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魔法の国でひたすら日本生活。  作者: 花澤文化
魔法の国で日本らしい生活をする。
6/24

第4日 魔法の国で調べる。

 夏の朝。とうとう夏も本番になりかけており、外は焼けるように暑い。俺の家はなぜかエアコンもないのに涼しいので家にいるときはなんとも思わないのだが、外に出るとその分余計暑く感じる。

 俺が異世界、魔法の国ユラドラにきてから1週間が経とうとしていた。

 そんなある平日の午前中。子供たちとアンジェ、ロメリアは学校でいないため、休みを謳歌しようとしていたのだが、気になることがあったので外に出たというわけだ。

 一度魔法学校というものも見学してみたい。大学もあるのだろうか。

「よし」

 歩いてようやく到着したのはあのデパート。

 地球のものがたくさん売ってあるあのデパートだ。

 俺はすぐに本屋へと直行した。やはり店の中は涼しい。ところどころ人もいるがまだ午前中ということもあり、まばらだ。学生は1人もいない。

「すいません」

 そんな中、地球では学生、こちらではほぼ何もしていない二ートである俺は本屋にいるミミさんのところを訪ねていた。

「あ、モモさん、おはようございます」

「おはよう、いきなりですがミミさん聞きたいことがあるんですけれど、いいでしょうか?」

「えっと・・・はい」

 私に答えられることならなんでも。そう言って笑う。

「この国、ってここらへんにでかい図書館とかってあります?」

 本好きそうだし、という理由で聞いてみたのだが、今考えれば本屋に図書館の場所聞くってどうなんだろう。本を買う場所で本を借りる場所を聞くというのもなかなかデリカシーに欠けているかもしれなかった。

 もちろん人付き合いが苦手で経験不足な俺には考えようもなかったことだが。

 しかし嫌な顔1つせずにミミさんは俺に教えてくれた。

「ここからだと箒、30分ぐらいですかね」

「箒単位だと分からないのですが・・・」

 箒で30分ってことは徒歩だとほぼ不可能に近いな。2時間ぐらいかかるのか。ここで大学に通っている訳ではないので時間はたっぷりあるが2時間近く歩きっぱなしというのも大変だ。

 どうにか行く手段はないものか。

「箒が使えないのでしたら電車をお使いになられたらどうでしょうか」

「電車なんかあるのか?」

 この魔法が使えるご時世に?

「はい。一応魔力で動く機関車ですけれど、ありますよ。確か地球にもあるんですよね」

「魔力で動いてるわけじゃないけどな」

 さすがに地球に詳しい。このぐらいの方が話しやすくていいのだけど、地球に詳しい人というのはきっと少なくてこういうパターンは珍しいものなのだろうな。

「つーことは、それに乗っていけば・・・」

「はい、20分、15分程度で着くと思います」

 ここから歩いて10分のところに駅がありますので、とわざわざ説明してくれる。俺はありがとうございます、とお礼を言う。

 教えてもらったお礼といってはなんだが、何か本を買おうと店内を見回す。

「うーん、何かおすすめとかありますかね・・・」

「おすすめですか・・・。そうですね。こちらに来たばかりということならばこの国ユラドラのことを知るのがいいとは思いますが・・・」

 実は俺はそれを図書館で探す予定だったのだが・・・こういう普通の本屋の方が読みやすい本が多いのかもしれない。難しい本が嫌いなわけではないが、知らない文化を知るためにはまずさらっと上辺だけでも簡単に知っておきたい。

