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BRAINS  作者: 愛猫私


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第59話

第59話 新鋭



 「道化は結局教えてくれなかったんだよね~。こっちはBRAINSのアジトに乗り込むって言うのに零骨と黒鉄の能力を教えてくれないなんて意味が分からないね~。」

 「申し訳ありません。僕からも口止めされていまして。」

 「がはは!能力のことはいいじゃないか!敵対するわけでもない!八咫烏殿の言った通りに動くぞ!」

 

 八咫烏、炎煙、零骨、黒鉄の四人は、舗装された山道を歩いている。

 

 「まぁ。十中八九、BRAINSのアジトに着いたら戦闘になるから、そのときはよろしく頼むよ~。」

 「零骨さ。」

 「なんでしょうか炎煙さん。」

 「目覚める前の記憶は本当にないんだよな?」

 「炎煙さんに言われたあのあとじっくり考えてみたんです。しかしながら、記憶がないんですよ。目覚めた時からの記憶しかなくて、それ以前のものは何も思い出せませんでした。すみません。」

 「いや、いいんだ。俺は今のお前のほうがいいと思ってるからな。」

 「そんなに昔の僕は、嫌な奴だったんですか!?」

 「いや、そんなことはないけど、なんていうんだろうな。とにかく純粋だった。良くも悪くも。」

 「そうでしたか。何か思い出せるようなことがあればいいのですが、実をいうと今は記憶のことよりもこの任務のことでいっぱいいっぱいで・・・。」

 「そうだよな。いざとなれば殺し合いだ。緊張するのもわかるよ。」

 「・・・わくわくしているんです。」

 「え?」

 「この体に残った傷から伝わるんですよ。生きるって言うのは死と隣り合わせ。それが、この任務で体験できるということに僕はとても興奮しています!」

 「そこは昔のまんまかよ・・・。」

 「がはは!我も同じく楽しみだ!能力の解放!これぞ戦いの真骨頂!激突!そして、粉砕!これこそが戦いというものだろ!」

 「あんまり、大きな声出さないでよ~。」


 炎煙の暗い気持ちは、黒鉄の大声でかき消された。

 零骨や黒鉄は、もともと炎煙とともに行動していたただの人間だ。それが、BRAINとして能力者の脳を摂取することで、覚醒したと言っていた。

 その代償に、以前の記憶は消え、さらには人が変わってしまったように性格も著しく変化した。

 そんな、元仲間と新たにチームを組んで、BRAINSに囚われている青木サキを奪おうとしている。


 「そろそろ着くよ。うーん、辺りには敵らしき者は見えないな~。なんだろう、かなり不気味だね。うちらが言うことじゃないけど。」


 八咫烏が言っているのは、このメンバーの服装にあった。

 八咫烏は、ペストマスクを被り、フード付きの黒いコートを着ている。まさにカラスをイメージしたようだった。

 そして、炎煙は、ヴァンタブラックでできた丸いフルフェイスのマスクを着用して、黒のトレンチコートを着ていた。

 零骨は、髑髏のマスクを付けており、細身の体は白と黒を基調にした戦闘服を装備している。

 黒鉄は、鬼の仮面を付けており、上半身は裸、そして、黒い短パンを履いている。明らかに軽装だ。

 見た目の不気味さで言えば、このメンバーに勝てる者はいないだろう。

 そんな四人は、巨大な屋敷の前に着いた。

 

 「ここがBRAINSのアジトだね~。警備もいないということは、相当力に自信ありということかな~?」

 「どうする?」

 「うちがとりあえず、辺りを確認するよ~。炎煙たちは周りを見張ってて~。」


 数十羽のカラスが突如として、屋敷の周りを旋回しだした。

 窓越しに中を確認するカラスや、壁をつつくカラスなど、八咫烏の能力によって、BRAINSの屋敷は包囲された。

 すると、屋敷の扉が開き、中から一人のメイドが出てきた。

 

 「FQ3の皆さま。我々BRAINSの中核を担う天堂カイ様がお呼びです。どうぞこちらへ。」

 「へ?なあんだ。全部筒抜けなんじゃ仕方ないか~。」


 八咫烏は、あきらめた様子で手を振りながら、身を潜めていたところから出て行った。

 その様子を炎煙たちは見ている。

 

 「そちらに隠れている方々も例外なくご同席を。」

 「お~っと。彼らもなのか~。あまりに雑魚すぎていらないかと思ってたよ~。」


 さすがの八咫烏も潜んでいる炎煙たちの存在を隠しきれなくなっていた。

 メイドは、ドアを抑えて八咫烏たちが入るのを待っている。

 

 「あんまり喋らないでね~。」


 その言葉だけで炎煙たちは身が引き締まった。

 

―――――


 大きな扉をくぐると八咫烏たちは驚愕した。

 あきらかに屋敷の外観と室内の広さが合っていないからだった。

 たしかに屋敷は大きかった。しかし、これほどのスペースを確保することはできるはずがない。

 

