[第三話 三つ子の病弱少女!? 目覚める橙色の戦士]
チェリー「もきゅもきゅ…
うまぁ!だチェリ!
このみずみずしいイチゴが
甘酸っぱくて美味しいチェリ〜♡」
染好「イチゴ大福
気に入ってくれてよかった。
同じのばかりじゃ
飽きちゃうもんね。」
そう言う染好と
鍵のかかった自分の部屋、
くつろぐ染好とチェリー。
扉の向こうで誰かが何か
言っているようだが、
桜の力を利用して防音加工
されたこの部屋のおかげで
その声が染好の耳に
届くことはない。
染好「そういえばさ、
チェリーの持ってる変身ステッキ…後何本残ってるの?」
チェリー「(人間界の桜の木から
授かった聖なる枝は3本だから…)
あ!あと1本チェリ!
あと1本で桜の戦士が
全員揃うチェリ!」
染好「へぇ〜、桜うさぎって
全部で3人いるんだ。」
チェリー「間違いないチェリ!」
染好「3人目は
どんな人なんだろ?」
チェリー「わからないチェリ。
すべては桜の導きチェリ。」
染好「桜の導き?」
チェリー「簡単に言えば…
似たような力を持った者は
ひかれ合うってことチェリ。」
染好「ひかれ合うか…
早く全員揃うといいね、
チェリー。」
チェリ「チェリっ!」
ーーーーーーーーーーーーー
次の日、何故か染好は
窓から外に出て来た。
屋根を伝って小さな倉庫の屋根に
降り、庭に植えてある木の枝を
伝って地面に降りた。
染好が玄関をちらっと見ると、
階段の前で染好の母親が
待ち構えている。
チェリー「なんで窓から
外に出るチェ(もがっ!?」
染好「いいから!
行くよ!チェリー!(小声)」
染好は静かに自宅の門をくぐると、
逃げるように
走って学校へ通学した。
相変わらず染好の家族嫌いは
徹底している。
しばらく走っていると、
染好のよく知る公園に出た。
普段、桜うさぎの時ではない時に
あまり動かない染好は
若干疲れやすく、
公園のベンチに座り込んで
休憩ついでに朝食をとった。
今日の朝食はベーコンエピ…
ベーコンを練り込んだ硬いパンだ。
チェリーにもパン屋さんで買った
あんぱんを与えた。
染好「いただきます。」
チェリー「いただきます
チェリ〜!」
染好は大好きな硬いパンをちぎり、
しっかり噛んで食べていった。
チェリーは不思議そうにしながら
あんぱんをもしゃもしゃ
食べている。
チェリー「これ面白いチェリね、
大福の中身と同じのが
入ってるチェリ!」
染好「どっちも餡子…
同じ物が入ってるからね。」
チェリー「餡子はわかるチェリ!
桜の国でよく桜餅を
作ってたチェリ!」
染好「あ、そうなんだ。」
2人ともパンを半分位食べたところで、飛岸が通りかかった。
飛岸「おっはー染好!
相変わらず朝は速いんだね…w」
染好「自分の部屋以外は
あんまりいたくないからね。
梅雨ちゃん元気?」
飛岸「元気元気、
ちょっと桜うさぎらしき
絵を描きだしたのは気になるけど…
まぁ大丈夫しょ。」
しばらく2人で話をしていると、
ちらほらと染好と飛岸の通う
学校の生徒が目に入った。
染好「そろそろ出発した方が
よさそうだね。」
飛岸「あぁ、もうこんな時間か。
よっしゃ!出発しますか!」
チェリー「チェリっ!」
チェリーがぽんっと
煙と音を立て染好の
胸ポケットに滑り込むと、
染好の胸ポケットにあるペンは
2本に増えた。
染好はそれを確認すると、
ベンチの横に置いていた
自分の学生かばんを
真面目な持ち方で
持って出発した。
飛岸は自分の学生かばんを
リュックサックのように
背負って染好の後を追った。
ーーーーーーーーーーーーー
数学の先生
「吉野さん、この問題を」
染好「A={123456}
B={36}
C={1245}です。」
数学の先生が言う前に
スラスラと答えをいい、
とっとと座る染好。
まわりからは「すげぇ…」
などの声が漏れている。
染好(簡単過ぎてつまんない…)
染好はクラスで常に上位を飾るほど頭が良かった。
そのため、隣の席の子からは
解説やカンニングを
しょっちゅう求められる。
数学の先生
「え〜次は教科書の(キーンコーン
カーンコーン…」
学校のチャイムのあまりの
ベストタイミングに
笑い出すクラスメート…w
「なんだよ教科書の
キンコンカンコンってw」
「ヤバイwマジウケるww」
数学の先生
「し、静かに!
今日はここまでにします!」
「起立!礼!着席!」
次はお昼ごはんの時間だ。
コンビニで買っておいた
お昼ご飯が入ったレジ袋を手に持つと、隣のクラスに向かって
教室のドアから
ちらっと教室を覗いた。
すると、飛岸はまた別の運動部から勧誘されていた。
飛岸「だから私は…あ!染好!
ごめん、私約束してるから。」
染好「(約束なんてしたっけ…?)
い、行こう飛岸。」
若干顔が引きつる染好だったが、
飛岸に手をひかれて隣のクラスを
後にした。
飛岸「あははwごめんごめんw
約束なんかしてなかったよねw
ちょっと使わせてもらったよ。」
染好「ううん、飛岸の助けに
なったなら嬉しいよ。
これからもどんどん使って
ちょうだい。」
そう言ってにっこり
笑って見せる染好。
…この様子だと本当に役に立てて
心から嬉しいようだ。
飛岸「(やばっ!この子純粋!w)
あ、ありがとう染好w」
染好「それにしてもあの人たち…
あれ?」
飛岸「ん?どした染好?…あ!」
「ゲホゴホ…ガホ…」
広い学校の廊下の角を曲がると、
そこには1つ上…に見えるが、
靴が2年生のだ。
ショーとヘアの
女の人が倒れていた。
染好「た、大変…!!」
飛岸「私が背負って行くよ!
