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魔法の国でひたすら日本生活。  作者: 花澤文化
魔法の国で日本らしい生活をする。
17/24

第15日 魔法の国で推測する。

 ある夏の日、宿題はもうひと段落ついたのかそれとももうすでに諦めたのかは知らないがアンジェが俺の家に遊びに来ていた。久々と言うこともあってか話し始めると止まらず、今まで何をしていたのか、などとまるで親と子供のような話になっていたのだが、俺は不快ではなかった。

 むしろ心地よささえ感じていたと言ってもいい。

「あ、そういえば」

 そんな中だったあの話を思い出したのは。

 本当になんの前触れもなく、普通に思いだしたのだった。特に口止めもされていなかったし、ロメリア自身この話はあちこちでしているらしく。

「ああ、その話ですね」

 とアンジェもすでに知っているようであった。

「確かに不思議ですよね」

 魔法が絡んでいる以上頼りになるのはこの国に住んでいるアンジェのような人物ではあるのだが、そのアンジェすら不思議と言ってしまうほどの内容だったらしい。

 鏡隠し。

 ロメリアの部屋からなくなったいくつかの魔法でできた鏡。

 俺にはなんのことかまるで分からなかったその事件とも呼べない小さな不思議。

「一番有力なのはロメリアが間違って、その魔法の鏡を消してしまったという線なんだけど、きっとそれで合っているのだと思う」

「それはないと思います」

 しかしそんな俺の意見をものすごく簡単に、挨拶するが如く軽い感じで否定した。アンジェはきっぱりと、ものすごい自信を持って否定した。

「メリーは魔法の実力がトップレベルです。私のようなものならまだしも間違えて解くなんてことはまずありえませんよ。絶対にないです」

「絶対に・・・」

 絶対に、ということは0パーセントということなのだろうか。いかんせん俺は数学が苦手なのでそこらへんのことはよく分からないが・・・いや、これは言葉の問題だな。国語だ。

「じゃあ、期限が切れた、とか」

「もちろん、期限はあります。しかしこの家を覆っている結界もそうですが、すぐに消えるわけではないのです。それこそ、信じられない速度で、なくなってしまったと錯覚するほどに早くは消えないのです」

 ということだった。

 やはりこと魔法に関しては俺なんかよりもずっと何倍も詳しい。

「もちろんメリーもそれは知っているはず。消えたと思ったのならきっと魔法を発動してからそう時間は経っていなかったんでしょうね。いつ発動したのか分からなくなるようなまぬけではないので」

 まるで自分のことのように誇るアンジェ。

 会ってまだ4カ月ぐらいしか経っていない俺から見てもロメリアはそんなまぬけをやらかすような人間には見えない。だとすると・・・。

「なんでだ・・・?」

「やっぱり泥棒ですかね。ほら、魔力は宿っているわけですし、魔力として使えるかも」

「でもそれは小学生のお小遣いより少ないすずめの涙程度の魔力なんだろ?」

「え、えぇまあ・・・」

 自分の間違いに気付いたのか、それとも指摘されると分かっていて言ったのか、「そうですよね・・・」と勢いをなくして考え込む。

 魔法を魔力に戻すことはできない。そこに宿るわずかな魔力のみが使えるということか。

 俺も考えてみるが全く分からない。どこかに穴があるのかもしれないが、魔法のことで実はこんな裏技があります、とかだった場合どんなに考えても分からない。

 なんだか馬鹿らしくなる。

「俺らに解けるようなものでもないかもな。ほら、失くしたものが急に出てくるってこともあるし、それにこの話自体前の話だしな。ロメリアも気にしてなんかいないんだろ?」

「はい、それはもう元気です」

 あいつの元気のベクトルはどうも一般的なものから外れているような気もするが。

 しかしやはりその程度の出来事だったのだろう。あれ?なくなってる、でもまあいいや。そう思えるものだったのだろう。

 やはりあれは悩みごとなんかではなくどうやらただの雑談だったようだ。最初の方で悩み事とかそういうことを言うからどうにも勘違いしがちな話ではあるが、人が人の家でなくなったのものを本人以外の人間が分かることはまず、ない。

「今は家の手伝いで忙しいそうですが、昨日会ったときも至って普通でした」

「そうか、なら大丈夫だ」

 そもそも俺も忘れていたぐらいだし、アンジェもわざわざこの議題を引きだすようなこともしないみたいなので話を変えよう。

 そういえば、宿題とかもう全部終わったのか?とあえて避けていそうな質問を意地悪でしようと、小学生男子の嫌がらせのようにしてやろうと思ったわけではあるのだが、それは簡単にいともシンプルに阻害された。