 「これは便利な能力ですね~。」

 「はい。我々BRAINSの中には『建物内の空間を自由に拡張できる』能力者がいます。」

 「そんなに簡単に情報を伝えてもいいんですか~?」

 「構いません。我々は同じBRAINなのですから。では、こちらです。」


 そういうとメイドの後を着いていく、八咫烏たち。

 メイドの背後にいるが、メイドに隙など一切ない。八咫烏は、あきらめBRAINSの土俵に乗ることに決めた。

 

 「FQ3の皆さまをお連れしました。」

 「どうぞ、入ってください。」


 通路を進み大きな扉の前でメイドが言い、承諾の声が聞こえた。

 そして、扉が開かれると、そこには、カイを含めた5人の人物が広いテーブルに座っていた。

 炎煙は、フルフェイスのマスクの中で冷や汗をかいた。この人物たち全員が危険人物だと悟った。

 横にいる零骨や黒鉄をみたが、それに気が付いている様子はない。八咫烏はペストマスクからはうかがい知れないが、同様に怖気を感じているようだった。

 

 「これは、これはFQ3の皆さま。遠いところご苦労様です。私、天堂カイと申します。」

 「ご、ご丁寧にありがとうございます~。ですが、呼ばれた覚えはないんですがね~。」

 「いやいや、マリーから聞きましたよ。青木サキを狙ったということは、共通点があるのではないかと思いまして、ここに来るのを待っていました。必ず、青木サキを奪還しに来ると。」

 「いや~。すごいですね~。全部お見通しっていうわけですか~。で、我々に何の用ですか~?」

 「立ち話もあれなので、お座りください。」


 カイに促されるように八咫烏たちは、広いテーブルに用意された椅子に腰かけた。

 

 「単刀直入に言いましょう。もう青木サキはいません。」

 「!?」

 「欲しい情報は我々の手の中にあります。よって、あなた方が欲しい情報は、青木サキからではなく我々BRAINSから奪わなければなりません。どうでしょう。難易度が跳ね上がったのでは?」

 「そ、そうですね~。そちらに座ってらっしゃる面々を見るからして、我々よりもはるかにお強い気がしますし~。これはまた任務失敗ですかね~。」

 「そこで提案があるのですよ。同じBRAIN同士、手を組もうではありませんか!」

 「ん?ちょっと待ってください~。FQ3とBRAINSには明確な目的のズレがありますよ~。我々は人類至上主義、そちらは能力者至上主義。これは相容れないものだと思いますが~?」

 「そうなのですが、ふと疑問に思うのです。なぜあなた達は能力者にもかかわらず、下等な人間などの味方をするのかということに。」


 八咫烏はペストマスクの下で苦い顔をした。


 「いや~。そればっかりは、上司の命令としか言えないですね~。」

 「本当にそれでいいんでしょうか?我々は、少数派である能力者というものに光を当て、この世を変えようとしています。」

 「それは、大層な夢ですね~。」

 「いやいや、夢じゃありませんよ。実現可能な未来の話です。下等な人間などよりも能力者が統治する世界の方がより良い世界になると思いませんか?」

 「う~ん。個人的な話をしていいなら、そうなるといいですね~くらいですかね。」

 「ほ~。未来を悲観しておられるようだ。諦めていますね?」

 「さぁ。それはどうですかね~。」

 

 八咫烏は話をはぐらかしている。

 

 「例えば!あなた方の身の安全を保障するとしたら?どうでしょうか?」

 「何からですか~?」

 「すべての脅威からです。まずはFQ3の上層部から保護するとしたら?」

 「炎煙、零骨、黒鉄。聞く耳を持つなよ。」


 八咫烏の声色が変わった。

 恐怖で縛っていたFQ3にとっては、その鎖が無くなることで、能力者の流出は防げなくなる。

 しかし、その提案を待っていた男がいた。

 黙ったまま急に立ち上がったのは炎煙だった。


 「わりぃ。ここを逃したらチャンスがねえわ。」

 「おい!炎煙!殺されたい・・・かはっ!」


 八咫烏が声を張り上げ炎煙を止めようとしたとき、喉がつまり声がなくなった。

 

 「個人の判断は尊重すべきですよ。」

 「FQ3に、道化に復讐すると決めたんだ。弟を殺させた日からずっと。今がそのチャンス。」


 炎煙は、広いテーブルを回り込み、BRAINS側に着席した。

 

 「すみません。ちょっといいですか?例えばその提案に乗らなかった場合どうなるのでしょうか?」

 

 零骨が、手を挙げて発言した。

 

 「別に今すぐ何かするわけじゃないですよ?来るべき時に敵対するということにはなるでしょう。」

 「そうですか。なら、僕はFQ3に残ります。」

 「理由を聞いても?」

 「そっちの方が楽しそうだからです。」

 

 カイは目を丸くした。

 圧倒的に不利な状況、力の差を前にしても純粋な感情を表した零骨に興味がわいた。

 

 「がはは!そうだな!我はどちらでもよいが、一度死んだ身。生き返らせてくれたFQ3には恩がある。その恩を仇で返すのは、我の道理に合わん。」

 「なるほど。そうですか。申し訳ないのですが、こちらに来ていないFQ3にいるBRAINたちに同じ話をしてもらってもいいですか?もしかしたら、こちらに来る方がほかにもいるかもしれないので。」

 

 声の出ない八咫烏は、首を縦には振らなかった。



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