早く保健室に行こう!」
染好「え、でも飛岸の足が…」
飛岸「いいから!行こう!」
普段から体を鍛えている飛岸は
女の人を軽々背負うと、
保健室へ急いだ。
染好もその後を追う。
ーーーーーーーーーーーーー
飛岸「ててて…」
飛岸はやっぱり無理をしたのか、
保健室の先生に
湿布を貼ってもらってた。
保健室の先生
「もう、無理して動いたら
ダメじゃないの。」
飛岸「すんません…」
保健室の先生
「でもあなたの足、
前よりは回復しているようね。
このまま軽いトレーニングを
続ければいいわ。」
飛岸「はぁ〜い。」
染好「藤木先生、
咳が落ち着いてきたようです。」
それを聞いた保健室の先生、
藤木先生と飛岸はまだベットで
眠っている女の人の元へ向かった。
藤木「里座さん、
咳の方は大丈夫?」
里座「はい…。
まだ体調が優れませんが、
咳の方は落ち着きました。
食欲も戻ってきたみたいです。」
それを聞いた染好は
里座を食事に誘おうとした…が、
染好「里座さんっ!えっと…」
里座「?」
染好「よかったら、あの…」
チェリー「一緒にお昼
ご飯食べませんか?だチェリ!」
飛岸「(チェ、チェリー!?)」
フォローの積もりだったのか、
チェリーがペンの姿のまま
しゃべった!
いや、フォローはいいのだが、
チェリーの口癖が入ってるw
染好「あ!?えっと、
チェリチェリ…w ははは…w」
だが逆にこの口癖がよかった
ようで、里座はクスッと笑うと
笑顔でこう答えた。
里座「面白い人ね。いいわ、
一緒にお昼ご飯食べましょう。」
染好「あ、
ありがとうございます!」
飛岸「ならさ、
いい場所があるんだ!
そこなら風通しいいし
楽だと思うよ!」
里座「うふふ、楽しみですわ。」
染好「それじゃあ行こうよ。
藤木先生、
ありがとうございました。」
ーーーーーーーーーーーーー
3人で廊下を歩いていると、
道中、里座にそっくりな女の人
2人とすれ違った。
靴の色を見ると…あれ?3年生?
染好「え!?」
飛岸「マジか…!?
あんた3つ子だったの!?」
里座「…はい、私は末っ子です。」
染好「あれ?じゃあなんで
学年が違うの?」
里座「…詳しい話は別の場所で
したいです。
あなた達なら…
話せそうできそうだから。」
そう言ってわずかに微笑む里座。
飛岸「OK!んじゃ早く
私の秘密の場所へ行こう!」
ーーーーーーーーーーーーー
飛岸は人目を盗みながら進むと、
誰も来ないような場所に
扉を見つけ、鍵を開けて
2人を中に入れてまた鍵を閉めた。
扉の先には
短かい階段が続いている。
飛岸「へへっ!もう少しだよ!」
手すりに捕まりながら登る里座、
それを支える染好。
先には進んで上に付く飛岸。
扉を開けると…!
染好「うわぁ…!」
里座「なんて素敵なの…!」
自分が病弱なのも忘れて
階段を駆け上がる里座。
それを追いかける染好。
扉を支える飛岸。
扉の向こうには青空。
桜色の町の景色。
優しく吹き抜ける風。
そこはこの学校で忘れ去られた…
秘密の屋上だった。
柵の近くにはちょうど良さそうな
3つの木箱が並んでいる。
飛岸「ほらそこ!ここが特等席!」
と言いながら真ん中の木箱に
軽く飛んで座る飛岸。
里座は近くの左の木箱、
染好はあまった右の木箱に座った。
里座「素敵な景色、
この学校にこんな
場所があったのね。
町中なのに空気がキレイ…」
染好「すごいよ飛岸!
どうやってこの場所見つけたの?」
飛岸「偶然見つけたのさw
入学当時1人ふざけて
探検してたっけ、
ここにたどり着いたんだ。
それ以来逃げたい時とかは
ここに来るようになったのさ。
2人もなんかあったら
ここに来るといいよ。
…っと、お腹空いたねw
とっととお昼ご飯
食べちゃいますかw」
と言いながら持ってきた
お昼ご飯を開ける飛岸。
それを見た2人も
お昼ご飯を出した。
染好はコンビニで買った
大きめのおにぎりとからあげ、
飛岸は豪快なトンカツ弁当。
里座は…
うおw これはすごいなw
栄養バランスの良い
手作りのお弁当だ。
あと、染好は里座から
見えない位置に抹茶大福と
1本のペンを置いた。
ペンだったチェリーはぽんっと
音と煙を上げて元の姿に戻った。
染好「いただきます。」
チェリー「染好ありがとう
だチェリ、いただきますチェリ。
(小声」
みんな最初はそれぞれの
食事を楽しんだ。
チェリー「(もきゅもきゅ…)
ちょっと苦いお茶の風味が
口いっぱいに広がって
おいしいチェリぃ〜♡(小声」
3分の1位食べた所で
おしゃべりを始める。
飛岸「そういやさ、
里座さん…だっけ?」
里座「里座晦です、
ご自由に呼んで下さい。」
飛岸「んじゃ里座でw
里座の弁当すんごいね、
自分で作ったの?」
里座「いえ、私の親が
作ってくれたんです。
私の両親は父親が医者で、
母親が介護職専門の調理師なので、
こうして私の体にあったお弁当を
毎朝作ってくれるんですよ。」
飛岸「へぇ〜、すんごいもんだねw」
私も病気になればそんなふうに
気を使ってくれるだろうか…
いやならないな。
そう考えながら染好は大きな
おにぎりにかぶりついた。
染好「飛岸のお弁当は?」
飛岸「私の?あぁ中食中食w
近所のスーパーで割引してんの
買って丼にしてるだけw
たくさん食わないと運動するための
エネルギーが取れないからね!」
染好「飛岸は運動するのが
大好きだもんね。」
飛岸「えへへぇ〜w」
その後、お弁当の話をしながら
食事を食べ進め、完食した。
すると、しゃべる余裕が
出てきたのか、話はシリアスな
方向の話になった。
染好「そういえば、
「詳しい話」まだ聞いてないね。
里座、聞かせてもらっていい?」
里座「…わかったわ。
私は3つ子の末っ子。
最後に生まれたせいか…
生まれつき体が病弱だったの。
その分お姉様2人は元気に、
健康に育ったわ。
それに比べて私は…
幾度となくいろんな
病気にかかって
入院を繰り返したの。
だから勉強も病室でしてて…
でも自習だけじゃ
ダメだったみたい。
それでお姉様とは違い
学力が劣って…
3つ子なのに学年が
違うなんてことになったのよ。
混乱させてごめんなさいね。」
飛岸「いやいや全然!
