?」
飛岸は掴んだ手を振り払おうと
必死に身をよじっている。
飛岸「はっ…離せ!離せえぇ!!」
射「ふふ、また楽しいことを
し よ う ね?♪」
射が飛岸を押し倒しそうになった…
その時
バアァン!!
アイス「おーっほっほっほ!!
やっと凍った心を見つけたわ!!
まさか倉庫で嘆いてるなんて…
わかりずらいわね!
…ってあら?取り込み中かしら?(汗)」
アイスが女の子の体を抱え、
凍った心を手にして
部室の倉庫から飛び出してきた!
…今時登場が喜ばれる
悪役なんているのねww
その場の空気がぶち壊しになり、
足に力が入るようになった飛岸は
射をおもいっきり蹴り飛ばした!
飛岸「こっ…このおぉ!!」
ドオオォンッ!!
射「ぐわあ!!?」
飛岸「出たなアイス!
懲らしめてやる!!」
アイス「…なんか嬉しそうねw」
と、そこへ染好達が合流した。
染好「飛岸!様子見にき…ふぁっ!?」
弓孤「おっ、お兄ちゃん!?」
里座「アイスまで…
どういう状況ですか?」
染好「わかんないよ(汗)
どうしてこうなっただよ!」
弓孤「何で…兄ちゃんが、ここに?
今…勤務時間じゃ?」
染好「勤務時間?それってどういうこt」
アイス「あ〜もお!!
ごちゃごちゃうるっさいわね!!
フローズンハート!
その冷たさで全てを冷やせ!!」
魔法をかけられたハート型の氷は
ビキビキとひび割れながら
膨れ上がり、色付き、
弓の闇氷になった。
飛岸「弓孤ちゃん!
どっかに隠れてて!」
弓孤「?……うん。
兄ちゃん、こっち。」
射「って…おもいっきり
蹴りやがって…!
悪りぃな、弓孤。」
弓孤は射を支えながら
部室の倉庫に隠れた。
弓孤が倉庫の扉を閉めたのを確認して、
3人は変身ステッキを取り出した。
アイコンタクトをとって呪文を唱える!
3人「桜の力!
暖かき色彩の輝き!
チェリブロチェーンジッ!!」
そう3人が唱えると、
ステッキからたくさんの
桜の花ビラが生まれると、
3人の首の辺りから
つま先に至るまで全てを包み、
最後には発光しながら弾けて
3人を桜うさぎに変身させた!
紅「春に咲き誇る赤き花!
桜うさぎっ!ベニブロ!」
黄「春に咲き荒ぶ黄色き花!
桜うさぎっ!キブロ!」
橙「春に咲き渡る橙色の花!
桜うさぎっ!ダイブロ!」
紅「寒き冬に春の訪れを!」
3人「我ら桜の戦士!
桜うさぎっ!!」
アイス「闇氷!やっておしまいっ!!」
飛岸「今回 も 勝たせてもらうよ!」
アイス「「も」を強調するな!(汗)
フローズンダスター!
出現しなさぁ〜い!」
3人「チェリブロステッキ!」
アイスのセリフをスルーして
桜うさぎ達はステッキを
それぞれの形で構えた。
アイスも
氷のメリケンサックを手にする。
弓の闇氷は巨大な矢を10本出現させ、
ギリギリと矢を引く。
戦闘開始だ!!
黄「桜の力よ!
我が腕に宿り力を指し示せ!!」
キブロはそう唱えて
ステッキを頭上に投げると、
ステッキは黄色い光を発して
一度散り散りになって
キブロの利き腕にまとわりついた!
徐々に光が収まっていくと、
そこには長さのある腕輪が現れた。
ステッキについていた宝石が
腕輪でも輝いている。
黄「アイスは私が仕留める!」
橙「はい、私は闇氷の体…
心のない身体を守ります。」
紅「なら私は闇氷の討伐だね、
わかったよ!」
黄「そんじゃ!今回 も
やっちゃいますか!」
アイス「あんまりしつこいと
嫌われるわよ!(半泣)」
黄「うるさいおばさん!」
アイス「(カッチィーン(#・∀・))
こんの小娘があああ!!」
黄「これで標的は私っとw
後は頼んだよ2人とも!」
キブロはダッと走り出すと、
アイスと対峙した!
まずはアイスの拳を両腕で受け止める。
その後腕輪に通常の2倍の魔力を込め、
魔法を発動した!
黄「桜の力よ!
