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魔女の領主さま! 悪魔召喚されたけど、オレはただの人間です! 〜魔女と悪魔の異世界領地経営〜  作者: ふろんちあ
第九章 蒸気の時代

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火加減と脱水

 ――ボコボコボコボコ


「……ぐ、すいません、熱くてもう持てません」


「いや、仕方ない。ここまで長時間高温にしてるんだ。熱に強い樫とはいえ、焦げ始めてる」


 煮沸魔法は魔法水と放熱によって、蒸気機関を稼働させるほどの熱を生み出すことができた。しかし、やはり問題はあった。


 一つ目、触媒自体が熱を持ち始める。とろ火の熱ならともかく、先端が高温に至るほどの魔力を長時間流すと樫の杖自体が熱くなる。


 二つ目、接触部の金属が最も高温になり、樫の先端部を焦がし始める。こうなると魔力の制御も難しくなるようだ。


「解決策が必要だな……樫部分を交換可能にして、先端の金属をもっと水中に広げて熱伝導を高めるか」


「あの……長」


「なんだ?」


「これは、水を燃料にした機械の動力ですよね? 炉を作ればいいのでは?」


「あぁ、ディンギルや鉄火組は蒸気機関を使ってたんだもんな。知ってるか」


「はい」


「蒸気機関の中身はどれぐらい知ってる?」


「あまり詳しくは。ジャガーノードの炉で働かされたことはあります」


「ジャガーノードって?」


「氷河を渡る大型の破氷船です。フロストランドの本土からこちらに渡る時に、乗せられました」


「そうか……そもそもフロストランドは、違う大陸だったんだな」


「そうです。海が凍りついている間だけ、海魔を恐れず海を渡ることができるのです」


「なるほど……話を戻すが、オレが蒸気機関を魔導機関にしたいのは、それがこの国のためになると思うからだ」


「貴族の魔法が強いから、それを利用すると?」


「それもある。だが本質はどちらも力が強すぎるからだ。権力と破壊力の差はあるけどな。……例えば火の薬は、この国を発展させず、逆に封印され停滞させた。エセルにとっては恐ろしすぎたんだ」


「蒸気機関もそうなると」


「そうならないために、ちょうどいい塩梅を模索してるんだよ」


「塩梅?」


「食べたこと無いか? 塩漬した果実の塩加減のことだ。……ちょうどいい温度ってことだよ。今の鉄火組みたいにな」


「……ちょうどいい、温度」


 ――


 アヴィに届いた新しい秘匿の鍵、果糖精製の技法は、基本的にひたすらろ過を繰り返すだけだった。そして最後に別の秘匿の鍵『回転式水分放射器』を利用して乾燥を行う。と記載されていた。


「回転式水分放射器の鍵も頼みますか?」


「いや、やりたいことはわかるからいいや」


 要するに、遠心分離機のことだろう。それがどこまで優れているかは知らないが、欲しいなら秘匿の鍵ではなく持ち主に売ってもらう方がいい。


 まぁ名前からして、遠心分離機にまで達していない乾燥脱水機ってとこだろうな。


「精製のヒントにはなった。ドリに要点を伝えて、似たようなものを作ってもらうとするよ。ダメだったらそのものを注文しよう」


「わかったのです。それと、ミアズマ・ポーションのことですが、アリエス神父が実績をまとめ、聖都に届けてくれました」


「反応は……?」


「今は一部の貴族からの注文に留まっています。教会からの返答はありません」


「貴族から注文が来たってことは、上には話は通ってそうだな」


「教会内で、異端の力の取り扱いについて審議されているのでしょう」


「今までは治癒の力と認めず、追い出してきた力だ。役に立つからといって素直には認められないか」


「アヴィは、他の異端治癒師と病人……どちらも救いたいと考えています」


「アヴィが異端審問みたいなの受けなきゃいいが……」


「ふふ……異端審問なら、もう経験済みですよ。アヴィは呪殺の魔女ですから」


 アヴィはニヤリと、口の端を歪めて笑った。


 ――


「と言うわけでドリ、今日は脱水乾燥機を作ります」


「はい!」


「理論は簡単です。小さな穴を空けた筒を、高速で回転させます。ミキサーの刃を思い出してみよう。どうなった?」


「吹っ飛びました」


「そう、回転による吹っ飛び。それが遠心力だ」


「メモメモ」


「で、高速回転する筒の中にものをいれると、遠心力で外側にへばりつきます」


「上には行かないんですね」


「それは刃が固定されてる所に、いきなり遠心力が解放されたからだ。最初から遠心力を受けると回転方向に飛ばされる。そして軽いものほど上に行く」


「ふんふん」


「その力を利用したものを遠心分離機と言い、精製に使われる。だが今回はそこまで目指さない。と言うかオレには作れない」


「で、脱水乾燥機を作ると」


「理論は遠心力にかかる風と圧力で、中の水分を穴から飛ばす。こんなことは別に手動でも簡単にできるから、まずは手動式を作ろう」


「わかりました!」


「次に出来上がったものを、鉄火組に量産させ、メイドや女衆に配ります」


「ビート・シュガーの精製には使わないんですか?」


「そっちは動力と組み合わせたのを作る。どうせてん菜も残り少ない。それより女衆の冬の洗濯を助ける」


「なるほど」


「そして鉄火組がこの乾燥機で女衆の洗濯を手伝う。冷えた手を鉄火組が温める。するとどうなる?」


「……関係性が良くなって、番ができる?」


「正解! さぁ、頑張って作ろう! この後はポンプ井戸の機構作りもあるぞ」


「カケルさんはいつも楽しそうですねぇ」

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