新しい知識と生き抜く術
「カケル、アカデミーの返事が来ました」
「お、どうだった?」
アヴィが豪華に装飾された手紙を携えてやって来た。
「生石灰はすでに登録ずみ、ビート・シュガーの製法と、スライム討伐技法が秘匿の鍵として認められました」
「おお! スライムもいけたのか。……ってことは」
「アヴィは、正式にハイランドの錬金術師となったのです」
「やったな!」
えっへんと胸を張るアヴィ。何一つアヴィが作ったものではないんだが、まぁそこはいいとしよう。
「それと、他の鍵の目録がもらえたのです、見てみますか?」
「オレは読めないから、面白そうなのを教えてくれないか」
「そうですねぇ……火の薬の材料と製法(危険物指定)、獣脂石鹸、風力トロッコ、果糖精製法、ポンプ式井戸、鎮火の魔法、武器軟膏治療術、水銀を用いたミアズマ処方薬」
「魔法も混じってるのか。鎮火の魔法ってのは?」
「燃え上がる火を弱くする火の魔法だそうです」
「水でよくない?」
「まぁ……あ、でもこれはパメラが料理に使ってる魔法ですね」
「なるほど、料理向けか……あと武器軟膏って何?」
「概要をみるに、武器に軟膏を塗って傷を治す技法らしいのです」
「どういうこと?」
さぁ? と二人して首を傾げる。水銀の薬とかやばそうなのもあるし、適当にさがしても砂の中の針って感じだな。
「蒸気に関する鍵はあるか?」
「ええと……蒸気は見当たらないですが、煮沸魔法ならあります。水を直接沸かせる火の魔法だそうです」
「……それは役に立ちそうだな」
ビィとも相談し、確実に役立つポンプ式井戸と果糖精製法、そして煮沸魔法の鍵を注文することにした。こちらの持つ鍵か対価と交換になる。
それと水銀は毒だと言う忠告も伝えておいた。風力トロッコもちょっと気になるが……知ってそうなウィンドミルに聞いてみてもいいだろう。
――
「パメラさん、鎮火の魔法と煮沸の魔法って知ってます?」
一応注文する前に、キッチンメイドのパメラさんにも聞いてみた。
「なんだいその魔法?」
「アヴィが錬金術師になったので、珍しい魔法や秘匿の技法を知れるようになったんですよ。火を弱める魔法と、水を沸騰させる魔法だそうです」
「あぁ、弱火にするのはできるよ。煮沸は知らない。今度教えとくれ」
「なるほど……それ、鉄火組にコツを教えてもらえませんか?」
「鉄火ってフロストランドの連中だろ? あんまり気が乗らないねぇ」
「無理にとはいいませんが、ハイランドで一番火が上手なパメラさんにお願いできればと思って」
「……あたしの旦那は、あいつらに殺されたんだよ。下手に近づいたら、燃やしちまいそうだ」
周囲の温度が上がってる……火の一族はあんまり怒らせないほうが良さそうだ。
「ごめんなさい、無神経でした」
「別にあんたに怒ってんじゃないさ。弱火にするのに特別な事はいらない、普通の火に小さい火を重ねると逆に弱くなるってだけさ」
「分かりました、ありがとうございます」
その日のパンは、少し焦げていた。
――
鉄火組の小屋は三軒目ができた。ほぼすし詰めの状態から、ようやく人が重ならず寝れる程度の空間になってきた。
「……なんか、この小屋ぬくいな」
「長、どうしました?」
彼は鉄火組リーダー格で残留希望の……ディンギルだ。まだ彼らの名前をちゃんと覚えれてない。というか、みんな髪と髭が濃すぎて顔の判別が難しい
「暖炉一つで、こんなに暖かくなるもんなのか?」
「まぁ人が多いんで。あとは何人か発熱してるんでしょう」
「発熱?」
「熱を体に取り込むんです。温まります」
「あ、それで寒さに強いんだ」
鉄火組は人間暖房機だったのか。ちょっと臭いのは難点だが……。
「着火と発熱、他にどんな魔法が使える?」
「熱を外に出す放熱ぐらいですね」
「ふうん……火にならない程度の火魔法が使えるって感じか」
「そうですね。俺達は魔力が少ないし炎は燃費が悪いんで」
「炎に向かって小さい火を出して、逆に弱くするのと、水を沸騰させるのはできる?」
「うん? あんまり考えたことないですけど、水を温めるぐらいならできると思いますよ」
「わかった。それと、今後製鉄と鍛冶場が必要になる。その辺に詳しいやつも頼む」
「わかりました、余るほどいます」
「採掘や炭鉱夫は?」
「ほとんど全員。元々俺達はそのための人員です」
「設計図や歯車の機構を作れるやつは?」
「……それはいないと思いますよ。図面通りに作るとか、見本と同じパーツを作る程度ならできます」
「よし、わかった。今後の仕事を考えとくから、リーダー達で適切な人員の割り振りを頼む」
ドン、と胸を叩いて承知された。力強い。
「あと、今後ハイランドで暮らすなら一応聞いとこうか」
「はい」
「ここの女性のこと、どう思う?」
「……正直、みな美しいと思います。戦乙女と言えば金髪ですし、肉付きが良く高貴です」
あぁ、金髪多いし、ミラさんも金髪だもんな。で、ふくよかなほど高貴と……。
「じゃあ今後のためにアドバイスだが……」
「なんでしょう」
「もう少し体を洗って、ヒゲは剃ったほうがいいぞ」
「む……むう」
みんなヒゲが濃いのも寒冷地仕様なんだろうが……いまんとこ評判は悪い。あとは蒸し風呂も作ってやらないとな。




