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BRAINS  作者: 愛猫私


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第48話

第48話 追跡



 「何でなんだよ!」

 

赤坂ハジメはいら立ちを隠せず、チョコをほおばりモニターを見つめタイピングしている。

青木の端末を追っていた赤坂は、自分で作り上げた追跡装置に翻弄されていた。


「ハジメ落ち着け。焦ってもしょうがない。」

「なんで僕が作ったシステムが僕の言うことを聞かないんだ!」

「どうしたんっすか?」

「細かいことはわからないが、追跡が困難になっているようだ。」

「誰かが僕の追跡システムをハッキングしてるんですよ!だから、青木さんがいた場所がどんどん枝分かれしてどれが正解が分からなくなってるんです!」

「ハジメちゃんしかできないやつか。とにかくそんなにイライラするなよ。」

「くっそ!どうなってんだ!」


天才ハッカーとして雇われている赤坂ハジメがいら立ちを隠すことなくキーボードを叩いている。


「相手はBRAINの集団だ。どんな能力者がいるかわからない。明らかに時間稼ぎだと思うが、それだけ時間を稼ぎたい理由があるのだろう。」

「あー!イライラする!あー、そういうことするんだ。だったら強硬手段だよ!」

「おいおい。ハジメちゃん、それしか手掛かりがないんだから慎重にお願いね。」

「僕が作ったシステムに僕が作ったウイルスを送り込むなんてどうしようもないけど、確実に居場所掴んでやるよ。行け!RAT。」


RATは、ハジメが作った総当たりのコンピュータウイルスだ。

全ての分岐のパターンを総当たりすることで、確実に正解を導き出す代物だが、確実とはいえ時間がかかる。

その迷路のようなGPSの軌跡を総当たりしていくネズミたち。

すべての道が徐々に狭まっていくが、相手もさらに分岐を増やし抗っていく。


「・・・すみません。RATを投入したので、もう僕にはできることないです。あとは時間の問題です。」

「よくやった。それでいい。居場所さえわかれば後は私たちの仕事だ。」

「・・・でも、時間がかかります。」

「大丈夫さ。ハジメのできることをやってくれさえすれば。」


 黒木は、赤坂の頭をポンと優しくなでた。

 しゅんとしている赤坂は、静かに席に着きモニターを見ている。


―――――


 赤坂のRATによる総当たりの結果を待っている間、数日かかってしまった。

 そしてそれは起きた。

 赤坂がほぼ寝ずに見ていたモニターに致命的なエラーが出現したのだ。


 「は?な、なんで。」

 「どうした?」

 「青木さんの居場所は着き止めました。でも、信号が3つになってて・・・。」

 「一か所じゃないと?」

 「どれが本物かわからないです。こ、こんなの僕のシステムをこの短時間で複製したのか?そんなわけない。なんだ?」

 

 爪を噛み、モニターを凝視するハジメ。

 

 「おそらく3つのうち1つは本物です。あとの二つはデコイ。端末を複製したのか?そしたら、軌跡と矛盾が生じるし。」

 「しょうがない。その三つの場所に1名ずつ派遣するしか方法はないだろう。」

 「情報収集をするとしたら、武藤さんと俺は役に立たないんじゃないっすか?」

 「確かに戦闘に関しては、何とかなるかもしれない。しかし、青木さんの場所を吐かせるには、ウイさんと黒木課長の能力が絶対的に必要だと思います。」

 

 白中と武藤が、自分たちの力のなさを説明した。

 

 「敵の全員が青木の場所を知っているとは限らない。捨て駒の可能性もある。だが、今はそんなこと言っている時間はない。制圧したあとすぐさま合流だ。そうすれば、その3人から情報を聞ける。よって殺すことは許可しない。」

 「まじっすか。」

 「厳しいな。」

 「ウイ。お前は、一人で行けるか?」

 「頑張ります。」

 「・・・僕が完璧にオペレーションします。」


 モニターを凝視しているハジメが言った。

 

 「緑川は、武藤を頼む。」

 「わかりました。武藤さんよろしくね。」

 「こちらこそ。よろしくお願いします。」

 「白中と私は、一緒に行動する。とにかく3か所の制圧を行い、合流し青木の所在の情報を手に入れるこれが、最優先任務だ。」

 

 黒木の言葉に皆が一斉に返事をした。

 

―――――


 「ウイちゃん。これ。インカム。」

 「ありがとう。」


 ハジメが、ウイの装備を整えている。

 

