第3日 魔法の国で遊ぶ。
目が覚める。
自然と目が覚めたのではなく、何か体に重みを感じて、だ。目の前にある目ざまし時計(デパートで買った)を見ると午前8時。ここでは大学もないのではやく起きる必要はないのだが。
そして今度は自分の腹を見る。
「何してんだ・・・」
「おー、兄ちゃん起きたぞー」
俺の腹には先日遊んだばかりの近所の子供である坊主の男の子が座っていた。その男の子の声にわらわらとあの時遊んだ男の子と女の子が集まってくる。
ほんとに何してんだお前ら・・・。
「その子達があなたに会いたいとうるさいんですよ」
腹に座っていた男の子をよけて、声のする方を見ると、アンジェがそこにいた。今日は土曜日だからか制服は来ていない。ホットパンツにレギンスをはいた私服姿だ。どのレギンスとやら暑そうなんだが。
季節は夏が近く、気温はとても高い。
だからこんな風に子供に囲まれると激しくうっとおしい。
「お前ら、邪魔だから帰れ」
俺はもう1度寝る。
「えーやだよーあそんでよー」
「そうだよー」
「どうせ暇なんでしょー」
日曜日に子供に遊びに連れてけと言われる父親の気持ちがなんとなくわかった。ただしこいつらは自分の子じゃない。赤の他人。そこまでする義理などもない。
「というか私たちがここにいることには驚かないのですね・・・」
魔力遮断結界はすでにジジ様に頼んである。こうしてお前らが不法侵入できるのも後、数回が限度だろう。それを思うと心に余裕が持てる。
「あそんでーよー」
布団をばさばさ。
俺はさらに布団にもぐりこむ。
ばさばさ。
もぐりこむ。
ばさばさ。
「・・・・・・何をしたらいい・・・」
根気負け。
さっさと遊んでもう1度寝る、に変更だ。
「まだ決まってないんだけど、サッカー教えてくれたお礼に俺達の遊びを教えてやるよ」
「なんで上からなんだ、ガキ」
俺の足の上でふんぞり変えるな。
しょうがない。俺は子供たちをよけて、洗面台へと移動する。顔を洗い、歯を磨く。全て地球製である。だってこの世界の歯磨き粉とか何入ってるか分からないんだもの。
朝ごはんを作ろうと台所へと移動する。
するとリビングでテレビを見ている子供たちとアンジェ、それといつの間にやらロメリアもいた。ロメリアは俺も一度不法侵入してるし、いいかとか思っているとロメリアと目が合う。
ロメリアは立ち上がり、こちらへ来た。
「お久しぶりですわ、お兄さん」
「いや、最近会ったと思うが・・・・・」
「それにしてもお招きしていただきありがとうございます」
「お招き?」
「はい、お兄さんは人間できているのでいつでも家にあがっていいものだとアンジェが」
あの野郎・・・。
「で、何をお作りになるのでしょうか」
「んー適当に朝ごはんをな」
そう言いながら冷蔵庫を見て、野菜などをチェックする。サラダと何にするかな。パンもいいかもだが、ご飯があるし、どうせならご飯に合うおかずを作りたいな。
「お兄さんは料理作れるんですか?」
「ああ」
「パパが言うには男はがさつだから料理なんか作れないとのことでしたのに、お兄さんは偉いのですね」
「そんなでもない」
俺は自分でしないと気が済まない性格なのだ。
冷蔵庫からレタスとキュウリ、トマトを取り出し、包丁で切っていく。トマトには適量塩をかけ、塩トマト。他の野菜はお皿に綺麗に盛り付ける。
水洗いした時の水滴が光り輝き、新鮮な感じがして何倍もおいしそうに見える。
「モモさん料理作れるんですか」
今度は怪訝な顔をしたアンジェが近づいてきた。
「アンジェは料理苦手ですからね」
「料理なんてできなくても生きていける。モモさん頑張ってください。メリー、テレビ見よ」
「はい。それでは失礼します」
アンジェはロメリアを連れて再び超巨大スクリーンの場所へ。朝の情報番組を見ているらしく、テレビに見入っている。
