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BRAINS  作者: 愛猫私


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第54話

第54話 B地点【深層】



 白中は、いつもの真っ白な部屋にいた。

 しかし、それがどこだか理解できない。前までは自分の能力を理解してチャンネルを切り替える部屋だったが、それがどうにも思い出せない。

 さらには、明晰夢ということもわかっていない。夢を夢と認識していない。完全な無意識の世界にいる。これは、眠りの状態でさらに眠りについたことにより、自分の深層心理へたどり着いた結果である。

 白中がそれを理解することはできない。ただ、白い椅子に座り、白いテレビに映し出された映像を眺めている。その映像も途切れ途切れで何が映し出されているのか明白ではない。

 なんのストーリー性もなく現実味もない世界にただ一人囚われてしまった白中。

 ボーっと乱れた映像を見ている。そこに生気は感じられない。


 ふと、なんの前触れもなく世界が変わる。

 それは、白い部屋で一生懸命食い入るように白いテレビを見て自分の能力の暴走を克服しようとしている白中自身の姿だった。

 それを俯瞰してみている状態。だが、やはり何も感じないし、ただ見ているだけだった。

 原点がわからない。何かをしようとするための原動力と言っていいかもしれない。それに着火しなければ、何もする気が起きない。

 なぜ、彼は一生懸命、自分の能力を克服しているのか。理解できなかった。

 

 急に世界が暗転した。

 白い世界から一転して真っ暗な世界。光が一切ない世界で目を開けていても何の情報も視覚から得ることができない。

 

 「ん?」


 深層心理に取り残された白中は、ただ自分のなかにある原動力を探していた。

 しかし、何もない。この黒い世界には何もない。

 それは、不意に訪れた。何もしなくていいという安堵。そして、黒いテレビに電源が灯る。映像が映し出されたのは、青木サキと黒木ヒトミの二人だった。

 それをただただ眺めている白中。そして、その時が来た。


―――――


 白中が第二段階の睡眠に入り深層心理に囚われている間、黒木とレイコは暴走する白中を止めるので必死だった。

 辺りは猛吹雪で視界がほとんど見えない。これはレイコの能力で周辺に雪を降らせたのだった。

 視界の悪い中、黒木は白中を探している。

 

 「白中!大丈夫か!」

 

 すると、視界の悪いなか、白中の暴力が黒木を襲う。

 辛うじて気配を感じ、ぎりぎりで避ける黒木。

 その一撃を撃ち込みスーッとまた白い世界へ身を隠す白中。

 

 それは、レイコも例外ではなく、白中から攻撃を受けていた。

 レイコは、氷の盾を出現させ攻撃を防ぐが、白中の攻撃力は遥か上であり、氷の盾はガラスのように粉々になり、レイコを容赦なく吹き飛ばす。


 「ぐぅ・・・。なんでこの寒さで動けるの・・・。」

 「今の白中は暴走状態だ!」

 「そんなのあの日見た時からわかっていたことだわ!」

 

 お互いの姿が見えない黒木とレイコが声を交わす。

 

 「このままじゃ、二人とも白中に殺される!協力してくれ!」

 「協力?なんで?ユメトを止めてまた私から引き離すんでしょ!?」

 「そんなこと・・・言ってる場合ではないだろ!」

 

 白中の攻撃を防御し吹き飛ばされつつ、レイコと会話する黒木。

 レイコは執着心が煽られ混乱している状態と言える。それに協力を乞うこと自体が不可能だと思っているが、その執着の出所が白中の身を案じていることに起因しているなら、なんとかできるのではないかと黒木は考えていた。

 

 「このままでは、レイコのもとに返す前に白中を殺さなければならなくなるぞ!」

 「今のユメトを殺せるの?どう見ても私たちよりも強い。けど私なら目的を達成できる。」

 

 黒木はレイコの目的を理解できなかった。どう考えても力づくでは今の白中を抑えることはできない。

 

 「くそ。レイコに能力を使いたかったが、この状況では無理か。」

 「もうそんな女ほっといて私のところに来てユメト!」

 

―――――


 猛吹雪が一層強くなり、雪がどんどん積もっていく。

 その異常現象につられてやってきたのは、テレビ局のヘリコプターだった。

 

 「ご覧ください!あの一部だけがドーム状に猛吹雪が吹き荒れています。風の影響で、これ以上は近づけませんが、BRAINの抗争が起きているようです。あちらには緊急車両が止まっています。」


 アナウンサーがヘリコプターから中継をしている。

 すると、急にヘリコプターに乗っていたアナウンサーは声を失った。

 

 「あ・・・。」


 目の前に現れたのは、空中に生成される巨大な氷塊だった。

 太陽光を浴びてキラキラと乱反射する巨大な氷塊は、レイコの作り出したものだった。

 

 「あれが落ちたら・・・。」


 アナウンサーの言った言葉が現実になる。

 ゆっくりと下降していく巨大な氷塊は、風を切り、猛吹雪のドームに割って入っていく。

 そして、空中にいてもわかるほどの激震が空気を揺らし、その衝撃の巨大さを伝えた。


 「ご覧になったでしょうか。巨大な氷塊が今地面に墜落しました。」

 「危ないので、安全な位置まで撤退してください!」

 

