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冒険者ギルドへ行こう!

 朝、オレは屋敷のベッドでまどろんでいる。


「ほほう……こんなに太くて大きいのは初めてなのです」


「……うん?」


「カケル、ちょっとさわりますよ」


「ぐえ」


 寝てるオレの体にまたがり、頭へと手を伸ばすアルビノの少女はベアトリクスの妹アビゲイル。


「ちょ、なにやってるんだ!?」


「淑女にみなまで言わせないでほしいのです……カケルの太くて固いモノに興味りんりんなのです」


 こら、人の上でくねくねと体をよじらせるんじゃない。


「わかって言ってるだろ! ツノならさわらせてやるから降りてくれ」


「やはり間違いないのです」


「なにがだ?」


「お姉様の魔力量はへっぽこです。魔石が無ければあのような強い魔法は使えないのです」


「そう言ってたな」


「だから必ずそばに魔石があったはずなのです」


「ふむ……」


「カケルのツノからは魔石と同じ魔力を感じるのです」


「……つまり昨日のアレは、オレからベアトリクスに魔力が供給されてたってことか」


「間違いないのです。もしかするとそれどころか……」


 コンコンとノックの音。


「お、おい、早く降りろ!」


 よいしょとアルビノの少女を掴んで持ち上げる。軽いな、ちょっと力を入れたら壊れそうだ。


「カケル、いつまでも寝てるのよ。入るわよ?」


 許可も出してないのに堂々と人の部屋に入ってきたのは我が主ベアトリクス・ハイランド。


「……」


「……まて、これは違う」


「……アビゲイル、それは私のよ?」


「わかってるのです。ちょっと味見してただけなのです」


「早く降りて来なさい、冒険者ギルドに行くんでしょ?」 


 パタンと閉まる扉。危なかった。ロリコンと誤解されても仕方ないシチュエーションだったが、許されたようだ。


「カケル」


「なんだ? ベアトリクスが怒るからもう行くぞ」


「魔石は貴重かつ『消耗品』なのです。その事をよく覚えおくのです」


「……わかった」


 アルビノの瞳が、真っ直ぐこちらを見すえていた。


「お姉様のこと、頼みましたよ」


「承知しました。アビゲイルお嬢様」


 氷の魔女の従者として、オレの役割が一つ定まった。


 ――


「ふわぁあ……」


「何よだらしないわね。夜寝れなかったの?」


 朝食はパンとスープとゆで卵。屋敷で飼ってる鶏の朝採れだ。寝てる時コケコケうるさいと思ってたんだ。


「まぁな、色々考えてたし生活リズムが違うんだよ」


 現代人にいきなり中世の田舎暮らしはちょっと辛い。日の出前にはみんな起きてるらしい。


「それじゃあ冒険者ギルドへ行きましょう」


 そういえば今日のベアトリクスは狩りにでも行くかのような革着にブーツのパンツルックだ。スタイルのいいお尻のラインがくっきりと出ていてカッコいい。


「ベアトリクスも一緒に行くのか? 領主の仕事とかあるだろ」


「何言ってるの、そんなのカケルが寝てる間に終わらせたわよ。それに領内の見回りは領主の立派な仕事よ」


「そういうもんか。昨日もそうだったが、護衛とかいないのか?」


「なんで私が自分の町で護衛なんてつけるのよ? どこにでも領民がいるじゃない」


 それはちょっと不用心だと思うが……


「まぁ言われてみればそれもそうか」


 言い方は悪いが、領民にとっては金の卵を産むガチョウみたいなもんだもんな。またの名を歩く製氷機。


「でも冒険者ギルドなんて子供の頃以来よ、楽しみね! 早く行きましょう、カケル」


 ベアトリクスがぎゅっと手を握って引っ張ってくる。きっと彼女には何でもないことなんだろうけど……オレには少し照れくさい


 ――


 冒険者ギルド『自由の丘』亭


「こんにちはー」


「おや、べべ様?」


「久しぶりね、マスター」


「これはこれは……こんなむさ苦しいところへようこそ。今日は何の御用ですか?」


 冒険者ギルドは宿と食事どころを兼ねている店構えだった。頑強そうな中年男性のマスターが一人、食事してる客や依頼書をみてるのが数人。閑散としている。


「私の新しい従者がダンジョンやディガーに興味あるんだって、色々教えてあげて」


「そっちの兄ちゃんですかい?」


「はじめまして。カケルと言います」


「ダンジョンに興味か……先に言っとくが、冒険者なんて良くて日雇い、悪けりゃ根無し草の体のいい厄介払いだ。ご領主様の従者なんて立派な仕事してる人間が関わるもんじゃねぇ。それは理解してるか?」


「わかります」


「そんならいい、ダンジョンの何が聞きたい?」


「生息する魔物と危険度。取れる資源について」


「ダンジョンの魔物って言ったらスライムだ。なぜか雑魚と勘違いするやつもいるが、剣でも槌でもまず倒せない。辛うじて火で追っ払えるぐらいだ。足は遅いし湿地でもなきゃ外に出てこないから、こちらから近づかなきゃ危険はない。見たら逃げろ」


「なるほど……」


 おそらく火や氷魔法なら倒せるだろうが、ベアトリクスをそんな所に連れて行けるわけもない。


「採れる資源は主に魔石だが……まぁあとはディガーに聞いたほうが早いだろ。ちょうどそこで絵を描いてるやつがそうだ」


 視線の先にはまるっこいキャスケット帽をかぶった全身茶色で小柄な男がもくもくと絵を描いていた。


「ありがとう、話かけてみます。ベアトリクス、適当な飲み物を頼めるか?」


「ええ、蜂蜜酒でいい?」


「じゃあそれを3つ」


「あいよ」


 蜂蜜酒を両手に持ちその男の席へ行く。


「こんにちは、お話いいですか?」


「え? はい」


「お近づきの印に一杯どうぞ。オレは領主様の新米従者でカケルと言います」


「領主様の……? ボクはディガーのドリュー。周りからはモグラと呼ばれています」


「この辺りの鉱物や植生に関して詳しい方を探しています」


「それなら、大体わかります……」


「では石灰岩がある場所と、植物の種類と採取地を教えてください」


「えっと、ご依頼料は……?」


「スポンサーは彼女だ」


「はぁい」


 カウンターからこちらを見ていたベアトリクスが、微笑み手を降って応える。


「これはベラドンナ? あなたずいぶん絵がうまいのね」


 ベアトリクスが絵をマジマジと覗き込む


「え? あ、ひょっとして」


「領主のベアトリクス・ハイランドよ」


「か、感激です! 他にもたくさんあるので、よかったら見てください!」


 鞄から取り出された紙束はマッピングされた採取地と、各種資源の種類、特徴がわかりやすく絵つきでまとめられていた。間違いなく彼はこの世界における『博物学者』だ。


「本当に上手ねぇ……これ書物にして売ってくれない? 紙ならもうちょっといいのを用意するわよ」


「ひぇ……喜んで!」


「……この植物はなんて読むんだ?」


「はい、『悪魔の植物』ですね、毒があるため採らないよう注意してください」


「今から採りに行こう」


「え、話聞いてました?」


「もちろん聞いてたさ! 毒が無ければいいんだろ? これがオレの知ってる食物と同じなら食料事情は一気に良くなるぞ!」


「食べれるの? これ」


「あぁ、悪魔的旨さだ」


 オレたちは早速その絵に描かれた『じゃがいも』を探しに出かけることにした。



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