[第九話 普通の2倍はあるんです!? 里座の義兄は片腕さん]
遅れて申し訳ない…
学祭の仕事やらでひどく忙しいんです。
里座句「出かける前の
準備は出来たの?」
里座「はい、お姉様。」
里座句「ちゃんと出来た?」
里座「はい、確かに。」
里座句「本当に?」
里座「間違いありません。」
里座句「…その瞳は
嘘をついていないようね。」
里座栗「句お姉様、点検が終わりました。」
里座句「よろしい、では参りましょう。
本日も綺麗な言葉と行動を
心がけるように。」
里座栗「はい、お姉様。」
里座「はい、句…お姉様。」
染好達の通う学校から
バス停3駅程離れた場所…
そこには海が近いエリアだ。
その一角…2件の大きな家があった。
表札名は2つとも「里座」
海沿いにある家から
瓜二つ…いや三つの
女子生徒が出てきた。
2人は楽しそうに会話をしながら
歩いて行ったが、
もう1人、顔が2人より青白い子は
杖をつきながらゆっくりと歩いている。
里座晦だ。
本人いわく、もう杖なしで歩けるまでに
回復しているが、
お姉様達に言われて
長距離を歩く場合は
杖を使うようにしているらしい。
折りたたみ式なので
目的地の手前で閉まっているため、
今のところ誰にも知られていない。
しばらく歩いていくと、
とある公園の裏手に出た。
染好達のよく使う公園だ。
杖を折りたたんで閉まってから
公園に入る。
そこには1番早い染好と
2番目に早い飛岸がいる。
染好「あっ!おはよう里座!」
里座「おはようございます。」
飛岸「そんじゃあ行こっか!
今日も一日頑張るぞお!」
3人で合流すると
染好と飛岸はベンチから立ち、
里座を連れて登校を再開した。
しばらくして校門に着いた…のだが、
なんだか騒がしい。
「うわあ…なにあれ…」
「ちょ、お前が助けに行けよ!」
「何で私なのよ!?」
染好「なんの騒ぎだろ…?」
「あっ!染好さん!」
「ちょっと染好さんが行って来てよ!」
染好「えっ?あ、」
飛岸「やめろって!強引過ぎだろ!」
里座「あ、待ってください!」
染好は他の生徒に引っ張られ、
野次馬の集団のど真ん中に空いた
空間に突き飛ばされた。
染好「わっ!?」
それを飛岸と里座が支える。
里座「大丈夫ですか?」
飛岸「ちょっと!
染好は道具じゃないんだけど!!(怒)」
染好「…ん?」
3人の目の前には咳き込んで
しゃがみ込むメガネの青年がいた。
その青年は片腕しかなく、
その長さは2倍近くある。
?「ゴホッ!かは、ぐへっ…」
その青年を見た里座は
ハッとしたようになり、
青年に駆け寄った。
里座「片腕さん!?
病院に入院してたんじゃ…
大丈夫ですか!?」
片腕さん?「晦ちゃん…?
あぁ、そっか。
もうそんな歳ゴホガホ!…」
里座「2人とも手伝ってください!
片腕さんを保健室に運びます!
染好は保健室の鍵、
飛岸は運ぶのを手伝ってください!」
染好「わかったよ!」
飛岸「よっしゃ!背負っていくよ!」
ーーーーーーーーーーーーー
片腕さん?「……ぅ?ここは…」
青年が目を覚ますと、
そこは保健室のベットの上。
里座が心配そうに彼を覗き込んでいる。
里座「○○高校の保健室です。
私ので悪いですが…
「サウダージ病」の薬を
吸ってもらいました。」
片腕さん?「そうだったのか…
久々に会ったのに、
君には迷惑かけちゃったね。」
染好「片腕さん?」
飛岸「てかサウダージ病って…」
里座「あぁ、2人には
まだ言っていませんでしたか…
私の持病なんです。」
その後、里座は丁寧に
サウダージ病の説明をした。
…まぁ正直長かったからまとめるとw
サウダージ病というのは、
簡単にいえば肺に異常をきたす病で…
まぁ喘息より一段階上の
病と考えてもらっていい。
重症化すれば呼吸困難に陥り死に至る…
喘息の薬である程度症状が
治まることがわかっているが、
根本的な治療法のない
死と隣り合わせの恐ろしい病だ。
名前の由来になったサウダージは、
元々ポルトガル語で
郷愁、憧憬、思慕、切なさ…
などの意味合いを持っており、
発作時にそれに似た感情を得ることから
この名前が付いたらしい。
あ、言っておくけど
実際にはない病気だよ。
里座「それで、この人が
私の隣の病室にいた人です。」
片腕さん?「まぁそうなるよね…w
自己紹介でもするよ、僕は」
透俵進吾18♂
いつも明るく爽やかな青年。
里座とは病院での幼馴染みで、
片腕さんと呼ばれている。
先天性サウダージ病で、
その長い片腕は
サウダージ病による奇形。
進吾「めでたく病院から
許可がおりてね、
やっと自宅療養が
出来るようになったのさ。
でも…まだ外の空気に
慣れていなかったみたいで…」
里座「人の多い場所は
ストレスが溜まるんですよ。」
染好「え?じゃあ何で里座は平気なの?
いっつも人の波に飲まれて…」
里座「それは…」
それを言う時の里座の顔は微笑んでいた。
里座「心の拠り所があったからです。
親友と一緒にいるとストレスが
溜まらないんですよ。」
染好「里座…」
キーンコーンカーンコーン
進吾「おっと、
チャイムが鳴ったみたいだね。
僕は用事があるから
職員室に行くよ。」
里座「えっ、体調の方は大丈夫ですか?」
進吾「晦ちゃんの薬のおかげでね。」
そう言って彼は立ち上がると、
布団をキレイにたたみ直して
保健室を出て行った。
染好「行っちゃった…。」
飛岸「うちらもそれぞれの教室に戻るか。
朝の会が始まっちまうw」
里座「そうですね。」
ーーーーーーーーーーーーー
起立!礼!おはようございます!