あやまんなくていいよ!」
染好「1人で頑張ってたんだね…
すごいよ里座!」
里座「1人…」
染好「え?なんかいった?」
里座「なんでもありません。
(キーンコーンカーンコーン…)
ほら、チャイムが鳴りましたよ。
それぞれの教室へ戻りましょう。」
飛岸「ふぃ〜。
2人ともまた放課後ね!」
染好「うん、またね。」
里座「はい、また会いましょう。」
そう言って一旦解散する
飛岸と里座、それとこっそり
ペン姿のチェリーを回収する染好。
ーーーーーーーーーーーーー
おっと、1つ言い忘れてた。
3人のクラスは皆バラバラ。
この学校のクラスは3つあり、
染好はI組
飛岸はJ組
里座はK組
といった感じだ。
なぜIJKなのかはこの学校の
七不思議に入る位謎だ。
放課後、クラスがバラバラな3人は
学校の玄関に集合した。
今日は気分を変えて近くにある
カフェによった。
3人でそれぞれが好きなパフェを
楽しそうに食べている。
染好はチェリーを自分の隣に
こっそり座らせ、
ミニパフェとスプーンを渡した。
チェリー「うわぁ〜!
こんなかわいい食べ物初めて
チェリぃ〜!
いただきますチェリ!(小声」
食べながらたわいもない
おしゃべりを3人でする。
飛岸「染好って
チョコレートパフェ好きなの?」
染好「あぁ私のお父さ…
昔から好きなんだよねぇ〜♡」
飛岸「?、そうなんだ。」
染好はとっさに言葉を飲み込んだ。
「お父さんが好きだったから」
そう言いかけた自分に
嫌悪感を持つ。
飛岸「里座は抹茶か。
わっふぅ〜♫」
里座「昔茶道部に入ってた位
抹茶が好きなんです。」
飛岸「へぇ〜。
ま、でも私の甘いもの好きには
劣るけどねぇ〜うふふw」
染好「だからって
同じパフェ2つも食べるのは
ちょっとおかしいでしょw
しかもコーヒーだし!」
飛岸「コーヒー好きの甘党も
いるのだ!アハハハw」
里座「うふふ…あっ、」
3人が完食しかけた時、
里座はあるものを見つけた。
染好「どうしたの?あっち?」
染好も里座の見る方向を
見てみると、里座そっくりな2人が
立っているフォーマルな服装の
大人の男性と何か話している。
飛岸「あれ?里座のお姉さん
じゃない?なにやってんの?
もしかして恋人?w」
染好「…里座?」
里座「あ、いや、なんとなく…
お姉様達は脅迫みたいなものを
受けているように感じるんです。」
2人「脅迫!?」
里座「…間違い無いです。
お姉様達は気が強いので平喘と
していますが、危ない状況
なのは確かです。
…一卵性の3つ子だから
大体はわかるんです。」
場の空気が緊張状態に包まれると、
チェリーが染好に食べ終わった
ミニパフェの皿を渡して
染好の太ももの上で
うつ伏せになり、耳を持って
飛岸に話しかけた。
チェリー「染好、ちょっと
ごめんチェリ。(小声」
染好「うん。(小声」
染好は気を使って耳ごと
チェリーの頭を軽く抑えた。
その間、染好が里座とまた別の会話を切り出して里座の気をそらす。
チェリー「飛岸飛岸!(小声」
飛岸「ん?どしたチェリー?(小声」
チェリー「変身ステッキを
使うチェリ!
飛岸の魔法なら聴力を強化すれば
話を聞けるチェリ!(小声」
飛岸「そうなの!?(小声」
チェリー「そうチェリ!
ちなみに、染好は魔法を放つのが
得意だから、この仕事は
飛岸がやるべきチェリ!
変身じゃないから宝石に
光を貯めなくても大丈夫チェリ。
(小声」
飛岸「わかった。」
飛岸は自分のバックから
変身ステッキを取り出すと、
小声で呪文を唱えた。
飛岸「桜の力、
花ビラと共に我が耳を済ませよ。」
すると、変身ステッキが淡く光り、
2枚の…そうだな…
十円玉2枚分位の
大きさの花ビラが現れた。
自然の理に反して花ビラは
ひらひらと宙を舞い、
飛岸の耳元で
イヤリングに変化した。
その瞬間、飛岸の鼓膜は
急激に冴え渡り、
思わず飛岸は耳を塞いだ。
飛岸「…!」
里座「飛岸?どうしたんですか?」
染好「だ、大丈夫?」
飛岸「あ、ちょっと
耳にゴミが入ってさw
アハハハww」
あまりに強引な理由である…
しばらくして、冴え渡った鼓膜に
慣れた飛岸は
そっと手を離した。
里座の姉達の方に意識を
集中させると、
簡単に会話を盗み聞き
することが出来た。
里座句「知りませんわ。
なんのことですの?」
里座栗「ですよねお姉様、
私たちにはさっぱりですわ。」
「とぼけない方が身のためだぞ。
特にお前、変わった
うさぎのぬいぐるみを
見たことがあるはずだろう。」
里座句「見たことありますけど、
それがあなたにとって何の特に
なりますの?」
里座栗「お話するのは
面倒ですよねお姉様!」
里座句「えぇ、そういうことです。
あなたに話すことは
一切ありませんわ。」
里座栗「さぁ早く帰りなさい、
紅茶が冷めてしまいますわ。」
里座姉妹「うふふふ…♡」
飛岸(つくづく気の強い姉妹だな…w
あんなの姉に持ってる
里座も大変だろうな…)
ことごとく目の前にいる男性を
遠回しに侮辱する里座の姉2人。
…長々と話をしていたようだが、
ついに男性の表情が変わった。
ダアアアンッ!!