俺はその間にご飯を解凍し、フライパンに油をひく。冷蔵庫から卵を取り出し、卵を割ると黄味が浮きあがった新鮮な中身がフライパンに落ちた。じゅーっという軽快な音。それにいいにおい。最高だ。
半熟が好きな俺はある程度焼けたらすぐにお皿に移す。同時に焼いていたハムもお皿に盛りつけ、完成。どう見ても完璧な朝ごはん。
麦茶をとりだし、コップにそそぐ。こぽこぽという音が気持ちいい。
食卓にそれらをならべていると子供たちがわらわら集まってきた。それに遅れてアンジェとロメリアも。何しにきたんだ。
「な、なにこれ・・・」
子供たちは驚愕の表情。
ロメリアとアンジェもものすごい顔をしている。
「なんだ、お前ら」
「いや、お兄さんそれはなんでしょうか?」
「それってどれだ?」
「ほぼ全部ですよ」
全部って・・・。
「まず、白米は知ってるか?これなんだけど」
白米を指さす。みんなはふるふると首を振る。
「じゃあ目玉焼きは?」
「それは知ってます。しかしモモさん。その目玉焼きは初めてですよ」
「その目玉焼き?」
今度は俺が首をかしげる番であった。
「コトリトトスの卵が私たちの知っている卵の中で一番小さいものですが、モモさんが食べようとしてるそれはもっと小さいです。それでは家族全員分食べれないではないですか」
1つの卵で家族全員分てどういうことなんだ。ホールケーキかなにかなの?
「で、サラダは言わんとすることは分かる」
こいつらとは食文化が大きく違う。とくに野菜の違いは初日に思い知らされている。あの妖怪野菜お化けどもを見ているからな。
特に邪ガイモ、お前は許さない。
「モモさんはゲテモノが好きなのですか・・・?」
「失礼だろ!」
どっちかっていうと俺からすればお前たちの方がゲテモノ好きに見えるんだが。
まぁ、いい。こいつらに構っている暇はない。というかいいかげん出てけよ・・・。
俺はサラダに適当なドレッシングをかける。それをすごく嫌そうな顔で見る子供たち。ここドレッシングもないの・・・?
目玉焼きには醤油をかけようと醤油に手を伸ばそうとすると、アンジェがはっ、という顔をした。
「何してるんですか!」
「醤油をかけようとしてるんだが・・・」
「しょうゆというのは分かりませんが墨汁の1種ですよね」
「ちげぇよ・・・」
墨汁かけるってどういうことだ。食卓に並んでる時点でおかしいだろ。
「いえ、モモさんは食べる前に一筆たしなむ人なのかと・・・和の国から来たのかと・・・」
間違ってないけど惜しい!
「これは醤油って言って大豆って豆からできる調味料なんだ」
「これが調味料・・・」
驚くアンジェを無視して俺は目玉焼きに醤油をかける。
よし、これでいいな。
いただきます、と言ってから白身を箸でつかむ、すーっと箸が入る姿はとても美しい。醤油がついたそれを口に運ぶ。
焼きたての香ばしいかおりが口に広がり、次に醤油の味が広がる。白身特有の食感がいい。その味が消えてしまわないうちにご飯を食べる。
ほかほかのふわふわの白米。やはり日本人はこれだろう。
「うめぇ・・・」
次はサラダ。レタスを一枚とる。みずみずしいそれを食べるとシャキシャキという小気味いい音と食感。ドレッシングは少量しかかけていないので野菜そのものの味も楽しめるのがまたいい。
アンジェたちはすっかり飽きてテレビを見ている。お前らほんと何しに来たんだ。
白身を全て食べ終えると残ったものは黄味。半熟の黄味だ。
「よし」
意を決してご飯の上に黄味をのっける。黄味はなんとか無事だ。ここで力をいれすぎると黄味が割れてぐちゃぐちゃになってしまう。
ご飯の上にのっけた後、黄味に箸を入れる。すると中から半熟の黄味が流れ出す。ご飯の湯気と相まってとてもきれいな宝石のようである。
そこに少し醤油をたらす。
それを見たアンジェがまた近づいてくる。
「なにそれ・・・生じゃないですか・・・お腹こわしますよ」
「生っていうか・・・お前半熟知らないの?」