適当な挨拶から始まる朝の会。
みんな全然担任の話を聞いていないw
染好はそんなI組を見て
ため息をついた。
染好「うるさいなぁ…」
担任「静かに!今日はみんなに
新しい仲間を紹介する!」
それを聞いたI組一同は騒然となった。
何せここは高校、
高校で転校生なんて珍しいもの。
騒ぐのも無理はない。
担任「透俵君、入りなさい。」
染好(…ん?透俵?)
入って来たのは
先程染好達が会った青年、
透俵進吾だった。
担任は白いチョークを手に取ると、
黒板に名前を書き出した。
担任「今日からこのクラスで
共に過ごすことになった透俵進吾だ。
みんな、仲良くしろよ。」
命令形かよ…w
というI組一同のツッコミをよそに、
進吾は挨拶をした。
進吾「透俵進吾です、
よろしくお願いします。」
そう言うと、染好を発端に
I組一同は拍手を進吾に送った。
担任「では、進吾君は…
幡生の横の席が空いてるな、
そこに座ってくれ。」
進吾「はい、わかりました。」
幡生の隣の席…
ようは染好の一つ前の席だ。
先日、1人の生徒が
この学校を自主退した。
そんなこともあり、
そこの席がちょうど
スッポリ抜けていたのだ。
穴を埋める形で
進吾は席に座った。
周りからは何も言われなかった。
まぁ最初だし、長い片腕の彼に
君悪がっているんだろう。
担任「では、ちゃんと
授業の準備をしておくように!」
起立!礼!着席!
ーーーーーーーーーーーーー
お昼休み、3人は進吾を屋上へ招待した。
飛岸は立って食いたいといい、
進吾に木箱を譲る。
進吾「えっ?いいの?」
飛岸「ほら、私アホみたいに
頑丈で男みたいだからさw
それに、今日は立って
食いたい気分なの!」
進吾「ありがとう飛岸さん。」
さて、屋上といったら…ご飯でしょうw
早速4人のお昼ご飯をお教えしよう。
染好はチョコクリームと
カスタードが入った
大きなダブルクリームパンをがぶり!
飛岸は相変わらずの丼ものw
今日はクリームコロッケ。
里座は定番の健康弁当、
今日のはチーズが多くイタリアン。
進吾は野菜炒めとおにぎり、
自炊してるっていうから驚いた。
染好「具は何?」
進吾「…あ、僕?
鳥そぼろとおかかだよ。
おかかの甘さが
鳥そぼろに合うんだよね。」
染好「へぇ〜。」
飛岸「そういえば里座の
病名知らんかったな…
何だっけ?」
里座「サウダージ病です。」
飛岸「そう!それそれ。
今朝はひどかったなぁ…
誰も手出ししないで見てるだけだよ?
世の中腐ってるじゃん!」
進吾「みんな君悪がるのも仕方ないよ、
こんな腕だもんw
3人に来てもらって
本当に助かったよ。」
里座「あのままだったら
病院に逆戻りでしたね…
あれ?でも片腕さんの薬は…」
進吾「僕のは錠剤なんだよ、
晦ちゃんより効力は強い。
水がないあの状況じゃ
飲めなかったんだ。
病院に逆戻りは勘弁して欲しいなw」
里座「そうですね、
病院での生活はあまりにも退屈です。」
そんな感じで休学していた
進吾の復帰を軽く祝った。
屋上の扉の裏には…
ゆ、弓孤ちゃんw
弓孤は遠く…離れた場所から
楽しそうにしているのを
見るのが好きだった。
今日はバターロールと
オレンジジュース。
バターの濃い感じを
オレンジジュースの酸味が
さっぱりさせてくれる。
弓孤「♪」
…と、その時、
キイィ…チッ…バアアンッ!!
弓孤「!?」
突然聞こえた舌打ちと
扉の開け閉めの音。
弓孤は驚いて階段をおり、
扉を開いたが…
そこにはすでに誰もいなかった。
そこへ染好と飛岸がやって来た。
染好「なっ、何の音?」
飛岸「あれ?弓孤ちゃん?」
弓孤「誰かが…
入って、舌打ちして、
…逃げて行った。」
染好「姿は見てないの?」
弓孤「…見てない。」
染好「そっか…」
飛岸「まぁこんなところで
食べるのもあれだし、
こっちに来なよw」
弓孤「うん。」
ーーーーーーーーーーーーー
里座「覗き…ですか?」
飛岸「みたいなんだ。
ったく誰が覗きなんか…」
弓孤「私みたいな…人?」
染好「そうだったら舌打ちして
逃げたりはしないよw」
進吾「………。」
里座「片腕さん?
どうしたんですか?」
進吾「あ、いや…
なんだか嫌な予感がしてね…」
里座「嫌な予感?」
進吾「僕からしてみたら、
「何か目的があって来たけど、
誰かいたから諦めた。」
という風に聞こえるんだ。
目的はさすがにわからないけど。」
染好「私もそう思うよ。
じゃなかったら舌打ちはないしw」
飛岸「これから気をつけなきゃな…」
キーンコーンカーンコーン
話が終わる頃、
ちょうどチャイムが鳴った。
里座「今日のところは
この辺で解散ですね。
では、皆さん4時間目からも
頑張りましょう。」
飛岸「了解!居眠りします!」
染好「こら!w
ちゃんと受けなよ!」
飛岸「ふぃ〜w」
弓孤「またね…。」
進吾「晦ちゃんも身体に気をつけてね。」
里座「はい!片腕さん!」
帰り道、一緒のクラスの
進吾と染好は一緒に戻っていた。
廊下をテクテク歩く。
染好「あの…」
進吾「ん?…あぁw
腕に触りたいんでしょ?」
染好「えっ、」
進吾「ふふっ、言わなくてもわかるよ。
うちの家計が職業柄、
心理について詳しいからね。
大帝のことなら
何を考えているかわかるんだ。
…どうしたの?どうぞ。」
染好「あっ、じゃあ…失礼します。」
実を言うと、染好はずっと
進吾の腕が気になっていた。
こんなに長いんだったら
骨とかもろく細くなってないのか…
進吾が差し出した腕に
いざ触ってみると、
意外なことに結構しっかりしていた。
筋肉も長さはあったが
普通よりあるんじゃないか
くらいしっかりしていた。
染好「あれ?」
進吾「生まれた時からこうだからね、
将来的に骨が細くならないように
小さい時から工夫してたんだ。
おかげでこんな長いのに
かなり丈夫だよ。」
染好「地道な努力か…
なんかすごいねw」
進吾「ありがとう、えっと…」
染好「あ、まだ言ってなかったっけ?
