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領主の病

「今日も体調は良くないか……」


「うん……熱が下がらなくて……なんだか気だるいの」


 寝室にて療養を続ける我が主ベアトリクス・ハイランド。ダンジョン攻略の後、怪我は治癒できたものの治癒後の腕にはあざが残り、ビィは微熱と体調不良が続いていた。


「やはり感染症の可能性がある……怪我の処置が悪かったんだろうか……本当にすまない」


「大丈夫よ、これぐらいすぐ良くなるわ……心配かけてごめんなさい」


 ――


「ビィの体調が良くならない。食事もあまり取らないし体調は日に日に悪化している。このままだとマズイかも知れない……アヴィ、この国に薬師はいないのか?」


「聖都ならいないことは無いのですが……この国で薬と言えば錬金術師が作るものなのです。錬金術師も薬の専門家もハイランドには……」


「私が聖都で病に伏していた時、珍妙な薬師が来ていたらしい。確か異国の流れ者だったと聞いているが……」


 エルゥが療養してた頃……一月ぐらい前か。


「ここから聖都までどれぐらいかかるんだ?」


「ハイランドから南に関所が三つ、街が二つだ。私が馬を走らせても一週間はかかる」


「……聖都で人を探し薬を手に入れる事を考えると往復約三週間か……厳しいな……」


「だが待っていても仕方ない。私が探しに行こう」


「待つのですエルゥ。今は冬、積雪を越えて聖都まで行くのは無理が過ぎるのです」


「ならどうしろというんだ!」


「あの……」


「どうしたリリ?」


「シスターミラから、カケルさんを探してる方がいるとの伝言を預かりました」


「オレを? 一体誰が?」


「それが……旅の行商人だそうです」


 ――


「ミラさん、オレを探してる人っていうのは?」


「あぁカケルさん。今あちらで不思議な行商をされてる方です」


「さぁさぁ遠からんものは音にも聞け! 近くば寄って目にも見よ! こちら筑波山妙薬のご案内!」


 ミラの視線の先には、人集りの中心で口上をあげる三度笠に羽織物を来た行商人がいた。


「取り出したるこの陣中軟膏ガマの油! だがお立ち会い、一口にガマガマといってもそこいらにいるガマとは一味違う。 え、ガマだよガマ。ガマ知らない? カエルだカーエール。え、カエルから知らない? じゃ馬だよ馬! これ馬油! 馬油軟膏でござい!」


「なんだありゃ……ガマの油売りか?」


「……カケルさん、あれはなんて言ってるんです?」


「あぁ……あの人、ヤマト語で口上してるのか……アレは軟膏を売ろうとしてるんですよ」


「しからば、ガマの油……じゃねえや馬油の軟膏、何に効くかというなれば、先ずは疾病にがんがさ、火傷に効く! 槍傷・矢傷・刀傷! ひびに霜焼け、あかぎれだ! 後ろに回ればキレ痔イボ痔に脱肛も、お尻の穴に塗り込んで三分たてばピタリと止まる! あーワカンナイ? オーケー、オーケー、お尻かわいい? もういいよそれで」


 言葉の通じない売り口上は、もうただの珍妙な大道芸なのでは……


「ハイッ! 手前ここに取り出したるは、

 これぞ当家に伝わる家宝にて、正宗が暇にあかして鍛えた天下の名刀!」


「「おぉーー!」」


 白鞘から抜き放たれた刀は見事な輝きを発していた……日本刀だ……。


「ハイ! 刀は売物じゃないよ! ここにぷにぷにの二の腕がございますので、これを切ってご覧に入れる。ワタシ、ウデキル。オーケー? ハイッ! これこの通り赤い血が出ましてござい! 血がでても心配はいらない。ダイジョーブ! ダイジョーブ! ここにガマの油の馬油軟膏がござりまするから、この軟膏をば傷口にぐっと塗りますると、ピタリと止まる、血止めの薬とござりまする〜!」


 行商人が刀で切った腕に軟膏が塗られると、確かにピタリと血が止まった。まるで最初から傷なんてなかったかのようだ。しかし、観客には不評だった。


「あー、イラナイ? 切れたらキョーカイ行く? ソウダヨネー」


 治癒のある世界で血止めの薬が不要とは言い切れまいが、すくなくとも一般人には受けなかったらしい。口上が終わると人だかりはあっという間にはけていった。


「ホントこの国じゃどこに行っても売れやしねぇ……だがま、芸したかいはあったかよ。人は探すより探される方が簡単だって、なぁ? 黒髪の兄ちゃんよ」


 三度笠を持ち上げた隙間から見えた、切れ長の黒い瞳と目が合った。やはり、ヤマト人に間違いなさそうだ。


「あんたが、聖都にいたって言う異国の薬師か?」


「さてねぇ、手前はただの流れ者、流れ流れた先の地で、どう呼ばれてるかは知らねぇなぁ。で、あんたの方こそ音に聞こえた、ミアズマの退魔師かい?」


「……そんなふうに呼ばれてるかは知らないが、こっちは薬師を探していた所だ。良ければ屋敷で話さないか?」


「クックックッお屋敷にお呼ばれたぁありがたいね、どうせならほら、一宿一飯いただけません? 恩は忘れないよ? 軟膏もあげちゃう、もう寒いわひもじいわでお姉ちゃん泣きそうなの言葉通じるだけで嬉し死ぬ」


 腹の虫を鳴らしながら腰にすがりついてきた行商人は半泣きだった。


「……飯ぐらい出すさ、泊められるかは、あんた次第だ」


「ありがてぇありがてぇ……それじゃあ飯でもすすりながらお話を聞かせてもらうといたしやしょう……」


「なんだか変わった方ですねぇ……?」


 オレはこの珍妙なヤマト人から、何の話を聞くべきか、そして何を話さない方がいいのかを考えていた。


「……本当にあったのか……ヤマト」

(*-ω-)ベティお姉様の病気……心配なのです。

(*'ω'*)新キャラクターはなんと本物のヤマト人!? 続きが気になる方はブクマを忘れないようにするのですよ

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