「コトリトトスは生で食べれませんしね。それに卵を焼くのも魔法でしてるんです。魔法はそんな中途半端に焼くことはできません。むしろ焼きすぎるぐらいじゃないと食べれないものも多いですし」
「・・・・・それでか」
あの時のシュウマイ。
ファイアだかなんだか知らないけれどその魔法で焼いたあのシュウマイは焼きすぎていたのである。違和感の正体がわかった。
ちなみにあの時はシュウマイをこいつにあげる約束の代わりの魔法だから頼ったわけじゃない、と思いたい。なんだかこちらにきて魔法に触れないことの方が難しい気がする。
「魔法・・・か」
俺が頭ごなしに否定していた魔法。
その魔法は果たして本当に楽をするだけのものなのだろうか。
「・・・・・まぁ、今はいいか」
大事なのは目の前の卵とご飯。
うまい具合に黄味とご飯、醤油を絡めて箸でつかみ、口に運ぶ。
やはりご飯が一番だ。朝はパンだヨーグルトだとかいうものもあるが、ご飯が一番おいしい。最初に醤油の味が広がり、次に卵の味が広がる。
よく噛んでいるとご飯の甘みも口に広がり、卵の甘みとちょうどよい。
惜しいがいつまでも口に含んでいるわけにもいかないので飲み込む。
「うまい・・・!」
そしてまたそれを見てげんなりとしているアンジェ。
「食べるか?」
「いらないですよ、そんなの。私たちすでに朝ごはん食べてきてるんで」
冷たい一言。
ならば気をつかう必要はない。がつがつとご飯をかきこみ、よく噛んで味わう。この幸せの時間を繰り返す。ここでトマトだ。
ご飯という主食をある程度食べた後、口をすっきりとさせてくれるトマト。1切れ掴んで食べる。噛むとトマトの少し酸味のある汁がぶわぁと。
噛んでいるとトマト自身の甘みを感じることができた。これとこの酸味のある汁とのコンビネーションがたまらない。
さらにまたご飯を食べる。
それを繰り返していると朝ごはんが終わってしまった。
「俺の楽しみ・・・」
名残惜しいが食器を台所へ持って行って水に浸しておく。しばらくしたら洗おう。
俺はアンジェたちがいるリビングへといった。ちなみに家が広いため、移動が結構大変である。今でも使っていない部屋とかあるからな・・・。
「で、何をするって?」
「あら、終わったんですのね、お兄さん」
ロメリアが笑顔でこちらを見る。
「おれたちの遊びを教えてやろうっていうのが遊びだ!」
元気な坊主の男の子が叫ぶ。
うるせぇ。
「俺はこう見えても忙しいんだ」
「忙しそうに見えないとは思ってたんだ・・・」
アンジェが悲しそうな顔で俺を見ていた。
「忙しいって何してんですか、いつも」
「んー、勉強とか?」
「遊びは?」
「遊び?」
「趣味とかあるんじゃないんですか?まさかないってわけじゃないでしょうに」
本当、こいつの敬語は果たして敬語なのかというほど荒い。元気な印象のアンジェらしくはあるがもう少しおしとやかにできないものか。
「うーん・・・ないな」
「やりたいこととかも?」
「ない」
「つまんな」
とうとう敬語外れたり。
「じゃあ、こちらでやりたいことでも探したらどうでしょうか?」
それとはうって変わってロメリアが丁寧な言葉で提案してくる。
「こっちってこの国でか?」
「はい、ユラドラで、ですよ。お兄さんが思っているよりもたくさんのことがこの国にあると思いますけれど。魔法を使える国、なのですから」
俺はここに来てからたくさんのものを見た。
魔法、ドラゴン、よくわからん生物。どれもこれもが新鮮だった。
ならば俺のやりたいことも見つかるかもしれない、というわけか。
「ま、モモさんは1カ月しかいないわけだし、見つかったころには帰る頃かもしれないですよ」
アンジェが付けたす。
「えーお兄ちゃん帰っちゃうのー」
小さな女の子が泣きそうな顔で俺を見ている。
俺こんな子供になつかれることしたかな。むしろ結構冷たくしていると思うのだけれど。
「そりゃ、帰るさ。俺はこの国の住人ではないわけだし。あ、でもロメリア、可能な限り俺達の文化を教えてやるから」