私は吉野染好、
みんなからは染好って呼ばれてる。」
進吾「よろしく、染好ちゃん。」
染好「(ちゃ、ちゃん?w)
よろしく!進吾君!」
軽い雑談が終わる頃、
2人は廊下の曲がり角に差し掛かった。
…と、向こう側で
誰かが話しているようだ。
「そこまで言わなくても…!」
「何よ?お姉様達に逆らうつもり?」
「それは…」
「あなたは大人しく
従っていればいいのよ。」
「っ………!」
「栗!!」
「なっ、何?悪いのは晦よ!
さぁ、行きましょうお姉様。」
この一連の会話を2人は聞いて、
すぐに誰のものかわかった。
廊下の角を走って曲がると、
廊下のど真ん中に里座が倒れていた。
どうやら会話していたのは
里座三姉妹だったようだ。
染好「里座!?」
進吾「晦ちゃん!」
進吾が染好より早く
里座の元へたどり着くと、
彼女が息をしやすいように
抱いて起こした。
染好「里…座…。」
里座の今の顔…
染好は心当たりがあった。
悲しい顔だが、
どこか痛みに耐えるような顔。
里座の表情は曇り、
目から光が消えていた。
…里座の…トラウマだ。
里座は今、トラウマを思い出し
苦しんでいる。
進吾「…またお姉さん達に
色々言われたんだね。」
進吾がそう言うと、
里座は目に貯めていた雫を
すべてこぼした。
その泣き方は…
あまりにも静かだった。
里座「…私、三つ子のお姉様達に
どんどん追い越されて
ものを言われて…」
進吾の胸に顔を埋める。
進吾「大丈夫、晦ちゃんは
晦ちゃんのペースで
成長すればいいんだよ。」
そんな里座を進吾は長い腕で
里座の背中を撫でた。
染好「あ〜…ちょっと私
トイレ行ってくるわ。
先帰ってるね。(お忍び)」
染好は空気を読んで
その場を放置し、
女子トイレに向かった。
ーーーーーーーーーーーーー
用を足して手を洗い、
ハンカチで水分を拭き取ると
染好は一つ背伸びをする。
染好「ん〜…ふぅ。」
チェリー「みんなそれぞれ
辛い事があったチェリね。」
チェリーは人気がないのを確認すると、
ペン姿から元の姿に戻った。
染好「うん、それぞれのトラウマと
思い出しては戦っているのさ。」
チェリー「戦う?」
染好「あ、えっと…
克服するために頑張っているの。」
チェリー「克服チェリか!
そうチェリね!
何事も克服すれば楽になるし、
未来への力になるチェリ!」
染好「未来への力…か。」
チェリー「染好もゆ〜っくりと
克服すればいいチェリ、
お茶飲んで大福食べながら。」
染好「いや飲み食いしたら
やりずらいでしょw」
チェリー「「腹が減っては戦は出来ぬ」
だチェリ!」
染好「それは体力的な意味でしょ!?
もうww」
そうして笑い合う染好とチェリー、
こんな感じでいつも仲良くしている。
そしてトイレを出ようとした…その時、
突如スピーカーから
ドスの効いた声が飛び出した!
「「え〜◯◯高校の諸君!
今からここは我々の物になった!
ちょっとしたプレゼントも置いたから
せいぜい楽しむんだな!w
ギャハハハハハ!!
おっと、学校から出るんじゃねぇぞ?
誰かが逃げた瞬間から
ドカンだあああ!!!ww」」
染好はこの時、イタズラかなと思ったが…
女子トイレに響いた音が
これは現実だと教えてくれた。
カチ…カチ…カチ…
音のする方を見ると、
そこには…爆弾!?
染好「うわわわ!?」
慌てて後ろに下がった染好…
だが逆にチェリーは爆弾に寄って行った。
染好「チェ、チェリー!?
危ないよ!!」
チェリー「あ!これ知ってるチェリ!
火の国がよく作ってたチェリね。
しかも簡単なやつチェリw
これなら私にも壊せるチェリ!
今分解するチェリよ。」
チェリーはコードの束を引き抜いて
コードを何本か選ぶと、
ギュ〜ッと引っ張って引き抜いた!
染好「わっ!?わあああ!!
…あ、あれ?」
一瞬爆発するかと思ったが、
よく見ると爆弾はカウントをやめていた。
チェリー「この調子でいくチェリ!
爆弾の気配は…
一つの教室に1つずつあるチェリ!」
染好「だとしたらとんでもない数…
カウント15分とかだったし
間に合うかな?」
チェリー「余裕だチェリ!」
染好「すごいね…w
よし、じゃあ早速残りの爆弾を探そう!」
チェリー「おー!だチェリ!」
ーーーーーーーーーーーーー
一方3階、2年生一同は
パニック状態になっていた。
泣き出す者もいれば、
逃げ惑う者もいた。
廊下どころか学校全体が人の波に
さらわれたようなった。
飛岸「ちょ、暴れんなよ!
下に聞こえんぞ!?
染好と里座も見当たらないし…
ん〜どうしたもんか…」
「ちょ、聞いた?
別館3階から人質用の
2人の生徒が拉致されたんだって!