花ビラと共に我が身に宿り強化せよ!
腕は強化!
足は加速!」
すると、キブロの腕輪から
黄色い花ビラと風が溢れて光となり、
キブロの両足両拳に宿る。
そこからの突き!
ゴオッと音を立てて殴りにかかったが、
アイスは突きで相殺する。
アイス「なっ、重い…!?
あんた裏で鍛えてたわね!?」
黄「美容ばっかに気を使ってると
その内追い越されるよ!」
そこからは目にも捉えられない
素早い格闘の攻防戦が繰り広げられた。
蹴り同士で相殺したと思ったら
今度はチョップを払いで防いだり…
相変わらず説明出来ないほど早いw
2人の格闘技に進展があるまで
ベニブロ達に注目するとしよう。
ーーーーーーーーーーーーー
カカカカッ!
紅「あっぶないなぁw
あっ!ダイブロそっちいった!」
橙「はいっ!」
ピコンッ!…ビシッ
ベニブロとダイブロは
闇氷を倒す術を探していた。
…まぁどういうことかというと、
ベニブロは闇氷の攻撃を
かわしながら闇氷の気を引く。
ダイブロはそんな中、
心のない身体を守りながら
とばっちりで飛んでくる矢を
銃で撃ち落としながら
闇氷を攻撃する術を探す。
紅「あ〜やっぱりダメだ!
近くで攻撃しようにも
矢で攻撃してくるから危ないし、
遠くからは矢で弾かれる!」
橙「ちょっと待ってください!
え〜っと何か方法は…」
橙は矢を弾きながら辺りを
キョロキョロする…
ふと、闇氷の前に飛ぶ矢に目が行った。
ベニブロがかわした後に
飛んだ矢のようだが…
そこの壁だけ全て的に刺さっている。
橙「的………あっ!もしかして…!
桜の力よ!
緑色の富となり丸くなれ!」
緑色の富、つまり木の事だ。
ダイブロがステッキを降ると、
橙色光が飛んで床にぶつかり弾け、
丸太が現れた。
もう一振りすると、
丸太がパカッと割れて
円盤が大量に出来た。
橙「呪文が長いのって不便ね…
桜の力よ!
丸き板を飛ばす武器を作り出せ!!」
ダイブロはステッキをもう一振り!
すると、ダイブロが腰に
閉まっていた銃が光だし、
新しい形に変形した!
グリップは大きめだが掴みやすいタイプで、
銃口は半月型のパーツが付いている。
試しに作った円盤をはめてみると…
意識して構築していないのに
ピッタリだ!
ダイブロは試しに円盤を飛ばしてみた。
空気圧で円盤が回転しながら宙を舞う。
ドチュン!
円盤はベニブロの背後に飛んだ。
すると、ベニブロを狙って
打たれたはずの矢が
全て円盤に刺さったのだ!
…と同時に闇氷に大きな隙が出来る。
橙「今ですっ!」
紅「うえぇ!?
なんかよくわかんないけど…
えいぃっ!!」
ベニブロは走って
闇氷の間近まで迫ると、
おもいっきりステッキを振りかぶった!
闇氷は大きくしなって吹っ飛んだ!
橙「その調子です!
どんどん攻撃を仕掛けてくださぁい!」
紅「わ、わかった!」
ーーーーーーーーーーーーー
…っと、キブロとアイスの格闘が
見えるようになったみたいだ。
どうやら2人の力量は互角、
長く戦う内に体力が
減っていったようだ。
ゴオンッと音を立てると、
2人とも一旦距離を置いた。
アイス「はぁ…はぁ…
なんで前より強くなってるのよ…!」
黄「ふぅ…ふひぃ…
何もして来なかったわけじゃないし!」
アイス「なら…これならどうよ!」
アイスはダッと勢いをつけると、
途中で宙返りの入った
かかと落としを仕掛けてきた!
アイス「体重もかかってるから
簡単には受けきれないわ!
大人しくくらいなさい!!」
全体重をかけてかかと落としを
仕掛けるアイスに対し、
若干疲れでクラクラするキブロは
冷静に、かつ素早く横によけた。
アイスの蹴りは空を切り、
石の床を大きく叩きつけた!
ドオオォンッ!!
アイス「なっ!?」
黄「どりゃあっ!!」
キブロはかかと落としの勢いで
斜めに傾いたアイスに
突きをくらわせた!
アイスは大きく吹っ飛び、
後ろの壁に激突した。
ドンッ!