「ありがとうございます。しかしそれではお兄さんがあまり楽しくないと思いますし、私たちの文化も知ってほしいのです。ですから、今日はこちらの子供がどうやって遊んでいるのか、ということを教える、ということで」
「えぇー・・・」
正直自分で何かを教える方が楽なんだけど・・・。
〇
「じゃじゃーん、今日はこれを持ってきたぜ」
坊主の男の子がだしたものは携帯電話のようなものだった。この国での携帯は一応俺ももらっているので分かるが、携帯にしては少し安っぽい気がする。それこそ子供のおもちゃみたいだ。
ここは俺の家の近くにあった公園。公園といえど俺の知っているような遊具のある公園ではなかった。遊具はあるのだが、魔法を前提にしていたり、デジタルっぽかったりとどことなく違う。
レールのないジェットコースターみたいなものを見たときにはさすがに驚いた。
「それはなんなんだ・・・」
もういいから帰らせてくれ。
勉強の他にも掃除とかやることはあるのだから。
「まぁ、見てなって」
男の子がそれを持ち天高く掲げる。
「変!身!」
男の子がそう叫ぶと体は光に包まれ、その光がおさまったときには赤い戦闘服に身を包んだ小さなレンジャーがいた。朝やっていた特撮・・・のマネか?
「というかすごいな・・・」
俺の世界にも特撮のベルト、武器などがおもちゃとして出ているが・・・マジに変身できるのかよ。しかも身長に合わせてあるし。
ちょっとかっこいい。
「このスーツは杖代わりや箒代わりなんですよ」
アンジェがかったるそうに説明する。
「魔法に慣れていない子供は、私たちも含めてですが、箒や杖を使うんです。安定のために今でも通勤のために箒を使う人がほとんどですけれどね。そのスーツはそれの代わり。杖や、箒よりも弱い子供の遊びレベルの魔法しか使えませんが、本当にヒーローみたいになるんですよ」
そう説明し終えると再び、その男の子を見る。
「見てな!」
そう言うと、特に魔法名を呟かずに体が浮かび上がる。
さらに今度は手に炎をまとわせた。なんだそれかっこいい!
「偽の炎ですよ。さすがに遊びですから。それに小さい子には火炎系の魔法を教えない決まりもありますしね。ただの再現です」
そう言ってアンジェはその炎に触れる。火傷もしていない。
「す、すげー・・・」
「どうだ、兄ちゃん」
「どうだと言われても」
小学生並みの感想しか浮かばない。
男の子は変身を解除していつもの姿に戻った。
「この変身も光魔法の一種なんだぜ。光の具合で戦闘スーツに見せかけてるんだ。その魔法自体はすでにこのデバイスの中に入ってるから、魔力もほとんど使わないし」
なるほど。
少ないお小遣いで生活している俺の国の小学生のように節約は必須ということか。駄菓子屋とか行ったなぁ。あのデパートにあるかな、駄菓子屋。
漫画を月に1冊だけ買ったりと今考えれば不便極まりないが、それでも楽しかった。
「ちょ、ちょっと貸してくれ!」
「お兄さんって結構純粋ですよね・・・」
ロメリアが困ったような笑顔になっていた。
褒め言葉じゃないだろ、それ。
「で、魔力貸してほしいんだけど・・・」
「モモさんって子供みたいですよね」
それも褒め言葉じゃないな。
そう言いつつもアンジェは魔力のビンをくれた。その中には魔力が入っており、それに触れるだけで体に魔力がたまるらしい。液体から固体、気体となんでもありだが、アンジェがくれたのは液体だ。
俺はそれを手に塗りたくる。
「で、それもモモさんの嫌いな魔法ですけれど」
「別に嫌いじゃないよ。それにこれは楽をするための魔法じゃないしな」
「・・・・・屁理屈です」
魔法の話になるとアンジェはなぜか食いついてくるな。
魔法は嫌いじゃないけれど好きじゃない。ここで魔法を認めてしまえば、俺の生き方は・・・どうなるというのだろうか。
「よし・・・いくぜ・・・」
こんなにどきどきするのはお祭りのくじ引き以来だ!