先生達もガムテープでぐるぐる巻き…
ミノムシ状態で職員室に
幽閉されているらしいわ!」
「人質用?!」
それを聞いた飛岸の背筋には
強烈な悪寒が走った。
飛岸「2人…っ!?まさか…!!」
飛岸はすぐに行動に出た。
人の波を押しのけて先に進む。
ーーーーーーーーーーーーー
カチャカチャ…カチャリッ
進吾「ふぅ…解除できた。
もう手を離していいよ。」
里座「はい。」
進吾と里座は近くの図書室に
一旦避難していた。
…が、そこには爆弾があった。
進吾は機械系の知識が優れており、
里座の協力も得て持参の道具も使い、
片手で解体した。
進吾「咳の方は大丈夫かい?」
里座「あっ、はい。大丈夫です。
片腕さんは?」
進吾「君のおかげですっかりね。
ありがとう晦ちゃん…晦ちゃん?」
里座「あっ、ごめんなさい。
ちょっとボーッとしていて…」
何をしてボーッとしていたんだろう…
その理由がわかるのは後としてw
ふと、廊下に人影が写る。
「あとどの位なの?」
「あと2〜3個チェリ!頑張るチェリ!」
「あ、そこの階段は通っちゃダメだよ。
放送室があるから…」
「あっちチェリか?
大丈夫チェリ!あっちに爆弾は…
染好、人が来るチェリ…!」
「え!?あ、こっち!」
そんな会話の後、
慌てて1人の生徒が入ってきた。
腕にはぬいぐるみを抱いている。
里座「染好!?」
進吾「染好ちゃんじゃないか?
こっちです!」
進吾は遠い距離から
染好の空いた片腕を捉え、
物陰へといざなった。
驚いて動揺する染好は口を塞いだ。
チェリーは…変身する暇がなかったのか
そのままぬいぐるみのふりをしているw
バアアァンッ!!
「ゴルアァ!!
誰かいんのかぁ!!」
強面のおっさんが入って来ると、
釘の刺さったバットをズルズルと
引きずって図書室を回った。
染好はあまりの恐怖に
涙をポロポロと。
里座は何かを我慢するように
喉を抑えながら染好の背中をさすり、
進吾は口と喉を手で覆った。
「…っチ、誰もいねぇのかよ!」
しばらくして、強面のおっさんは
扉をバアンっと閉まって
図書室の見回りを終えた。
いつの間にか学校は静かだ…
どうやら学校全体うるさかったのが
気に入らなかったらしく、
黙らせていたみたいだ。
…ケホッ
ガホゴホッ!ゲホッゲホッ!!
染好「わ、わああぁ!?
どうしたの2人とも!?」
2人がこらえていたのはこれだった、
「極度のストレスによる気管収縮」。
見つからないように
咳を無理矢理押さえ込んでいたのだ。
それらも時間が立つと収まった。
進吾「ケホ…あぁw 晦ちゃんもかw」
里座「片腕さんもですか?」
すると、2人はクスッと笑って
安心したのか、
その後2人で笑い合った。
染好は…全力で
その場から逃げたかったw
チェリーを抱いて
その場の空気に耐える。
里座「…あっ、
こうしちゃいられないわ!
染好達は…えっと、
染好は何をしていたんですか?」
染好「あ、えっと…」
チェリー「爆弾を分解して
回っていたチェリ、
残りは2〜3個チェリ。(小声)」
里座「えぇっ!?…あ、
そ、そうだったんですね。」
進吾「どうしたの?」
里座「染好は見つからないように
なにか行動出来ないか
移動していたみたいです。」
進吾「染好ちゃんも
教室にいなかったのか…
染好ちゃん、
僕達と一緒に行動しよう。
今の状況で単独は危険だ。」
染好「わかった。」
進吾「…そろそろ出ても
大丈夫な頃かな…」
チェリー「里座、大丈夫チェリ。
今この近くには誰もいないチェリ。
(小声)」
里座「大丈夫だと思います。」
染好「あ、私が先頭を行くよ!
2人とも体弱いでしょ?」
進吾「ごめんね染好ちゃん…
よし、早速行こう。
なるべく静かにね。」
里座「はい。」
染好「頼んだよチェリー。(小声)」
チェリー「チェリっ!(小声)」
ーーーーーーーーーーーーー
それからは染好が先陣を切って
チェリーの案内の元、
校内を徘徊した。
爆弾を見つけては
里座と進吾が解体する。
進吾「やれやれ…一つ一つ違う
爆弾にしちゃうなんて
手の混んだことしてくれるね(汗)
えっとドライバーは…」
里座「どうぞ。」
進吾「お、ありがとう晦ちゃん。」
2人が爆弾を解体する間、
染好は教室の出入口の見張りをした。
2つある出入口を行ったり来たりする。
染好「誰もいない?」
チェリー「大丈夫チェリよ、
誰もいないチェリ。」
染好「うん、ありがとう。」
キリキリ…カコッ
進吾「よし、解体出来た。
いつもごめんね晦ちゃん。」
里座「いえ、抑えているだけですから。」
進吾「さて、次は…ん?」
染好「あれ?次で最後じゃない?」
チェリー「その通りチェリ、
爆弾はあと1個チェリよ。
…と、爆弾の近くに誰かいるチェリ。」
染好「わかった。」
里座「片腕さん、
さっき…あっちに誰かが
行った気がするんです。」
進吾「晦ちゃんもか。」
里座「えっ?」
進吾「あ、ごめん、感なんだw
感で物事を言うクセ治さなきゃな…
コホン、早速出発しよう。」
ーーーーーーーーーーーーー
警戒しながら歩いて行くと、
最後の教室にたどり着いた。
そこは視聴覚室、
重たいドアが立ちはだかる。
チェリー「入っても大丈夫チェリ、
中にいる誰かは眠っているチェリ。(小声)」
染好「あぁ、私が開けるよ。」
染好は音が鳴らないように
そっと扉を開けた。
そこには木の匂いが充満している。
片付いていない椅子と固定の机、
後ガムテープ付きの掃除用ロッカー。
里座「あら?掃除用ロッカーって
ガムテープで塞いでましたっけ?」
染好「いや、そんなことは
なかったと思うけど…」
進吾「開けてみよう、
僕なら遠くから開ける。」
進吾は染好と里座を物陰に隠すと、
言った通り遠くから
掃除用ロッカーに付いた
ガムテープを爪で切ると、
ガタッと掃除用ロッカーの開いた。
すると…
…ドサッ
進吾「うおっ!?」
里座「ひっ、飛岸!?」
飛岸「ぅぅ……」
そう、掃除用ロッカーの中には
拘束された飛岸が入っていたのだ。
ロープで手足拘束さるぐつわ…
首からは爆弾が吊り下げられている。
薬を嗅がされたのか、
ぐったりしている。
染好「とっ、とにかく
早くほどいてあげよう!」
ーーーーーーーーーーーーー
飛岸「うぅ…ん…」
飛岸は目を覚ますと、
目の前には染好がいた。
染好「飛岸!大丈夫?」
飛岸「あれ?染好?
