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天使の子ら

息抜き日常パートです

 ツクヨがめんどくさい。


「おーいカケルくん! 町行くからついてきてくれ!」


 一々通訳するのが手間なのはもちろんだが、この女、とにかく落ち着きがないし気が短い。


「おうおうなんだこのタコは! 生焼けじゃねぇか、あんたあーしを殺す気か?」


 屋台にはいちゃもんつけるし。


「ちっ、しゃあねぇ何枚だ? 九枚? タコなんて足八本なんだから八枚で十分だろ! ほれ一枚二枚二枚が四枚四枚が八枚! ごっそさん!」


「……すいません、これ足りない分です」


 屋台では値切るし勘定は誤魔化す。


「……おうこらてめえ、なに見てんだ? いまガンつけたろうが? おん?」


「やめろって……黒髪が珍しいだけだろ」


 流れ者とみるとすぐ喧嘩ふっかけるし。


 ――カツン


「てめぇ……あーしの刀に傷つけやがったな?」


「うん? カケル、この子どもは何を言ってるんだ? ……お前の妹か?」


「いや……オレより年上だが……」


 冒険者とみたら鞘当して挑発するし。


 ――バチン


「おいこら、なに人の頭越しに話ししてんだ? 前見て道の端歩けっつってんだよ」


「このガキ……こんな往来で火花を飛ばして、火事になったらどうする!?」


「はん! 木造り長屋じゃあるまいし、白雪被ったレンガ家屋がこれっぽっちで燃えるかよ!」


 なんかブレイズと火花飛ばし始めるし。


 ――バチバチバチ


「ぐ……この俺を火で煽るとは……貴様俺をベイオウルフに連なる炎剣のブレイズと知ってのことか!?」


「なぁんだてめぇ? 女相手に親の名前ださねぇと喧嘩もできねぇのか? 腰のもんはお飾りかぁ? おん?」


「……カケルの顔を立てて女こどもの戯言と我慢してやったがもう勘弁ならん! このクソガキ教会送りにしてやる!」


 ――シュラン


 !?


「抜いたな? ……てめぇは明日の瓦版だ」


 ――チャキ


 !?


「なんだお前たち、こんな往来でなにをしている?」


「あぁエルゥいい所に。こいつら止めてくれ。オレの声なんか聞こえちゃいない」


 ――バチバチバチ


「ふむ……火の子同士の小競り合いか、それなら私が見届けよう!」


「いやいや、止めないのかよ!」


「まぁどちらも家臣候補同士だ。町に被害は出すまい。そら! 風は押し留めてやるから存分にやるがいい!」


 だめだ、逆に煽りはじめた。


「エルフィン卿の許可も出た……存分にやらせてもらうとしよう! 我が名は炎剣のブレイズ!」


 ――ボウ


「音に聞こえし百裂花火のツクヨたぁ、あたしのことだ!」


 ――バチバチバチバチバチ


 ジリジリと間合いを詰めようとするブレイだが、ツクヨの周囲で弾ける火花のせいで中々近づけない。周りの領民はすでに避難を始めている。オレもとっくにギルドへ避難してライと酒をのんでいる。


 ――カキン! キン!


「さすがにオッズはブレイズが人気だな」


「しかしあの新参の子も結構な手練れじゃないか? ありゃ相当使えるぞ」


「それよりも火でブレイズが押されてるのは初めて見た」


「よし、俺は小さい方に十枚だ!」


「カケルはどっちに賭ける?」


「オレ? オレはそうだな……うちの主に全額だ」


「べべ様?」


 ――ヒュオーーー


「……あなたたち、いい加減にしなさい」


「「……はい」」


 ――


「付き合いきれん、もうお前の通訳はしない」


「そんな殺生なこと言わないでくれよ〜! かわいい妹分だろぉ?」


「お前みたいなケンカっ早い妹なんかいらん。大体なんであちこち喧嘩ふっかけるんだよ」


 この前は『あたしを殺して』なんてメンヘラJKみたいなこと言っといて、中身はとんでもないチンピラだ。


「それはほら、あーしは新参だし舐められないように顔を売らないと」


「普通にあいさつすりゃいいだろ。ブレイなんかほぼうちの人間だぞ?」


「あいつはほら、見るからに火の気が強いし。あーしも根っからの燃えっ子だからそれはしょうがねぇよ」


「……どういうこと?」


「あのねカケル、火の天使の子は他の火の子とすぐ喧嘩するのよ」


「そうだ、奴らは無理やり止めたってそのまま燻るだけで次はもっと酷いことになる」


「昔、十二の国が争ったのも火の国同士で、それを風の国が煽ったのよ」


「……水の国は?」


「水の国は争いに参加していなかったが、最後にキレた」


 争いの火種を生む火の天使、自由きままな風の天使、争いを好まず動かない水の天使。それぞれの血が今も生きてるわけか。いや、こいつら神話の時代からなんも進歩してないのかよ。


「……要するに火がいなくなれば世界は平和になるんだな」


「それを言うと……」


「戦いにおいては頼りになるんだが平時はな」


「よし、とりあえずツクヨは追い出そう」


「謝る! 謝るから許して!」


 ――


 どうしても通訳が欲しいと言うので、ツクヨも精霊言語が使えないもんか、アビィに相談したところ、精霊を通訳に使う案が出た。


「精霊の友たるアビゲイル・ハイランドが我が友に願う。ツクヨの声を我らに届け、我らの声をツクヨに届けるのです」


 ――ポワポワポワ


「……どうです?」


「お? なんかカケルくんみたいな言葉が遅れて聞こえてくる!」


「それが精霊の声……『幽世の言葉(ロストワード)』です。ツクヨには火の精霊が懐いているので、その子にお願いしたのです」


「いや〜あやかれるもんだねぇ! 寒いのこらえてハイランドまで来たかいがあったよ。ありがとなアビっち!」


「アビっち?」


「アビゲイルなんていかめしい響きじゃ呼びにくいからね、いいだろ?」


「ふむ……ではカケルに教えてもらったヤマト式で、ツクヨはツーちゃんと呼ぶのです。今夜はアヴィの部屋に来るといいのです」


「おう! よろしくな、アビっち!」


 二人は音速で仲良くなった。やはりJK……

(*'ω')ブクマ、評価、感想いただけたら嬉しいのです。皆さんの応援が継続の力になるのですよ

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