「変・・・身!」
すると体が光出し、俺の身長にあった戦闘スーツに包まれた。
「か、かっこいい・・・」
なんだこの男の子の願いを具現化したみたいなおもちゃは。
すぐに解除する。
「ありがとな、貸してくれて」
「へへっ、また遊んでくれたら貸しはなしにしといてやるよ」
なんで毎回上からなんだお前。今回は仕方ないけど。
「アンジェもすまん。後でまたジジ様に頼んで魔力もらうことにするよ」
「別に。そんなことに魔力使うぐらいならはやく帰るためのテレポートの魔力をためてください」
俺人との付き合いを避けてきた人間ではあるのだが、それでもアンジェの態度が未だ警戒心あるものだということぐらい分かる。
特に魔法の話になると、だ。
また俺はそれについて気になってしまった。
「なぁ、アンジェ・・・」
しかしその言葉は途切れることになる。
上。
俺達を包むでかい影。
飛行機かなんかか?と思って見上げる途中。飛行機で地面に影ができるってどんだけ低空飛行なんだよ、と思いなおし、上を見た瞬間もっとすごいものが目に広がった。
怪鳥。
一言でいえばそれである。
羽毛で包まれた羽はとても巨大で鳥の羽とは思えない。くちばしもかなり大きく、人1人ぐらいなら丸のみしてしまいそうである。
足は太いわけではないけれどすごい力をもっていそうな雰囲気。
怪鳥。
それが一番あてはまる。
「なんだ・・・これ・・・!」
そいつは俺達の頭上を通り過ぎ、目の前にずしんと着地する。
「コトリトトス、ですね」
ロメリアが呟いた言葉を俺は聞き逃さなかった。
「あれが・・・コトリトトス・・・」
ここでの卵を産む生き物。
そりゃこんだけでかければ卵もさぞでかいだろう。
「コトリトトスってことは・・・おじさん?」
「おじさんだー!」
「わー!」
子供たちが着地したコトリトトスに集まっていく。
「お、おい、危ないんじゃ・・・」
「大丈夫です。コトリトトスはおとなしい生き物ですから」
ロメリアとアンジェもそれに集まっていく。
みんなが行くなら・・・と思い、俺も近づいていくとコトリトトスの背に誰か乗っていることに気付く。人・・・・・か?
「おお、お前達、元気そうだな」
その人はおじさん。
頭には手ぬぐいをまき、タンクトップを着ていて、下はつなぎ。ようするにつなぎを着て、上半身はそれを脱いでいるわけか。
体は屈強であり、格闘家みたいになっている。
顔には笑顔を浮かべており、親しみやすそうな雰囲気だ。
「む、そこの青年は初めましてかな」
「あ、はい。初めまして。モモ=イオロイです」
「俺はメッカだ。メッカ=アルバ。よろしく」
そう言うとコトリトトスとやらの背中から降りた。
「メッカおじさんは農場をやっているんです」
アンジェが俺の説明してほしそうな視線に気付き、いやいや説明を始める。
「農場だけじゃなくて、もちろん家畜関係も。そのコトリトトスも家畜のうちの1つですよ」
「こ、これが・・・」
これが、この巨大な鳥が俺の世界でいう鶏や牛、馬だとでもいうのか・・・?
乗馬ならぬ乗化け物といった感じだけれど。
「もしかして青年があのワープできた・・・」
なんかすっかり有名人である。たぶん悪い意味で。
「モモ、何かやりたいことはあるか?」
「やりたいこと・・・別にないですけど」
「ならばうちの農場に来い。時間があればでいい。お前の探し求めるものがあるかもしれないぞ。そうそう息子もモモと同じぐらいの年齢だし、仲良くするといい」
「はは・・・」
あんまし行きたくないな、と思いつつ愛想笑いを浮かべた。
やりたいこと。
何もやりたいことがないのはおかしいのだろうか。
「・・・・・」
明確な目標もなく頑張ってきた俺。
それは寂しいことなのかもしれない。
怪鳥を見つめ、その怪鳥が飛んできた空を見て、また俺は自分について迷うことになった。
今回は日本と異世界半々くらいになりました。片方がっつりのときもあればこういうときも今後あると思います。
感想などどんなことでもどんどん待っています。
ではまた次回。