何で私こんなとこにいるんだ?」
染好「飛岸捕まってたんだよ?
掃除用ロッカーに押し込まれて…」
染好の話を聞いていた飛岸だったが、
突然はっとなって染好の肩を掴んだ。
染好「わっ!?
ど、どうしたの飛岸?」
飛岸「そうだ!大変だ!
里座のお姉さん達が
人質に取られたんだ!」
里座「えっ!?」
染好「里座のお姉さんっていうと…
まさかあの2人?」
飛岸「間違いないよ、だってあの時…」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それは飛岸が人の波を押し始めた…
ようは染好と里座が
人質なんじゃないか?
と心配になって探しに行った時だった。
飛岸「飛び出したものの…
あの後みんなどこ行ったんだ?
まだあの屋上にいんのかな?」
そうして飛岸は進む向きを変えた、
向かう先は視聴覚室を通り過ぎる。
しばらく歩いていると、
視聴覚室の目の前まで来た。
…何やら声がする。
飛岸「…ん?」
息を潜めて覗いて見ると、
そこには大人のヤンキー2人がいた。
「いや〜しっかし、
いい収穫だったなw」
「おう!まさか美人の双子が
見つかるなんて…
2人揃って買春でもさせるかな?」
「バカいえ!相手は学生だぞ?」
「いいじゃねぇか別にw
2人とも気が強いし、
お仕置きと思ってw」
「オイオイ…w」
[気の強い美人の双子]
飛岸はその人物に心当たりがあった。
その人物…いや、その人らは
本当は双子じゃなく3つ子なことも。
飛岸(まさか…?
人質になったのって…!)
ガッ!!
飛岸「うむぅ!?」
不意に後ろから抱きつかれ、
鼻と口を布で覆われた!
必死でもがくが、腕を見る限り
かなりの筋肉がありそうだ…
力が強かろうが女性の飛岸が
力のある男性に敵う訳がない。
飛岸「んっ!!んんっ!!…」
その内、意識が薄れていき、
飛岸は崩れ落ちた。
だがそこはレディーファースト(?)、
崩れ落ちた飛岸を男性が支える。
ーーーーーーーーーーーーー
飛岸「んで、気がついたら
染好がいたって話さ。」
進吾「人質…なんだか
まずい事態になっちゃったね。」
キリキリ…カランッ
素早く爆弾を解体して
そう言う進吾、
その後も話を続けた。
進吾「人質を取るってことは
何か相手側に要求があるってことだ。
それになにかしらの
積極的な行動を控える…
事件の解決は
先の方に長引きそうだね。」
里座「お姉様達が…!?」
飛岸「間違いない、
この学校には里座のとこ以外
双子みたいなものはないし。」
染好「う〜ん…
爆弾を解体したのはいいけど、
これからどうしよう…」
染好は次の行動を考えようとした…
その時、
突如スピーカーから
ドスの効いた声が飛び出した!
先程と同じ人物だ。
「「え〜○○高校の諸君!!
速やかに体育館に来るように!!
全員来ねぇとドカンだぞ
ゴルアアア!!!
おっと、おかしな真似を
するんじゃやねえぞ?」」
その放送が終わった後、
階段を降りる音がたくさん聞こえた。
どうやら移動を始めたようだ。
みんな怯え切った顔で
体育館に集まって行く。
進吾「…ついに行動を開始したね、
僕らも対策を…っ!?
ゴホッ!ガハッ!ゲホッ!!」
飛岸「うわわ!?
ちょ、どうしたのさ!?」
里座「サウダージ病の発作です!
早く薬を飲ませないと…」
進吾「ゴホ、ガホ…
すまないね、こんな時に発作が…」
進吾の発作
人質の発生
生徒達の大移動
そんな状況下、
染好はある決断を下した。
染好「進吾さん、ごめん…!」
進吾「えっ?」
進吾は振り向く前に
赤色の風を吸い込み、
眠りにいざなわれた。
染好の手には
変身ステッキが握られている。
里座「染好?」
飛岸「ちょ!?こんな時に
何してんのさ!?」
染好「…チェリー、」
チェリー「はいはい!
なんの用チェリか?」
染好「桜うさぎって…
闇氷しか戦っちゃ
いけないのかな?」
2人「あっ!」
チェリー「悪いやつなら
大抵のは大丈夫チェリよ。
桜うさぎは正義の戦士チェリ!」
緊張が走る状況下、
染好は最高の答えを出した。
なぜ気がつかなかったのだろう、
なぜ早くやらなかったのだろう。
そう、今こそ桜うさぎの
活躍の時なのだ!
染好「今まで以上に
桜うさぎが目立つし、
正体がバラしずらくなるけど…
それでもいい?」
それを聞いた飛岸と里座は
なんの迷いもなく
2人は自らのバックから
変身ステッキを取り出した。
飛岸「目立つもなにも
みんなのピンチじゃん!
どこに迷う理由があるのさ?」
里座「このままでばお姉様達どころか
全校生徒まで危機に直面します…
止めましょう、私達で。」
染好「そうと決まればいくよ!
みんなを助けるんだ!」
飛岸「了解!」
里座「はい!」
3人は決意を新たにすると、
一旦進吾を物陰に隠した。
里座「片腕さん…
もう少し眠っていて下さい、
後は私達がなんとかします。」
竹とんぼのように回し、
光を貯めて上に突き上げた!
3人「桜の力!
暖かき色彩の輝き!
