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BRAINS  作者: 愛猫私


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第47話

第47話 BRAINSの館3



 代り映えのない部屋から出られない青木は、どうにか抜け出そうと考えていた。

 しかし、外に繋がる扉は一つしかなく、鍵が外側からかかっており開かない。

 手持ちのものもすべて没収されており何も使えるものがない。部屋をうろうろしているとき、サイと呼ばれる少年が部屋を訪れた。

 

 「こんにちは。お兄ちゃんから僕からも説得するように言われて来たよ。僕は天堂サイ。よろしくね。」

 「あなたが改ざんの能力を持つBRAINですね。」

 「お兄ちゃんが言ったのか。そうだよ。それを使って、弱いBRAINを助けるのが僕の役割。」

 「あなたの能力のすべて開示してください。」

 「え?なんで?」

 「あなたの能力によって我を失い人を大量に殺した事件が発生しました。そんな能力では弱いBRAINを助けるなんて信じられません。」

 「うーん。言ったら協力してくれるってことかな?」

 「私の情報は重要なようですから、内容次第ですね。」

 「じゃあ、言っても応じてもらえない可能性があるってことかぁ。」

 「善処しますよ。」

 

 と、青木が言った瞬間、腹部に激痛が走った。

 

 「があっ!」

 

 少年が物凄い勢いで青木の腹部を蹴り飛ばしたのだ。

 その衝撃で部屋を転げ壁に激突した、青木は目を回している。


 「人間ごときが、下手になってればいい気になりやがって。」

 「あ、あなたの行動一つで、全部水の泡になってもいいんですか・・・。」


 絶え絶えの声を絞り出す青木。

 

 「僕からしたら人間がどうなろうとどうでもいいんだよ。BRAINも探せば見つけられるし、お兄ちゃんが言っている自治権だっけ?そんなものにも興味はない。」

 「も、目的がぶれていたら団結なんてできませんよ・・・。」

 「僕の目的は簡単だよ。人間の絶滅。自治権をもって共存するより簡単だと思うけど。」

 

 青木はサイと呼ばれる少年の偏った思想が一番危険だと感じた。

 目的に複雑性がない。お互い譲歩する手間もない。法の整備もない。破壊のみで実現できる目的であるからこそ、彼の言っていることが容易に実現しそうで怖くなった。

 

 「人間が考えることなんて、所詮人間が考えた範疇のことだし、これからは能力のあるものが世を統べるべきだと思わないかい?」

 「異能力があることだけで、人間と何が違うんですか?」

 「馬鹿だね。それ自体が、高次元の存在の証明じゃないか。」

 「それは人間と比べているから高次元だと言っているだけですよ。異能力を持っているかどうかだけであって、本質的には人間と変わりません。少なからず、私は保護対象と接してきてそう感じています。BRAINだって人間同様の感情を持っています。」

 「感情を持っていることが共通点だから妥協点を導き出そうって?僕はバカみたいに自分のことしか考えていない人間のほうが多いと思うけど。何の経験もしてもいないのに言葉を選ばずに相手に意見するやつとか、人の気持ちを考えずに土足で踏み荒らすやつとか、目の前で人が死んでも何も干渉しないやつとか。挙句の果てに人間同士で殺し合ったり。馬鹿としか言いようがない。」

 「あなたがどんな経験をしてきたか知りませんが、人間同士の思考の衝突は避けられません。私たちは弱いんですよ。相手から攻撃されれば傷つくし、そういうことをする人から逃げます。逆に自分に合う人には、好意を伝えるために思ってもないことも言う。そういう生き物なんですよ。」

 「はぁ。能力の優劣で統制されていたら楽じゃない?」

 「そうかもしれません。でも、その基準に満たないものは生きる価値なしと切り捨てるのは、人間のやることではないです。」

 「だーかーら。人間じゃないんだって言ってるじゃん。」

 「基準に満たないものは生きる価値なしと切り捨てるんじゃないんですか?」

 「殺すのは簡単だけど、もしそういう基準以下のものが現れた、僕は、実験するかな?能力の付与の実験をね。」

 「・・・!」

 「だってそうだろ?何もないんだったら、せめて土俵に立つくらいにならなきゃ。生きてるだけで土俵に乗ってるなんておかしな話だろ?」

 「BRAINの脳を摂取する以外に異能力を発現させる方法があるというんですか?」

 「さあね。でも、相手に能力を与えるBRAINがいてもおかしくないと思わないかい?そういうBRAINも監視下に置くために、BRAINの居場所や能力の詳細は重要なんだよ。」

