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夢物語

双子の運命

作者: 木下 碧

少し長めです。

 皆さん、こんにちは。


 私は夢の案内人、叶夢とあ


 もう御存知だと思いますが、夢の案内人とは、夢の中でのお話を皆様にお届けする者のことです。



 さて、今日紹介する物語はとある悲しい運命をたどった双子の話です。


 何故双子はこのような運命をたどってしまったのか、そこに注目して見て見てくださいね。



 それでは『双子の運命』お楽しみください。





 ________________

 





 とある小さな町に、容姿が瓜二つの双子が生まれました。




 双子は女の子と男の子で女の子はラン、男の子はシンと名づけられ大切に大切に育てられ………………るはずでした。



 

 ランとシンが生まれた次の日、国で争いが起こりました。

 それは王都の近くにあった二人の居る町にまで広がり、ランとシンの両親はそれが切っ掛けで死んでしまいました。


 ランとシンは生まれてたった一日目で両親を失いました。

 しかしまだ赤ん坊の二人には分かるはずも無く、おまけに親戚が居ないので、引き取り先が見つかりません。


 そこで親を亡くした二人は養子に出され、それぞれ別の家に引き取られました。


 


 こうして二人は親も失い、姉弟も失ってしまったのです。















 それから十年余りの月日が経ち、二人は十五歳になりました。


 二人はまだお互いの存在を知りませんでしたが、幸せに暮らしていました。



 それまでは………








 とある日、双子の弟シンは親と大喧嘩をしていました。


 「どうしてそれを早く言ってくれなかったんだよ!?」

 「だから、いったらあなたが傷つくだろうと思って…………」

 「俺はこっちの方が傷ついたね!もうこんな家、知らねぇ!!」

 「ちょっと、シンまちなさ……」


 バタン!!


 ドアを勢いよく閉め、シンは家の外へ飛び出しました。親が何かを叫んでいましたが、聞こえない振りをして駆け出します。



 シンは路地を通り抜けながら苛立たしげに呟きました。


 「クソッ!なんなんだよ……今まで俺をずっと騙してきたってことかよ…!!」


 実は朝シンは親がこっそり自分の出生について話しているのを聞いてしまったのです。

 そして自分は血の繋がった子では無いことを知ったシンは親と言い争いになり、家を飛び出してきてしまったのでした。


 「もう…意味分かんねぇよ」


 ―『家族』だと思っていたのに、本当は他人だったなんて思ってもいなかった。


 その関係が偽りと知った今では、シンには自分だけあの中で異質なものに見えました。

 シンの心の中で様々な感情が飛び交い、心の中をグチャグチャに掻き乱します。


 「あぁ!!…‥クソ!」


 思わず、頭をガリガリ掻き毟ったシンはパッと顔を上げまると、やみくもに歩いていたせいか、気付けばまったく知らない場所にきていました。


 「ここ…どこだ!?」


 辺りをきょろきょろ見渡しますが、ここが何処なのか検討も付きません。

 「まいったな…やっぱり何か持ってくるべきだった…‥」

 

 しかし後悔先に立たず、頭を抱えていると、不意に肩を叩かれました。


 「誰だ?」


 振り返るとそこにはなんと、自分と瓜二つの少女が立っていたのです。シンは驚きのあまり、一瞬言葉を 失いました。その少女も驚いたのか、目を丸くしています。


 「あんた…」


 シンはもう一度、その少女をよく観察しました。

 少し癖の掛かったブロンドの髪、パッチリとした青い瞳に透けるような肌。この少女は隅から隅まで自分とそっくりでした。違うところといえば、髪の長さぐらいでしょうか?シンは丁度首に掛かるほどの長さですが、少女は背中を覆い隠すほどの長さまで伸ばしています。


 シンは震える声で尋ねました。


 「あんた…一体誰なんだ…?なんで俺と同じ顔してるんだ…?」


 しかし少女は分からないという風に首を振るばかりです。拉致があかないと思ったシンは質問を変える事にしました。


 「じゃあ…名前は?」


 すると少女は口では答えず、地面に『ラン』と書きました。


 「ふうん…俺はシン。あんた…‥ランは本当に俺達が何故こんなに似ているのか知らないのか?」


 ランはまた首を横に振りました。どうやら本当に知らないようです。シンは内心ガッカリしながらも、ランに悟られないように口調を明るくして言いました。


 「じゃあさ、今度から俺達会うようにしないか?その内なんでこんなに似てるかも分かるかもしれないしさ、俺もっとランのこと知りたいし。」


 そう言ってシンは手を差し出しました。ランは暫くその手を見つめていましたが、やっと意味が分かったのかニッコリと微笑んでその手を握り、頷きました。









 その日からシンとランはたびたび会うようになりました。


 二人は他愛の無い話をしたり、二人の間にあるつながりについて話しました。その間もランが口をきくことはありませんでしたが、首を振ったり字を書いたりして意思疎通していました。