チェリブロチェーンジッ!!」
ーーーーーーーーーーーーー
カアァン…カアァン…
金属バットが床をつく音が響く。
たくさんのヤンキーが
全校生徒を見張る。
「お頭、欠席以外全員いますぜ。」
「よおし!○○高校諸君!
まずは選ぶがいい!!」
そう柄の悪い一番派手なマッチョ…
まぁ「お頭」としよう。
お頭は指を鳴らすと、
2人の生徒が運ばれ、
持ち込んだ…何だあれ?
室内で部屋干しをするための
逆U型のステンレス製
キャスター付きの棒
と言ったらわかるだろうか?
それを改良型を一番高い段階に
棒を固定すると、
そこに2人の生徒を吊るした。
足はつま先だけ
ついている状態である。
里座栗「ちょっと!あなたたち!
こんなことをして
許されると思って!?」
「うるせぇ!!黙ってろ!!」
里座栗「なっ…!?」
里座句「落ち着きなさい、栗。」
里座栗「お姉様…!」
里座句「「人質を取らせれば
手荒な真似はしない」…
その約束をお忘れにならないように。」
お頭「安心しな、
俺らはそこまでバカじゃねぇ。
お前ら!!選べ!!
お前ら全校生徒の無傷を取るか!
この2人の安否をとるか!
」
それを聞いた生徒らはざわついた。
「ふざけんな!」
「そんな状態呑み込める
訳がないじゃないの!」
「ゴルアアア!!!
黙れくそガキどもがあああ!!!」
ざわついた全校生徒を
ヤンキー達が黙らせる。
…乱暴を働いたものもいた。
「ふご…あ…」
「ちょ、大丈夫!?」
「けっ!逆らうから
こうなるんだよクズ!」
「ひどいわ…!」
お頭「どうした?早く選ばんか!」
…しばらくして、1人、また1人と
吊るされた2人を指差していった。
里座栗「やっ…!?なんで!?」
里座句「嫌だけど当然の結果よ。」
里座栗「そんな…お姉様!!」
里座句「人間というのは
少数より多数を取るわ。
…皮肉なものね。」
全校生徒からの解答を得たお頭は
吊るされた2人の体を手にした。
まさに両手に花だ。
里座栗「いや、いやあああ!!
ちょっとあんたたち!
何とかしなさいよ!!」」
里座句「………。」
お頭はわめく栗の口を片手で塞ぐと、
全校生徒が出した解答の
答え合わせをする。
お頭「お前らの出した解答により
この小娘らは我らの物となった!
感謝しよう!」
生徒達は何とも言えない顔だ。
安堵の表情を
下を向いて隠す者もいたし、
罪の意識に苦しむ者もいた。
…ところが、
その後もお頭の話は続いた。
お頭「しかぁし!!
お前らの意識は気に入らん!!
2人を生贄にして
自分達だけ助かろうかど…
なんたる卑劣な行為!!」
「お前らがそうさせたんじゃねえか!」
それを叫ぶメガネの男子、
すぐにメガネは吹き飛んだ。
折れた数本の歯と共に。
「うわあぁ!?」
「きゃああ!!」
「うへへ…いい声でなくなぁ…」
うわぁ重症だこいつ…
お頭「よって!!お前らに!!
仕置と仕分けを行う!!
」
ヤンキー一同「うおおおお!!!」
里座句「約束を破らないで下さい!
「人質を取らせれば
手荒な真似はしない」
その約束をお忘れですか!?」
お頭「あぁ確かにそう約束した。
だが!お前達は今から
俺たちの所有物となった!
約束は破っておらんぞ?」
お頭はそう言って句のアゴに触れた。
その常に冷静だった顔には
怒りが溢れ出ている。
お頭「いい顔だ。」
襲いかかるヤンキー達、
句から何かを奪おうとするお頭…
全てが負の渦に飲まれた…
その時
橙「待って下さい!!」
鳴り響くは救世主の声、
暖かき色彩が体育館の出入口に立つ。
「あぁ…!?あれは!?」
「桜うさぎよ!!」
湧き上がる歓声、
1つの扉から溢れ出た希望の光。
その感動は1度負の渦を止めた。
お頭「貴様ら!!何者だ!?」
紅「春に咲き誇る赤き花!
桜うさぎっ!ベニブロ!」
黄「春に咲き荒ぶ黄色き花!
桜うさぎっ!キブロ!」
橙「春に咲き渡る橙色の花!
桜うさぎっ!ダイブロ!」
紅「寒き冬に春の訪れを!」
3人「我ら桜の戦士!
桜うさぎっ!!」
桜うさぎ達が決めポーズをすると、
ますます生徒達は興奮した。
「きゃ〜!桜うさぎぃ〜!」
「ちょ、お前ら黙r」
「桜うさぎ!うおぉ〜!!」
ダイブロ「早くお姉様…じゃなくて
人質を解放しなさい!」
お頭「それは無理な話だ、
こいつらは俺との契約で
彼女らを生贄にした。」
「違うわ!!」
「ふざけんな!!
あんなの誘導尋問じゃねぇか!」
お頭「ぷっw 急に態度変えやがってw
だったら力ずくで
奪ってみろボケナスがぁ!!」
お頭がそう叫ぶと、
ヤンキー達は一斉に
桜うさぎに襲いかかった!
チェリー「みんな!
ステッキは強すぎて
生身人間には危ないから
素手で戦うチェリ!」
紅「わかった!」
黄「了解!」
橙「はい!」
3人は襲いかかるヤンキー達に
立ち向かった!
戦闘開始だ!
「ゴルアアア!!!」
紅「やあぁっ!」
ボカッ!
「ほげら!?」
「なにすんじゃぼけぇ!!」
黄「不意打ちとは
いい度胸じゃんか!」
ドコッ!
「オウフ!?」
ベニブロは主にパンチ、
キブロはキックでヤンキー達を
倒して行った!
勇気のある生徒達は
気絶したヤンキーを捕獲!