 「ボディスーツだけど、少し小さめを選んだ方がいい。」

 「うん?」

 「ウイちゃんの力はモニターで見てた。圧迫されていた方が、自分の身体を傷つけるリスクが少なくなる。」

 「そういうことか。ありがとう。」

 「常にモニターで見てるから安心してね。」

 「心強いよ。」


 初任務が採用試験からの延長線上にあるウイにとっては、何もかもが初めてのことだ。

 しかし、その緊張をほぐすかのようにハジメはテキパキとウイの装備を整える。

 ハジメは、平常心を保っていたが、内心腹が立っていた。自分の作り上げたシステムを翻弄したものがなんなのか。手も足も出なかった屈辱を与えられ、標的も一つに絞ることができなかった。

 非戦闘員であるハジメは、ウイにすべてを託すしかない。だから、完璧なオペレーションで相手を打ち負かせてやろうと考えていた。

 

 「標的までの移動方法を伝えておくね。これは警察の力を借りる。警察の緊急車両で相手の近くまで送ってもらい、そこからは僕が標的を探して、伝える。これは全員共通。」

 「わかった。」

 「今も移動しているから、どこで戦闘が始まるかわからないから、常に注意してて。」

 「うん。私も能力で対象者がわかったら教える。」

 「それはありがたいよ。」

 「それとこれ。」


 ハジメは、ウイに銃を渡した。

 

 「使わないと思うけど、もし自分よりも圧倒的に強い敵が現れたら、躊躇しないで使って。」

 「・・・。」

 「ここをこうして、トリガーを引く。」

 「・・・わかった。」

 

 そこに黒木が現れた。

 

 「ウイ。大丈夫か?」

 「うん。緊張はしてる。」

 「そうだろう。初任務にしてさらには、単独任務だ。普通じゃありえない。だが、ハジメが着いてる。そして我々も何かあればすぐに駆け付ける。」

 「うん。大丈夫。ユイの分まで上手くやって見せる。」


 黒木はウイの背中をポンと叩くと、自分も準備を始めるためにその場を後にした。


―――――


 「緑川さん。よろしくお願いします。」

 「ミナミでいいよ。」

「じゃあ、私はヒカルと呼んでください。」

「じゃあ、遠慮なく。ヒカルの装備は東京にはないけど大丈夫?」

「はい。私の場合は、専用の装備を持ち歩いてますので。」

「そうなんだ。じゃあ、大丈夫だね。というか、SランクのBRAINなんだから当たり前か。」

「買いかぶらないでください。身体能力の向上はないSランクなので。」

「ははは。時間を操るんだっけ?どう考えても最強でしょ!」

「いや。まだ私の身体が着いていかないので、本当はSランクとは言えないはずなんです。」

「そうなんだ。うーん。オペレーターとしてヒカルのサポートをすると考えると・・・。」


緑川は指を顎に当て考え込んでいる。

「そうだ!」っとひらめいたように、目を開くと緑川は黒木のもとに行った。


「黒木課長。ヒカルのオペレーターとして、直接の後方支援をしたいのですが許可を。」

「大丈夫なのか!?」

「まだわかりませんが、今しかないかと。」

「人を撃てるのか?」

「サポートだけです。だから大丈夫です。」

「そこまで言うなら、直接の後方支援の許可を出す。」

「ありがとうございます。」


 緑川は元自衛官だが、戦場での多くの死というものを経験している数少ない人間だ。

 前線から退き、オペレーターとして働いているのは、そのときのトラウマがあるからだった。

 しかし、今回ばかりは仲間の青木のために、緑川が得意とする後方からの援護を直接その場で行うことだった。武藤をオペレーションしつつ、さらには援護するというのは、緑川しかできない。

 

 「なんか、大丈夫なんですか?」

 「うん。大丈夫だよ?でも、私は直接、手を下すことができないからそこは先に謝っておく。」

 「わかりました。その時は私がやりますので、ミナミさんは安心してください。」

 「ありがとう、ヒカル。」

 

 そういうと、オペレーターであるミナミもボディスーツを着用し始めた。


―――――


 「白中。用意はできたか?」

 「うっす。」

 「私は銃を所持するが、お前はダメだ。」

 「わかってますって。」

 「お前の能力ですべて解決してほしい。」

 「今回は燃えてますよ。何せサキちゃん捕られてますから。」

 「あぁ。絶対に青木の所在を見つけるぞ。」

 「うっす。」


 ウイと、武藤と緑川、そして白中と黒木は、別々の警察車両に乗り込んだ。

 そして、車両は各々の目的地までゆっくりと動き出した。



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