…ピシピシッ
男性が顔をしかめてテーブルを
叩くと、叩いた部分を中心に
テーブルの一部が凍りついた。
「とぼけるなと言ったはずだが?」
さすがの2人も
「あらあら…」とは言うものの、
あまりしゃべらなくなった。
大きな音を聞きつけたのか、
ここのカフェの
女性店員がやってきた。
突然の出来事にオロオロしている。
「すいませんお客様、
テーブルを叩くのは
やめていただきたいのですが…」
「黙れ」
取り込み中に首を突っ込まれたのが気に入らなかったのか、
男性は女性の店員に
魔法をぶつけて凍らせた!
人を凍らせたにも関わらず、
男性は涼しげだ。
他の客は何が起きたのかわからず、悲鳴を上げて店の外へ出て行った。
店長「こらぁ!!
何をしてい…
…菖蒲?」
前からこの店に来ていた
染好と飛岸は知っていた。
あの店員は店長の奥さんだ…!
表情が凍りつく店長に
男性はすかさず
魔法の冷たい風を浴びせた。
すると店長の胸の辺りから
うっすらと光るハート型の氷が
出てきた。
店長はその場にどさっと倒れる…
ハート型の氷にフリーズはすかさず
先ほどより強力な魔法をかけた!
「フローズンハート!
その冷たさで全てを冷やせ!!」
魔法をかけられたハート型の氷は
ビキビキとひび割れながら
膨れ上がり、色付き、
巨大なコーヒーカップの
闇氷になった。
中のコーヒーは
キンキンに冷えている。
「…せまいな。
フローズンルーム!
空間を凍らせ押し広げよ!!」
そう男性が唱えると、
男性に冷風がまといはじめ、
カフェ全体が凍りつき始めた。
チェリー「ここにいたら
危ないチェリ…!
どこか身を隠せそうな場所は
ないチェリー?(小声)」
染好「え!?えっと…」
ピキピキと音を立てて
カフェが膨れ上がる中、
染好はカフェの一角に
トイレの廊下を見つけた。
染好「あそこに行こう!」
そう言ってチェリーを抱いて
トイレの廊下に駆け込む染好。
飛岸「トイレ?
まぁいいや急ごう!
悪いけど里座も急いで!」
イヤリングを外して自分も
トイレの廊下に駆け込む飛岸。
里座「お姉様!こちらへ!」
謎の男性が魔法に集中し、
周りが見えていないと予測した
里座は自分の姉を遠くから呼んだ。
里座句「晦!?
どうしてこちらに!?」
里座栗「細かいことは
後にしましょうお姉様。」
里座句「そうですわね…
この人に色々と少し
言いすぎちゃったかしら?」
そう言って3つ子で
トイレの廊下に駆け込む。
5人全員がトイレの廊下に
収まった頃、凍結がトイレの廊下の入口にまで迫った。
里座「2人とも、
ここに隠れて下さいませ。」
里座姉妹「ここに?」
里座「私はかまいません。
最近は調子がいいしそれに…」
バタン…カチャリ
飛岸「はぁ!?
ちょ、話の途中で
閉めやがったよ!?
ちょっと開けろよ!」
里座「いいんです、
お姉様の方が大事です。」
染好「でも…里座は体が…!」
里座「静かに、彼の魔法が
終わったようですわ。」
3人はトイレの廊下の入口から
こっそり除くと、男性の姿は
あのフォーマルな服装ではなく、
ウエットスーツのようなピシッと
した服装に変わっていた。
何より…男性は半透明だ。
その姿はまるで氷。
巨大なコーヒーカップの闇氷
はクルクルと回りながら
凍りつき、倍以上に膨れ上がった
カフェだった空間を
徘徊している。
「やれやれ…逃げ足の早い女だ。」
「フリーズ、オンナ、サガス!」
フリーズ「わかってるさ、
この空間からは解凍しない限り
出ることは出来ないからな。」
染好「闇氷がしゃべった…!?」
チェリー「注がれた魔力が
強い証拠チェリ、
多分冬将軍の手下の中で
一番強いチェリ。(小声)」
飛岸「このままここで
じっとしてても見つかるだけだね…
いっちょやりますか!」
染好「でも、ここには里座が…」
飛岸「あ?はっはっはっは!
大丈夫!染好だって簡単に
自分の正体を私に明かしたじゃん?
里座は大丈夫さ!
一緒にお昼食べて
いい人だってわかったし。
一回信じてみようよ!」
そう言って
ニカッと笑ってみせる飛岸。
染好「…うん、そうだよね。
よし!じゃあ早く
闇氷を溶かしちゃお!」
飛岸「あいよ!」
染好「里座!
チェリーを頼んだよ!」
里座「え?チェリー?ぬいぐるみ?
あ!?待って!!」
染好はチェリーを里座に託すと、
飛岸と共にトイレの廊下から
出てきた!
