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魔女の領主さま! 悪魔召喚されたけど、オレはただの人間です! 〜魔女と悪魔の異世界領地経営〜  作者: ふろんちあ
第九章 蒸気の時代

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ボイル・ビート

「ぬん!」


 ――ポコポコポコ


「おー、沸いてる沸いてる」


 さっそくディンギルに煮沸魔法(ボイル)を使ってもらった。触媒があれば彼らでも問題なく沸かせられるようだ。


「どれぐらい続けられそうだ?」


「この程度なら一刻は。放熱(ヒート)より魔力効率はずっといいです」


 ミラさんも治癒してる時そんなこと言ってたな。絞ると消費魔力減るのか。


 ――ポコポコ


「あんまり熱くはならないんだな」


「触媒の性質でしょうね。熱を上げようにも魔力が通らない」


 このままだと蒸気機関にはちょっと足りないか。触媒の形を工夫すればいけるかも知れんが……。


「これ、とろ火にいいな」


 ――


「ぬん!」


 次にディンギルを連れてやってきたのはてん菜加工場。てん菜から糖分を抽出する時、一番難しい煮出しを任せてみた。


「あぁ、いいわね。ちょうどいい温度よ」


「この工程、鉄火組に任せてみますか?」 


 同じ加工場で働くのが、彼女らにとってどうかだ。


「うーん……ちょっとまってね」


 ――ヒソヒソヒソ


 女衆は井戸端会議のあと、ディンギルに話しかけた。


「あんた、言葉はわかるの?」


「すこし、わかる」


「名前は?」


「ディンギル」


「じゃあディンギル、それ、頼むよ」


「まかせる」


 大丈夫だった。そう言えば魔法水だともっといいんだっけ。


「ディンギル、それ終わったら次は魔法水で煮出しを試してみよう」


「わかりました、長」


 ――


「では、ハイランドに仕えるリリが施します」


 てん菜の煮出しにリリの水が注がれる。結構鍋が大きいので大変そうだ。


「……これでよろしいですか?」


「ありがとう、次はディンギルだな。魔力持ちそうか? 足りなければ他と交代しよう」


「任せてください……ぬん!」


 ――……ボコボコボコボコ


「あ、ちょっと沸きすぎ。弱めて弱めて」


「失礼しました、思った以上に魔力が通りやすい」


 ――ポコポコ


「……いい感じだ。魔力はどうだ?」


「ほとんど使っていません。水の魔素が火に向かってくる」


 なるほど、わからん感覚だ。


「それなら長時間でももちそうだな。リリの魔力はどうだ?」


「魔力は一刻ほど休憩をとれば戻ります」


「じゃあ二人でやるとちょうどいいな」


「別に、普通の水で休憩をとれば良いのでは?」


「それはそうだが」


「適当に理屈をつけて、二人で仕事をさせようとしてませんか?」


「……バレたか」


 ボイルの検証がしたかったのもあるが、いい感じの二人に前例を作らせたい気持ちもある。


「リリ」


「なんですか?」


「俺は、一人でいい。代わりもいる」


「そうですか。でしたら私はこれで」


 うーん、素っ気ない。余計なことしたな。すまんディンギル。


「……たまに、手伝いに来てあげます」


「ありがとう、リリ」


 ……ま、いいか。あとは流れに任せよう。


「ねぇねぇ、従者の旦那ちょっとこっちきて」


「はい?」


 若い女衆がニヤニヤしながら呼んでいる。


「あんな感じの若いの、もう何人か連れてきてよ。おっさんはナシで」


「……好みをお伺いしましょう」


 今年の冬は、忙しくなりそうだ。


 ――


 女衆に聞いたところ、やはりエセルは魔法が使えることがかなり加点要素らしい。ブレイもモテるしな。


 また、若い子はそこまでフロストランドを敵視していない。ここは過去の積み重ねの差だろう。


 で、女たちに評判が広まりはじめると早かった。彼らと一緒にいると温いのだと。特に女が寒がっていると、すぐ放熱を使ってくれる。


「そう言えば、ビィも最初のころオレが温いってベタベタ触ってきてたな」


「懐かしいわね。だって冬が来ると人肌恋しいもの。お兄様もエルゥもいなかったし」


「ビィは、鉄火組が本当に領民になっても大丈夫なのか?」


「もちろんフロストランドに恨みはあるわよ。だけど彼らが真っ当に生きて、領民が受け入れるならかまわないわ。でも一番大事なのは、彼らがフロストランドと戦えるかどうかよ」


「そこはオレが聞く限り大丈夫だ。彼ら奴隷兵は元々、フロストランドに従属させられていた部族らしい」


「……じゃあ、彼らも被害者なのね」


「どうかな……そう言う制度のもとに成り立ってる文化なんだ。彼らも勝者なら同じ事をしてるだろう。結局みんな、精一杯生きてるだけだよ」


「カケルは、視点が神様みたいね。ずっと上から私たちを眺めてるみたい」


「そうかな?」


「そうよ。あなたは野盗とか、バニシュとか、敵国とか、普通は関わろうとしない人に関わって行く。誰も彼らを見ようとしないのに、あなただけは目を背けない」


「……そうだな。それが今のオレの『善く生きる(エウゼーン)』だ」


「あんまり、高いところに行かないでね……」


 そっと、ビィの体が寄せられた。


「大丈夫、オレの居場所はビィの隣だ。登るのはせいぜい、高台ぐらいだよ」

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