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魔女の領主さま! 悪魔召喚されたけど、オレはただの人間です! 〜魔女と悪魔の異世界領地経営〜  作者: ふろんちあ
第二章 キミが笑ってくれるなら、オレは悪魔にだってなってやる
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領主の沙汰

「これで全員だ」


 野盗との戦いを終え、捕らえた八人の男たちを荷馬車の近くに並ばせる。出血が止まらない野盗の傷をブレイズが焼いた。


「ブレイ、あの二人は?」


 炎剣で斬られた二人はそのまま草原に打ち捨てられていた。


「アレはもうダメだ。まだ息はあるがまもなく神の審判を受けに行くだろう」


「……そうか」


「べべ様、この者たちいかがされますか?」


 青い首飾りを握りしめながら、金髪を風になびかせるは我が主ベアトリクス・ハイランド。


「……彼らの顔を良く見せて」 


 ブレイたちが野盗の顔を上げさせる。


「あなた達はノスラ牧場の……生きていたのね?」


「……申し訳ございません、べべ様! 俺達は奴隷にされただけで、御慈悲を、どうか弟だけは!」


「あんちゃん……」


「領民か?」


「野盗に焼かれた北の牧場の兄弟よ。……そっちは農夫のバジよね?」


「……へい、その通りでございます」


「事情は問いません。この三名は連れて帰ります」


 領民三人に対してベアトリクスが沙汰を告げる。


「汝らの主たるベアトリクス・ハイランドが命じます。我が庇護の元へと帰り、教会の導きを求めなさい」


 三人は深々と頭を下げた。


「あとの五人は領民ではない……バニシュね?」


 ……よく領民全員覚えてるな。


「……カケルは、どうしたらいいと思う?」


「ん? オレに聞かれても困るぞ、犯罪者の扱いも制度も何も知らないんだから」


「……そうよね、ごめんなさい」


「内ならともかく外での沙汰はご婦人には辛いでしょう。もう荷馬車へ戻り、このブレイズにお任せください」


「ころすのか?」


「みなまで言わせるな」


 まぁ……そうだろうな。仮にも領主の馬車に手を出したのだ。


「……」


 悩むベアトリクスを御者のメイドがそっと迎えに行く。オレは落として泥だらけになった氷箱のタコを拾いに行く。


「ところで、このタコはもうダメだな。すぐ食わないともったいない」


「今はタコなどどうでもいいだろう」


「別にそんな急ぐことでもないだろ? ここで焼いて食っちまおう。 オレ達だけじゃこの量は食いきれないから、こいつらにも食わせてやろう。 腹減ってんだろ?」


 全員に不思議そうな目で見られる。おれはただ本心からもったいないなと思っただけだ。


「……カケル」


「火傷した二人も、この氷水ぐらいかけてやろう。レイ、ライ頼めるか?」


「……わかりました」


 二人が大火傷で苦しむ野盗の方へ向かう。


「ドリ、鍋に海水ぐらいの塩水を頼む。ブレイは焚き火を二つな」


 ドリは何も言わずにテキパキ動き出した。ブレイは動かない。


「どうした?」


「いや……わかった」


 ブレイと一緒に焚き火の準備を始める。


「連れて来ました」


 どさり、どさりと降ろされた火傷の二人に箱の氷水を全てかけてやる。


「ほら、氷だ。うちの領主様が氷魔法使えてよかったな。他じゃ手に入らないぞ?」 


「うぅ……」


 氷箱にすがりつく男たち。オレはタコを串焼きにし、茹でタコのスープを器に注いだら、野盗たちの縛られた両手に持たせた。男たちの腹の虫が鳴る。


「ほら食えよ、見た目は気持ち悪いかもしれないけどうまいぞ」


 オレが食い始めると何人かがもそもそと食い始める。


「野盗の暮らしは腹いっぱい食えるのか?」


 男たちが首を振る。オレは塩味の効いたスープを飲み、ふぅと息をつく。仲間も食い始める。


「安全な水は飲めるのか?」


 水を注ぎ、飲む。器が空のやつには注いでやる。火傷した二人にも渡しに行く。


「その傷は痛むだろう? オレも痛いのは嫌いでな、教会ですぐ治してもらえるとしても、荒事は苦手だ」


 みんなで、飯を食う。


「飯食ってる間ぐらいなら、話を聞くぞ? どこから来たんだ?」


 ポツポツと、男たちは身の上を語りはじめる。オレはゆっくりとタコをかじりながら、静かに相槌を打つ。一人泣き始めると、次々にすすり泣きはじめた。


「味はどうだ、ブレイ? 一度泥だらけになったタコでも、洗ってやればまだ食えるだろ?」


「……あぁ、全然食えるな……だがこのタコってヤツは見た目が悪い。そのままじゃ町の誰も食わないだろう」


 ブレイが串を振る。


「頭を切って、足だけ売ればいいんじゃないか?」


 ライが返す。


「屋台なら十分売れるだろうな」


 レイが答える。


「頭も切ってこんがり焼けば十分でしょう」


 ドリの言葉に一拍の間をおいたあとフレイムウルフらが笑った。ドリにしては皮肉の効いたジョークが冒険者らにウケたらしい。


「……オレ達は好き勝手に喋ってるだけだから、気にせずゆっくり、よく噛んで食べろよ、ビィ」


 オレはただ静かにたたずむ主に言った。


「……うん」


 全員が飯を食い終わり、静かになった。オレはグッと背を伸ばしながら立ち上がる。 


「ただこのタコってのは運ぶのが大変でなぁ。大変な仕事だけど、これを好きなだけ食えるなら、オレはそう悪くない仕事だと思うんだよ」


 野盗たちは泣きながら頷いた。


「……ごちそうさまでした」


 オレは主の方へと向き直る。


「……決まったか? ビィ」


「……うん。ありがとう、カケル」


 ベアトリクスは立ち上がり、野盗たちに沙汰を告げる。


「……広大なるハイランドを統べるベアトリクス・ハイランドが汝らに導きを与えます。庇護を失ったあなた達がその罪の全てを教会に告白し、再び王国の庇護を求めるならば……」


 その細い指先から、朝露のような雫が滴り落ちる。


「……我が施しを受け取りなさい」


 すべての男が、その雫を受け取った。

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