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魔女の領主さま! 悪魔召喚されたけど、オレはただの人間です! 〜魔女と悪魔の異世界領地経営〜  作者: ふろんちあ
第二章 キミが笑ってくれるなら、オレは悪魔にだってなってやる
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ハイランド家の騎士と従者

「……つい今しがた主に戦わないよう言われたところなのですが」


「そうよエルゥ。カケルは騎士でも戦士でもないわ」


 従者を守ろうとする優しい女性は我が主ベアトリクス・ハイランド。


「そんな事は見ればわかる。だが従者だ。家主に危険が迫った時、その従者が愛らしい子犬なのか獰猛な番犬なのかは騎士として知っておく必要がある。私の見立てでは賢い荷馬だがな」


 抜き身のレイピアを縦に構えて言う緑髪の女騎士エルフィン。


「ごもっともかと。しかしオレは剣を使えませんよ?」


「ふむ、なにも荷馬を今さら軍馬に仕立てようなどと考えているわけではない。貴殿のような体格ならそこらの農具でも十分だろう。それとも、こんな細剣が怖いのか?」


 レイピアをぶんぶん振るエルフィン。


「そりゃ怖いですよ。痛いのは嫌いですし、当たりどころが悪ければ死ぬでしょう」


「案ずるな、私はムチの扱いには慣れているしムチで馬が死ぬようなこともない。しかし見るだけで怯えるならこうしよう」


 エルフィンはレイピアを鞘にもどし、両手を広げて腰だめに構えた。


「押し合いっこだ。これなら好きだろう?」


「それならまぁ」


 向こうも鍛えてはいそうだけど、体格差もあるし互角ぐらいにはなるだろう。


「よし、こい!」


 エルフィンとがっぷり四つに組み、押し合う。上背はオレのほうが頭一つ高い。お互い徐々に力をこめて拮抗を保つ。


「ほう、いいぞ、もっとだ!」


 さらに力を込めるが、拮抗は変わらない


「まだ行けるだろう? 優しい馬だな、逆にこちらの力を試してるのか?」


「じゃあ遠慮なく……」


「……お? ……おおおお!!」


 しっかり力を込めるとエルフィンの体がずり下がる。まあ体格はしっかり女性だし、流石に負けないな。


「うむ、見た目以上にたくましいな。さすが馬だ、女の細腕では抑えようもない!」


 人のことを馬馬うるさいなこの人。でも馬好きそうだし、褒めてるのか?


「そりゃどうも」


「では、そろそろ乗らせてもらおう」


 押し込んだ両手の力が行き場を失ったと思ったら、エルフィンがヒュッと股の間をくぐり抜けて背中に組み付いてきた。


「どうだ? せっかく力が強いのに離してしまうからだぞ」


「ぐ……」


 おんぶのような状態で背中にまとわりつくエルフィンの腕が首にかかり、締め付けられる。引き剥がせない、首に決まってる……だめだな、オレは両手をあげた。


「おや、人を背にして逆に大人しくなってしまったな、お前は主人以外も背に乗せるのか? このままでは縄をかけられてしまうぞ? どうする?」 


 降参はダメらしく、締める力がさらに強くなる。……ぶん回してみるか。


「ホラホラ、どうした? そんなもので振り落とせない! 気絶すればお前のようないい馬は拐われてしまうぞ! 極寒の地で縄に繋がれクワを降るのはいやだろう?」


「それはごめんだ……ね!」


 思いっきり体を丸めて背負い投げ、エルフィンを地面に叩きつける。


「カハッ!」


 なんとか首が外れた、上乗りになりけさ固めでしめつける。多分決まってる。


「ぐっ……馬乗りになるだけかと思ったが、存外妙な技を使えるな」


「覚てるのは……これだけですがね!」


 抜けようともがくエルフィンを、さらに体重をかけ力で強引に押さえつける。エルフィンは動けない。


「うむ、見事……だがやはり優しいな……首を締めるなり、踏みつければ潰せるものを……」


 ――ビュン


「うわっ」


 ビュンっと目に強い風が当たり、オレは手を離してしまった。


「……どうした?」


 白々しい表情でエルフィンが立ち上がる。


「今のは、風魔法か? 名乗りが無かったが……」


「……なんのことだ? このハイランドに風が吹くなど日常だ、そうだろう?」


 両手を広げたエルフィンが言う。言われてみればそうだが、いまいちこの手合わせのルールがわからなくて困る。オレには彼女が何を言いたいのかが分からない。


「突然人が燃え上がったり、陸地で人が溺れることに比べれば、外で風が吹くなどごくありふれた日常だ。それともお前はこの家に来る押し入り強盗が、わざわざ呼び鈴を鳴らして無手で入ってくると思うのか?」


 エルフィンが首を振りながら言う。


「そんなことではお前の主人も連れ去られてしまうだろう、お前は主人が繁殖牝馬にされても構わないのか?」


 ……いやな例えだ。そんなことを許せるはずもない。だが、まぁ伝えたいことはわかってきた。


「忘れるなよ、今お前が住んでるこの家は『かんぬき』が壊れているんだぞ」


 エルフィンはオレが甘いと言いたいのだ。


「さて、体は温まってきたか? 痛いのが嫌なら逃げてもいいぞ」


 関所が陥落してるから、いつでも奴らは来るのだと。武器を持って家屋に押し入り、秩序もなく魔法の力を行使してくるのだと。人をさらって奴隷にし……そして何より貴族を、ベアトリクスの血を狙っているのだと。


「……まだまだ、これからだ!」


「……よし、いい子だ」


 エルフィンは再度レイピアを抜いた。

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