「甘いね」

 誰かの声。俺の家の中のはずなのに俺の知らない声が響いた。

「それは甘いよ」

 声のする方を見ると、そこには女の子がいた。少しぷくぷくとしているものの、造形はとても整っていて普通にモテそうではある。そんな女の子が嬉々としてにやにやしながら俺の方を、俺とアンジェの方を見るのだ。

 俺はアンジェに知り合いか?とアイコンタクトしてみるも、首をふられた。

 というかそもそも知り合いだとしても俺はここで不法侵入を咎めなければならないのだが、アンジェやらが魔法で勝手に入ってきたりしたせいでどうもそこらへんの危機管理能力というものが著しく失っているのかもしれなかった。

「諦めたのはもったいなあ。私なら、私がそこにいれば絶対に答えを出せたのに。もったいないなあ」

 ひたすらにそう言う。

「ちょ、ちょっと待て」

 俺の家は結界に包まれている。だから魔法の出入りは絶対に出来ず、生身の人間だけしか通れない。そしてその生身の人間が家の中に入るにはドアから入るしかないのだが・・・こいつは結界を壊すことよりもドアを開けることを優先した・・・?

 あえてのそこを突いた泥棒という線もあるが、この家の持ち主の目の前にこうも簡単に姿を現すというのはどうもまぬけなのか・・・それとも自信があるのか。

 それともまさか。

「お前、魔法が使えないのか?」

 女の子は自分の話が中断されて挙句そんな質問をいきなりされたため、きょとんとした顔で俺を見る。

「魔法なんて使えないよ。私この国の出身じゃないし」

 と言ったのだった。

「お前・・・出身じゃないって・・・」

「私はつい最近ここに来たばかりなんだよね。本当驚いたよ、普通に買い物してたはずなのに着いたらこんなとんでも世界にいたんだもの。あなたも・・・そうなんだよね。だから話したいことはすごくいっぱいあるけれど、その前にはっきりさせなきゃいけないよ、そのロメリアって子の話を」

 話を邪魔されたからといって怒るでもなく、またもやぺらぺら話し続ける。どうやら謎解きが好きとかじゃなくて、話すこと自体が好きな様子だ。

 正直俺からしてみれば、ロメリアのその話より、こいつの話を聞きたいのだが、ここで邪魔をすると本当に機嫌を損ねてしまうかもしれない。

「ロメリアって子の相談を、悩み事を放っておくわけにはいかないでしょ」

 と急に大人びた口調でそう言うのだ。背が低いわりに俺が同い年ぐらいかな、と思ったのはこの会話に出てくる大人な部分のせいだったのかもしれない。

 顔は純粋に探偵ごっこを楽しんでいる子供のようではあるが。

「残念だけど、期待させて悪いけど、ロメリアのその話は相談でも悩み事っていうわけでもなく、ただの雑談なんだ。気持ちよく推理してくれるその心意気はいいけれどこんなの本人以外分からない問題だと思う、あくまで俺の意見だけどさ」

「それが甘いってとこなの」

 そんな俺の意見を馬鹿じゃないの?といわんばかりの勢いで否定する。

「あなたはただ諦めただけよ。自分に関係ないから、本人以外解けないからって諦めただけ。あの子の話の中にヒントなんかいくらでもあったのに」

「ヒント・・・?」

 普通の雑談のように思えたが。

 確かに少し前の話であやふやな部分もあるかもしれないが、あれが絶対のはずだ。大体あっているはずだ。それこそあいつの家はどんなものなんだ、と疑問に思ったりしたが、お嬢様だと分かればどうということはない。

「というかあいつ自身も答えなんか知らないんだぞ。ヒントなんか出せるはずが・・・」

「出せる。としたらそれはどういう場合だと思う?」

 にやり、と笑った。

 ちなみにアンジェはさっきからすごい考え込んでいる。お前はたぶん推理ものの小説とか読むとき、一応ちゃんと推理するけれど結局外れているタイプの人間だろ。

「出せる場合って・・・そんなの本当は答えが分かってて、俺をおちょくってるとか、俺の力を試そうとしているとか、そういう場合しか・・・」

 と自分で言って気付く。

「そういうこと。あの子はすでにその鏡の所在を知っていたのよ。だからああしてヒントしかないような雑談をピンポイントですることができたの。もちろんあなたをおちょくってとかではないと思う。たぶん解いて意見を求めていたんでしょうね。でもあなたは解けなかった」