トイレの廊下から出て来て
初めてフリーズの出した
空間膨張魔法の恐ろしさを知った。
カフェにあった家具やテーブルの上の食べかけのスイーツ、
逃げ遅れた人々までが
すべて押しつぶされたように
ひん曲がり、凍りついていた。
すぐさま2人は
フリーズの目に入る。
フリーズ「ん?私の魔法が
効かない者もいたのか…。
ほぅ、魔力が強いようだな。
「魔力の強い人間は確保する」
冬将軍様の命令、
遂行させていただくよ。
やれ、闇氷。」
闇氷「コオオオヒイイイ!!!」
染好「飛岸!行くよ!」
飛岸「わかってるって!」
染好と飛岸はあらかじめ
それぞれのバックから抜き取っておいた
変身ステッキを構えると、
竹とんぼのように回し、
光を貯めて上に突き上げた!
2人「桜の力!
紅色の輝き!
黄色
チェリブロチェーンジっ!!」
そう2人が絶叫すると、
ステッキからたくさんの桜の花ビラが
生まれると、2人の首の辺りから
つま先に至るまで全てを包み、
最後には発光しながら弾けて
2人を桜うさぎに変身させた!
紅「春に咲き誇る赤き花!
桜うさぎっ!ベニブロ!」
黄「春に咲き荒ぶ黄色き花!
桜うさぎっ!キブロ!」
フリーズ「ほぅ…お前達が
桜うさぎだったのか。
探す手間が省けたな。
思う存分戦わせてもらうぞ…!」
闇氷「コオオオヒイイイ!!!」
フリーズが前に手をやると、
闇氷が桜うさぎ達に向かって
突進した!
黄「チェリブロステッキ!
桜の力よ!
我が足に宿り強化せよ!
加速!」
キブロが素早く自らに魔法をかけると、
闇氷に突っ込んで行った!
闇氷はコーヒーカップ型。
キブロはとってを掴んで
ぐるぐると回す!
闇氷「ココココォ!?」
紅「やあぁっ!」
そこに連続で殴る蹴るを
繰り返すベニブロ。
作戦はバッチリだ、
しばらくすれば浄化出来るまでに
ダメージが溜まるだろう。
…ところが
一向に様子は変わらない。
目を回して「ココココォ!?」
と鳴きはするものの、
ダメージを受けて
苦しむ様子はない。
紅「なんで
苦しまないんだろ?
キブロ!大丈夫!?」
黄「まだまだいける!
しばらく繰り返してみよう!」
ーーーーーーーーーーーーー
その頃、チェリーは里座に
自分の正体を明かし、
仲良くなって会話をしながら
ベニブロ達の戦闘が終わるのを
待っていた。
里座「うふふ♡妖精さんって
本当にいたんですね!
ケホコホ…」
チェリー「大丈夫チェリか?」
里座「ちょっと、ここの冷気で
肺が冷えてしまって…
コホコホ…」
チェリー「もう少しの辛抱チェリ!
ベニブロ達はしばらく
あの状態を繰り返していれば
いずれ倒せるチェリ!」
里座「…私にはそうは
見えませんの、
あのままでは2人とも
やられてしまいますわ。」
チェリー「えぇ!?
どうしてチェリか!?」
里座「それを説明するより、
今はその事実をあの2人に
伝えたいんです。
何かいい手立てはありますか?
ゲホ…」
チェリー「ん〜…この状態で
突っ込む方法は見当たらない
チェリね…」
里座「そうですか…
あ、なら、私を桜うさぎに
することは可能ですか?」
チェリー「チェチェ!?
いいチェリか?」
里座「ゲホッ!ゲホッ…
今は時間がありません、
お願いします。」
チェリー「わかったチェリ!」
そうチェリーが言うと、
残りの変身ステッキ、
桜の花ビラの形をした宝石が
2つ付いているのを取り出して
何やら唱え始めた。
チェリー「今から里座に合うように
変身ステッキを調整するチェリ、
準備はいいチェリか?
…っていうか体の方は
大丈夫チェリか?」
里座「お願いします、
落ち着いてきたので…いけます。」
チェリーは飛岸の返事にうなずくと、大きく息を吸い込んだ。
チェリー「チェリレリ
ルリリレリーズ!」
1つ目の呪文で
変身ステッキの宝石に光が灯り、
チェリー「チェリチェリ
チェリリルリース!」
2つ目の呪文で里座は
ごく微量な動悸を覚え、
里座「…!?
ゲホッ!ガホゴホッ!」
チェリー「ごめんチェリ…!
もう少しの辛抱チェリよ!
レリルリーズルリリース!」
3つ目の呪文で変身ステッキと
里座の心が共鳴した!
変身ステッキは里座の鼓動に
あわせて点滅している…
里座「はぁ…はぁ…」
チェリー「これでこの変身ステッキは里座専用になったチェリ、
変身する時は「桜の力!橙色の
輝き!チェリブロチェンジ!」って
言えば変身できるチェリよ。
お疲れ様チェリ…。」
そう言って優しく里座の
背中をさすってあげるチェリー。
里座はゼーゼーと息をしながら
必死に息を落ち着かせた。
ーーーーーーーーーーーーー
黄「だああああぁ!!
やっぱりこいつ自分から
ぐるぐるぐるぐる回ってるよ!!」
何故かベニブロの攻撃は
全く効かず、いつの間にか
闇氷がめちゃめちゃにキブロを
振り回す形になっている…
ベニブロは早すぎる闇氷の回転に
一旦距離をおいていた。
キブロを助けようとタイミングを
図っている。
紅「ごめん!耐えて!
今こいつ止めるから!」
黄「そう言われても
腕が持たな…」
闇氷「コオオオヒイイイ!!!」
すると、闇氷が回転に
一瞬強い勢いを持たせた。
キブロはそれに耐え切れず
吹っ飛ばされてしまう。
吹っ飛んだ先には…!
