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BRAINS  作者: 愛猫私
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第7話

第7話 白中と黒木



 「黒木課長!申し訳ないのですが、ちゃんとした説明をお願いします!」

 

 緑川がムッとした表情で言った。


 「・・・。す、すまない。今回は、私の判断ミスだ。金田というBRAINは確保できたが、逃走経路が白中によって破壊されてしまった。」

 「はい。その通りです。とんでもない請求が来ています!」

 「経理には、私の同期がいる。なんとかしてもらえるように私の方から言ってみる。」

 「もちろんです!それと私たちに言っていないことがありますよね!?」

 「・・・申し開きのしようがない。」

 「とにかく!説明してください!私とハジメは、一部始終を見ていました。」

 「あぁ。まず、私はAランクのBRAINだ。能力は『命令(オーダー)』。接吻した人間に1日3回オーダーを出し服従させることが出来る。」

 「はああ!?」

 

 青木がとんでもない声を上げて驚いた。

 他の皆も驚愕している。

 

 「それって精神操作系の能力じゃないですか!?」

 「まぁ、それを以って白中の能力をコントロールする必要がある。しかも1日に3回と条件がある。」

 「いやいや、接吻はいいんですか!」

 「え?俺キスされたの?」

 「僕は見てましたよ、車載カメラで。チューしてました。」

 「まじかよ。」

 「そんなことは大したことではない。キスをすることが発動条件であり、制限は3回。このうちに白中を正常な状態にしなければ、白中は私自体を攻撃する。」

 「まさに諸刃の剣ですね!」

 「あぁ。そのとおり、被害状況を見ればわかると思うが、白中の『夢遊病(スリープウォーカー)』は、身体能力の向上と破壊衝動が主だ。ただ相手を追いかけるだけで、この有様だ。強靭な握力でコンクリートは抉れ、走ればアスファルトは捲れる。当然、私がオーダーしなければ、簡単にBRAINを殺してしまう。」

 「・・・と考えると。」

 「そういうことだ。」

 「どういうこと?」

 「黒木課長の能力は「殺すな」ってオーダーで一つ埋まっちゃってるってことだよ。」

 「ハジメの言うとおりだ。」

 「そして、つぎに「起きろ」だ。覚醒を促さなければ、直前にオーダーしたことを起きるまで続けてしまう。今回の場合は「確保しろ」だった。」

 「確保しろっていう中に殺すなは含まれないと・・・。」

 

 緑川が頭を抱え始めた。

 

 「いちいち、全て命令しなければならない。この能力は万能ではない。高々、Eランク程度のBRAINに白中の能力を使ったのが間違いだった。申し訳ない。」

 「でも、白中さんは今回みたいに自分で寝ちゃうこともあるんですよね?」


 青木は、白中の能力の問題点を突いた。


 「その通りだ。だから、私の能力を発動させた後に眠ってもらわないと困るんだ。」

 「そうしないと黒木課長を襲っちゃうってことですよね。」

 「あぁ。隙を見て接吻できれば問題ないが、あまり自信はない。」

 「あんな動きしているのにキスできないですよ!」

 「問題点が山ほどある。安全かつ効果的なフォーメーションを考えたいのだが、力を貸してもらえるか?」

 「そういうことなら、早く言ってください!」

 「・・・すまなかった。」

 

 緑川は黒木に臆せずにはっきり言った。

 

「とにかく黒木課長の能力は3つの命令で白中を安全に起こすことが重要ってことですよね。」

「そういうことだ。」

 「寝るのは任せるでいいんじゃないですか?」

 「確かに寝るということで一つの条件を使用していては、もったいないな。」

 「今回の金田の件で、「確保しろ」だけで黒木課長を襲っていないところからすると、命令には優先順位があるのでしょうか?」

 

 ハジメは恐る恐る聞いた。

 

 「確かにそれはある。優先度はあとから追加した命令高くなるはずだ。」

 「それだったらまずは「制圧しろ」「起きろ」の二つでいいんじゃないですか?」

 

 ハジメが言った条件が皆の中でしっくり来た。

 

 「確保だとどんな状態でもいいという曖昧さがあったが「制圧しろ」であれば、殺さないな。」

 「やっぱりハジメ君は天才だね!」

 「ひとまずはそれで対応しよう。白中の能力を使うのは、最終手段とする。」

 「寝たら勝手に発動しちゃうんですけど、そこはどうしたらいいっすか?」

 「出来るだけ前もって言ってくれ。何にもない状態で発動されたら接吻するのが厳しい。」

 

 確かにと腕を組んでうなずく白中。

 しかし、またもやハジメが言った。


 「それなら、毎朝チューしたらいいんじゃないですか?」

 「はぁ?」

 「だって、チューが発動条件なら最初から満たしておけばいいじゃないですか。決まった時間にチューしておけば後は命令するだけです。」

 「毎朝のチュー!?」

 「背に腹は代えられないな。ハジメの言うとおりモーニングルーティンとして取り入れざるを得ないな。」

 「ぐぬぬ。何とも言えない!」

 「いいじゃないですか!白中さん!こんなきれいな黒木課長と毎日チュー出来るんですから!」

 「サキちゃん、まじでデリカシー無いな。」

 「でもそうしないと上手く行かないんですから、しょうがないですよ!」

 

 こうして、黒木の能力と白中の能力を最大限発揮するためのルーティンが組まれた。

 当事者はもじもじしているが、やらなければうまくいかない。しょうがないことだと黒木も白中も言い聞かせた。

 

 白中の能力の発動条件の「寝る」ということは、どちらにせよ、その時になってみないと分からないのは変わりないが、寝た後の対応は確立された。

 

 ―――――


話が終わり、金田を捉えたそれ以降の手続きは緑川が行ってくれている。

そのサポート役として、赤坂も事務を手伝っている。とくに異能力者東京収容所への搬送などを行っているが、EランクのようなBRAINをいちいち送っていたら異能力者東京収容所はすぐに一杯になってしまう。ここで、警察の拘留所を借りたり、そのまま通常の刑務所に送ることもある。

そういった調整も緑川の仕事だ。調整役と言っているが、調整が難航することはない。BRAINの脅威は世界共通であり、異能力が変化を起こし、Eランクだったものが人に危害を加えることもある。

最終的には、異能力者東京収容所で判断され、収容されるか更正の道をたどるかの二択になるが、収容人数は増えていく一方であった。



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