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BRAINS  作者: 愛猫私


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第56話

第56話 C地点【念と粘】



 紫水ノリコの能力は、「貼付」。

 彼女の能力はスティックのりを強力な粘着性の高い物質に変えることができる。

 また自在にくっ付けたり剝がしたりすることができる。

 実に戦闘に向いていない。が、青木の口を塞いだのもこの能力のおかげだった。

 

 BRAINSの能力以外の戦闘力は、皆、まちまちと言ったところだが、紫水ノリコは違った。

 不破ケイスケを守るために、鍛錬をし、自分の能力でできる最大限の戦闘方法を編み出していた。

 ポケットから取り出したスティックのりを持って、構える紫水ノリコ。

 ウイもまた、低い姿勢で構えをとった。

 

―――――


 紫水ノリコと不破ケイスケがBRAINSに入ったのは、同じ時期だった。

 不破ケイスケの能力は、機械を操る能力『機械操作(テクノキネシス)』だったため、何かと重宝され本人は訳も分からず、いろいろな悪事に使われていた。

 紫水ノリコは、こんな小さな少年が訳も分からず、悪の渦に巻き込まれるのは間違いだと思っていた。しかし、強力な能力を持つ集団に抗う術はなかった。いや、BRAINの保護という目的であればこの子はここにいたほうがいいのかもしれないとも思っていた。

 今回の青木の誘拐もケイスケがいなければ、時間を稼ぐことはできなかった。さらに重要な青木の居場所を知っているのは、ケイスケを含めノリコの二人しかいない。

 どう考えてもケイスケは相手からしても超重要人物である。守らなければならない。しかし、ノリコは葛藤していた。このままBRAINSにいてもケイスケは救われない。

 自分は、戦闘員として制圧され、投獄されることになるかもしれない。しかし、ケイスケは本来であれば保護されて自由に生きているはずだった。それが利用され、訳も分からずここにいる。

 ケイスケへの思いは、他人とは思えず、保護者と言ったところか。ノリコはこの橋での戦闘がケイスケを救う最後の瞬間だと思っていた。


―――――


 ウイは、低い姿勢から顎を捉える蹴りを放った。

 それを仰け反るように避けるノリコ。そして素早く、スティックのりをウイの胴体にくっ付けようとする。

 見え見えの攻撃を食らうほどウイは弱くない。あり得ない体勢から攻撃を避け、さらには体を回転させ、足でノリコの手を蹴り上げた。その攻撃によりスティックのりは弾かれ橋の上に転がった。

 

 「どんな体幹をしたらそんなことができるんですか。」

 「攻撃が見え見え。心読まなくても対処できる。」

 「残念ながらスティックのりの予備はいっぱいありますので大丈夫です。」

 「あなたの能力はくっ付ける能力でしょ?」

 「・・・。心を読まれてしまいましたか。」

 「攻撃するときに意識しない方が不可能。」

 「それはそうですね。そのあとどうするか考えないで戦うなんて無理ですからね。」

 「でも、なんで何も考えてないの?」

 「心外ですね。考えてますよ。いろいろと。」

 「心が読めないんだけど。」

 「どういうことですかね。私は真剣にあなたに勝とうとしてますよ。」

 「なんか口だけって感じ。」

 「そうですか。痛い目にあいますよ?」


 ノリコは、戦闘よりもケイスケのことを考えている。

 戦闘にももちろん集中しているが、この際自分はどうなってもいいからケイスケだけが助かることを考えていた。

 それはウイにも伝わっている。

 だからこそウイは、その仲間を守ろうとする姿勢について、心が読めないと濁すことで、自分に相手は敵だと言い聞かせていた。

 

 ノリコは、複数のスティックのりをばら撒いた。

 その糊の部分が、ドロッとした粘性を帯びた液体に代わり地面をまだらに覆った。

 

 「これでその機敏な動きは制限されましたかね。」

 「問題ない。」

 

