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BRAINS  作者: 愛猫私


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第57話

第57話 C地点【勇気】



 「『青木さんの居場所を言え!』」


 ウイ単体での『押圧(プッシュ)』によって、強制的にノリコは青木の居場所を吐くことになる。

 ノリコは何とも言えない感覚に陥った。言いたくないのに話さなければならないという矛盾の感覚。

 まずいと思ったノリコは、右手の粘着を解き、自分の口を押えた。

 そして粘着の能力を発動させ、無理矢理に口を閉じた。もごもごと何かを言っている。

 何を言っているかわからない。

 

 その時だった。

 突如として発進した車が、ウイを轢いた。

 ドンと吹き飛ばされるウイとノリコ。それはケイスケがそのノリコの危険な状況を察し、横槍を入れた。

 しかし、ノリコには『押圧(プッシュ)』の効果が発動している。

 無理やり口を押えているがだんだんとその粘着力を凌駕するほど口を開けようとしてしまう。

 抑える右手の隙間から血が流れだしている。

 口を開こうとする力が上回っているからだ。ウイも一人で『押圧(プッシュ)』を使った反動でほとんど感覚がない。さらには車に轢かれ体も満身創痍だ。しかし、ここで、能力を解くことはできない。

 お互い精神力との闘い。歯を食いしばり、相手が折れるのを待つだけの地味な戦い。


 そこに、ケイスケの一声が響く。

 

 「お願いします!もうやめてください!青木さんの場所は僕が教えます!」

 

 ノリコは目を見開き、ケイスケの方を見ていた。

 「何を言っているんだ」という顔をしていた。そんなことしたら、ケイスケの裏切りは確実のものになる。

 しかし、ケイスケの次の言葉で、ノリコとウイは驚愕した。

 

 「僕とノリピーを助けてください。」

 

 ケイスケはわかっていた。自分たちはこのままではだめだということに。

 だから目の前の公的機関に保護を求めた。選択は間違いではない。このままノリコとウイが戦いどちらも戦闘不能になれば、あとからくる者に捕まってしまう。

 だったら、今、最悪の状況になる前に声を上げるべきだと考えた。

 ケイスケはおもむろに車の上にあったドローンを持ち上げると、能力を発動した。


 「ここが青木さんの居場所です。操縦士さんわかりますよね?」

 「あぁ。信ぴょう性に欠けるけど、君たちはこちらからしたら保護対象だ。」

 「ノリピー。これが一番いい方法だよ。この人たちの保護下に入るのが、一番いい。そうじゃなかったらノリピーはここで死のうとしてるでしょ。それは嫌だ!」

 「ウイちゃん。青木お姉ちゃんの場所が送られてきた。もう戦わなくていい。」

 「・・・。」

 

 感覚のないウイは沈黙していた。

 ウイの白い靄はなくなった。そして、どさりとウイは倒れた。

 満身創痍のノリピーもまた、ウイ同様にどさりとその場に倒れた。


―――――


 「ケイスケ君。今この場を収められるのは、君だけだ。協力してくれるかい?」

 「うん。わかった。」

 「二人を車まで運んで乗せるんだ。」

 

 ケイスケは子供だ。大人の女性しかも二人はノリピーの能力で手がつながっている。

 二人分の体重を支える術がないため、引きずってなんとか車まで引っ張ってきた。

 すると、ノリピーがおぼろげだが意識を取り戻した。

 

 「うぅん。ケイスケ・・・何をしているんですか?」

 「みんなでここから逃げるんだよ。このドローンのお兄ちゃんが助けてくれるって。」

 「どうも、ハジメといいます。理由はどうあれ、青木さんの居場所がわかった今、戦う意味はありません。ケイスケ君が助けを求めた時点で、我々がやることはあなたたちの保護です。」

 「・・・そうですか。」

 「ノリピー。大丈夫だよ。車でこの人たちの本部に行けば、匿ってくれる。」

 「わかりました。」

 「助かります。ウイちゃんをお願いできますか?」

 

 ドローンから出るハジメの指示でノリピーとウイは車の後部座席に乗った。

 そして、ケイスケは運転席に乗り、助手席には小さなドローン。

 このメンバーで特殊能力者調査部隊本部に向かうことになった。

―――――


 ケイスケの能力で自動走行する車は、颯爽と走っている。


 「ケイスケ君。よくあのとき声を上げてくれた、ありがとう。」

 「あそこで勇気をださなかったら、あのままノリピーは死んじゃうから。」

 「死んじゃう?」

 「きっとどこかで僕たちのことを見てたと思う。」

 「誰が?」

 「たぶんマリーだよ。」

 「じゃあ、いまも狙われてるってこと?」

 「マリーの能力で車みたいな重たいものは移動させられない。だから車に乗ってれば大丈夫だし、青木さんの位置情報自体は僕たちを殺してまで、秘密にしておくものじゃないってことだと思う。」

 「そうか。」

 「ケイスケ。ありがとう。助けてくれて。」

 「僕は何もしてないよ。ノリピーこそずっと守ってくれてありがとう。」

 「あなたが本来いるべき場所は、特殊能力者調査部隊の保護下だったんです。でも、BRAINSに捕まってしまった。私は何もできませんでした。申し訳ありません。」

 

 静まり返る車内。

 それを変えたのは、ウイのうめき声だった。

 

 「うう。」

 「ノリピー。頼める?」

 「えぇ。大丈夫ですか?」


 ノリピーはウイの頬をなでる。

 ウイは、失っていた意識を取り戻した。

 

 「・・・ここは?」

 「車の中です。いったん戦闘は中止です。というよりは、降伏します。私たちはあなた方の保護下に入ります。」

 「ハジメちゃん。どういうこと。」

 「ケイスケ君が青木さんの居場所を教えてくれた。それと同時に、我々特殊能力者調査部隊の保護下に入れてくれと懇願した。それだけBRAINSっていう組織は危ないってことだね。」

 「あぁ。そう。」


 ウイは内心憤りを感じていた。

 たとえ、BRAINSの言いなりになるしかない立場だったとしても、青木を拉致したのは事実。

 保護してほしいというのは、都合がいい話だ。

 しかし、ノリピーをみれば、満身創痍だということは歴然だ。限界を遠に超えてるだろう。

 もちろんウイも限界だ。本来双子のユイと一緒にでしか発動できなかった『押圧(プッシュ)』を一人で発動させたことにより、身体に多大なる反動が来ていた。

 ウイの憤りは、身体が動かないことで、爆発することはなかった。

 

 



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