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魔女の領主さま! 悪魔召喚されたけど、オレはただの人間です! 〜魔女と悪魔の異世界領地経営〜  作者: ふろんちあ
第二章 キミが笑ってくれるなら、オレは悪魔にだってなってやる
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鬼人ヤマトカケル

短めなので2連投稿になります。

「我はヤマトより召喚されし悪魔、鬼人ヤマトカケル……汝に恐怖を与えよう!」


「……馬かと思っていたが……その実、魔獣の類であったか……」 


 あれだけ凛としていたエルフィンの口がヒクつき、明らかに腰が引けている。よし。オレはゆっくりと、ただ歩くように近づくと、エルフィンが飛び退った。


「……どうした、ずいぶん及び腰になったじゃないか?」


 努めて笑顔で歩み寄り続ける。レイピアの間合いに入った。


「よ、よるな」


 レイピアが来るタイミングでオレは叫んだ。


「クエン酸!」


「ッ我は一陣の風!」


 エルフィンが今までより大きく飛んだ。彼女の周りにはドーム状の風が渦巻いてる。防御魔法か?


「なんだ!?」


「知らんのか? 体にいいぞ」


 やはり効いた。ブレイズと同じく魔法に聞こえるらしい。オレは4〜5メートルほどの距離まで近づきもう一度詠唱する。


「ありおりはべり、いまそかり」


「っ!?」


 エルフィンが飛んだ。やはりこの距離から警戒してる。覚えてるぞ……一般的な魔法の範囲は十二畳。これぐらいの距離からだ。……おいアビィ笑うな! バレるだろ!


「……さっきからなんだ! その詠唱は!」


「ラ行変格活用だ、それよりそんなにポンポン魔力を使って良いのか? オレはまだ何もしていないぞ」


 この世界の住民は、ただの領民ですら覚悟を決めれば武器に怯まない。おそらく教会でそう教育されているのだろう。神の加護があるから恐れるなかれとか。だが貴族の使う魔法や、わからないもの、恐ろしいものには途端臆病になる。信心深さは迷信深さだ。


「近づくな!」


 エルフィンから突風が吹き込み肌が切り裂かれる。しっかり痛いがレイピアと比べればましだ。


「そよ風だな……墾田永年私財法!」


「……ひっ!?」


 突き出したオレの腕に、目測を誤ったであろうレイピアが手のひらに突き刺さった。


「ふん!」


 刺さったレイピアごと手を握り込む。もちろんすっげえ痛い。痛みは全て笑顔に変える。


「この……抜けん……」


 オレは満面の笑みでエルフィンの首を捕らえた。


「……捕まえた」


「……や、やだ……食べないで……」


 腰を抜かしたエルフィンがペタリとその場にへたり込んだ。


 ――


「全部ハッタリだと!」


 夕食の場でオレはエルフィンに種明かしをした。


「あぁ、アビィにはすぐバレたようだが、アレは全部ただの日本語だ」


「あんなに怯えたエルゥをみたのははじめてなのです。良いものみたのです」


「はぁ……いや、しかしアレは確かに武器で脅すよりよっぽど有効だ。あんなに恐ろしい名乗りのあと、未知の詠唱が聞こえて警戒しないわけがない!」


「もう二人とも無茶しすぎよ! 心配するこっちの身にもなってよ!」


「ハハハ! 許せベティ! 外ではこうやって親睦を深めるものだ! ところでうまいなこれ、歯応えがあってまるで肉のようだ! 貝か? 魚か?」


 オレ達はちらりと全員目を合わせ、キッチンから生タコを運ばせた。その姿を見たエルフィンは、再び腰を抜かして椅子から転げ落ちた。

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