 歩いているとユラドラの歴史という本屋や地理の本がたくさんあった。厚みも様々で、それを読もうか迷ってしまう。

「簡単なものならば、薄めのものを選んだほうがいいと思いますよ」

 という助言により、パラ見してよさげであり、薄めのものを選ぶ。

 代金を払い(ジジ様からもらったカードで)、それを手にぶらさげて店を出る。ありがとうございました、という声を聞き、俺は軽く頭を下げ、その場を後にした。





「機関車・・・」

 駅に着いて最初に見たものは機関車。それも日本で見たことのあるような形である。蒸気機関車と言っただろうか。あの独特のフォルムに煙突、黒いボディ。

 日本と違う部分はその機関車が宙に浮いている、ということだ。

 下を見ても線路はない。どうやら地面を走るつもりはさらさらないらしい。

「まぁ・・・許容範囲内だな」

 色々なことが起こって耐性が付いたのか今更空を飛ぶぐらいでは驚かない。

 切符を買い、それに乗る。

 しばらく待つと発車のアナウンスとともに動きだした。無音。快適な旅ができそうなほど無音だった。本当に旅に使われるのかベッドなどもある個室の部屋が用意されていた。

 ここから20分で着くことを少し惜しいと思ってしまう。それぐらいには快適だった。

 窓から外を見ると魔法の国ユラドラが広がっていた。やはりハイテク未来都市という一言が似合う。魔法の国の名の通り空飛ぶ人達もここからだと鮮明に見えた。

 ふと下を見るとそこに少し色の薄い虹色の線路がしかれている。この上を一応『走っている』ということらしい。浮かせた方がはやいのではないかと思いつつも、こちらの方が安定しているのだろう。

 走り終えた部分の線路は消え、これから走る道に線路ができる。これも魔法の力、なのだろうな。

「・・・・・・」

 風を顔に浴びて、少しだけ目をつぶる。

 あいつら魔法使いはこうやって箒に乗って飛んでいるのか。

 そういえばこの機関車も魔力で飛んでいるんだっけ・・・。

 俺はふと考える。

 魔力に頼らない生活をするならばこの機関車も使ってはいけないはず。地球にも電車があって俺はそれを普段利用していた。それとこれは魔力を使っているということ以外変わらないから楽をしていることにはならないという屁理屈をつけることも可能だ。

 でも俺は気付いている。

 この世界で魔法に関わらず生きていける方法なんかないのだと。

 努力をせずに楽をする魔法。

 俺の嫌いな努力を踏みにじられる行為。

 それに今、こうして触れている。

「俺は・・・」

 俺の考え方はやはり間違っていたのだろうか。

 自分だけで何かをこなし、全てで1番を目指す。その先にあるものなんてないのだろうか。

 実質俺はやりたいことがない。漠然と大学に入ってはいるが、何かやりたいことがあって入ったわけじゃない。

 でも、この世界の人たちには何かある。

 そんな気がする。

 帰ったらアンジェか誰かにでも将来やりたいこととか聞いてみるか・・・。高校生に将来のことを聞いて参考にするのもなんだか情けない話ではあるが。

「そういえば」

 ふと思い出し、袋の中から、ユラドラの歴史と地理についての本を取り出す。図書館に行く前にこれを読んでおこう。

 この本で分からなかったところを図書館で調べれば効率もいいだろう。

 まずは歴史の本を開く。

「・・・・・・」

 そこに書かれていたのは主に魔法の歴史だった。魔力の発生源である魔力場まりきばが見つかったのは今から約200年前。それを魔法へと活かしたのは今から約150年前らしい。

 近未来的な都市から魔法自体も最近のものかと思っていたがそういうわけでもなかった。その後は魔法の説明。人体のどの部分を使って魔法を使うのか、魔法の副作用はあるのか、などが述べられている。