 「あなたの場合、私を優しく扱うということはしないみたいですね。」

 「うん。だってその価値が僕には感じられないから。」


 青木は限界を感じた。この情報の提供の引き延ばしは、相手が下手に出ていたからできた代物だ。

 だが強硬手段を取ろうとするサイに対しては意味をなさない。戦闘力がない青木には抗う術もない。

 

 「・・・わかりました。でも、あなたの能力の完全な情報開示が条件です。」

 「しつこいね。まぁ。いいよ。聞いたところでどうにもならないし、どうもできない。僕の能力『改ざん(タンパーキネシス)』は、能力をコントロールできないBRAINを対象に、能力の範疇で解釈を変えて、発動条件や使用リスクなどを変更することができる能力だよ。ちなみに、効果は僕のさじ加減だし永続的。どうだい?聞きたいことがあるかい?」

 「・・・では、微風タイキさんの能力を変えたのはあなたで間違いないですね?」

 「微風タイキ?誰それ?あんまり印象に残らない人は覚えてないんだよな。」

 「な!渋谷のスクランブル交差点で大量虐殺をさせられた人を覚えていないんですか!」

 「・・・あぁ。お仕事でやった人か。」

 「あの時、能力が異常に強化されたのは、あなたの能力だということがはっきりしました。しかし、微風タイキさんを制圧したとき、彼は呼吸できなくなっていました。なぜですか?」

 「だって、強い能力には代償が必要だろ?もちろん、僕の能力はその代償を付与するかどうかも操作できるけど、代償がないと大きな改ざんはできないんだよ。」

 「殺りく兵器に変えて、さらには当事者を殺そうとしたということですか。」

 「お仕事をしていたら、結果的にそうなったってことだね。」

 「胸糞が悪いですよ。」

 「僕の能力を開示して罵られる筋合いはないと思うけど。」

 

 青木は、へたりこんでいたが、立ち上がると少年に近づき平手打ちをした。

 少年は目をぱちくりさせ、理解できないようだった。


 「私があなたに嫌悪したとき平手打ちする権利も付け加えてください。」

 「調子に乗るなよ。」

 「そこまでだ。サイ。」

 

 間に割って入ったのはまたもカイだった。

 

 「サイ。よくやった。条件提示で青木様を納得させることができたのですから。」

 「はぁ?僕の能力開示とついでに好きな時に顔をはたく権利でこの女が持つ情報がトントンなんておかしいだろ!」

 「我々の目的達成のためには、私も含めすべてのBRAINが駒なんだ。多少の理不尽も受け入れろ。」

 「・・・顔をはたく権利って。」

 「さて、青木様。約束の時です。あなたの情報を頂戴することにしましょう。どうぞこちらへ。」

 

―――――


 館の中は随分と広い。明かりがその広さに対応していないのか、薄暗く感じる。

 カイに導かれ青木は、館の中を歩いている。廊下や階段を進んでいくが、もといた部屋からの道筋はすべて暗記している。何かに役に立つかもしれない。この館の構造を理解することも後々、救出隊が来た時に有用な情報となるはず。そんなことを考えながら、カイの後を着いていく。


 行きついたのは、地下室であった。

 息の詰まるコンクリートの壁と薄暗い明かりが、地下室をより窮屈に感じさせる。


 「さぁて、紹介します。BRAINでありながらドクターでもある、七尾アンコ先生です。」

 「どうも。よろしくね。私のことはアンコ先生とでも呼んで。」

 「・・・私は何をされるんでしょうか。」

 「説明するわ。カイはもう戻っていいわよ。」

 「そうですね。よろしくお願いします。」

 「私は精神科医でね。まぁ、得意ではないけど外科手術もやっているわ。そして私のBRAINとしての能力は『記憶手術(メモリーオペ)』。あなたの記憶をもらうことができるわ。」

 「!!!」

 「さあて、許可が出たのであれば、あなたから情報をもらうことにするわね。」

 

 何やら恍惚とした顔を浮かべるアンコ。

 青木は能力の内容を聞いただけで、とても脅威になる能力だと悟った。

 アンコの手が青木の頭を撫でた瞬間、青木はブラックアウトした。



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