「・・・・・」

 こんなの全部推測だ、と言ってしまえばそれで終わりなんだろうけれど・・・。

「まず、鏡は魔力として使われたのだと思う」

「いや、あれはほんとに微細な少量の魔力しか出せないはずだぞ」

「それで十分だったのよ」

 答えに近づいていると判断しているのか、女の子はますます楽しそうに笑う。

「結界のひび程度をなおすには、ね」

「ひび・・・いや、でも」

「魔法、ではなく、魔力なの。張り直すためには魔法を使う、でも、補強するのは魔力を使う、と言ったでしょ。そこが問題だったんだよね。鏡は全てあの子の家の結界補強に使われた」

「そ、そんなのなんでわざわざあいつの鏡を使って・・・」

 それこそ金持ちならば魔力だって買えるだろうし、不十分なはずではない。

「そうね、あの子の親ならばお金でなんとかしたでしょうね。ただ、魔法を使うのに制限を受けているのなら、魔力を持てないような人がいるのならそれは別の話でしょ?」

「それはどういうことだ」

「使用人」

 今度はきっぱりと最初からあった答えをつきつけるようにそう言った。

「使用人なら魔力なんか使えないでしょう?そもそも仕事中は魔力だって持たせてもらえないかもしれない。変に持たせたらそれこそ裏切られるかもしれないからね」

 お金持ちっていうのはよくわからないや、と言う。

「だからどうしてもその場で魔力が必要な時はそういうものから魔力を奪うしかない」

「・・・・・なんのために」

「だから最初にも言ったと思うけど、補強だって。確か、先月補強作業をした、と言ったのよね。あの時の時間から一か月前だから今からだともう少し経つわけだけど」

「ああ・・・」

「それとあの写真。ペンダントの写真だっけ?あれを撮ったのも一か月前だったよね。そこに使用人が1人いなかったのでしょう?ならその人があやしいに違いないじゃない」

「でもそれこそ、親にいって補強を頼めばいいだろ。なんでわざわざその使用人がその場で慌てて直さなきゃいけないんだ」

「あの子が言ってたじゃない。大事なお客様が来ることもあるって。そんなお客様に少しとはいえ、ヒビの入った結界を見せるっていうのは悪い印象を与えてしまう。それこそヒビに気付かなかった使用人全員のせいにされてしまう。それは避けたかったんでしょうね。だから推測だけどそこにいなかったのはメイド長とかそういう人じゃないのかしら」

 淡々と答えを述べていく。

「それで自分が解雇になれば他の使用人が罰を受けることはなくなる。だから表向きは盗んだ、と言うつもりだったんでしょうね。しかしロメリアはその事実を言わなかった。部屋からなくなったもののことを、家の人に言うことはなかった。その事実に気付いたからよ」

 あの子はきっと罰を与えるような人じゃないとは思う。でも親を説得できる自信もなかったのでしょう、と今度は悲しそうにそう言った。

 先ほどからコロコロと感情の変わるやつだ。

「思えば、使用人ならば部屋掃除のために部屋に侵入することは簡単だし。魔力を持たされていない中でそうするしかなかった。まあ、可哀そうな話ではあるけれど、やったことは泥棒と変わらないわ」

 女の子はさも自分の家かのように部屋に入り、ソファにどすんと座り込む。

「あの子は誰かにこのことを気付いてほしかった。そして自分はどうすればいいのか、判断してほしかった。あの家の子供として行動するべきか、1人の家族として行動するべきか」

 まあ、と一度区切って。

「あの子が今、結局どうしたのか、なんて分からないけど。以上、推理未満の推測でした」

 と終わらせるのだった。

 いやいやいやいや。

「待て待て待て、なにお前いきなり現れて馴染んでるんだ。言っとくがお前なんか初登場だし、初対面だぞ。さっきの推測うんぬんもそうではあるが、それでもお前の方が俺は気になる」

「それよりなんか食べ物ない・・・?この世界にある食べ物なんか気味悪いというか・・・怖くてあんま食べれてなくて・・・」

 そのセリフにアンジェがむっとするも俺も同じ気持ちなので、特に何も言わない。

「・・・・・・じゃあ、なんか食べてくか?」

「いいの!?」

「その代わり、話を聞かせろ。それとロメリアに連絡する」

「わかった」

「・・・・・」

 食べ物に釣られ過ぎである。もっと拒むかと思ったが・・・。

 かくして俺と同じ異世界からの住人が俺の家に到着し、ロメリア事件の推測もあえる程度たてた。その上でもまだ聞きたいことがある。

 事情聴取みたいで気が進まないが、食べ物で釣って話をきかせてもらおう。

元々2つに分けただけなので、昨日に引き続き、投稿します。

次からはまた書き始めなければなりませんが、なるべくはやくできるよう頑張りたいと思います。


ではまた次回。

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