大縄の縄を使って端を壁に固定、
ヤンキーを数珠つなぎに繋げて行った。
穴吹「しっかり固定してよね!」
薫「うぅ…力が上手く入らないよ…」
多生花「女子か!w
仕上げは私がやるってw」
薫「え?あ、ごめんね。」
栄「縄増やしてきたぞ。
結び方はこれでいいか?」
弓弧「ちょっと…違う、
この方が…固い。」
栄「おっ?本当だ!さんきゅ!」
弓弧「…うん。」
ダイブロは走って行った、
ヤンキー達の攻撃をかわし無視して
とにかく走って行った。
色んな人が何かを言っていたが…
そんなのは目に入らない。
見ているのはステージ上に
吊るされた2人だけ。
たくさんひどいことを言われても…
やっぱり自分の姉妹なのだ。
ダイブロ「お姉様!!」
当たりが修羅場になって
誰も聞き取れない状態で、
思わずその言葉が出る。
近くまで来ると、
飛んでステージに上がった。
橙「大丈夫ですか?
今縄をほどきます!」
里座栗「はっ、早く解きなさいよ!」
里座句「静かにしなさい栗。」
縄を解こうと手をかけるダイブロ、
…その肩にまた手をかけるお頭。
そのかよわい肩でも
容赦無く力を入れて掴んだ。
橙「…っ!」
お頭「おっと?そいつは
俺の所有物だ、
逃がしてもらっちゃ困るな。」
橙「卑劣な!!
手首が真っ赤じゃないですか!」
お頭「まだわかんねぇかな…
そいつらは俺らのモノなんだよ!!
俺らのモn」
紅「桜の力よ!!
その力を凝縮しぶつけたまえ!!」
次の瞬間、お頭の体が吹っ飛んだ。
かなり至近距離から
光の球をくらい、
かなりの距離まで吹っ飛んだ!
お頭「いっ…!?
てえええぇ!!!」
その横には烈火のごとく
怒りにまみれたベニブロがいた。
…ステッキを持って。
橙「ベニブロ…?」
紅「ふざけるな!!
人は物じゃない!!
こんなたくさんの人を
危機に陥れて…
あなたはこの痛みじゃ
足りないほどの罪を犯した。
身の程を知りなさい!!」
ベニブロがここまで怒るのには
理由があった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
勉強しなさい
この高校に入りなさい
もうあの子と遊びに行っちゃダメよ
染好「…私は親のいいなり。」
元々、自己主張が苦手だった染好は
強引な親の元、全く自分の意思を
持たずに生きてきた。
飛岸と里座に会うまでは
ずっと1人で生きてきた。
染好「…私は成績表。」
ずっと…ずっと、
1人で生きてきた。
妹が出来てからは
もっと嫌になった。
出来のいい妹と比べられる日々…
染好「…もう、誰も関わらないで。」
そして、染好は心を閉じた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一切の意思を許されず、
物のように育てられたと
思っている染好。
染好は人それぞれ個々の価値、
それを何よりも大切にしていた。
だからこそ、里座の姉達を
縛り上げて「モノ」扱いした
お頭が許せなかった。
紅「…ごめんチェリー、
やりすぎちゃった。」
チェリー「ベニブロ…」
そこへ気絶したヤンキーを抱えた
キブロが合流した。
黄「何かすごい音したねw
どうしたの?」
紅「…私はあの人を」
橙「パンチで吹っ飛ばしたんです!」
紅「え?」
橙「さっきはありがとうごさいます、
ベニブロが攻撃しなきゃ
私大変な目に遭ってました。
彼に大きな怪我はなさそうだし…
あまり気にしないで下さい。
(小声)」
紅「ダイブロ…
うん、みんなごめん。」
黄「それよりそこの2人の縄、
早く解いてやろうよ。
…手首が痛々しいよ(汗)」
橙「あっ、はい!」
ーーーーーーーーーーーーー
その後、桜うさぎ達は協力して
句と栗を解放した。
橙「桜の力よ!
花ビラと共に解放されし者を癒せ!」
ダイブロの放った魔法は体育館中に
広がり、ヤンキー以外の人間
全ての傷を癒した。
「…あれ?怪我が全部治ってる!」
「うぅ…ん…」
「あっ!?目を覚ましたわ!」
「信じられない…!
ありがとう!桜うさぎ!」
体育館は歓声に包まれた、
桜うさぎをたたえる声が響く。
里座のお姉さん達も
ホッとした様子だ。
黄「やれやれ…w
これにて解決かな?」
紅「だね!早く先生方も助けに行こう!」
3人は職員室に行こうとして
体育館を後にしようとしたが…
お頭「待てやゴルアアア!!!」
まだ意識の残るお頭が声を上げた。
上着からドス…ようは鉈を取り出して
刃を抜いた。
お頭「へっへっへ…
どいつもこいつも
バカにしやがってよお!!!
こうなったら
血祭りだゴルアアア!!!」
ステージを降りて
鉈を振り回すお頭、
このままでは危ない…!
紅「…!!」
黄「ベニブロ!抑えとけ、
ここは私がやる!」
キブロがステージから
飛び出そうとした…その時、
「警察だ!!動くな!!」
黄「…え?」
機動隊というんだろうか?
警察の人達が体育館に
一気になだれ込んできた。
キブロは驚いて
また慌ててステージに戻るw
次々にヤンキー達を確保する警察。
お頭「動くなぁ!!
爆弾を起爆するぞぉ!!」
「爆弾が爆発することはもうない!」
お頭「なっ…!?」
奥の方にいた1人の刑事が
そう声を張り上げた、
隣には進吾がいる。
橙「片腕さん!」
進吾「爆弾は全て僕が解体しました、
もう爆発することはありません。」
「全く…バカ息子が、
無茶をしやがって!」
進吾「ごっ、ごめんなさい父さん!
簡単な構造だったから…」
「…だがよくやった、
復帰初日から大変だったな。」
進吾「…うん。」
お頭「親子団らんも
程々にした方がいいぜ…?
ゴルアアア!!!」
最後の抵抗なのか、
お頭は鉈を持ち替えて
刑事に突っ込んだ!
紅「あっ、危ない!!」
カアァンっ!
