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ハイランド家の明るい事業計画

「ツクヨは今どんな薬が作れる?」


「材料さえあれば葛根湯(かっこんとう)をはじめとした漢方一通りの知識はあるがね。こっちじゃ材料がねぇ。手持ちの薬は姉さんの件でカンバンだ」


「まずはそこからか……体内の毒素をやっつける薬の材料は何が必要だ?」


「手堅いとこならドクダミだ。これは医者いらずっていってね。何処にでも生えるから手持ちの種を春に撒けばこの辺でも生えるだろう」


「なるほど……ドクダミって毒はあるか?」


「名前はドクでも毒はねぇよ。精々匂いが強いぐらいさ」


「なら最初にそれを作ろう。外来種だからちゃんと管理してな。ミラさん、いいですか?」


「……毒でないなら問題はありません」


「他にこっちで使えそうな薬の材料はドリと一緒に探すと良いだろう。ドリ、植物の資料をツクヨに用意してやってくれ」


「わかりました」


「そりゃわかったが、こーせー物質ってのはどうすんだい?」


「材料は分かってるしどこにでも生える。問題はオレがその精製方法を知らない、確実性の高い方から手をつけるべきだ」


「はん……なるほどね。その材料ってのは?」


「……青カビだ」


 全員が驚愕の顔で止まった。


「まぁ……わからねぇでもないが、なるほどね」


「それは……教会が……」


「……毒とみなすでしょうね」


「カビの生えたパンなんて食ったら腹を壊すのは誰でもわかる、明らかに教会における毒だ」


 ミラさんが渋い顔をしている。やはり毒に対する忌避感は強い。


「だがさっきの話にもあったように、ミアズマを殺すには毒が必要だ。抗生物質とは体内のミアズマを殺せる十分な毒素をもちつつ、人体に影響の少ない絶妙なバランスを持った薬なんだ」


「……毒でミアズマを……」


「毒をもって毒を制す。ヤマトじゃ別に珍しい考えじゃねぇ」


「どうせすぐ作れるものじゃないし、今すぐ必要なものでもない。なによりカビがオレの国と同じ性質かもわからない。今は教会の教えに沿った薬の作成に向けるべきだと思う。だがやはり将来的には必要だ」


「その……ベアトリクス様の病気を治した薬ではダメなのですか?」


「ありゃダメだ。材料も希少だし使い方一つ間違えただけで死ぬ。一か八かで最後に用いる……そう言う薬だ」


 鬼肝凶心丹にはツクヨがストップをかけた。まぁ……誰か病気になる度に内蔵取り出されちゃたまらんしな。


「そうですか……」


「ではひとまずドクダミの栽培と、薬草の採取ですね。カビ云々は研究だけしておきましょう。それぐらいなら構いませんよね?」


「わかりました、私は今回のお話を教会内でも議論に上げてみます」


「青カビねぇ……」


 ドリがいい感じにまとめてくれたので話を終えて各自解散した。


 ――


「それで、魔石採掘の件だが……」


「次から次にいろんな話が舞い込んでくるな……」


 屋敷での夕食時、ビィが快復するまで手つかずになっていた魔石採掘事業の話がエルフィンから議題に上がった。


「お前が企画立案したんだろうが。もうすぐ雪解けだ。そろそろ動かすぞ」


「と言っても、冒険者やディガーをどんどん送り込んで魔石を回収するだけじゃないのか?」


「基本的にはそれでいい。だがわざわざ道や安全の確保までしたんだ。ハイランド主動で魔石を大量に確保しておきたい」


「ならやはり領民で採掘するべきだな。どうせ冒険者と言ってもブレイみたいに炎が使えないとスライム相手には役にたたないだろ? 生石灰を持たせれば領民でも倒せる」


「でも戦でもないのに領民を危険に晒したくはないわ……」


 ビィ的には庇護下にある領民に危険なことはさせられないようだ。


「労苦の五人はどうだ? タコよりキツイ仕事だからその分恩赦をだしてやれば、あとは本人次第だ」


「……それでも危険は少なくしてあげないと、中でケガしただけで私みたいな病気になるのはかわいそうよ」


「護衛にフレイムウルフを雇い、採掘箇所はドリが監督する。病気や怪我はハイランドで手厚く保護を約束する、これでどうだ?」


「そうね……それなら承服できるわ」


「じゃあタコ職には代わりの人員をあてがってくれ。五人には次帰ってきたら話しておこう」


「わかったわ、もうじゃがいもがほとんど取れなくなってるらしいからバジ達に声をかけてみるわね」


「そうか……もうそんな季節か」


「ええ、春も近いわ」


「子種は仕込めなかったのか……残念だな」


「ぶっ!」


「まぁ病もあったし仕方ないのです。今からでも仕込んでくるのです」


「……アヴィまで飯時になんて話をするんだ」


「冗談ごとではない。ハイランドの存続にかかわる問題だ。ベティには早く良い子を産んでもらわねばならん」


「……そ、そうか」


「もちろん誰でもいいわけではないが、ベティが好いておるならそれが領主の意思だ」


「ビィはその……体はもういいのか?」


「カケル……こ、今夜は私とお話する?」


 頬を赤らめ上目遣いで誘ってくるのは我が愛しの主ベアトリクス・ハイランド。


「……そう……しようか」


 慣れない、この文化。

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