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魔女の領主さま! 悪魔召喚されたけど、オレはただの人間です! 〜魔女と悪魔の異世界領地経営〜  作者: ふろんちあ
最終章 ただの人間として

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別れの季節

 冬が終わり、鉄火組から30人がフロストランドに帰国すると決めた。当初の予定通りとはいえ、彼らは別れを辛そうにしていた。


 そして、ディンギルもまた帰ると決めた。これにはさすがのリリもお怒りだった。


「リリ、すまない、俺は」


「知りません! ウソつきディンギル! ウソつきは嫌い! 大嫌いよ!」


「……長」


「自分の言葉で説得しろ」


「……リリ、俺は、帰る。ハイランドに、必ず」


「ならどうして、どうして行くの? 国帰ったら、あなたはまた奴隷にされるんでしょう?」


「俺は、ハスカールになる。そして、この国に戻る。戦士として、この国と、リリを守る」


「そんなことができる保証なんて、どこにあるのよ」


「……長、帰国者と戦う許可を」


「うん?」


「彼らにも、戦って逃げ延びたという言い訳が必要だ。彼らと本気で戦い、リリに戦士の力を示す」


「……わかった」


 そしてディンギルは、20人全員をぶちのめした。彼らが立ち上がれなくなるまで戦い、ディンギルはボロボロの姿で立っていた。


「ハァ……ハァ……」


「たいしたもんだが……さすがに治癒した方がよくないか?」


「大丈夫だ……リリ、どうだ?」


「……バカじゃないですか? それだけ強いなら、わざわざ帰らなくても、ここで私達を守ればいいじゃないですか」


「それでは、足りない。俺は、20の戦士に勝てても、20の銃には勝てない」


「……」


「必ず帰る。俺は、ハイランダーだ」


「わかりました……待っていてあげます」


 ……ディンギルがこちらでの暮らしを捨て、命がけで帰国するのは、オレが弱腰だからだろう。彼はあちらで身分を手に入れ、ハイランドとの交易権を勝ち取るつもりだ。


 それでも彼がフロストランドの南下政策を止められなければ、いざとなれば国を裏切るという盟約を俺と結んだ。


「さようなら、ディンギル」


「さようなら、リリ」


 帰れるかどうかはわからない。リリは涙を零しながらも凛と立ち、ディンギルの旅路を見送った。


 ーー


 芋の種付けも終わり、そろそろ春の育苗を始めようと思ったころ、ふとスライムのことを思い出した。


「そう言えばあれで温室作れないかな」


 セルロース液のついでにドリが生み出した新素材スライムセルロース液。ビニール代わりに使うには柔らかすぎるが、日差しさえ入れ育苗小屋によさそうだ。


 窓の格子のような枠を作り、スライム液を塗ってみる。やはりそのままでは垂れて使えない。


「薄くていいから下地が必要だな。障子にしてみるか」


 障子と言えばツクヨだ。アイツならできるだろう。


「はん? まぁ紙なら余ってるしいいけど」


 さっそくツクヨの和紙を格子に貼ってもらい、その上からスライム液を塗る。


「まぁギリギリ光は透けてるか……雨に耐えれればこれで……あれ、和紙溶けてない?」


 スライムは死んでてもスライムだった。弱酸性の性質がじわじわと和紙の繊維質を溶かしてしまった。まぁそりゃそうか。それで透過したんだもんな。


 世の中そう簡単にはいかない。本気で作るならやはりガラスが必要だ。鍵を手に入れガラス工房を作るか、直接仕入れる必要がある。次の冬にでも考えよう。


 バジと育苗小屋を作っていると、中がずいぶん暖かくなった。鉄火組だ。そういや温室なくても人間ヒーターいたわ。


「バディル、バジを手伝いながら苗床温めておいて」


「はい、長」


 今年もたくさん、苗が育ちそうだ。


「あれ? あーしの作った障子は?」


「スライムに食われた」


「はん……?」


 ちょっと髪の毛を焦がされた。


 ーー


 春の新年祭。今年はずいぶんカップルが多い。実にいい。オレは昨年と同じく、改良型人力車にアヴィを乗せて回った。


 領内にもミアズマ・ポーションで助かった領民が沢山いる。彼らはアヴィの姿を見て感謝を伝えに来た。アヴィは嬉しそうに微笑んでいた。


 トーナメントはブレイズが優勝した。ほとんど剣技だけで圧倒していた。ダグラスはハスカールに斬られた傷が深く、今は戦士を引退して、新人の育成や樵をしている。


 後夜祭ではツクヨと火消し組が一体となり、鉄火組と一緒に火花を散らす。そして今年もビィと一緒にオリーブの種を配った。


 去年と同じ、だけど少しだけ賑やかになった新年祭だった。


 ――


 今年もてん菜、トマト、ピーマン、ニンジンを植える。家畜が減り、人が増えたので野菜多めだ。

 

 さらに切り開いた森を開墾し、芋とニンジンをたくさん植えた。根菜とタコが日ノ本一家の栄養をささえる。


 鉄火組の開墾はすごかった。切り株や岩だらけの土でもガンガン掘り進める。


「氷土に比べたら、土が柔らかいだけで楽です」


 試される大地の出身者はなんとも心強い。


 ――


 夏、鉄火組がバテた。鍛冶採掘も休ませて、夏は彼らの休養と漁村での仕事を中心にさせることにした。


 多少の給料も渡しているので、買い物したり女を口説いたりしている。冬ずっと働いてたし、これぐらいいいだろう。たまにビィが氷を施したりもしている。


 魔導蒸気機関はまだもとになる蒸気機関を量産できず、風力トロッコにしか使っていない。それでもこれのおかげで荷揚げはずいぶん楽になった。


「ちょっと音が難点よねぇ……」


 トロッコの巻き上げ音と蒸気機関の音は、屋敷にも届く。領内のトロッコはあまり増やさない方が良さそうだ。


 なお鉄火村ではエルフィンがどんどん風力トロッコを作らせている。エルゥがちょっと風を呼ぶだけでキリキリ動くらしい。


 あっという間に季節は巡り、何事もなく日常が進む。ハイランドの夏は忙しい。


 水着回は鉄火組しかいなかった。もはや何も言うまい。


 ――


「ふぅ……今年は氷室に置く氷の量が多くて大変ね」


「鉄火組が暑さに弱いし、肉体労働や蒸気が増えてるからな。ビィの氷が大人気だ」


「単純に人も増えてるものね。あぁ……氷を作れる人がもっと欲しいわ」


 うーん蒸気製氷機なんて作れるのかな? そもそもオレはクーラーの仕組みすら知らんが。


「あ……」


「っと、大丈夫か。ビィ」


「魔力枯渇かしら……? ちょっと、気分が……」


「ビィ? おい、しっかりしろ! 誰か! ツクヨを呼んでくれ!」

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