黄「わあああぁ!!」
紅「え!?ちょっと待っ」
ドカアアアッ!!
2人は大胆にぶつかると、
そのまま吹っ飛んで
凍った家具を破壊した。
相当強い勢いだったのか
ぐったりしている…
紅「うぅ…」
黄「ご、ごめん!痛っ…!」
フリーズ「少し闇氷に
手を加えただけでこんなにも
簡単にやられるとは…
残念だ。」
フリーズは2人に
とどめを刺そうと近づき…
里座「やめなさいっ!!
ぜぇ…ぜぇ…」
思いも寄らなかった登場人物に
フリーズは一旦手を止めた。
見ると、里座がチェリーに
支えられて立っている。
紅「里座!?」
黄「ちょ、
何で出てきたんだよ!!」
フリーズ「はぁ…まだ隠れている者がいたか。
ほおっておいて先に桜うさぎを」
チェリー「や、やめろっていってる
チェリこの細マッチョ!!」
カチンッ
多少ビビってはいたものの、
チェリーはおもいきって
NGワードらしき罵声を
フリーズに言い放った!
フリーズ「貴様…
ただの妖精の分際で生意気な…!」
チェリー「里座!今チェリ!
今なら2人から
気がそれてるチェリ!」
里座「はい…!」
里座は冷気を吸い込まないよう
静かに精一杯息を吸い込むと、
変身ステッキを
竹とんぼのように回し、
光を貯めて上に突き上げた!
里座「桜の力!
橙色の輝き、ケホッ…
チェリブロチェンジ!」
息がつまりかけながら
何とか変身の呪文を言いきった!
ステッキからたくさんの桜の花ビラが生まれると、里座の首の辺りからつま先に至るまで全てを包み、
最後には発光しながら弾けて
里座の姿を変えた!
他の2人とは違い、
ふんわりとした雰囲気の服に、
ほわほわプリティなスカート。
手袋は2人とおそろいの
絹の桜色でピシッと決めて、
橙色の桜の花ビラの
エンブレムがついたブーツ!
シンプルな紐のペンダントには
大きな桜の花ビラのチャーム、
背中には大きな桜の花びらの
形をした裏地が黄色い
ピンクのマント!
里座が頭を両手で
優しくぽふっと抑えると、
元からサラサラだった
ショートヘアは
長くなってオレンジに染まり、
可愛らしい長い耳が2つ現れた!
橙「春に咲き渡る橙色の花!
桜うさぎっ!ダイブロ!」
橙「…あら?呼吸が楽?
え!?すごい体調がいいですわ!」
ダイブロは大きく息を吸い込んで
吐き出すと、一層かわいい顔で
嬉しそうに笑った。
フリーズ「何を笑っているんだ!
闇氷!やってしまえ!」
闇氷「コオオオヒイイイ!!!」
チェリー「ダイブロ!
「チェリブロステッキ」って
言うチェリ!」
橙「チェ、チェリブロステッキ?
きゃっ!?」
闇氷の突然の突進に
横にそれて尻餅をつくダイブロ、
手にはきちんとステッキが
握られている。
闇氷「コオオオヒイイイ!!!」
橙「いやぁ…!」
あまりの勢いに怯えるダイブロ
だったが、間一髪凍った家具の山に
チェリーを抱きしめて
もう一度突進してきた闇氷を
身を滑り込ませて回避した!
だが動きが制限されている。
フリーズ「愚かな…
そんな場所に潜り込んだら
動けないだろう。」
闇氷はダイブロが目の前に
いるせいか、ゴリゴリと
その身を家具の山に
密着させている。
これでは出られない…
だが、ダイブロには考えがあった。
橙「(頼みます、2人とも…!)
さっ、桜の力よ!
花ビラと共に我が同類を癒せ!」
震える手で黒いスイッチを押した後
ステッキを握りしめて
怯えるダイブロが
精一杯振り絞った声に、
きちんとステッキは反応した!
ステッキからはオレンジ色の
花ビラと暖かな風が溢れかえり、
家具の山から飛び出した!
闇氷「コヒッ!?」
ダイブロの放った魔法は
ふわりと飛び交い、
ベニブロ達の元へ届いた!
オレンジ色の花ビラはベニブロ達の傷に染み込み、柔らかな風が
2人の痛みを癒した!
紅「すごい…!
ありがとうダイブロ!」
橙「お役に立てて
嬉しいです…ひえぇ!」
黄「っていうか
早くそこをどけよ!!」
そう言って完全に回復した体で
闇氷に体当たりを喰らわすキブロ。
闇氷はぐらりとよろけて移動し、
ダイブロが家具の山から
出られるようになった!
ダイブロは家具の山から
出てくると、2人を呼んで
簡易的な説明をした。
橙「…ということなんです。
この予想が当たれば勝てます!」
黄「そういうことだったのか…
ベニブロみたいな物理的な魔法は
苦手だけど、やるしかないね!」
紅「よっしゃ!
早速始めようよ!」
橙「はいっ!」
黄「OK!
チェリブロステッキ!」
キブロはダイブロの作戦通り
自分のステッキを出現させると、
ダイブロと共に呪文を唱えた!
黄&橙「桜の力よ!
清き風で穢れた水を吹き飛ばせ!」
フリーズ「水だと…?
!?っ、まさか!?」
キブロとダイブロは2人で協力して同時に魔法を放った!
2人の放った2種類の風は
闇氷の上で混ざり、
黄色とオレンジの花ビラが入った
大きな竜巻になった!
闇氷「コヒィーー!!!」
闇氷は逃げるように膨れ上がった
カフェの中を逃げ回るが、
竜巻から逃げ切ることは
出来なかった。
黄「どりゃあっ!!」
橙「それっ!!」
2人が息を合わせてステッキを
振り下ろすと、竜巻が闇氷の中に
ぶちこまれた!
強力な竜巻が闇氷の中にある
キンキンに冷えたコーヒーを
すべて吹き飛ばす!