お頭「って!!?」
さすがは現役、
お頭が突き出した鉈を蹴り飛ばし、
そのまま一本背負いして
腕を後ろに回し、拘束した!
手錠をがちゃんとかけて
腕時計を確認。
「△△時▽▽分確保!」
お頭「くっそおおお!!!」
かくして悪い奴らはみーんな捕まった!
これでもう大丈
「そこの怪しい3人!
無駄な抵抗はやめて
ステージから降りてきなさい!」
橙「え?」
黄「はぁ!?」
紅「ひっ、人違いです!」
「ちげぇよ!桜うさぎは
俺らを助けてくれたんだ!」
「そうよ!」
「見た目だけで疑うな!!」
「庶民を信じろよ!!」
桜うさぎ達を勘違いで
捕えようとした警察は、
全ての生徒達から
大ブーイングを受けた。
それでも銃を向けるのをやめない。
橙「どうしましょう…」
黄「元の姿に戻って
説得するわけにもいかねぇなw
どうやってきりぬけようか…(汗)」
紅「…これしかないと思う。」
黄「え?」
橙「何か考えがあるんですか?」
すると、とびきりの笑顔で
ベニブロはこう言った。
紅「それじゃあね!
あなたの元に春が訪れますようにっ!☆」
急にベニブロは大声でそう言い、
ステージから飛び出した!
黄「えぇ!?結局逃げるの!?」
橙「まぁ…この状況じゃ
それしかないですねw」
後に続くキブロとダイブロ。
途中警察が桜うさぎを
止めようとしたが、
生徒達から妨害を受けた。
「なっ、何をする!?」
「だから!!桜うさぎ達は
救世主だって言ってんだろ!!」
「ここは僕らに任せて!」
「ありがとう桜うさぎ!」
「ありがとう!」
「ありがとう!」
全速力で逃げる途中、
たくさんの「ありがとう」の声を
3人は覚えていた。
目指すはあの屋上だ、
一旦変身を解かなければ。
ーーーーーーーーーーーーー
その後、変身を解いた染好達は
こっそり体育館に戻って
生徒達に混ざり、
警察に保護された。
警察が操作する中、
3人の元へ進吾が駆けつける。
進吾「染好ちゃん!
飛岸ちゃん!
晦ちゃん!!
良かった…3人とも無事で、
まさかあそこで催眠ガスを
食らうとは思わなかったね。
大丈夫だった?」
里座「はい、全員無事です。」
進吾「それにしても…
よかったよ、催眠ガスが
僕らの体に影響なくて。」
本当は魔法もとい
ただの風だったのはナイショだ。
染好「それにしても…
進吾君の言ってた仕事柄が
警察だったなんて、
ちょっとビックリしたなw」
進吾「言ってなかった?
僕の父さんは刑事なんだ。」
里座「私も初耳です。」
進吾「あれ?あんまり
言ってなかったっけな…w」
飛岸「ところでさ、
その後どうなのさ?」
進吾「その後…あぁ、
事件の収束についてだね。
ヤンキー達は全員現行犯逮捕されたよ。
親玉だったヤンキーは
パトカーに入る直前まで
奇声をあげていたみたいだからね。
「俺はこの学校の生徒に
雇われただけだ!!」
とか…信ぴょう性はないけど、
しばらくこの学校は
調べられるだろうね。
そうだ、桜うさぎという
不信人物がいたらしいけど、
被害者全員が口を揃えて
助けてくれたって言ってたから
感謝状を贈る事を検討するって。」
里座「そうだったんですか…」
飛岸「やれやれ、
しばらく安心して
学校に来れそうにないねw」
染好「なんで笑ってるのさ?」
飛岸「本格的に操作となれば
学校はしばらくお休み…うふふw」
里座「飛岸〜?」
染好「もう!学校が
たくさん休みになったら
土曜講習が増えちゃうんだよ!?」
飛岸「えぇ〜!?めんどくさっ!」
染好「もう…w」
進吾「ふふっ、仲がいいんだね。」
里座栗「お姉様?お姉様!」
里座句「…え?」
里座句「どうしたんです?
先程から晦を見て…」
里座句「なんでもないわ、
見張っていただけよ。」
里座栗「…そうですか。」
楽しげにおしゃべりをする
妹をじーっとみる句。
…その表情はどこか優しげだ。
里座句「…成長したわね、晦。」
こうして後に犯罪史に残る事件、
「女子高生雇い主事件」は幕を閉じた。
チェリー(やれやれチェリ…w
ベニブロは正義感が
人一倍強いチェリね。
ちょっと危なかったけど、
これからいい戦士に
成長しそうチェリ♡)
チェリーも安心した様子。
え?なんで「女子高生雇い主事件」
って事件名になったんだって?
…それはね、
ーーーーーーーーーーーーー
「そうか…ありがとう、
時間を取らせてしまってすまないね。」
「いえ、早く事件の全貌が
分かるといいですね、」
「お気遣いどうも。」
学校の廊下、
警察官から事情聴取を受ける生徒。
事情聴取が終わると、
2階の窓から外に出た。
2階からにも関わらず、
ひらりと飛んで着地する。
…コールドだ。
コールド「やれやれ…
ひどい災難だったな。
フリーズが動かないから
こうして侵入したってのに
事件に巻き込まれるなんて…
あんな大勢の前で
魔法は使えないし焦ったなw」
1人学校の裏でケタケタと笑うコールド。
…ところが、
その笑いもすぐに止まった。
コールド「!?っ、
なんだ、この強烈な寒気…
くそっ!強すぎて判断できねぇ!
一体どこなら出てるんだ…?」
あんたのすぐ後ろだよw
学校にひっそりとある古い器具置き場、
そこには美々がいた。
…上手く言えないが、
とにかく負の感情にまみれている。
美々「くそっ…くそぉ!!
なんでミスなんかするのよ!!
あんな大金払って雇ったって言うのに!
バカ、バカ!バカバカバカ!!
…もう…どうしたらいいのよ!」
涙を忘れた彼女の整った顔は
ひどく歪んで見えた。
心も…ひどく冷え切っている。
To be continued next time♡