 結果からいうと、副作用などないらしい。

 魔力は人間の血液に沿って進み、体全体に魔力が満たされた瞬間、魔法が使えるのだそうだ。もちろん、まわる速度ははやく、一瞬で回りきるため瞬間的に魔法が使える。

 その後も様々な専門用語で、いかに人体への影響がないのか、などと説明されている。

 その次の章はユラドラ、というより世界が魔法を使えるようになるまで、というものであった。世界史みたいなものなのだろうか。

 パラパラを見てみるが歴史はどうやらこの本でこと足りるようだ。

 次は地理。

 またパラパラとめくってみるが・・・。

「ん・・・?」

 確かにユラドラに何があるか、どの位置にどの歴史的建造物があるか、有名な観光名所らしきもの、山の位置や細かい街の名前などがのってはいるのだが・・・。

「ユラドラの形がない?」

 ユラドラという国の形がなかった。

 日本ならば日本列島の絵が地図帳などにも載っているはず。それは俺も中学生の時友達がいなく、昼休みまるまる地図帳を見ていたので覚えている。

 でもこのユラドラの国の形はこの本に載っていなかった。

 なぜだろう・・・。

 しばらく考えていると、到着のアナウンスが聞こえた。

 今は図書館へと行こう。

 機関車が少しずつスピードを落とし、駅へと到着する。ここで降りる人は結構多いらしく、俺以外にもたくさんの人が降りていった。

 ここが結構中心街みたいな場所なのかもしれない。

 あたりを見ると相変わらず高層ビルにここからでも見える、魔法宮殿のアルデラード宮殿。それにスタジアムのようなものやでかいデパートもあちらこちら所狭しと並んでいる。

 未来都市、という感想は変わらないが、俺の住んでいる場所と雰囲気がまるで違った。

 人通りも多く、空飛ぶ車も多い。

 道端で遊んでいる子供なんかもいない。みんなせわしなく動いている。

 やはりここが中心街のようなものなのかもな。

 そこから歩いていく。田舎ものが都会に出てきたみたいな感じであちこちを見る。間違ってはいない。正直日本の都会でさえ、ここと比べたら田舎になってしまうだろうしな。

 しばらく歩いた後、超巨大な建物が目の前に広がっていた。大きな建物だけでなく、その前には大きな庭もあった。それは広すぎてそこだけで1つの街のようになっている。

 庭にはベンチに座り本を読むものも、歩きながら飲み物を飲むものもいる。その中にはお昼ご飯らしきものを食べているものもいた。というか屋台やらお店やらがこの庭にはあった。

「・・・・・ここが図書館・・・?」

 まさにファンタジーの世界。

 俺は庭に入り、あたりを見まわしながら図書館の中へと入る。

 魔法の国の図書館の名にふさわしいものだった。

 あたり一面が大きな棚となっており、壁と同化している。上の方の本をとるために移動式の足場や、エレベーター、エスカレーターなどもある。

 本を読む場所も充実していて、みな、自由に本を読んでいた。

 どうやら本には汚れないよう魔法がかけられているらしく、飲み物も、食べ物も持ち込みOKなのだそうだ。

「さて・・・」

 俺は地理の本を探すために、係員らしき人に話しかけた。





 浮遊型移動式足場に全く慣れず、ふらふらになりながらたどり着いた地理の本。

 下を見るのも恐ろしい高さの位置にあった。

「・・・・・やっぱり」

 そして・・・。

 この図書館のどの地理の本にもこの国の形が載っていなかった。

 なぜ?

 この国に来たばかりの俺には分かるはずもない。

「・・・・・」

 またアンジェたちに聞くことが増えてしまった。

 時計を見るとあれから7時間近く経っている。地理関連の本をパラ見とはいえほとんど読んだのだから当然ではあるのだが。

 今日はここぐらいにしよう、と思い図書館を後にする。

 空には綺麗な星が浮かんでいた。そういえばユラドラって近未来のバリバリ機械都市!って感じなのに空気が澄んでいる。

 雰囲気がそうなだけで実際機械は少なく、魔法を使っているからか。車も魔力で動いているのならば排気ガスなどもないわけだし。

 俺は空を見ながら帰宅した。


 

今回はまたもや異世界よりの話となっております。謎らしきものもありましたが、ここから異能バトル開始!とはならないと思います。

バトルというかちょっとした何かはあるかもしれませんが。


ではまた次回。

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