キブロ「今だ!
行っけーベニブロ!!」
ベニブロはそれを聞いて
闇氷の頭上に飛んだ!
ベニブロ「チェリブロステッキ!
あっ!ダイブロの
言った通りだ…!」
[闇氷のコーヒーカップの中には
冷たいコーヒーに守られている
弱点の核があるはず]
これがダイブロの予想だ。
ダイブロの予想は見事に当たった。
闇氷のコーヒーカップの中には
スイカぐらいの大きさの
真っ黒な角砂糖が入っている。
紅「桜の力よ!
その力を凝縮しぶつけたまえ!」
ベニブロは真っ黒な角砂糖めがけつ
光の球を正確にぶつけた!
闇氷「ゴオオオビイイイイ!?」
ベニブロの攻撃によって
真っ黒な角砂糖には
大きなヒビが入った。
闇氷はそれっきり、
あまり動かなくなった。
フリーズ「闇氷!!
…橙色の小娘、お前が1番
頭が働くらしいな…
やはりまずは貴様から」
黄「はいは〜い
大人しくしましょうねぇ〜!
桜の力よ!
ここにいる
細マッチョを拘束せよ!」
キブロはフリーズから
頭脳派のダイブロを守るため、
近くにあった凍った家具の山を
フリーズの上にワープさせた!
フリーズは家具の山に
押しつぶされて
身動きが取れなくなった!
フリーズ「なっ…!?」
紅「ダイブロ!
私が弱点出すから浄化をして!」
橙「は、はい?」
紅「必殺技!
そのステッキの白いスイッチを
押して発動するの!」
そうベニブロは言うと、
闇氷のカップのふちを持ち、
おもいっきり押した!
紅「ふぬああああ!!」
ダイブロから闇氷の弱点は
見えるようになり、
ベニブロの抑え込みで
闇氷は身動きが取れなくなった!
ダイブロは素直にステッキの
白いスイッチを押すと、
七色のランプが順々に光り、
最後に光った先端の宝石は今までにないくらい強烈な光を放った!
呪文は自然と頭に流れ込んできた!
橙「ひ、冷えた心よ温まれ!
チェリブロラビット!
オレンジフローラル
シューター!!」
キブロが精一杯両手で
ステッキを強く振ると、
大きなオレンジの桜の
エンブレムが輝きながら飛び出し、
闇氷に直撃した!
闇氷「ハルウララァー!!…」
必殺技をくらった闇氷は
色をだんだん失いながら
大量の水蒸気を出して蒸発し、
最後にはキラキラ光る
ハートのオーブが残った。
フリーズ「…してやられたな。
次はこうは行かせん、
私のことを覚えておくがいい。
(その前に家具が重いな…)」
家具の山からそう
フリーズの声がすると、
家具の山の山から
魔法の吹雪が溢れ出てきた。
…どうやら逃げたようだ。
橙「ふ、ふぅ…」
ダイブロは息を付くと、
そのままその場に
倒れこんでしまった。
変身も同時に解ける。
紅「ダっ!?え、里座!?」
黄「大変じゃん!
チェリー!心戻す前に回復の魔…
え?」
すると、トイレから出てきたのか
里座の姉達が駆けつけた。
1人が里座に吸入ステロイド薬と
書いてある筒状の薬を吸わせ、
もう1人が里座の首から下…
気管があるあたりをさすった。
里座句「…流石に
晦に任せすぎたわね。」
里座栗「えぇ、お姉様。
トイレから出て様子を
見てましたが、
まさか倒れるとは…」
里座句「戻った時に変身時の
運動量が耐えられなかったのね。
次からは落ち着けてから
解かせないと…」
紅「あ、あの…」
里座栗「あらあら、
あなたは先程の!
先程は女の子なのにずいぶん…」
里座句「栗、ちょっと
お黙りになって。」
里座栗「お姉様…?」
すると、里座の1番上のお姉さんが
ベニブロの手を取り、
真剣な面持ちで話をしてきた。
里座句「染好さん…でしたね?
晦から聞きましたわ。」
染好「あ、はい!」
里座晦「晦には私たちが助けたことは内緒にしておいてください。
私たちが晦に嫌われなきゃいけないのには深い理由があるのです…
それより、あんなに元気で笑顔
溢れる晦を見たのは初めてです。
もしかしたら晦の抱いている
トラウマも…
あぁいや、なんでもないです。
私たちはあなた達の正体を
心の奥底に閉まっておきます。
晦を…頼みます。」
紅「は、はい!
里座はもう私たちの友達です!」
それを聞いた里座のお姉さんは
今まで見たことのないくらい
優しい顔で笑い返した。
里座「うぅ…ん…」
おっと、里座が
目を覚ましたようだ。
それを確認した
里座の1番上の姉は
染好の手をそっと外し、
里座の姉2人でスッと立って
コロっと表情を変えた。
里座句「あらあら、
そんなところで
眠ってしまうなんて、
情けないですわ。」
里座「あれ…?あ!お姉様!?
よくご無事で…」
里座栗「晦、
ご め ん な さ い は?」
里座「…申し訳ありません。」
里座句「さて、私たちはこの寒い
空間が戻るまで
はしたないトイレで
待ちましょう。」
そう言ってトイレに戻る2人、
里座句「後は頼みましたよ(小声」
染好にそう耳打ちをして。
チェリー「…もう動いても
いいチェリか?」
里座「えぇ、お姉様達は
またトイレに避難いたしました。」
チェリー「わかったチェリ!」
そう言うと、チェリーは移動して
先ほど闇氷から出てきた光る
ハートのオーブに手をかざした。
チェリー「春よ訪れよ!」
そうチェリーが唱えると、
ハートのオーブは一層輝きだし、
1つの光を放った!
途中、その光は2つに別れた。
1つはチェリーの中に、
もう1つは何回か弾けて
カフェ全体に広がっていった!
