ダンジョンアタック
シュワーーーー
「スライムが……こんな簡単に……」
「これならリーダーがいなくても倒せるな」
「そりゃありがたい。俺も一々剣を買い換えなくて済む」
「では皆さん、ダンジョンアタックと参りましょう」
フレイムウルフとドリの四人はいよいよ本格的なダンジョン攻略へと向かった。森の道は歩くのに問題ないくらいには切り拓いた。入り口には大量のタコツボを配置し、それらにかかったスライムを生石灰で処理しつづけた。
やがてタコツボにかかるスライムが少なくなり、ダンジョン内のスライムが十分に減ったと見て、大量の生石灰を持ったフレイムウルフがディガーのドリを伴い突入した。
今回の主目的はマッピングである。普段取れるものを取ったらさっさと退散するところ、入口から順にスライムを討伐し、完全に制圧したらタコツボを仕掛け次回に繋げる。
内部は数え切れない横穴が存在しているが、人の通れない穴には石灰を撒き、余裕があればタコツボも仕掛けておく。上部にも穴は存在するのでそこからスライムが落ちてこないかは十分に注意せねばならない。多くは蝙蝠の道となっているようだ。
そうやって慎重にダンジョンを進むと、やがて淡く発光する魔鉱石が見える地点へ到達する。ここまでと同じくスライムを殲滅し、まずは一つ、採掘エリアを制圧した。普段、冒険者のみならここまでで十分すぎる利を得られるだろう。
そこからのエリアはさらに複雑になる。人ひとりギリギリ通れるような下穴、奥へ延びる横穴、異様に天井が高い横穴……そのいずれにも何かの気配がうごめいている。
狭い穴を通る時にスライムに襲われればなす術が無い。ドリが下穴に生石灰を投げ込む。中からスライムが炙り出された。ドリはその道を岩でふさぎ通行不可と記録した。
天井の高い部屋は蝙蝠の巣だった。内部に魔鉱石の光は無く、足元には蝙蝠の糞が山となっていた。殲滅は難しく内部は不衛生が過ぎる。ドリは部屋に蝙蝠のマークを描いた。
奥へ続く横穴を進むと大きな空間にでた。魔鉱石の淡い光で内部がぼんやりと確認できる。魔石の宝庫であることは明らかだ。慎重に内部を調査し、繋がる穴の数を確認する。更に先へ延びる横穴が一つ、大きな下穴が一つ、小さい穴は数え切れない。
ふと、ブレイの炎が大きな水溜りを照らし出した。その表面は玉虫色にてらてらと光っていた。まさかとは思いつつ、四人は覚悟を決めてその水溜りに近づいた。
水溜りがうごめきはじめ、触手が延びる。それは巨大なスライムだった。姿をあらわにしたスライムは巨漢のライほどの高さがあり、四人全員を丸呑みしそうな巨大さだった。
明らかな危険を感じたブレイはすかさず柄に仕込んだ魔石を砕いた。ブレイの全力の炎がスライムを包む。ライが盾となり、レイとドリがありったけの生石灰を投げ込んだ。
巨大スライムは倒せなかった。あまりにも大きすぎ、まるで倒せる気配がなかった。ダンジョン内で長時間炎を使えば毒の気が溜まる。ブレイは首を振って炎を小さくした。巨大スライムは酸を吐きつけながら近づいてきた。四人は撤退を選択した。
――
「……というわけで、巨大スライムをなんとかしないと大部屋から先の調査、採掘は不可能だ」
帰ってきたブレイの報告を聞いたオレ達は頭を抱えた。
「そんなでかいの、どうしたらいいんだ?」
「生石灰も投げ込んだ部分をすぐ分離されてしまい効果薄でした」
「でかい上に知能も他より高いのか……」
「酸を吐き出す勢いも強い、完全に上位のスライムだ」
盾越しに酸を浴びたライの腕には痛ましい焼跡が残っている。
「逆に言えば、その巨大スライムさえ倒せれば魔石が大量に採掘可能なのだな?」
エルゥがドリに尋ねる。
「えぇ、あの部屋には魔鉱石の光が満ちていました。ディガーでなくても少々掘るだけで大量の魔石が採掘できるでしょう」
「なら、どんなスライムだろうと倒せる奴を連れて行くしかあるまい」
「……というと?」
「一人いるだろう? ハイランドの誇る氷の使い手、万物を凍てつかせる氷の魔女が」
巨大スライム討伐のため、我が主ベアトリクス・ハイランドに白羽の矢が立てられた。