 一方でシンは家に居る気まずさから、日に日にやさぐれていきました。しかしそれは欄の前では絶対に出さないようにしていました。





 

 ある日、シンは盗みを犯しました。


 それはダイヤ一個だったのですが、盗んだところは町でも有名な盗賊の家でした。


 「まてっ!」

 「へっ!そういわれて待つ奴がいるかよ!!」


 シンは上手く家から抜け出しました。そして自分を探して大声を上げる盗賊を物陰から見つめ静かに笑っていました。


 


 シンはこのとき「上手くいった」と思いました。



 そう、この時までは……





 


 「あのガキ何処行きやがった!!」


 盗賊は血走った目で辺りを見回しました。辺りは夕方のためか人影が少なく、静まり返っています。


 「何がなんでも見つけてやる!!」


 そう宣言したときでした。

 路地の中に見覚えのあるブロンドの髪が入っていくのが見えたのです。


 「見つけたぜぇ」


 盗賊はそう言うと、自分も路地の中に入りました。

 走って追いかけやっとのことで捕まえます。







 しかし盗賊は知らなかったのです。


 自分が捕まえたのは、ダイヤを盗んだ少年ではなく、その双子の片割れだという事を。






 「おい!女の格好をしただけで逃げられるとでも思ったのか!?」


 手を掴みながら、そう怒鳴ると子供はわけが分からないという風に首を傾げました。


 「俺のダイヤは何処にやった!!!」


 それにも分からないという風に首を傾げ続けます。


 頭に血の上った盗賊は近くにあったスコップで、子供の頭を殴りました。

 子供はあっけなく地面に倒れ、ピクリとも動かなくなり、頭からは大量の血が流れ出します。


 「けっ!!」


 盗賊は子供に唾を吐きかけると、どうでも良くなったのかさっさとその場から立ち去ってしまいました。





 そしてそこに本当のダイヤを盗んだ犯人、シンがやってきました。


 「ラン!?ラン!!」


 シンは慌ててランに駆け寄ります。そして横に転がっているスコップを見て、自分が原因でランが殴られた事を悟りました。


 「ゴメン!!俺のせいでランがこんな目に!!!」


 シンの目にはみるみる涙が溜まっていき、ぽたぽたとランの頬にぽたぽたと流れ落ちます。


 すると、ランの目が薄く開かれました。乾ききってガサガサになった唇からは、小さくうめき声が漏れています。


 「ラン!目を覚ましたのか!?」


 シンは希望がさしたと思いましたが、反対にランの体からは熱がどんどん無くなっていきました。それと共にランの瞳も閉じていきます。


 「ラン!!」


 シンが叫んだとき、ランの唇からか細い声が漏れました。


 「シン…」

 「ラ、ラン!?お前しゃべれたのか!?」


 しかし、ランはシンの問いかけには答えず、話し続けました。


 「シン、あのね。私シンと出会えてホント嬉しかった。私今まで自分は人とは違う感じがしたけどシンと一緒だと何故か安心したの…」

 「ラン、それ以上しゃべるな!!それ以上しゃべったら…」

 「最後まで聞いて、シン…‥じゃないと私死んでからも後悔すると思う」

 「死ぬと決まったわけじゃない!!」


 シンの言葉にランは弱々しく笑いました。


 「ううん、私もう無理だよ。だから最後に言わせて…シン、ありがとう…」

 「ラン?ラン!!」





 ランの瞳は完全に閉じ、呼吸が止まりました。シンは急いでランの胸に耳を当てましたが、心臓の音はなっていません。




 そう、ランは死んでしまったのです。


 それが分かってしまったシンは大声で泣き叫びました。




 そしてそこには、泣き叫ぶシンの声だけが残されていました。





 _____________



 皆さん『双子の運命』どうでしたか?




 自分が犯した罪とは、いずれ何らかの形で自分に戻ってきます。


 それをしっかり皆さんは分かっていますか?





 それでは次の夢でまたお会いしましょう。


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