アイス「うぅ…やってくれたわね…!」
黄「顔に攻撃が当たらないよう
注意したもんね!」
アイス「そりゃあお気遣いありがt」
黄「いや全然意味違うからw」
アイス「こんの小娘…!!」
アイスが立ち上がろうとしたその時、
闇氷がアイスの方に飛んできた!
紅「ごめんキブロ!
間違ってそっちに飛んでいっちゃ…
ファっ!?」
黄「むしろグッジョブだよベニブロ…w」
アイス「…こんのぉ!!」
アイスは闇氷をガッと掴むと、
おもいっきり振りかぶった!
チェリー「危ないチェリ!!」
不意を狙ったアイスの攻撃を、
受けきれないとわかっていて
チェリーは受け止めようとした!
ガッ!!
チェリー「…チェリ?」
攻撃を受け止めた
チェリーだったが、
受けた瞬間勢いが消えた。
目の前にはダイブロがいた!
闇氷を両手で受け止めている。
橙「ダメですよチェリー、
無茶をしたら。」
チェリー「ごめんチェリ…
一番距離が近いキブロ!
今こそ闇氷を溶かすチェリ!」
黄「了解!」
上に振り上げるのと同時に
白いスイッチを押した。
七色のランプが順々に光り、
最後に光った先端の宝石は
強烈な光を放った!
黄「冷えた心よ温まれ!
チェリブロラビット!
イエローフローラル
シューター!!」
キブロが勢いよくステッキを振ると、
大きな黄色いうさぎの
エンブレムが輝きながら飛び出し、
アイス「なんなのよ…!
覚えてらっしゃい!」
闇氷に直撃した!
闇氷「ハルウララァー!!…」
必殺技をくらった闇氷は
色をだんだん失いながら
大量の水蒸気を出して蒸発し、
最後にはキラキラ光る
ハートのオーブが残った。
アイスは…くらった後に
魔法の吹雪を起こして
逃げたようだ。
ーーーーーーーーーーーーー
チェリーが桜の力を回収した後、
飛岸は心を身体に戻した。
その子は弓道部の部員で、
最近1発も的に矢が当たらなくて
嘆いていたらしい。
「倉庫で寝ていた所を偶然見つけた」ということにしている。
弓道部部員「ありがとうございました。
私、倉庫で寝ちゃっていたんですね。」
染好「ビックリしたよw
あんな所で寝てたら
ホコリで苦しいでしょ?」
弓道部部員「はい、
ご迷惑をおかけしました。」
染好が弓道部部員と話す中、
里座は倉庫に向かった。
ガチャっと倉庫の扉を開けると、
そこから的田兄妹が出てくる。
里座「もう出てきて大丈夫ですよ。」
飛岸「!」
…と同時に飛岸は警戒を強めた。
射「悪いな弓孤、
手当までしてもらって。」
弓孤「うん。みんな…大丈夫?
大きい弓矢があったけど…」
里座「えぇ、問題ありません。
大きい弓矢、あれは作品でした。
あの人は業者さんで、
どうやら持ち込む場所を
間違えたようです。
先程美術室に運び込まれましたよ。」
少々無理矢理な理由であったが、
弓孤は納得してくれた。
弓孤「お兄ちゃん、
そろそろお仕事に戻らないと…」
射「え?あぁもうそんな時間かw
そんじゃ!勝手に入って
悪かったな弓孤!」
弓孤「うん…いってらっしゃい。」
射は弓孤の背中をぽんぽんと叩くと、
飛岸に謝りもせずその場から
立ち去っていった。
…と同時に飛岸の気が抜ける。
飛岸「はぁ〜…
やっと解放されたよ…w」
里座「飛岸、大丈夫ですか?」
飛岸「うんw 蹴っ飛ばせたし
前よりは楽に過ごせそうだよw」
飛岸の言う通り、
先程自分のトラウマの発端に
再開してしまった後なのに、
どこか余裕のある表情だ。
飛岸「弓孤ちゃんは大丈夫だった?
…弓孤ちゃん?」
飛岸が弓孤の方を見ると、
弓孤は…崩れ落ちて泣いている。
弓孤「ま…また、私のせいで、
飛岸が危ない目に…
ちゃんと…部室のカギを
確認していれば…!
…ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
ゴメンナサイ
ゴメンナサイ!!」
弓孤は頭を抱えて
苦しむように泣き出した。
唯々謝罪の言葉を連呼している。
完全にパニック状態だ…
染好「弓孤ちゃん!?」
弓道部部員「せっ、
先輩落ち着いてくだs」
里座「あっ、ちょっと飛岸?」
飛岸はそんな弓孤に
なんの動揺もせず近づくと、
弓孤のほおを両手で抑えた。
弓孤「むにゅっ!?」
飛岸「…落ち着いて弓孤ちゃん。
一度ゆっくり話そうと思ってたんだ。」
弓孤「でも…でも!」
飛岸「弓孤ちゃんの作った
チーズケーキ…
すごく美味しかったよ。」
飛岸はそう言ってにっこりと笑った。
弓孤は驚きを隠せなくなっている。
弓孤「えっ!?ど、どうして…?
あのケーキはぐちゃぐちゃに…!」
なんの事かわからんでござるな人、
どういう事か説明しよう。
一年前…あれは弓孤が
飛岸のお見舞いにいった
最初で最後の日の事だ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今、弓孤は
病院のエレベーターの中にいる。
手提げの大きなバックの中には、
財布に携帯…などの雑貨と白い箱。
弓孤「足を怪我しちゃうなんて…
選手生命に関わっちゃうじゃないの!
飛岸さんきっと落ち込んでいる…
私が励ましてあげなきゃ!
今日は飛岸さんの大好物の
チーズを使ったチーズケーキを
作って来たもの!
きっと元気を出してくれるわ♪」
エレベーターから降りると、
弓孤は鼻歌を歌いながら
飛岸の入院する病院の個室へ来た。
白い箱をバックから取り出して
両手で抱えて意気込むと、
病院のドアを…
「飛岸大丈夫なの?」
「そんなに落ち込まないでよ…
元気出して!」
弓孤「あっ、先に陸上部の
みんな来ていたんだ。」
「それにしても…
先輩があんなことをするなんてね…」
弓孤(先輩?)
「先輩が…
射先輩が飛岸を襲って足を砕くなんて…
私、絶対許さない!」
トン…
弓孤が飛岸を襲ったのは
自分の兄だと知ったのは
この時が初めてだった。
弓孤の手から白い箱が落ちて
逆さまになる。
…弓孤の思いも真っ逆さまだ。
弓孤「あ…あ…!」
目から溢れ出る涙、
浮かぶ最近暗かった兄の姿。
色んなものが彼女の心に
容赦無く突き刺さる。
気がつけば走り出していた、
病院の階段を泣きながら駆け下りる。
弓孤「わた…私に…!
飛岸さんに会う資格はない!!」
ガラッ…
「あれ?誰もいないけど…」
飛岸「そこの白い箱…何?
ごめん、取ってちょうだい。」
「え?これ?」
陸上部の部員の内の1人が
病室の前に落ちていた白い箱を拾うと、
飛岸に差し出した。
飛岸が箱の蓋を開けると…
形の崩れたぐちゃぐちゃなケーキが
中に入ってた。
飛岸「これ…チーズケーキ?」
「飛岸の大好物じゃん!」
「あ、カードが入ってる。
「早く元気になってね! 弓孤より」
…だって。」
それを聞いた飛岸は
暗かった顔に微笑みを浮かべ、
ぐちゃぐちゃのケーキを
おもむろに口に入れた。
「ちょっと、それ落としたやt」
飛岸「うわっ!?うまっ!」
「そりゃあ、
あの弓孤ちゃんのケーキだもんw」
「あたしも食べたい!」
「形悪くても味は良さそうですね。」
飛岸「うん、みんなで食べよっかw」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ということが昔あったのだ。
飛岸はその後も話を続ける。
飛岸「みんな待ってるよ、
弓孤ちゃんの作るスイーツは
絶品だからねw」
飛岸が話を終えると、
だんだん弓孤の泣き方が変わって来た。
その瞳にゆっくりと雫が溜まり、
大粒の涙が静かに流れた。
飛岸が頭をぽんぽんと叩くと、
静かに抱きしめた。
飛岸「おかえり。」
染好と里座は事が収まるまで
その様子を暖かな目で見守った。
ーーーーーーーーーーーーー
一方、とある場所…
魔法の吹雪が吹き荒れ、
そこにアイスが出現した。
ドサッ!
…着地失敗w
アイス「あっつ…
あの黄色い小娘、
やってくれたわね…」
コールド「よ〜っす、お疲れさ…
って大丈夫か!?