 ウイは、フラフラとした足さばきを始めた。

 ランダムにばら撒かれた粘液を避けるように、空いているところ器用に渡る。

 酔拳は足場の悪いところで戦うための足さばきをいう。

 ウイの真骨頂は足である。付着したら何が起こるかわからないが、それを確実に避けてノリコに攻撃する。足は粘液を避けるのに使っているために、珍しく拳で攻撃している。

 ウイの威力の少ない拳の攻撃をガシッと手で受け止めたノリコ。

 

 「弱い攻撃だとこの通り私でも抑えられるんですよ。」


 そして、ウイは苦い顔をした。

 それは、手に粘着液が着いているのが分かったからだった。

 

 「このスティックのりから作れる粘着液は、私の自由自在です。くっ付けるのも剥がすのも。」

 

 ウイは引きはがそうとするが、全く取れる気配がない。

 ウイの右手とノリコの左手が完全にくっ付いてしまった。

 

 「これで攻撃できませんね。」

 「いや。そんなことはない。」

 「え?」


 ウイは右手を軸に、さらには、ノリコに体重をかけることで支えさせ、身体を浮かせた。

 そして、身体を捻り、左足でノリコの右頬を蹴り飛ばした。そして、お互いがくっ付いているため、ウイもノリコも吹き飛ばされた。

 

 「いてて。無茶苦茶な攻撃じゃないですか。」

 「離れないならこうするしかない。」

 「あなた、相当に体術に自信があるみたいですね。」

 

 両者が、近い距離でゆっくりと立ち上がる。

 そしてすぐさまウイは次を繰り出した。

 左手でノリコの顔面を捉えようとする。

 

 「けど、蹴り以外はあんまりなんですね。」

 

 ノリコは右手でその攻撃を防ぐ。そして、また、粘着液でくっ付けてしまった。

 これで両者の手は完全にくっ付いてしまった。

 相手との距離が近すぎて、蹴りのインパクトが殺されてしまったウイは、膝蹴りをノリコに打ち込もうとした。

 しかし、ノリコが右手と左手を交互に引っ張たり押したりしてくるせいで体勢を崩されてしまう。

 

 「決め手に欠けますね。時間稼ぎってこうやってやるんですよ。」

 

 そういうと、ノリコは思い切りウイの頭目掛けて頭突きをした。


 「がっ!」

 

 ウイの世界は明滅した。ノリコの額は割れ、血が出ている。

 それほどの本気の頭突き。脳が揺さぶられ思わず膝をついてしまうウイ。

 ガクッと膝をついてチカチカする世界をなんとか戻そうとする。しかし、そこに追撃の強烈な頭突きがもう一発。今度は頭を下げたところに強烈な頭突き。後頭部を強打し、明滅とともに世界が歪む。

 ノリコも同様だった。世界が真っ白になるほどの頭突きをウイに打ち込み自身も足がフラフラになる。

 粘着液により行動を制限されている状態での、渾身の頭突きはウイの大ダメージを与えた。

 

 「ウイちゃん!」

 

 インカム越しにハジメの声が遠くに聞こえる。

 ウイの頭からも血が滴っており、その衝撃がいかに強いか表していた。

 

 「き、効きましたか?」

 「・・・。」

 「頭が硬いのが取り柄で。」

 

 ノリコやハジメの声が遠くに聞こえるウイは、意図せず自分の能力の内側へ落ちて行った。

 そして、白い靄が出現し始めた。

 

 「この期に及んでまだ奥の手があるんですか・・・。聞いてないですよ。」

 「ユイも頑張ってるんだからお姉ちゃんが頑張らないでどうするの。」

 「でも、この状況なら私がやられても、剥がせないので一生私と一緒ですよ。」

 「それは困る。だから、私一人でも成し遂げて見せる。」


 ウイの白い靄の量が増える。

 ウイは頭から滴る血以外に目や鼻、耳から血が出始めている。

 そして、ウイはノリコにお返しの頭突きをした。


 「『押圧(プッシュ)』」


 ノリコの世界が明滅した。



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