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魔女の領主さま! 悪魔召喚されたけど、オレはただの人間です! 〜魔女と悪魔の異世界領地経営〜  作者: ふろんちあ
第七章 誰も私に触れてはならない

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戦乱の炎を煽るもの

「フロストランドは、関所を拠点にして、火薬と銃を作って……」


 オレは今、何を言った?


 自分の仮説や思いつきで、とんでもないことをしてしまったんじゃないか?


「それが、奴らが昨年、我々の関所を奪った理由か」


 今年になって急に出てきたフリントロック銃。今まさに関所に人を集め、銃を製造しているとしたら、放っておくわけにはいかない……でも、それを言ってしまったら。


「……奴らは食料を犠牲にして関所を要塞化し、そこに採掘場と鍛冶場を作り、銃を製造しているとしたら……時間をかけるほど、戦力差が広がっていく……」


 誰か、否定してくれ。オレの勘違いだから、そんな無謀なことをするべきじゃないと! でないと……オレは……。


「ならば、こちらから攻めるしかないな」


 戦争の引鉄を、引いてしまった。


「カケル、大丈夫? すごい汗よ……」


「待ってくれ、オレの勘違いかもしれない……そんな、早合点は」


「カケル、お前と言う奴は……」


 エルゥが突然立ち上がり、ビィを押しのけてオレの顔を両手で掴んだ。


「素晴らしい! 素晴らしいぞカケル! あぁ、今すぐ裸になってお前を抱きしめたいぐらいだ!」


「わっ、わっ、なんだよ、やめろ!」


 エルゥが顔中にキスしてくる、やめて、ほんとやめて。


「ビィ! エルゥを止めてくれ!」


「もうダメよ、エルゥったら。アハハハ!」


 あ……だめだ、オレが馬に顔中舐められた時と同じ顔で笑ってる。


「なんなんだよ、一回落ち着けよ」


「これが落ち着いていられるか! お前は自分が今、何をしたのか理解(わか)っているのか?」


「それは……」


「理解っていない顔だな! そうだろうな、だからこそ恐ろしい! お前はまったく恐ろしい男だ!」


 エルゥが片眉を大きく釣り上げ、まるで歴戦の将のようなしたり顔で両手を広げた。


「いいか、お前は国家が秘匿しようとする戦略目標を的確に看破し、その急所を明らかにしたのだ! それも、内と外の両方においてな!」


「いや……まだ確定したわけじゃないだろ」


「真偽などどうでもいい! 肝心なのはどう見えるかだ! その道筋に穴がなければ、それで十分!」


 エルゥが高揚しながら服を脱ぎ、薄着一枚になってしまった。


「風が吹くぞ! 凍てつくノース山脈を溶かす熱い南風だ! ベティ! 聖都のベイオウルフとは文仲だったな?」


「えぇ、ブレイズを騎士に引き立てる前から良くお手紙をだしてるわ。素っ気ないけど返事は必ずくれるわよ」


 ビィもメイドたちも何も気にしてない。エルゥが興奮するとこうなるのは日常らしい。


「ベイオウルフを通じて聖都宛に文を送るぞ、檄文は私が用意する!」


「聖都に援軍を頼むのか?」


「救援など不要! 奴らが自分から来るよう仕向けるのだ! 火薬もある、火種もある、導火線は繋がった! 火打石(フリントロック)を打ち鳴らすのは我々だ!」


 ――ダンッ!


「この戦、ハイランドの一人勝ちだ!」


 エルゥの振り下ろした腕が、食卓を大きく揺らした。


 数日後、オレはこの風の騎士エルフィンが、かつて神話の時代、十二国を戦乱の渦に巻き込んだ、風の天使の血を引くものなのだと、深く思い知らされることになる。


 ――


『兼ねてより我等の怨敵たる北方の蛮族共に不穏な動きあり。略奪を企てしが、我等それを撃退せり。されどノース山脈の麓にて隊を組み築城の構えあり、連日黒き煙を観測せり。また、哨戒任務に於いてブレイズ・ベイオウルフ卿率いる部隊が未知の火砲にて襲撃されり』


 ――ペラリ


『これを持って奴輩(やつばら)めへの報復の火種とせり、我等の関所を取り戻すべく剣を研ぎ澄まし、国防に尽くす。果実の落ちる頃、我等国家存亡をかけた戦に挑まん。王国の導きあらばそれに従いしも、返答なくば是非もなし。我等この地を守る大アザミの花とならん』


 ――ペラリ


「……最近眼がかすんで仕方ない。水の姫や、ちょっと内容を教えてくれんか?」


「えぇ大司教様。北の国境にあるハイランド家が、フロストランドと再戦を構えるらしいですわ」


「なんじゃ……好きにやらせとけばええじゃろ」


「そういうわけにもいかないと、サー・ベイオウルフを通じて火の王にまで話が及んだのですよ」


「問題は文と共に送られた、火砲に打ち出されたと言う弾だ。鎧を貫き、臓腑まで達したらしい」


 ――コロン


「……なんじゃあ、鉛玉かい……奴らめ、毒と理解って使っとるんじゃなかろうな?」


「フロストランドは戦に酔いしれる火と鉄の国。鉛の毒性など重々承知でしょう」


「かっ! エセルの教えを理解せぬ蛮族どもめ。彼奴らがそれを使う以上、捕虜の治癒は無しじゃ。伊達にして膿んだ体で送り返してやれ」


「大司教殿、問題はそこではない。この鉛玉を打ち出した火砲の方だ」


(いしゆみ)じゃないんか?」


「弩じゃ内臓まで届きません。火の薬ですよ。鉄の砲に詰め込んで、鉛玉を射出したんです」


「おぉ、風の子はよく知ってるのう、ほんに賢い子じゃ」


「いつまでも子ども扱いはやめてくださいよ……しかも、どうやら北の国はそれを大量生産しはじめているようです」


「火の薬ねぇ……昔おんしらが妙に嫌ってたが、それを敵が使って来てしもうたと」


「その上、ハイランドは火薬も銃もよく知らないで、無謀にも秋の終わりに攻城戦をはじめるそうです」


「……まずくないか?」


「だから我々が呼ばれたんですよ。大司教様」


「ハイランド女爵はもっと聡明な方だと思いましたけど……?」


「いずれにせよ放置はできん。このままハイランドが勝っても負けても、問題が起きる」


「勝ったら良いではないか」


「駄目だ。火薬と銃をハイランドが手にすることになる。奴らは昨年、王国の庇護が遅れたことを根に持っているだろう。余計な火種を抱えることになる」


「……おんしらは、なんでそう同じエセル国内でいがみ合うんじゃ。仲良うせいよ」


「それが神話の時代から抗えぬ、我ら人の業というものですわ」


「サー・ベイオウルフ。遠投投石機(トレビュシェット)を預ける。王国第三騎士団を率いて、北の援護に迎え」


「はっ!」


「運び手は風に任す」


「お代をいただけるなら何処へでも。風と共に参りましょう」


「そんだけだすなら治癒師はいらんな? わしゃ承認だけでいいんじゃな?」


「はい。軍用ポーションだけは私たちと一緒に作りましょうね」


「おうおう、任せておけ。姫の分はわしが手ずから作ってやろう」


(はかりごと)だと思いますけど、わたくしの荘園に影響が無ければどうでもいいわ……あぁ、早く帰りたい)


 ――


 数日後、王国保有トレビュシェット5台、王国第三騎士団100名、随行商隊ウィンドミル商会50名が、聖都を出立した。


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