凍りつき、ひん曲がっていた
家具や人々は皆大量の水蒸気を
発しながら全て元に戻り、
カフェ自体も元の広さに
戻っていった。
ベニブロとキブロも変身を解き、
染好と飛岸に戻る。
ーーーーーーーーーーーーー
あの後、しばらく客達や
心を戻された店長と妻の店員は
混乱に陥ってしまったが、
症状が落ち着いた里座が
上手いこと誤魔化してくれた。
染好「いや〜なんとか
誤魔化してくれて助かったよ里座!
まさか店の中まで
冬将軍の手下が現れるとは
思わなかったし。」
里座「お役に立てて嬉しいです。」
飛岸「上手いこと
理解してくれたよね、
お代がタダになったのは
美味しかったよね!」
里座「「何が起きたのかは
忘れたけど、あなた達が助けて
くれたのはなんとなく
覚えています。
ありがとうございます。」
でしたっけ?」
飛岸「それそれ!
まさか覚えてるなんて
思ってもいなかったよな(笑)」
チェリー「魔力の注ぎ方が
高度な証拠チェリ!
みんなお疲れ様チェリ。」
染好「ありがとうチェリー!
…うふふっ♫」
飛岸「そういやさ、あんな
激しい戦いの後だってのに
なんでご機嫌なん?」
染好「あ、ごめん。
…なんか、やっと桜うさぎが
揃ったなって。」
チェリー「そういえばそうチェリ!
もう桜の木から授かった
聖なる枝はないチェリ。
これで全員チェリね!」
それを聞いた染好は
飛岸と里座の手をぎゅっと
握りしめた!
染好「これから仲間同士
がんばろうね!」
いきなり手を握られた2人は
最初驚いたが、その後こう言った。
飛岸「うん!よろしくな!」
里座「こちらこそ、これからも
よろしくお願いします。」
チェリー「チェリーもチェリ!
みんなで頑張るチェリ!
…おわっぷ!?」
重なる3人の手に
自分も手を置こうとするが、
勢い余って覆いかぶさるチェリー。
チェリー「ぷにゅう…」
そう言ったチェリーを見て
あははっ笑い出す3人。
なんだか楽しそうだ。
それぞれのトラウマで
孤独になっていた3人。
桜の導きにより引かれた3人。
桜うさぎの物語は
まだ始まったばかりだ!
ーーーーーーーーーーーーー
一方とある場所では…
滅多に怒らないフリーズが
暴れていた。
ゴガアアアンッ!!
コールド「ちょ、ちょ!?
急にその辺の大岩割るなよ!
結構でかい音するんだぜ!?」
フリーズ「うるさあああい!!」
バコオオオン!!
コールド「どあぁ!?」
アイス「全く…
仕方ないわコールド、
フリーズは普段は怒らない分
こうやって大岩を割って
発散しているのだから。
…にしても量が多いわねw
誰かに細マッチョとでも
言われたのかしら?」
それを聞いたフリーズは
最後の大岩を割ると、
冷静になって
アイスに話しかけた。
フリーズ「…あぁ、3人目の
桜うさぎが現れた時に
黄色い桜うさぎに言われたんだ。」
コールド「(あ、急に落ち着いた。)」
アイス「やっぱり
あの黄色い小娘ね…
それにしても、
どうしようかしらね…
桜うさぎが揃ってしまうなんて…」
フリーズ「あぁ、
これからどうするかの
方針を決めなきゃな。」
コールド「…ん?
ちょ、おい!あれ!」
探知能力の高いコールドは、
空の向こうから吹いてくる
とてつもない強さの
吹雪を見つけた。
それはすぐに3人の元へ
たどり着き、びゅうびゅうと
音を立てて吹いた。
3人「冬将軍様!」
それが冬将軍の伝言だとわかると、
3人は膝末いた。
[より冷たい心を探せ
それを凍らせれば
強力な闇氷を作れる]
そう風がささやくと、
吹雪はあっという間に止んだ。
フリーズ「…決まりだな。」
コールド「より冷たい心?
確かに俺らは心が冷えてるか
見れるけど…
ん?どういうこと?」
フリーズ「お前知らないのか…?」
コールド「え?」
フリーズ「闇氷な、元は人の心。
それがしばらく闇氷の状態で
行動させることができれば
闇氷は凝縮して
人の心は完全に凍り、
二度と解けない
「闇の氷」になるんだ。
その果てしない冷たさときたら…
我々の源となり、
冬将軍の軍の武器になる。」
コールド「そうだったのか…
なんかなんも知らなかったなw」
アイス「なんだか面白そうね♡」
フリーズ「だが完全に凍らせるには
長い時間がかかる。」
コールド「それじゃ
桜うさぎが来ちゃうねw
…あ、桜うさぎに勝たなきゃ
闇の氷はできないってことか。」
フリーズ「お前もたまには
頭が働くんだな。」
コールド「ひ、ひっどいな!?」
フリーズ「まぁいい、
後日行動開始だ。
きっと長い戦いになる…。」
ーーーーーーーーーーーーー
そうフリーズがつぶやく頃、
染好達の通う学校では
放課後の部活動が
まだ続いていた。
そんな中、学校の玄関で
男女の先輩後輩が話をしていた。
「もっと画風を変えるべきだね、
君の絵はゆるすぎる。」
「え…でもいくら練習しても
こんなゆるいのしか
上手く行かないんですよ!
こういうリアルなの出来るのは
模写ぐらいだし…」
「ならこれからは
模写を書き続けろ、
それ以外は認めん。」
「えぇ!?」
「再来週の締め切りまでには
間に合わせろよ。
でないと部活雑誌「トゥインクル」
の完成が遅れるからな。」
そう言って部室に戻る先輩。
「むぅ…リアルな画風が
全てじゃないのにな…
これじゃ締め切りに
間に合わないよ…」
To be continued next time♡