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魔女の領主さま! 悪魔召喚されたけど、オレはただの人間です! 〜魔女と悪魔の異世界領地経営〜  作者: ふろんちあ
最終章 ただの人間として

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88/90

リーゼロッテ・ハイランド

「ひぃ……ひぃ……ふぅぅう!」


「いいよ……次でイキんで……せーの!」


 ――ホギャァアアア!


 その日、ハイランドに待望の世継ぎ、リーゼロッテ・ハイランドの産声が屋敷に響きわたった。


「うわぁ……ちっちゃいのです」


 金髪にアッシュグレイの瞳……娘ならばリーゼロッテと決めていた。男の子ならミゲルと名付ける予定だった。


 産まれたばかりの小さな小さな赤ちゃんが、オレの腕のなかで、アヴィの細い指を、それよりずっと小さな手で握っている。


「……おつかれさま、ビィ」


「うん……でも、ちょっと疲れちゃった」


「頑張ったな。ゆっくり休んでくれ」


「何言ってんだい、まだまだのんびりできないよ。体拭いたらすぐお乳あげて。産まれてからが本番なんだからね」


「ツクヨさん、乳母がおりますので」


「ダメだよ。初乳は黄金のお乳って言ってね、飲むか飲まないかで赤ちゃんの育ちが全然違うんだから」


「えぇ……リジィをこっちへ」


「あぁ」


 オレからリジィを受け取ったビィは、そっとお乳をあてがった。


「ふにぃ……ふにぃ……」


「あ……あら? なかなか飲んでくれないわ」


「もっとがっつり押しつけてやんな。まだ飲み方も知らない赤ん坊なんだから」


「そっか……思ってたより大変なのね」


「そうさ、お乳一つとっても大変なんだよ。だからこそ愛おしいのさ」


「うん……ほら、頑張って飲んでね、リジィ……」


 悪戦苦闘の末、ようやくリーゼロッテは最初のお乳を口にした。


 その後ミラの治癒と、アリエス神父の祝福を経て……リーゼロッテ・ハイランドの誕生が、ハイランド中に伝えられた。


 後に氷の魔女の名を継ぎ、広大なるハイランドを統べる偉大な領主に……なるといいな。


 ――


「あの、旦那さま。乳母がおりますので……」


「まぁまぁ。オレはオムツ替えぐらいしかできませんから」


「はぁ……」


「さぁ綺麗になったぞ、リジィ。ご機嫌直ったか?」


「ふにゃあ! たー、たー」


「お? リリ今の聞いたか、いまリジィがパパって言ったぞ」


「親バカですね……まだ喋るわけないでしょう」


「いや、精霊言語があるからわかるんだって。間違いない」


「ふみゃああああ!」


「……それはなんと?」


「えーと、お腹すいた……かな?」


「残念さっき飲ませてる。もう眠いんだよ、ほら満足したら仕事に戻りな」


 乳母のセイラさんに追い出され、ビィのもとへ。


「あんまり育児させてもらえない」


「そりゃあ……まだ小さいし。カケルはたまに遊んでくれたらそれでいいわよ?」


 うーん、文化差。いや、現代でも父親なんてそんなもんか? 貴族だからかなぁ。


「もっと育児に参加したいなら、大事な仕事があるわよ」


「ん?」


「奥さんを甘やかす」


「なるほど、それは大事な仕事だ」


 その日はめいっぱいビィを甘やかした。


 ――


 冬、鉄火組が日夜ビート・シュガーを精製している。ウィンドミル商会が砂糖を待ってるのでフル稼働だ。


 今年はフロストランドの動きもなかった。平和な一年……日本にいたころ、平和がこんなにも尊いものだとは思わなかった。


 リジィが大きくなるころには、戦争の心配がない世界になってほしいものだ。きっとみんな、そう思いながら日々を生きているのだろう。


 そうだ、ドリと作った鉄道模型を飾ろう。女の子でもあの手のものはきっと好きだろう。


「どうせなら走るようにしたいけど……ゼンマイ仕掛けなら作れるかな?」


 ゼンマイ仕掛けって、考えてみるとどういう仕掛けなんだろう……ネジって戻る力を使うから、ゴムがいるのかなぁ。


 ……違うよな、そんなのすぐ劣化する。


「ツクヨ、ゼンマイ仕掛けって知ってる?」


「はん? ぜんまいなんて食い方しか知らないよ」


「知り合いに平賀源内とかいない?」


「あんたねぇ……あーしがなんでもかんでも知ってると思うなよ。蒸気機関だって風力トロッコだって初めて見たんだから」


「そっか」


 ぜんまい……ぜんまい仕掛けって言うぐらいだからきっとぜんまい型なんだよな。ぐるぐる……回して戻る力……バネか。


 薄く硬いゼンマイ型の金属を巻き締める。もとに戻ろうとする力が歯車を動かすってとこかな?


「鉄火組の鍛冶場に行って、作ってもらうか」


 時計みたいな仕掛けが作れるとは思えんが、おもちゃぐらいなら作れるだろう。


 ――


「と言うわけで今日はゼンマイ仕掛けに挑戦します」


「ゼンマイってなんですか?」


「こういうぐるぐるした形の草のこと」


 ゼンマイ型に薄い金属を巻いたものをドリに見せる。


「これを中央から巻き締めると……」


 ――バイーン


「跳ねましたね」


「まぁこれだけだとバネだな」


「これをどうするんです?」


「巻かれるときに溜めた力を、ゆっくりと歯車を回す力に変換したい」


「ふむ……」


「世の中に存在する力っていうのは、全部変換できる。水や風の流れる力、蒸気の押し出す力……そしてバネの戻る力もだ」


「なるほど」


「今のままだと一気に解放されるから、それを抑えながらキリキリと歯車を動かすイメージだ」


「ふんふん。具体的には」


「わからんので、ドリの閃きにかける」


「えええええぇ」


「頼んだぞ、平ドリ源内くん」


 オレはドリに無茶振りして、リジィのオムツを替えに行った。

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