 スタジオのMCが危険を察知して言った。

 その瞬間だった。今度は地上から拳ほどの氷の塊が、散弾銃のごとく無差別に上空へと飛び散った。

 ヘリコプターは氷の塊に穿たれ、穴をあけ制御不能になる。

 ついにはくるくると旋回して、墜落してしまった。


―――――


 「手足の骨を砕いて動けなくして連れてく。」

 

 レイコが頭上に手を挙げて、能力を発動する。すると猛吹雪のなかでも日光で明るかったが、徐々に辺りが暗くなっていった。それは巨大な氷塊が日光を遮ったからだった。

 

 「ここまでの能力か・・・。災害レベルじゃないか。」

 「あはは!これでユメトと一緒にいられる!」

 

 徐々に落下する氷塊の真下に白中を捉えていた。というよりも、レイコ自身を含めた一帯への攻撃。自爆と言ってもいい、白中をとにかく行動不能にすることしか考えていない無謀な攻撃だった。

 しかし、その驚異的な範囲攻撃は、ゆっくりと近づいてくる。

 黒木は、足もとの悪い中なんとか、物陰に身を潜めて着弾地点から離れるので精一杯だった。


 「ユメトーーーーー!」


 レイコが絶叫している。

 そして、その氷塊の着弾地点に真っ黒な体をした白中が現れた。

 辛うじて見えたその姿は、黒い靄に覆われた禍々しい悪魔のような姿だった。

 

 「『模倣犯(コピーキャット)』ネームド:東雲ユイ。『絶根:万打螺(まんだら)』」


 白中は氷塊に一撃。

 氷塊は複数の大きな塊に割れた。そして、それに立て続けに連撃の打撃を撃ち込んだ。

 巨大な氷塊は一瞬にしてこぶしほどの塊まで細かくなり、一気に拡散した。

 そして、その衝撃で、辺りの猛吹雪すらも吹き飛ばして、戦場が露わになった。


 驚愕して唖然としているレイコ。物陰から様子を見ている黒木。暴走中の白中がお互いの姿を確認する。

 そして、最初に動いたのは黒木だった。

 テーザーガンを白中に打ち込んだ。しかし、簡単に避けられてしまう。そこに渾身のタックルを決めた黒木。

 黒い姿の白中は、押し倒されてしまった。そして、黒木からの熱い接吻を受けた。

 

 「なにやってんだああああああ!お前えええええええ!」

 

 レイコの叫び声が辺りに響く。

 その瞬間、黒木は白中に蹴られ大きく吹き飛ばされ壁に激突した。

 

 「がぁ!」

 

 いつもと威力が段違いだった。暴走状態だったとしてもなんとか抑え込めるまで鍛えてきたはずの黒木が一撃で伸されてしまった。

 

 「ユメトおおおおお!あいつのことが好きなのかああああ?聞いてんのかああああ?」

 

 レイコの金切声の絶叫が辺りをつんざく。

 白中は、振り向きレイコに向き直る。レイコは異形の姿を見て、威勢良く叫んだことを後悔した。

 目の前にいるのは、人間じゃないとわかったからだ。

 ただの暴力の化身。意識のないただの殺りく兵器。

 

 「あ・・・。」

 

 と小さく声を漏らしたレイコに暴力の塊と化した白中が向かう。

 そこに白中に聞こえるかどうかという小さな声が届いた。


 「オーダー1。起きろ・・・。」


―――――


 急浮上する意識が、頭を混乱させる。何が何だかわからない。

 完全に意識を失っている状態から無理やりに覚醒させられ、現実を受け止めさせられる。

 

 「どう・・・なってんだ?」

 

 明瞭になる視界の前には口から血を吐いたレイコがいた。

 

 「がふっ・・・。」

 「は?」

 「・・・間に合ったはずなのに。」


 白中の拳はレイコの腹部を穿つ寸前で止まっている。しかし、白中の拳からは氷の槍が出ておりレイコの腹部を完全に貫いている。

 

 「・・・またやったね。自分の能力で人を殺した。」

 「・・・おい!どうなってんだよ!」

 「・・・これで、私はユメトの心にずっと残る。ずっと一緒・・・。」

 「おい!どういう・・・。」


 白中は理解した。

 レイコのユメトと一緒にいるという意味は、昔、暴走し両親を殺した白中のトラウマを呼び起こし、レイコを殺させることによって、レイコ自身が白中の脳裏に一生残るということだった。

 そして、レイコは白中の腕の中で息絶えた。ここまで歪んだ性格に変えたサイという人間に尋常じゃない怒りを覚えた白中が叫んだ。

 

 「サイいいいぃぃ!!!!!!!」


 黒木が白中にゆっくりと駆け寄る。

 そして、うずくまった白中の背中にポンと手を置いた。


 「・・・絶対、サキちゃんを助けます。」

 「・・・そうだな。」


―――――


 「ザザザー・・・。」

 

 白中の深層心理の黒い世界にある黒いテレビは未だに青木サキと黒木ヒトミを映している。

 レイコが実行し脳裏に刻んだトラウマのように、深層心理に灯された二人の姿は白中にとって特別なものになっていた。



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