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セルロースちょいファイバー

『セルロース・ナノファイバー』


 名前は知ってるが作り方も用途もよくわからない。ただすごい硬い素材ってイメージだけはある。


 セルロースは繊維、ナノは極小単位、ファイバーは……なんだっけ?


 光ファイバーって言うからケーブル的なあれかな。ナノ繊維を糸状にして編むとか。


「チャッピー、セルロースナノファイバーについて教えて」


 もちろん教えてくれるAIも、検索してくれるスマホもない。悲しい。


 ――


「ツクヨ、和紙の作り方教えて」


 しょうがないので日ノ本一家の知恵袋に聞いてみる。


「はん? 竹和紙なら知ってるけど」


「てん菜の絞りカスから作りたいんだが、とりあえず製法が知りたい」


「竹の柔らかいとこを縦に裂いて、灰汁でぐつぐつ煮たら、よく洗って、ひたすら叩いて、最後に濾すのさ。てん菜は知らないけど、木や麦なら大体同じじゃないかい?」


 さすがおばあちゃんの知恵袋。


「……今、あーしをババア扱いしたな?」


「してない! 全然してない!」


 おかしい、口に出してないはずだ。


「精霊が言ってたってよ?」


「思っただけだ。言ってない」


 ――バチッ


 ちょっと髪が焦がされた。最近、精霊言語が暴走気味じゃないか?


 ――


「と言うわけでドリくん、今日は紙づくりとセルロースナノファイバーに挑戦します」


「セルロース……なんですか?」


「おれも知らん。目標を言うと、てん菜の繊維を使って、防具になる硬い素材を作りたいんだ」


「紙と正反対な気がしますが」


「いや、紙も素材としては結構固いんだよ。薄いだけで」


「なるほど」


「とりあえず、圧搾したてん菜を細かくしよう」


「例のミキサー使います?」


「ツクヨが言うには、紙にするには裂いた繊維のほうがいいらしいが……てん菜じゃ無理だな。そうしよう」


 ――ガリガリガリガリ


 手動ミキサーでがっつり粉砕。


「これがナノセルロース(仮)だ」


「大根おろしでは?」


 オレもそう思う。しかもちょっと粘っこい。


「次に灰汁で煮る。これは石灰でいいだろう」


「すっかり定番の素材ですね」


 ――グツグツグツ


 例のごとく、灰汁がすごい。まぁ今回は食べるわけじゃないからいいが。


「煮たらこれを洗って叩いてほぐします」


「どろどろですけど」


「……とりあえず漉すか」


 布で濾して中身と液を分ける。目的は繊維だから液は捨てる。


「ねっちょりしてるな……」


「先に乾かすといいんじゃないですか?」


「半分乾かして、半分はこのまま洗って叩いてみよう」


 分担しながら作業を進める。この時点でなんか……紙より素材として使えそうな気がしてきた。


「そういえば漉すって、どうやるんです?」


「濾し器がないから、それっぽいのをツクヨが作ってくれてる。いまはとりあえず実験だ。薄く延ばすだけでいいよ」


「じゃあこっちでも色々試してみますね」


 ――


 結論、てん菜は紙にならない。


 ツクヨも参加して色々試したが、繊維が細長くないから乾かすとボロボロと解れてしまう。


「これは紙というより、糊だね」


 ツクヨの言う通り、粘性は結構高い。そのままでも塗り固めるなら装甲の強化素材として未来がありそうだ。


「紙にしたいなら下地が必要だろう。麦わらがあるんだから、それにこのセルロースなんとかを混ぜればいいんじゃないかい?」


「それ採用」


 紙の目処はたった。あとは本職に任せれば良いだろう。


「いや、あーしは薬師なんだが。包み紙欲しかったからいいけどさ」


「口に出してないのに返事しないでくれ……」


 ツクヨだけ精霊が勝手に伝えすぎだろ。精霊同士がかってに喋ってる説あるな。


「でもカケルさん、今のままじゃ粘性も硬さも足りなくないですか?」


「うーん、最初のミキサーが足りないのかな?」


 ナノファイバーって言うんだからめちゃくちゃ細かくすればいいのかと思ったんだか……そういう問題じゃないか。


「そもそもてん菜の繊維だけじゃ足りないかも知れない。下地として麦と、粘性のある……でんぷん質が欲しいな。ジャガイモ入れてみよう」


「……なんか、料理の具材みたいになってきましたね」


「100%天然由来の安心素材だ」


 ――


「いい感じかもしれん」


「いい感じですね」


 出来上がったセルロース液は、粘度と弾性を両立した癒着素材になった。木材を張り合わせたり、革素材を張り合わせることで強度がかなり向上する。


「これなら馬や刀組の防具に使えそうだ。騎士団に渡すにはもうちょい工夫が必要だな」


「もう一つ試してみてもいいですか?」


「おう、どんどん試そう。なんだ?」


「スライムの残骸です」


 ……あれか。


「……臭くならないか?」


「石鹸と混ぜたら使えませんかね?」


「匂いに香りを足しても、余計臭いと思うが……まぁ試すだけなら」


 結果出来上がったものは、肝心の繊維が溶けて透過性のある、テラテラ光る新スライムだった。やや臭い。


「煮る時、明らかにヤバい臭いがしてたぞ。スライムは毒物かもしれん」


「そんなの皆知ってます。カケルさんだけですよ、わざわざスライムを持って帰らせて、保存までしてるの」


「別に欲しいのはスライムじゃなくて石膏なんだが……。でもこれなら薄く延ばして、温室の材料になるかもな」


「ところであんたら、これを防具に使うのかい? ずいぶんよく燃えそうだけど」


「あっ……」


 オレは銃対策ばかり考えて、この世界のメイン火力のことをすっかり忘れていたのだった。



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