腕溶けてんじゃねえか!!」
アイス「必殺をくらったのよ…
全く、情けないわw」
コールド「今運んでやるから
しっかり捕まってろよ!」
コールドはアイスを抱えると、
一目散にその場所を後にした。
ーーーーーーーーーーーーー
ついた場所はお城の医務室。
アイスの腕は特殊な布にくるまれると、
ベットの上に寝かされた。
布に点滴の針を刺して様子を見る。
アイス「…なによw
このくらいの怪我すぐに治るわw
あんたは先に戻ってちょうだい。」
コールド「…無理。」
アイス「もう!戻れって
言ってるんだから
大人しく戻りなさ」
コールド「顔が笑ってない、
本当は痛いんだろ?」
アイス「………。」
アイスが黙っていると、
そこへフリーズがやってきた。
フリーズ「大丈夫か?」
アイス「えぇ、大丈夫よ。
こうして凍らせれば…
また元に戻るわ。」
フリーズ「そうか、じゃあ私は仕事に」
コールド「まっ、待てよ!
あまりにも…あまりにも
あっさりしすぎてないか!?」
フリーズ「2人の様子からすると、
桜うさぎはますます
強力になっていると見受けられる…
事細かに作戦を練る必要がある。」
コールド「フリーズ!!」
コールドはフリーズを
引きとめようとしたが、
そんなコールドをアイスが止めた。
アイス「ほっときなさい。」
コールド「何でだよ!
アイスはいいのか!?」
アイス「フリーズは行動したら
止まらないわ。
それに…」
コールド「それに?」
アイス「…何でもないわよ!
あんたも早く戻りな!!」
コールド「なっ…なんだよ!
急にいじわるになりやがって!
もう来ねえからな!!」
怒ったようにその場を後にした
コールドだったが、
扉は静かに閉めた。
アイス「…そういうなのよ、
あの人は…。」
ーーーーーーーーーーーーー
染好「ここだったっけな…」
後日、染好は旧陸上部部室の前にいた。
飛岸がくれるMINEを頼りに来たのだが…
すっかり迷子状態だ。
弓孤「染好」
染好「わっ!?ビックリしたw」
弓孤「入って、みんな待ってる。」
染好「う、うん。」
弓孤は白い箱を片手に
旧陸上部の部室の扉を開けた。
中は在校生や当時陸上部だった卒業生…
まぁパーティー状態になっているw
飛岸「なんだ染好いたんだw
いるなら入ってくればいいのにw」
染好「いやぁ…軽く迷子に…w」
「ぶっw」
「染好ちゃんって天然な所あるよねw」
飛岸「その天然っぽいのがいいんだよw」
弓孤「飛岸さん、新しいケーキ。」
飛岸「え、まだあったの!?」
弓孤「今日パーティー、
みんな楽しい。」
そう言って弓孤は微笑んで見せた。
相変わらず口数は少ないが、
前よりは明らかに明るい。
彼女にしたら大きな進歩なんだろう。
里座「でも1人につき1ホール…w
材料費私たちも出したとはいえ、
ものすごい根性ですね。」
弓孤「弓道も…いい。
でも、お菓子…作るのも、楽しい。」
そう言って幸せそうに白い箱を抱いた。
弓孤「あっ、これ、染好。」
染好「え?」
弓孤は染好の前で
白い箱を開けて見せた。
中には…おぉwすごいw
店にも出せるような
チョコレートケーキだw
弓孤「飛岸から聞いた。
染好、チョコレート…大好き。」
染好「わぁ〜!?
ありがとう弓孤ちゃん!」
飛岸「ほらほら!染好も座って!」
里座「私がお茶をつぎます。」
染好「うんっ!」
楽しそうにパーティーをするそんな中、
1人鉄格子から除く影があった。
美々「腹 立つ わぁ〜!!
なんなのよ!何で折れないわけ!?
あいつめ…!誰のおかげでNO.1にまで
登りつめたと思ったのよ!!
でも襲ったのは本当らしいし
制裁は加えられない…
私のプライドが許さない!!
こうなったらこの学校もろとも…!!
!?っ、誰か来たみたいね…
今日はもう帰ろうっと…。」
美々がその場を去った後、
懐かしそうに校舎を散歩する青年が
旧陸上部の前を通った。
?「2年ぶりの学校か…
ふふっ、自宅療養の事、
里座先生も認めてくれたし、
頑張って勉強しなきゃ!」
そう言って校舎の壁を撫でた。
…普通の2倍近くある、
たった1本のその腕で。
To be continued next time♡